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中小企業の育児支援義務と助成金活用最新ガイド

はじめに──2026年度、子育て支援は「経営課題」になった

「育児支援は大企業の話」──そう思っている中小企業の経営者の方は、今すぐその認識をアップデートしてください。2025年4月から段階的に施行されている改正育児・介護休業法は、2025年4月施行分に続き2026年4月にもさらなる改正が施行され、従業員数にかかわらずすべての企業に実質的な対応を求めています。対応を怠れば、行政指導や企業名公表のリスクだけでなく、人材確保がますます困難になるという経営上の致命傷につながります。

一方で、厚生労働省は中小企業が育児支援体制を整備するための助成金メニューを大幅に拡充しています。また、税制面でも子育て支援に関連する優遇措置が存在し、これらを組み合わせて活用することで、コスト負担を最小限に抑えながら「選ばれる職場」を実現できます。

本記事では、道濟会計事務所の税理士として、厚生労働省の最新施策を整理するとともに、中小企業が具体的に何をすべきかを税務・労務・経営の複合的な視点で解説します。助成金の申請タイミングや税務処理上の注意点など、実務に直結するポイントを網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。

改正育児・介護休業法のポイント整理──2025年4月施行分と2026年4月施行分

1. 改正の全体像と中小企業への影響

2024年に成立した改正育児・介護休業法は、2025年4月と2026年4月の二段階で施行されています。中小企業の経営者・経理担当者が押さえるべきポイントを、施行時期ごとに整理します。

【2025年4月施行済みの主な改正項目】

改正項目内容中小企業への影響
残業免除の拡大所定外労働の制限対象が「3歳未満」から「小学校就学前」に拡大少人数の職場でシフト調整・業務分担の見直しが急務
子の看護等休暇の拡充対象が小学校3年生修了まで拡大、取得理由に学級閉鎖・入学式等を追加、勤続6か月未満の除外規定を廃止パート・アルバイトを含む全従業員が対象に。人員計画への影響大
育児休業取得状況の公表義務拡大従業員300人超企業に公表義務(従来は1,000人超)300人以下でも将来の引き下げに備えた準備が望ましい

【2026年4月施行の主な改正項目】

改正項目内容中小企業への影響
柔軟な働き方の措置義務(3歳~小学校就学前)始業時刻変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇付与等から2つ以上の措置を講じ、労働者が1つ選択できるようにする就業規則の改定と運用体制の構築が必須。特にテレワーク環境の整備コストが発生する可能性

上記の通り、残業免除の拡大・子の看護等休暇の拡充・育児休業取得状況の公表義務拡大はすでに2025年4月に施行済みです。まだ対応が済んでいない企業は早急に確認してください。そして2026年4月施行分として新たに対応が必要となるのが、柔軟な働き方の措置義務です。

2. 就業規則改定の具体的な進め方

改正への対応として最初に着手すべきは、就業規則の改定です。以下のステップで進めることをお勧めします。

ステップ1:現行規定の棚卸し(3月中)
現在の育児関連規定を一覧化し、改正法との差異を洗い出します。多くの中小企業では、2025年4月施行分の改正対応も不十分なまま放置されているケースが散見されます。まずは現状把握が不可欠です。

ステップ2:措置内容の選択と経営判断(~4月上旬)
柔軟な働き方の措置は「2つ以上導入して労働者に選択させる」制度設計が必要です。テレワーク、始業時刻変更、短時間勤務、新休暇のうち、自社の業態に合うものを選びます。例えば、製造業で全員テレワークは困難でも、始業時刻変更+子の看護休暇拡充なら対応可能でしょう。

ステップ3:規定案の作成と届出(4月中)
改定案を作成したら、従業員代表の意見聴取を経て、所轄の労働基準監督署に届け出ます。厚生労働省のモデル就業規則を参考にしつつ、自社の実態に合わせてカスタマイズしてください。

⚠ 注意:2026年4月施行分の施行日は2026年4月1日です
本記事掲載時点(2026年3月28日)で施行まであと数日です。就業規則の改定が間に合っていない場合でも、まずは「改定予定である旨」を社内に周知し、実務上の運用を先行させてください。届出が数週間遅れても、実態として法に適合した運用がなされていれば、直ちに行政処分を受けるリスクは低いですが、放置は絶対にNGです。速やかに社労士・税理士にご相談ください。

