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大企業のグループ間取引に対する税務当局の厳しい目──中小企業が学ぶべき税務リスクと対策

グループ間取引への税務当局の監視強化──中小企業にとっての教訓

近年、大手企業グループに対する国税当局の税務調査で、グループ間取引における所得隠しや不適正な価格設定が指摘される事例が相次いで報道されています。グループ間取引における価格設定や費用の付け替えが問題視され、多額の追徴課税が行われるケースは決して珍しくありません。

「大企業の話だから中小企業には関係ない」──そう感じる方も多いかもしれません。しかし、実務に携わる税理士の視点から申し上げると、グループ間取引の税務リスクは、中小企業にとってこそ身近で深刻な問題です。むしろ、大企業には専門の税務部門や移転価格の専門家がいるのに対し、中小企業ではそうした体制が整っていないケースがほとんどであり、知らず知らずのうちに同様のリスクを抱えていることが少なくありません。

本記事では、大企業グループで実際に問題となった事案の構造を起点に、グループ間取引における税務リスクの本質を解説し、中小企業の経営者・経理担当者が「今すぐ」取り組むべき対策を、道濟会計事務所の実務経験を踏まえて具体的にお伝えします。

グループ間取引で税務上問題になる3つのパターン

国税当局がグループ間取引を調査する際、特に注目するポイントは大きく3つあります。中小企業でも頻繁に見られるパターンですので、自社に当てはまるものがないか、ぜひチェックしてみてください。

パターン①:不適正な価格設定(移転価格の問題)

グループ会社間で商品やサービスをやり取りする際、その価格が「独立企業間価格」(第三者間で成立する適正な価格)からかけ離れている場合、所得の移転と認定されるリスクがあります。

たとえば、利益の出ている親会社が、赤字のグループ会社に対して市場価格よりも著しく高い価格で業務委託費を支払っている場合、親会社の利益を不当にグループ会社に移転していると判断される可能性があります。逆に、グループ会社から仕入れる際に市場価格より極端に安い価格で取引すれば、グループ会社の利益を親会社に集中させているとも捉えられます。

中小企業で特に多いのが、オーナー社長が複数の法人を所有しているケースです。「自分の会社同士だから」と深く考えずに価格を決めてしまい、結果的に税務調査で否認されるという事例を、私どもの事務所でも数多く見てきました。

具体的な数値例を挙げましょう。A社(黒字・利益2,000万円)がB社(赤字)に対して月額100万円の業務委託費を支払っているとします。同様の業務を外部業者に依頼した場合の相場が月額30万円であれば、差額の月額70万円(年間840万円)が所得の移転として否認される可能性があります。これに加算税・延滞税が上乗せされれば、想定外の追徴課税となります。

パターン②:費用の付け替え・経費の押し付け

本来A社が負担すべき経費を、利益の少ないB社に負担させるケースです。典型的なのは以下のような事例です。

  • 親会社の広告宣伝費を子会社に負担させる
  • 親会社の役員が使用する社用車のリース料を子会社で計上する
  • 親会社のオフィスの賃料の一部を、実態以上にグループ会社に按分する
  • 親会社の従業員の人件費をグループ会社に付け替える

これらは「寄附金」として認定され、支出側では損金不算入、受領側では益金算入となり、グループ全体で見ると二重課税が発生するという最悪の事態を招きます。

パターン③:役務提供の対価が不適正(経営指導料・ロイヤルティ等)

親会社が子会社に対して「経営指導料」「ブランド使用料」「管理業務受託料」等の名目で金銭を受け取る(または支払う)ケースは、中小企業グループでも非常に多く見られます。問題は、その対価の金額に合理的な算定根拠があるかどうかです。

国税当局は、経営指導料について特に厳しい目で見ています。「月額売上の5%」といった設定をしている企業をよく見かけますが、「なぜ5%なのか」「どのような指導を行っているのか」「その指導によって子会社にどのような便益があるのか」を説明できなければ、否認されるリスクは極めて高いと言わざるを得ません。

⚠ 実務上の警告
国税当局は近年、中小企業グループにおけるグループ間取引の調査を強化する傾向にあります。同族会社間の取引に関する否認事例は増加傾向にあるとみられ、「大企業だけの問題」では決してありません。特に令和8年度(2026年度)以降は、電子帳簿保存法の本格運用やインボイス制度の定着により、取引の実態がより透明化される中、不適正な取引が発覚しやすい環境が整いつつあります。

