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2026年4月開始 子育て支援金の給与天引きと実務対応

2026年4月、いよいよ「子ども・子育て支援金」の徴収がスタートします

2024年6月に成立した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」に基づき、2026年4月から「子ども・子育て支援金」が健康保険料に上乗せして徴収されることが正式に決まっています。すでに各健康保険組合・協会けんぽから事業主宛に通知が届き始めている時期ですが、「具体的にいくら天引きが増えるのか」「給与計算のシステムはどう変更すればいいのか」など、現場では不安の声が高まっています。

本記事では、道濟会計事務所の実務経験を踏まえ、年収別の具体的な負担額シミュレーション中小企業が4月までに対応すべき実務チェックリスト、そして従業員への説明で押さえるべきポイントまで、網羅的に解説します。「知らなかった」では済まされない制度変更です。経営者・経理担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

そもそも「子ども・子育て支援金」とは何か

制度の趣旨と財源構造

子ども・子育て支援金は、政府が掲げる「こども未来戦略」の中核的な財源として創設されました。少子化対策の抜本的な強化に必要な年間約3.6兆円の安定財源のうち、約1兆円をこの支援金で賄う計画です。児童手当の拡充(第3子以降の増額・高校生への延長・所得制限撤廃)、こども誰でも通園制度、育児休業給付の充実など、2024年度から段階的に拡充されてきた各施策の「請求書」が、ここで回ってくるというイメージです。

財源の仕組みとしては、医療保険制度の徴収インフラを活用して集める形になります。つまり、健康保険料の計算と同じ仕組み(標準報酬月額×支援金率)で算出され、毎月の給与から天引きされます。厳密には「税」ではなく「保険料に準ずる拠出金」ですが、給与明細上は社会保険料と同じように控除される点に変わりはありません。

徴収の仕組み──健康保険料と「同じ」だが「別」

支援金の徴収は、加入する医療保険の種類によって以下のように行われます。

医療保険の種類徴収方法備考
協会けんぽ健康保険料と一括徴収中小企業の多くが該当
組合健保健康保険料と一括徴収組合ごとに料率が異なる
国民健康保険国保保険料に上乗せ個人事業主・フリーランスが該当
後期高齢者医療保険料に上乗せ75歳以上も対象

重要なのは、事業主(会社)にも労使折半の負担義務があるという点です。健康保険料と同様に、従業員負担分と同額を会社が負担します。つまり、従業員が毎月500円天引きされるなら、会社もさらに500円を支払うことになります。中小企業にとっては、人件費の実質的な増加として認識すべきコストです。

年収別の負担額シミュレーション──「月数百円」の本当のインパクト

2026年度の支援金率

子ども・子育て支援金は2026年度から2028年度にかけて段階的に引き上げられます。協会けんぽにおける支援金率の見込みは以下の通りです。

年度支援金率(被保険者1人あたり月額目安)備考
2026年度月額約250〜350円(本人負担分)初年度・低水準でスタート
2027年度月額約450〜600円中間段階
2028年度(満額)月額約700〜950円フル稼働・1兆円規模

政府は「2028年度で被保険者1人あたり月額平均約800円」と説明していますが、これは全保険者の平均値です。実際には標準報酬月額に比例して負担額が変わるため、年収が高い従業員ほど多く天引きされます。

2026年度・年収別の具体的な負担額(協会けんぽの場合)

2026年度の協会けんぽにおける支援金率は約0.1%前後(労使折半前の合計)とされています。保険者から届く正式通知の料率をご確認のうえ、以下の本人負担額・会社負担額のシミュレーションを参考としてください。

年収(目安)標準報酬月額本人負担(月額)会社負担(月額)本人の年額負担
約240万円200,000円約100円約100円約1,200円
約360万円300,000円約150円約150円約1,800円
約480万円400,000円約200円約200円約2,400円
約600万円500,000円約250円約250円約3,000円
約840万円680,000円約340円約340円約4,080円
約1,200万円以上上限等級約450円前後約450円前後約5,400円