助成金の全体像──2026年度に使える主要メニュー

1. 両立支援等助成金の概要

厚生労働省が所管する「両立支援等助成金」は、育児支援体制を整備する中小企業にとって最も活用しやすい助成金です。2026年度は以下のコースが利用可能です(助成額は2025年度時点の公表情報に基づくものであり、2026年度の正式な助成額は厚生労働省の最新情報をご確認ください)。

コース名主な要件助成額の目安(中小企業・2025年度参考)
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)男性従業員が育児休業を取得しやすい環境整備を行い、実際に取得させた場合第1種:20万円
第2種(取得率上昇):20万円~60万円
育児休業等支援コース育休取得時・職場復帰時の支援プラン策定・実施取得時30万円+復帰時30万円
柔軟な働き方選択制度等支援コース2026年4月施行の柔軟な働き方措置を導入し、利用実績がある場合制度の導入・利用:1制度につき20万円、2制度以上で25万円
育休中等業務代替支援コース育休取得者の業務を代替する体制を整備した場合(代替要員の新規雇用、手当支給等)新規雇用による代替要員確保:9万円×対象期間(最大12か月)
手当支給:最大10万円/月

2. 助成金の「併給」で効果を最大化する

これらの助成金は、要件を満たせば複数コースの併給が可能です。例えば、男性従業員の育休取得を推進しつつ(出生時両立支援コース)、その間の業務代替体制を整備する(育休中等業務代替支援コース)ことで、1人の育休につき相当額の助成を受けられるケースもあります。

当事務所のお客様の事例では、従業員15名の建設業の会社で、社長自ら「男性社員も育休を取ろう」と宣言し、2名の男性社員が育休を取得。代替要員として短期のパート社員を雇用した結果、出生時両立支援コース+育休中等業務代替支援コースを合わせて約120万円の助成金を受給できました。コストをかけるどころか、実質的にプラスになったのです。

3. キャリアアップ助成金との組み合わせ

育休代替で新たに雇用した有期雇用労働者を正社員に転換する場合、キャリアアップ助成金(正社員化コース:1人当たり80万円)も視野に入ります。育児支援を起点にした採用・定着戦略を描くことで、助成金のメリットが何倍にも膨らみます。

税務の視点──助成金の経理処理と税制優遇

1. 助成金は「雑収入」として課税対象になる

助成金を受給した場合、法人税の課税上は「雑収入」として益金に算入されます。「助成金をもらったのに税金がかかるの?」と驚かれる方もいますが、これは原則です。ただし、実際には助成金の受給と同時に代替要員の人件費等の費用も発生しているため、差し引きで見れば税負担はそれほど大きくないケースがほとんどです。

具体的な仕訳例を示します。

取引借方貸方
助成金の入金時普通預金 600,000円雑収入 600,000円
決算時(未収の場合)未収入金 600,000円雑収入 600,000円

重要なのは、助成金の計上時期です。原則として「支給決定日」の属する事業年度の収益となります。申請から支給決定まで数か月かかることが多いため、決算をまたぐケースでは未収計上の要否を慎重に検討してください。

2. 消費税の取扱い

助成金は「対価性のない収入」であるため、消費税は不課税です。課税売上割合の計算にも影響しません。この点は補助金・助成金全般に共通するルールですが、経理担当者が消費税の処理を誤るケースが実務上少なくありません。会計ソフトの税区分設定を必ず「不課税」に設定してください。

3. 子育て支援に関連する税制優遇措置

直接的な「育児支援税制」は限定的ですが、間接的に活用できる制度があります。

(1)中小企業における賃上げ促進税制
2024年度税制改正で拡充された賃上げ促進税制は、2024年4月から2027年3月までの間に開始する事業年度が対象です。育休復帰者の賃金を維持・引き上げた場合や、代替要員の雇用による総人件費の増加がこの計算に含まれます。具体的には、中小企業向けでは全体の給与等支給額の増加率が前年度比1.5%以上の場合に15%の税額控除、2.5%以上の場合に30%の税額控除が基本となります。さらに教育訓練費の増加やくるみん認定等の上乗せ要件を満たせば、最大45%の税額控除を受けることも可能です。育児支援のための人件費増が、結果的に税額控除の要件充足につながるのです。