中小企業で特に注意すべき「同族間取引」の落とし穴

中小企業、特にオーナー経営の企業グループでは、以下のような構造が極めて一般的です。

  • 社長個人が複数の法人の代表を務めている
  • 社長の親族が各法人の役員に就任している
  • 法人間で事務所を共有し、賃料を按分している
  • 従業員が複数法人の業務を兼務している
  • 一方の法人から他方の法人へ資金を融通している

これらはいずれも、税務調査で集中的にチェックされるポイントです。税務調査官は、同族関係にある法人間の取引については、最初から「恣意的な操作がないか」という視点で臨みます。

法人税法第132条「同族会社等の行為計算否認規定」の脅威

中小企業オーナーが最も警戒すべき条文の一つが、法人税法第132条(同族会社等の行為又は計算の否認)です。この規定は、同族会社の行為又は計算で「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」がある場合に、税務署長がその行為又は計算にかかわらず、法人税の課税標準等を計算することができるというものです。

つまり、形式的には合法であっても、「不当に税負担を減少させている」と判断されれば、税務署長の裁量で否認できるという非常に強力な規定です。

実際の事例として、あるオーナーが所有するA社(製造業・利益3,000万円)からB社(不動産管理業・利益100万円)に対し、「経営コンサルティング料」として年間1,200万円を支払っていたケースを考えてみましょう。B社には経営コンサルティングを行う専門人材はおらず、実態としてはオーナー個人が時折アドバイスをする程度でした。このケースでは、経営コンサルティング料の全額が寄附金と認定される可能性が高く、A社では損金不算入(法人税等の追加負担約360万円)、B社では益金として課税(すでに収益計上済みであれば追加負担なし)となります。加えて、重加算税(35%)が課される可能性もあり、ペナルティは甚大です。

グループ法人税制との関係

2010年度税制改正で導入されたグループ法人税制も、中小企業グループに大きな影響を及ぼしています。100%グループ内の法人間で寄附金に該当する取引が行われた場合、支出法人側では全額損金不算入(法人税法第37条第2項)、受領法人側では全額益金不算入(法人税法第25条の2)となります。

一見、グループ全体では課税関係が中立のように見えますが、実際には支出法人側で損金が認められないという不利益が確実に発生します。たとえば、親会社が子会社に1,000万円の経済的利益を移転した場合、親会社では1,000万円が損金不算入となり、法人税等の実効税率を約34%とすると、約340万円の追加税負担が生じます。

取引パターン支出法人(親会社等)受領法人(子会社等)グループ全体の影響
適正価格での取引損金算入OK益金算入中立(問題なし)
100%グループ内寄附金全額損金不算入全額益金不算入支出法人に不利
100%未満のグループ間寄附金損金算入限度額あり(大部分が損金不算入)全額益金算入二重課税の恐れ
低額譲渡(時価と対価の差額)時価で譲渡したものとみなし課税時価で取得したものとして受贈益課税の可能性大幅に不利

国税当局が見ているポイント──調査の現場から

税務調査において、調査官がグループ間取引をチェックする際に着目するポイントを、実務経験に基づいてお伝えします。

①取引の「実態」と「形式」の乖離

契約書上は「経営指導料」と記載されていても、実際にどのような指導が行われたのか、その記録が残っていなければ、取引の実態がないと判断されます。調査官は議事録、メールのやり取り、成果物の有無などを詳細に確認します。

道濟会計事務所の顧問先でも、グループ間で経営指導料を授受しているケースは多くありますが、私どもでは必ず「指導内容の月次報告書」の作成と保存をお勧めしています。具体的には、①指導日時、②指導者と被指導者の氏名、③指導内容の概要、④指導による成果や改善点、を記録したドキュメントを毎月作成し保存するのです。これがあるかないかで、調査時の対応は天と地ほど変わります。

②価格の算定根拠

「なぜその金額なのか」を合理的に説明できるかどうかが、最大のポイントです。第三者との取引事例、業界の相場データ、原価に合理的な利益を上乗せした計算過程など、客観的な算定根拠を文書化しておく必要があります。

中小企業では「昔からこの金額でやっている」「社長が決めた」という説明しかできないケースが驚くほど多いのですが、これでは調査官を納得させることはできません。

③資金の流れ

グループ会社間の資金移動は、調査官が最も注意深く追跡する項目の一つです。特に、決算期末付近での大きな資金移動、定期的ではない不規則な送金、帳簿上の処理と実際の資金移動のタイミングのずれなどは、重点的にチェックされます。