上記はあくまで2026年度の初年度シミュレーションです。2028年度にフル稼働すると、これらの金額がおよそ2〜3倍になる見込みです。「月数百円だから大したことない」と思われるかもしれませんが、会社全体で見ればインパクトは無視できません。

会社全体で見たコスト増のリアル

例えば、従業員30名の中小企業で平均標準報酬月額が35万円だとしましょう。

  • 2026年度:会社負担 = 約175円 × 30名 × 12ヶ月 = 年間約63,000円増
  • 2028年度(フル稼働時):会社負担 = 約600円 × 30名 × 12ヶ月 = 年間約216,000円増

従業員100名規模になれば、2028年度には年間約72万円の追加コストです。さらに、賞与からも同率で徴収されるため、実際の年間負担はこれより大きくなります。中小企業の利益率を考えれば、決して「微々たる金額」とは言えないのではないでしょうか。

⚠ 重要な注意点
上記の支援金率は、政府の公表資料に基づく概算です。実際の正式料率は各保険者から通知されますので、必ず最新の通知内容を確認してください。加入する健康保険の種類(組合健保か協会けんぽか)によって料率は異なります。組合健保の場合、組合の財政状況により協会けんぽより高い料率が設定される可能性もあります。

給与計算システムへの影響──4月支給分から対応が必要

給与明細の表示はどうなるか

子ども・子育て支援金は、健康保険料と一括して徴収される仕組みです。保険者からの通知では支援金額が明示される形になりますが、給与明細上で必ず独立した項目として表示することが法的に義務付けられているわけではありません。したがって、健康保険料に含めた形で給与明細に記載することも実務上は可能です。

ただし、負担の透明性を確保し、従業員からの問い合わせを減らすという観点からは、給与明細上で支援金を別建て表示する運用が望ましいと考えられます。保険者からの通知上で支援金額が明示されるため、これに合わせて給与明細でも区分表示を行うと従業員への説明がスムーズです。実務上は、ご利用の給与計算ソフトが支援金の別建て表示に対応しているかを確認しておくことをお勧めします。

給与計算ソフトの対応について

子ども・子育て支援金の徴収開始に伴い、主要な給与計算ソフトでは対応アップデートが順次提供されることが見込まれます。クラウド型のサービスは比較的迅速に対応が進む傾向がありますが、具体的な対応状況や必要な操作は各ソフトベンダーの公式情報を必ず確認してください

一般的に確認すべきポイントは以下の通りです。

給与計算の方式確認・対応のポイント
クラウド型給与計算ソフトベンダーからのアップデート情報を確認し、最新版への更新・料率設定の反映を行う
オンプレミス型(インストール型)給与計算ソフトプログラム更新の配信状況を確認し、アップデート適用後に保険料テーブル・項目設定を確認する
Excel等での手計算控除項目の追加・計算式の修正を手動で行う必要がある

オンプレミス型やExcel管理の場合は手動での対応が必要になります。特にExcelで給与計算をされている中小企業は、支援金の控除行を追加し、料率テーブルを手動更新する作業が発生します。4月支給分の給与計算に間に合わない場合、翌月以降にまとめて控除する「精算」処理が必要になり、事務負担がさらに増えるため要注意です。

「翌月徴収」か「当月徴収」か──タイミングに注意

社会保険料と同様に、子ども・子育て支援金も原則として「翌月徴収」が一般的です。つまり、4月分の支援金は5月支給の給与から控除する会社が多いでしょう。ただし、当月徴収を採用している会社もあり、その場合は4月支給の給与から即座に控除が始まります。自社がどちらの方式を採用しているかを、改めて確認しておいてください。

社会保険料控除としての税務上の取扱い

所得税・住民税への影響

子ども・子育て支援金は、税務上は社会保険料控除の対象となります。つまり、所得税・住民税の計算において、支払った支援金の全額が所得から控除されます。この点は、従業員にとってはわずかながら「手取り減少を緩和する効果」があります。

具体例で考えてみましょう。年収500万円の従業員が年間3,000円の支援金を負担した場合、所得税率が10%・住民税率が10%とすると、税負担の軽減額は約600円です。つまり、実質的な手取り減少は年間約2,400円ということになります。「たかが数千円」と思われるかもしれませんが、2028年度にフル稼働した時点では年間1万円超の負担になる従業員も出てきますので、軽視はできません。