(2)雇用増加に伴う税制メリット
代替要員を新たに雇用したことで雇用者給与等支給額が増加すれば、上記の賃上げ税制の要件を満たしやすくなります。人を増やす=コスト増と考えがちですが、税制優遇と助成金を組み合わせれば、実質的なコストは大幅に圧縮できます。

(3)テレワーク環境整備に係る設備投資
柔軟な働き方措置としてテレワークを導入する場合、パソコン・ネットワーク機器等の設備投資が必要になります。少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産の即時償却)を活用することで、初年度の税負担を軽減できます。また、中小企業経営強化税制など設備投資に関する税制優遇の適用可能性もありますが、適用期限や要件は年度ごとに変更される場合があるため、最新の税制改正情報を確認の上でご検討ください。

⚠ 助成金と圧縮記帳の関係に注意
国庫補助金等で固定資産を取得した場合に認められる「圧縮記帳」ですが、両立支援等助成金のような人件費補助型の助成金には圧縮記帳の適用はありません。「助成金で機器を買ったから圧縮記帳できる」と誤解されるケースがありますが、そもそも資産取得を目的とした補助金ではないため、対象外です。経理処理を間違えると、税務調査で否認されるリスクがありますのでご注意ください。

実務での具体的な影響──「ウチには関係ない」は危険

1. 人材確保への直結的影響

「うちは従業員10人の小さな会社だから…」という声をよく聞きます。しかし、現在の採用市場では、求職者が企業を選ぶ際に「育児支援制度の充実度」を重視する傾向が年々強まっています。厚生労働省の調査によると、20代~30代の求職者の約7割が「育児・介護支援制度の有無」を就職先選択の重要な判断基準にしています。

中小企業こそ、1人の離職が業務に与えるインパクトは甚大です。出産・育児を理由に優秀な社員が辞めてしまえば、採用・教育コストとして数百万円の損失が発生します。育児支援制度を整備するコストは、こうした「見えないコスト」と比較すれば、はるかに小さな投資です。

2. ハラスメントリスクの増大

改正法では、育児休業の取得を阻害するような言動(いわゆるパタハラ・マタハラ)に対する防止措置義務も強化されています。「育休を取りたいと言ったら上司に嫌な顔をされた」──こうした事案が労働局に持ち込まれると、企業名公表や是正指導の対象になる可能性があります。管理職への研修も、法改正対応の重要な一部です。

3. 社会保険料の実務的影響

育児休業中の社会保険料は、被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。この免除を受けるには、事業主が年金事務所に「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。提出を忘れると保険料が通常通り徴収されてしまいます。特に、短期間の育休(出生時育児休業:最大28日間)では手続きを失念しがちです。

2022年10月以降の改正で、社会保険料の免除要件は以下の2つが並列で存在しています。

  • 月末時点で育休中であれば、当月の保険料(月額)が免除される
  • 月末時点で育休中でなくても、同月内に14日以上の育児休業等を取得した場合は、当月の保険料(月額)が免除される

なお、賞与に係る保険料の免除については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限られます。短期の出生時育児休業(パパ育休)では賞与の保険料免除は適用されない点にご注意ください。

これらのルールを知らずに保険料を支払い続けているケースが、当事務所の顧問先でも実際に発見されています。過去2年分であれば遡って還付請求が可能ですので、心当たりのある方は速やかにご確認ください。

今すぐやるべきこと──5つのアクションアイテム

ここまでの内容を踏まえ、中小企業の経営者・経理担当者が2026年4月を迎えるまでに(そして迎えた後すぐに)取り組むべきことを整理します。

アクション1:就業規則の緊急点検と改定

繰り返しになりますが、2025年4月施行分・2026年4月施行分の改正に対応した就業規則になっているか、今すぐ確認してください。改定が間に合わない場合は、「社内通知文書」で暫定的な運用ルールを周知し、正式な規則改定を速やかに進めてください。顧問の社労士または当事務所にご相談いただければ、改定のサポートが可能です。

