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防衛増税が本日開始──法人税・たばこ税の影響と対策

いよいよ本日、2026年4月1日から「防衛特別法人税」がスタートします

中小企業の経営者・経理担当者の皆さまにとって、この数年間で最も大きなインパクトを持つ税制改正の一つが、いよいよ4月1日から施行されます。2022年末の閣議決定以来、何度も報道されてきた「防衛増税」──その具体的な中身を正確に理解し、自社の決算・資金繰りにどのような影響があるのかを把握できている企業は、実はまだ少数派です。

道濟会計事務所には、ここ数週間で「結局うちの会社はいくら税金が増えるのか」「申告書の書き方は変わるのか」「何か節税対策はあるのか」といったご相談が急増しています。本記事では、2026年4月1日に施行される防衛増税の全体像を整理したうえで、特に中小企業に対する実務上の影響と、今すぐ取るべきアクションを、税理士の実務目線で徹底解説します。

防衛増税の全体像──3つの税目と段階的スケジュール

まず、防衛増税は一つの税金だけではなく、3つの税目にまたがる複合的な増税であることを押さえておきましょう。2023年度税制改正大綱で方向性が示され、令和7年度(2025年度)税制改正大綱で具体的に決定されたスケジュールは以下の通りです。

税目増税内容開始時期
法人税(防衛特別法人税)法人税額に対して4%の付加税2026年4月1日以後開始事業年度
たばこ税1本あたり段階的に3円引上げ2026年4月1日(第1段階:1円)
所得税(防衛特別所得税)税率1%の付加税(復興特別所得税の税率を2.1%→1.1%に引下げたうえで、防衛分1%を上乗せ。納税者の実質負担は当面変わらない設計)2027年1月1日(予定)

このうち、2026年4月1日に施行されるのは法人税の付加税(防衛特別法人税)たばこ税の第1段階引上げの2つです。所得税に関しては2027年1月からの予定ですが、復興特別所得税の税率引下げと同時に実施されるため、所得税に係る付加税の合計税率(復興分+防衛分=2.1%)は当面変わらず、納税者の実質的な負担増は生じない仕組みとなっています。この点は誤解されやすいため、しっかり押さえておきましょう。

中小企業経営者にとって最もインパクトが大きいのは、間違いなく法人税の付加税です。以下、この「防衛特別法人税」を中心に、実務上の論点を深く掘り下げていきます。

防衛特別法人税の仕組み──「法人税額の4%」とは具体的にいくらなのか

基本構造:法人税額に4%を上乗せ

防衛特別法人税は、各事業年度の法人税額に4%を乗じた金額を追加で納付する仕組みです。これは、東日本大震災後に導入された「復興特別法人税」(法人税額の10%、2012年4月1日以後開始事業年度から適用開始、当初3年間の予定が1年前倒しで廃止)と同様の「付加税」方式です。

ここで重要なのは、課税標準が「所得」ではなく「法人税額」であるという点です。つまり、法人税の各種税額控除を適用したの税額に対して4%が課されます。

中小企業の具体的な税額シミュレーション

では、具体的にどの程度の負担増になるのか、中小企業の典型的なケースで計算してみましょう。

課税所得法人税額(中小法人)防衛特別法人税(4%)年間負担増
500万円750,000円(15%)30,000円約3万円
800万円1,200,000円(15%)48,000円約4.8万円
1,500万円2,824,000円
(800万×15%+700万×23.2%)
112,960円約11.3万円
3,000万円6,304,000円
(800万×15%+2,200万×23.2%)
252,160円約25.2万円
5,000万円10,944,000円
(800万×15%+4,200万×23.2%)
437,760円約43.8万円

※上記は資本金1億円以下の普通法人(中小法人等)で、年800万円以下の部分に軽減税率15%、超過部分に23.2%を適用した概算です。税額控除がない前提での計算です。

「4%」と聞くと小さく感じるかもしれませんが、所得3,000万円の中小企業で年間約25万円、5,000万円なら約44万円の純粋な負担増です。これは中小企業にとって従業員1人分の月給の一部に相当する金額であり、決して無視できるものではありません。