年末調整での取扱い

給与天引きされている支援金は、年末調整で自動的に社会保険料控除に含まれます。従業員が別途申告書に記載する必要はありません。経理担当者としては、年末調整時に給与計算ソフトが支援金を正しく社会保険料控除に算入しているかを確認すれば足ります。

一方、国民健康保険に加入している個人事業主・フリーランスの方は、確定申告で支援金を社会保険料控除として申告する必要があります。納付書や口座引落しの記録を保管しておくようにしましょう。

従業員への説明──「手取りが減った」への備え

なぜ事前説明が重要なのか

道濟会計事務所が顧問先企業に最も強くお伝えしているのが、従業員への丁寧な事前説明の重要性です。4月(または5月)の給与明細で健康保険料の控除額が増えたり、見慣れない控除項目が現れたりすれば、従業員は当然不安を感じます。「会社が勝手に天引きしているのではないか」「新しい税金を取られているのではないか」という問い合わせが殺到することは容易に想像できます。

特に中小企業では、経理担当者が1人しかいないケースも珍しくありません。30名、50名の従業員から個別に質問が来れば、通常業務がストップします。事前に全社員向けの説明資料を配布し、制度の概要と負担額の目安を周知することを強くお勧めします。

説明資料に盛り込むべき内容

従業員向けの説明資料には、最低限以下の項目を含めてください。

  • 制度の名称と趣旨:「子ども・子育て支援金」は国の少子化対策のための新制度であること
  • 開始時期:2026年4月分から(給与明細への反映は徴収方式により4月または5月)
  • 負担額の目安:「標準報酬月額の約0.05%程度(本人負担分)」など、具体的な金額のイメージ
  • 労使折半であること:会社も同額を負担していることの明記(従業員の理解を得やすくなります)
  • 社会保険料控除の対象であること:所得税・住民税が若干軽減されること
  • 段階的に増額される予定であること:2028年度に向けて負担額が増える見通しの説明
  • 問い合わせ先:疑問点は経理部門または社労士に相談するよう案内
⚠ 従業員のモチベーション低下に要注意
2024年の定額減税、2025年の社会保険適用拡大に続き、2026年はこの支援金と、従業員にとっては「手取りが減る」話題が続いています。金額そのものは小さくても、心理的なインパクトは無視できません。説明の際は「会社も同額を負担している」「制度の恩恵は児童手当の拡充等で社員の皆様にも還元される」など、ポジティブな側面も併せて伝えることが、従業員との信頼関係を維持する上で大切です。

経営者自身の負担──役員報酬への影響

役員報酬にも支援金は課される

言うまでもなく、社会保険に加入している役員の報酬にも支援金は課されます。中小企業のオーナー社長の場合、役員報酬を月額100万円に設定しているケースも珍しくありません。この場合、2028年度のフル稼働時で本人負担は月額約800〜1,000円、年額で約1万円〜1.2万円程度になる見込みです。

加えて、会社負担分も同額発生しますから、社長1人分だけで年間約2万〜2.4万円のコスト増です。これを「微々たるもの」と見るか「積み重なるコスト」と見るかは経営判断ですが、役員報酬の最適化を検討する際の一要素として認識しておくべきでしょう。

役員報酬の改定は慎重に

「支援金の負担を減らすために役員報酬を下げよう」という発想は危険です。役員報酬は社会保険料だけでなく、所得税・住民税・将来の年金額にも影響します。また、法人税法上の損金算入要件(定期同額給与など)との整合性も取る必要があります。支援金の月額数百円〜数千円のために、トータルの税負担バランスを崩すのは本末転倒です。役員報酬の見直しをご検討の際は、必ず税理士にご相談ください。