また、グループ会社間の貸付金についても要注意です。適正な利率での利息計上がなされていない場合、認定利息として課税される可能性があります。同族会社間の貸付金に係る認定利息の利率は、貸付を行った法人の調達金利(借入がない場合は特例基準割合に基づく利率)が基準となります。無利息や極端な低利率での貸付は、利息相当額が寄附金と認定されるリスクがあります。

④人件費の実態

従業員がグループ内の複数法人で兼務している場合、その人件費の配分が実態に合っているかが問われます。「A社で8割の業務を行っているのに、人件費はB社で全額計上している」といったケースは、典型的な否認事例です。

業務日報やタイムカードなど、実際の業務配分を示す客観的な証拠を整備しておくことが重要です。

ペナルティの大きさを正しく理解する

グループ間取引の不備が税務調査で指摘された場合のペナルティは、想像以上に重大です。具体的な数値で確認しましょう。

ペナルティの種類税率・計算方法具体例(追徴本税500万円の場合)
過少申告加算税10%(50万円超部分は15%)約72.5万円
重加算税(仮装・隠蔽がある場合)35%(無申告の場合40%)175万円
延滞税納付期限の翌日から2か月:特例基準割合+1%、以後:特例基準割合+7.3%(各年の特例基準割合の告示により変動。令和7年はそれぞれ年2.4%、年8.7%)3年分で約80〜100万円(目安)

仮に3年間で合計1,500万円の所得隠しが認定され、重加算税が適用された場合、追徴本税(法人税・地方税合計)約500万円に加え、重加算税175万円、延滞税約80〜100万円で、合計750万円超のペナルティとなります。中小企業にとって、この金額は経営を根幹から揺るがす深刻なインパクトです。

さらに重加算税が課された場合、その後の税務調査のサイクルが短くなる(通常5年に1回程度のところが2〜3年に1回になる)という実務上の不利益もあります。一度重加算税を受けると、その後数年間は「要注意先」として国税当局のリストに載り続けることになります。

⚠ 見落としがちなリスク:消費税への波及
グループ間取引の否認は、法人税だけでなく消費税にも波及します。たとえば、課税取引として処理していた経営指導料が否認された場合、仕入税額控除の修正が必要となり、消費税の追徴も発生します。インボイス制度が本格運用されている現在、グループ間のインボイスの記載内容にも不備がないか、併せて確認が必要です。

中小企業が今すぐやるべき5つの対策

ここからは、グループ間取引の税務リスクを最小化するために、中小企業が今すぐ着手すべき具体的な対策を5つお伝えします。いずれも、道濟会計事務所が顧問先に実際にアドバイスしている内容です。

対策①:グループ間取引の「棚卸し」を行う

まず最初に取り組むべきは、グループ会社間で行われているすべての取引を洗い出し、一覧表にまとめることです。以下の項目を整理してください。

  • 取引の相手先(どの法人との取引か)
  • 取引の内容(商品の売買、役務の提供、賃貸借、金銭の貸借など)
  • 取引金額(月額・年額)
  • 価格の算定根拠(なぜその金額なのか)
  • 契約書の有無と内容
  • 取引の実態を示す証拠書類の有無

この棚卸しを行うだけで、「契約書がない」「算定根拠が不明確」「実態と乖離している」といった問題点が浮き彫りになるはずです。問題が見つかったら、それが来期からの改善ポイントとなります。なお、過年度の取引について遡って修正することは原則できませんが、来期以降の取引条件を適正化することで、将来の税務リスクを大幅に低減できます。

対策②:契約書の整備と「独立企業間価格」の文書化

すべてのグループ間取引について、書面による契約書を作成してください。口頭の合意や慣行に基づく取引は、税務調査において極めて脆弱です。

契約書には、取引の内容、対価の金額、算定方法、支払条件、契約期間を明記します。そして最も重要なのは、対価の金額が「独立企業間価格」として合理的であることを示す算定根拠の文書を別途作成しておくことです。

たとえば、経営指導料であれば、①指導の具体的内容とその人件費相当額、②外部のコンサルティング会社に依頼した場合の相場、③子会社が受ける便益の大きさ、などを根拠として文書化します。この文書は、契約締結時に作成し、取引条件を変更する都度更新するのが望ましいです。