基礎控除500万円の仕組み──多くの中小企業は負担ゼロに

ここで押さえておくべき重要なポイントがあります。防衛特別法人税の計算において、法人税額から500万円を控除した残額に対して4%を課す仕組みとなっています。つまり、法人税額が500万円以下の法人は、防衛特別法人税がゼロになります。

なお、この500万円控除は令和7年度税制改正大綱において基礎控除的な位置づけで設けられたものであり、中小法人等に限定された特例ではなく、すべての法人に適用される措置です。結果として、法人税額が500万円以下の法人は規模を問わず防衛特別法人税の負担がゼロとなり、特に中小企業にとって大きな恩恵となります。

この500万円控除を反映すると、先ほどのシミュレーションは以下のように変わります。

課税所得法人税額500万円控除後防衛特別法人税
500万円750,000円0円(控除内)0円
800万円1,200,000円0円(控除内)0円
1,500万円2,824,000円0円(控除内)0円
3,000万円6,304,000円1,304,000円52,160円
5,000万円10,944,000円5,944,000円237,760円

この500万円控除の存在により、課税所得が概ね2,400万円~2,450万円程度以下(法人税額が500万円以下)の中小法人は、防衛特別法人税の負担がゼロとなります。これは非常に大きな措置です。実態として、中小企業の多くはこの範囲に収まるため、「うちの会社は大丈夫」というケースも少なくないでしょう。

⚠ 実務上の注意点:この500万円控除は「法人税額」から控除するものであり、「課税所得」から控除するものではありません。また、グループ通算制度を適用している場合は、グループ全体での配分計算が必要となります。通算法人に該当する企業は、制度の詳細を必ず顧問税理士にご確認ください。

適用開始のタイミング──3月決算法人は「今期」ではなく「来期」から

事業年度開始日が基準

防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。ここを正確に理解しておかないと、経理処理を間違えるリスクがあります。

決算期事業年度適用の有無
3月決算法人2025年4月~2026年3月× 適用なし
3月決算法人2026年4月~2027年3月○ 適用あり
12月決算法人2026年1月~2026年12月× 適用なし
12月決算法人2027年1月~2027年12月○ 適用あり
9月決算法人2025年10月~2026年9月× 適用なし
9月決算法人2026年10月~2027年9月○ 適用あり

3月決算法人であれば、本日(2026年3月31日)が今期の最終日ですので、今期の確定申告には防衛特別法人税の計算は不要です。4月1日から始まる新事業年度から適用となります。

一方、12月決算法人は2027年1月開始の事業年度からとなるため、まだ約9か月の猶予があります。9月決算法人は2026年10月開始事業年度からです。決算期によって適用時期が異なる点は、グループ会社で決算期がバラバラな場合に特に注意が必要です。

中間申告への影響

防衛特別法人税にも中間申告の制度が設けられます。前事業年度の防衛特別法人税額の6/12(半額)を中間納付する「予定申告」方式が基本ですが、初年度は前事業年度の防衛特別法人税額が存在しないため、初年度の中間申告では防衛特別法人税の予定納付は不要です(仮決算による中間申告を選択した場合を除く)。

したがって、3月決算法人が2026年4月~2027年3月の事業年度において、2026年9月の中間時点で防衛特別法人税を予定納付する必要はありません。これは資金繰り上のメリットとも言えますが、逆に確定申告時に全額を一括で納付することになるため、翌年の納税資金の準備をしっかり行う必要があります。

たばこ税の引上げ──中小企業の販売業者・経費への影響

段階的な引上げスケジュール

防衛財源の一つとして、たばこ税も段階的に引き上げられます。第1段階の内容は以下の通りです。

時期引上げ幅(1本あたり)1箱(20本)あたりの影響
2026年4月1日(第1段階)+1円+20円
第2段階以降段階的に合計+3円まで引上げ予定最終的に合計+60円