アクション2:助成金の活用計画を立てる

助成金は「計画→実行→申請」の順序が鉄則です。多くの助成金は事前に計画書や環境整備の実施が求められるため、「育休を取らせた後で助成金を知った」では手遅れになります。今後1年間で育休取得が見込まれる従業員がいる場合は、今のうちに助成金の申請スケジュールを逆算して準備してください。

時期やるべきこと
育休取得の3か月前対象助成金の要件確認、一般事業主行動計画の策定・届出、社内制度の整備
育休取得の1か月前育休取得予定者との面談実施、業務引継ぎ計画の策定、代替要員の確保
育休期間中社会保険料免除手続き、代替要員の勤務実績管理
育休終了後~2か月以内助成金の支給申請(期限厳守!)

アクション3:社会保険料免除の手続き漏れをチェック

過去に育休を取得した従業員がいる場合、社会保険料の免除手続きが正しく行われていたか確認してください。前述の通り、過去2年分は遡及して還付を受けられる可能性があります。特に短期間の出生時育児休業(パパ育休)については、手続き漏れが多い傾向にあります。

アクション4:税制優遇の活用シミュレーション

賃上げ促進税制の適用可能性を確認してください。育児支援に伴う人件費増が税額控除の要件を満たすかどうか、当期の給与支給額の増加率を試算することをお勧めします。決算期が近い企業は特に急いでください。3月決算の企業であれば、まさに今が確認のタイミングです。

アクション5:管理職への意識改革研修

制度を整えても、現場の管理職が理解していなければ機能しません。「育休を取りたい」と言い出せない雰囲気、復帰後の不当な配置転換──こうした問題が起きると、法的リスクだけでなく、SNS等での悪評拡散という経営リスクにもつながります。最低限、管理職向けに30分でもいいので「改正法の概要と対応義務」を説明する場を設けてください。

よくある質問と回答

Q1:当社は従業員5人ですが、本当に対応が必要ですか?

はい、必要です。育児・介護休業法は従業員数に関係なくすべての企業に適用されます。従業員1人の企業であっても、その従業員が育児休業を申し出れば、原則として拒否することはできません。「小規模だから免除」という規定はありません。

Q2:育休中の従業員の給与を支払う余裕がありません。

育児休業中は、雇用保険から育児休業給付金(休業開始後180日間は賃金日額の67%、それ以降は50%)が支給されます。この給付金は企業ではなく従業員個人に支給されるため、企業が育休中に給与を支払う法的義務はありません(ただし、就業規則で有給と定めている場合は別)。つまり、育休中の企業の人件費負担はゼロにできるのです。さらに社会保険料も免除されるため、むしろコスト減になる場合もあります。

Q3:助成金の申請は自社で行えますか?

可能ですが、申請書類の作成にはかなりの労力がかかります。要件を1つでも欠くと不支給になるため、社労士や当事務所にご相談いただくことをお勧めします。なお、助成金申請の代行は社会保険労務士の独占業務ですので、税理士が直接代行することはできませんが、当事務所では提携の社労士と連携してワンストップで対応しています。

Q4:個人事業主でも助成金はもらえますか?

はい、従業員を雇用して雇用保険に加入している個人事業主であれば、法人と同様に両立支援等助成金の対象となります。個人事業の場合、助成金は事業所得の雑収入として所得税の課税対象になる点にご注意ください。

道濟会計事務所からのメッセージ

育児支援は、単なる法令遵守の問題ではありません。人口減少時代の中小企業にとって、「人を大切にする会社」という評判は最大の経営資源です。助成金や税制優遇を最大限に活用すれば、コスト面のハードルは想像以上に低くなります。

とはいえ、法改正への対応、助成金の要件確認、税務処理、社会保険手続き──これらを経営者や経理担当者だけで完璧にこなすのは現実的ではありません。当事務所では、税務顧問としてのサポートに加え、提携社労士と連携した労務対応のワンストップ支援を行っています。

「何から手をつけていいか分からない」「助成金をもらえるか確認したい」「就業規則の改定が間に合っていない」──そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご連絡ください。2026年4月の施行日を過ぎても、できることはまだたくさんあります。大切なのは、今日から動き始めることです。

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