対策③:「実態」を証明する証拠を日常的に蓄積する

契約書があっても、取引の実態がなければ否認されます。日常的に以下のような証拠を蓄積する仕組みを作りましょう。

  • 経営指導料:月次の指導報告書、会議議事録、メールやチャットの記録
  • 業務委託費:業務の成果物、作業報告書、タイムシート
  • 賃料:使用面積の図面、使用実態の記録
  • 人件費の配分:業務日報、タイムカード、業務分担表
  • 貸付金:金銭消費貸借契約書、返済予定表、利息計算書

これらの証拠書類は、電子帳簿保存法に対応した形で電子保存することも可能です。紙で保存する場合も、整理された状態で保管し、税務調査の際にすぐに提示できるようにしておくことが重要です。

対策④:定期的な取引条件の見直し

グループ間取引の条件は、「一度決めたら終わり」ではありません。事業環境の変化、物価の変動、各法人の業績の変動に応じて、少なくとも年に1回は取引条件を見直すことをお勧めします。

たとえば、子会社の売上が前年比30%減少しているにもかかわらず、経営指導料が同額のままであれば、「子会社の業績に連動していない不合理な金額」と判断される可能性があります。取引条件の見直しの記録(取締役会議事録や覚書など)を残しておくことも、合理性の証明として有効です。

対策⑤:専門家への相談体制を構築する

グループ間取引の適正化は、自社だけで完結させるのが難しい分野です。税法の解釈、独立企業間価格の算定方法、文書化の要件など、専門的な知識が必要な場面が数多くあります。

顧問税理士に定期的にグループ間取引の状況を共有し、リスクの有無についてアドバイスを受ける体制を整えてください。特に、新たなグループ間取引を開始する際や、取引条件を大幅に変更する際には、事前に税理士に相談することが不可欠です。

「税務調査を受けてから慌てて対策を考える」のでは遅すぎます。日頃からの準備が、会社を守る最大の防御策です。

令和8年度税制改正で注意すべきポイント

2026年度(令和8年度)の税制改正においても、グループ間取引に関連する重要な動きがあります。

特に注目すべきは、グローバル・ミニマム課税(第2の柱)の適用拡大の流れです。現時点では大企業グループが主な対象ですが、OECD/G20の議論を受けて、将来的に適用対象が拡大される可能性が取り沙汰されています。直接的に中小企業に影響するのはまだ先の話ですが、国際的な税務の透明性向上の流れは、国内のグループ間取引に対する国税当局の姿勢にも影響を及ぼしています。

また、電子帳簿保存法における電子取引データの電子保存義務化は2024年1月から本格適用されていますが、「相当の理由」がある場合には猶予措置(令和5年度税制改正で恒久的に導入)が設けられており、一定の条件のもとで書面出力による保存も認められています。ただし、この猶予措置はあくまで例外的な取扱いであり、グループ間取引に関する証拠書類の電子保存体制の整備は引き続き重要な課題です。電子取引データの保存要件を満たしていない場合、状況によっては青色申告の承認取消しにつながるリスクも否定できませんので、早期の対応をお勧めします。

道濟会計事務所からのメッセージ──「知らなかった」では済まされない時代

大企業グループに対する所得隠しの指摘事例は、規模の大小を問わず、すべての企業グループに対する警鐘です。国税当局のグループ間取引に対する監視の目は、年々厳しくなっています。

中小企業の経営者の方々からは、「うちは規模が小さいから目をつけられない」「調査が来ても大した額にはならない」という声を聞くことがあります。しかし、実際に税務調査で数百万円の追徴課税を受け、資金繰りに窮した中小企業を、私どもは何社も見てきました。

グループ間取引の税務リスクは、正しい知識と適切な準備があれば、十分に管理可能なものです。本記事でお伝えした5つの対策は、いずれもコストをかけずに取り組めるものばかりです。「まだ大丈夫だろう」と先送りにするのではなく、今日から一つずつ取り組んでいただければと思います。

道濟会計事務所では、グループ間取引の税務リスク診断、契約書の整備支援、独立企業間価格の算定サポートなど、中小企業グループの税務リスク管理を包括的にサポートしています。「自社のグループ間取引は大丈夫だろうか」と少しでも不安を感じた方は、ぜひお気軽にご相談ください。問題が顕在化する前に対策を講じることが、最もコストの低い、そして最も効果的なリスク管理です。

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