3段階で合計3円(1箱あたり60円)の引上げが予定されています。まず第1段階として1本あたり1円、1箱あたり20円の引上げです。なお、第2段階以降の具体的な実施時期については、加熱式たばこの税率見直しとの関係もあり、今後の税制改正で正式に決定される予定です。報道等で示される日程はあくまで見込みであり、確定情報ではない点にご注意ください。

コンビニ・小売業への影響

たばこを販売している中小の小売店やコンビニエンスストアのオーナーにとっては、価格改定への対応が必要です。ただし、たばこの小売価格はメーカーが設定する「定価」であり、小売店が独自に価格を変えることはできません。メーカー各社が税率引上げ分を価格に転嫁するかどうかの発表に注目する必要があります。

過去の引上げ時には、メーカーが税率引上げ分をそのまま価格に上乗せするケースが多く、今回も同様の対応が見込まれています。POSシステムの価格マスタ更新など、事務的な対応を漏れなく行いましょう。

福利厚生費・交際費としてのたばこ代

直接的な税務論点ではありませんが、従業員への福利厚生や接待でたばこを購入している企業では、コスト増が生じます。年間の購入量が多い企業では、1箱20円の引上げでも積み重ねれば無視できない金額になります。経費予算の見直しに織り込んでおきましょう。

実効税率への影響──法人実効税率はどう変わるのか

防衛特別法人税を含む新しい実効税率

法人実効税率は、法人税・地方法人税・事業税・住民税を総合した実質的な税負担率です。防衛特別法人税が加わることで、この実効税率がどう変わるかを整理しておくことは、経営判断や投資判断において非常に重要です。

なお、防衛特別法人税は「法人税額」に対する付加税であり、事業税の損金算入を通じた実効税率計算にも影響を与えます。500万円控除を考慮しない場合(法人税額が500万円を超える法人)の概算実効税率は以下の通りです。

区分改正前(~2026年3月)改正後(2026年4月~)
中小法人(所得800万円超部分)約33.58%約34.59%
大法人(普通法人)約29.74%約30.62%

※東京都・標準税率(超過課税なし)を前提とした概算値。自治体や超過課税の有無により異なります。

改正前後で約1ポイントの上昇です。「たった1%」と思われるかもしれませんが、所得が5,000万円の企業であれば年間50万円の追加負担、1億円であれば100万円の追加負担に相当します。中長期の事業計画や設備投資の採算計算に組み込む際には、この新しい実効税率を使うようにしてください。

会計処理・税効果会計への影響

税効果会計の税率変更

上場企業や会計監査を受けている企業はもちろんのこと、中小企業会計基準を適用している場合でも、繰延税金資産・繰延税金負債を計上している企業は税効果会計の適用税率の見直しが必要です。

具体的には、2026年4月1日以後に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異については、防衛特別法人税を含む新しい実効税率で計算する必要があります。3月決算法人であれば、今期(2025年4月~2026年3月)の決算において、翌期以降に解消される一時差異に対する繰延税金資産・負債は、新税率で計算しなければなりません。

⚠ 3月決算法人は「今期の決算」で対応が必要です:防衛特別法人税の適用は来期からですが、税効果会計の税率変更は今期の決算から影響します。本日が決算日の3月決算法人は、繰延税金資産の計算で新税率を使用する必要がありますのでご注意ください。これにより、繰延税金資産が増加し、法人税等調整額(利益側にプラス)が生じる可能性があります。

別表の追加

法人税の確定申告書に、防衛特別法人税に関する別表が新たに追加される予定です。復興特別法人税の際に別表一の次葉として計算欄が設けられたのと同様の形式が想定されます。申告ソフトのアップデートを確認し、正しい様式で申告できるよう準備しておきましょう。

中小企業が今すぐやるべき5つのアクション

ここからは防衛増税スタートを踏まえて、中小企業の経営者・経理担当者が今すぐ取り組むべき具体的なアクションをまとめます。

アクション1:自社の法人税額を確認し、500万円控除の適用可否を判断する

まず最優先で確認すべきは、自社の法人税額が500万円を超えるかどうかです。法人税額500万円以下であれば防衛特別法人税はゼロですので、実質的な影響はありません。直近の決算書・申告書で法人税額を確認しましょう。中小法人の場合、課税所得が概ね2,400万円~2,450万円程度以下であれば、多くの場合500万円控除の範囲内に収まります。

ただし、今後の業績拡大で法人税額が500万円を超える可能性がある場合は、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

アクション2:来期の資金繰り計画に防衛特別法人税を織り込む

法人税額が500万円を超える企業は、確定申告時の納税額が増加します。特に初年度は中間申告での予定納付がないため、確定申告時に防衛特別法人税の全額を一括で納付することになります。納税資金のショートを防ぐため、月次の資金繰り表に追加税額を反映してください。

アクション3:申告ソフト・会計ソフトのアップデート

税務申告ソフトや会計ソフトのベンダー各社は、防衛特別法人税に対応したバージョンをリリースしています。まだアップデートしていない場合は、速やかに最新版に更新してください。特に、e-Tax(電子申告)で申告している企業は、新しい別表に対応した申告データの作成が必要です。

アクション4:税効果会計の税率見直し(該当企業のみ)

繰延税金資産・負債を計上している企業は、新しい実効税率での再計算が必要です。影響額を早めに試算し、決算に反映させましょう。中小企業でも、退職給付引当金や賞与引当金に対する繰延税金資産を計上しているケースは少なくありません。

アクション5:中期経営計画の税率前提を修正する

3年~5年の中期経営計画を策定している企業は、税率の前提値を防衛増税後の数値に修正してください。投資判断のIRR(内部収益率)やNPV(正味現在価値)にも影響するため、設備投資や新規事業の採算性を再検証することをお勧めします。

節税対策としてできること・できないこと

防衛特別法人税そのものを回避する方法はない

残念ながら、防衛特別法人税は法人税額に対する付加税であり、法人税を納付する限り避けることはできません。「防衛増税対策」として特殊なスキームを勧めるような情報には十分ご注意ください。

既存の節税策の効果は相対的に高まる

一方で、視点を変えると、法人税額を減らす通常の節税策の効果は相対的に高まります。なぜなら、法人税額が1万円減れば、防衛特別法人税も400円(4%)減るからです。つまり、設備投資減税、中小企業投資促進税制、賃上げ税制(中小企業向け)などの税額控除制度を最大限活用することで、本体の法人税だけでなく防衛特別法人税の軽減にもつながります。

特に2026年度は賃上げ税制の拡充も予定されており、従業員の給与を引き上げた場合の税額控除は引き続き有力な選択肢です。防衛増税分をカバーするだけの税額控除が得られるケースも十分にあり得ます。

500万円控除を意識した所得コントロール

法人税額が500万円の前後にある企業では、課税所得をわずかに圧縮することで防衛特別法人税がゼロになる可能性があります。もちろん、無理な利益操作は認められませんが、設備投資の時期調整や、少額減価償却資産の特例(30万円未満の即時償却)の活用など、合法的な範囲での調整は検討に値します。

道濟会計事務所からのメッセージ

防衛増税は、国の安全保障という重要な政策目的のための財源確保措置です。しかし、企業経営の現場では、原材料費の高騰、人件費の上昇、そしてこの増税と、コスト増が重なる厳しい時期であることも事実です。

「また税金が増えるのか」と不安を感じる経営者の方も多いと思います。しかし、500万円の基礎控除の存在により多くの法人は実質的な負担増がゼロであること、そして法人税額が500万円を超える企業についても、税額控除制度の活用によって負担を抑える方法があることを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

道濟会計事務所では、防衛特別法人税を含む新しい税制への対応について、個別のシミュレーションやアドバイスを行っています。「自社への影響がよく分からない」「何から手をつければいいか分からない」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。新しい制度を正しく理解し、適切に対応することが、企業の持続的な成長を支える第一歩です。

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