他の社会保険料負担増との「合わせ技」に注意

2026年度は負担増の「当たり年」

2026年度は子ども・子育て支援金だけでなく、以下のような社会保険関連の負担変動が重なっています。

項目変更内容影響
子ども・子育て支援金新設・徴収開始会社・従業員双方の負担増
協会けんぽ健康保険料率都道府県ごとに改定据え置き〜微増の地域が多い
雇用保険料率2025年度からの料率維持 or 微調整追加負担の可能性
厚生年金保険料率18.3%で据え置き(上限到達済み)変更なし
社会保険適用拡大従業員51人以上企業へ拡大済み(2024年10月〜)。さらなる適用拡大(従業員数要件の撤廃等)も議論されているパート従業員の加入増→会社負担増。今後の動向にも要注目

これらを個別に見れば「わずかな増加」でも、合計すると無視できないコストアップになります。特に2024年10月から社会保険の適用拡大で新たにパート従業員が社会保険に加入した企業は、すでに会社負担が増えている状態です。そこに支援金がさらに上乗せされるわけですから、人件費の予算策定は慎重に見直す必要があります。なお、社会保険適用拡大については従業員数要件のさらなる撤廃等が議論されており、今後の法改正動向にも引き続き注意が必要です。

今すぐやるべきこと──実務チェックリスト

4月の徴収開始まで、あとわずかです。以下のチェックリストで漏れがないか確認してください。

経理・人事担当者向けチェックリスト

No.チェック項目期限目安
1加入する健康保険の保険者から支援金率の正式通知を受領・確認3月中
2給与計算ソフトのアップデート・支援金対応の確認(ベンダーの公式情報を参照)3月中
3給与明細への支援金の表示方法の決定(別建て表示 or 健康保険料に含める)4月給与計算前
4支援金率テーブル(標準報酬月額別の控除額一覧)の作成4月給与計算前
5従業員向け説明資料の作成・配布4月初旬まで
6会社負担分の経費計上・仕訳科目の確認(法定福利費)4月経理処理前
7年間人件費予算の見直し(支援金の会社負担分を加算)4月中
8社会保険料の納付額変更の確認(翌月末納付分から)5月納付前

経営者向けアクションポイント

  1. 人件費の再試算:支援金の会社負担分を含めた人件費総額を再計算し、今期の利益計画への影響を把握する
  2. 資金繰りの確認:毎月の社会保険料納付額が増えるため、資金繰り表を更新する
  3. 2028年度までの中期的なコスト見通し:段階的に負担が増えることを前提に、3年間の人件費推移を試算する
  4. 従業員へのメッセージ発信:制度変更は会社の判断ではないことを明確にしつつ、会社も同額を負担している姿勢を示す

会計処理のポイント──仕訳はこうする

会社負担分の仕訳

子ども・子育て支援金の会社負担分は、会計上は「法定福利費」として処理します。従来の健康保険料の会社負担分と同じ勘定科目です。

【仕訳例:4月分支援金を5月末に納付する場合】

タイミング借方貸方
給与支給時(5月)給与手当 ×××円
法定福利費 ×××円(会社負担分)
預り金 ×××円(従業員負担分)
未払費用 ×××円(会社負担分)
現金預金 ×××円
納付時(5月末)預り金 ×××円
未払費用 ×××円
現金預金 ×××円

健康保険料と一括で納付する場合、内訳として支援金部分を把握できるよう補助科目や摘要で区分管理することをお勧めします。将来的にコスト分析を行う際に役立ちます。

道濟会計事務所からのメッセージ

「月数百円」──確かに初年度の負担額だけを見れば、そう大きな金額ではありません。しかし、この制度は2028年度に向けて確実に負担が増える設計になっています。しかも、社会保険料の適用拡大、健康保険料率の上昇傾向、介護保険料の増加など、社会保険関連コストは今後も右肩上がりであることは間違いありません。

だからこそ、「目の前の月数百円」だけに目を奪われるのではなく、3年後・5年後を見据えた人件費戦略を立てることが重要です。具体的には以下のような視点が求められます。

  • 社会保険料を含めた「真の人件費」を基準とした採用計画
  • 役員報酬の最適設計(法人・個人トータルでの税負担最小化)
  • 業務効率化による生産性向上で、人件費増を吸収する経営体質づくり
  • 従業員への適切な情報開示と、エンゲージメント維持の取組み

今回の子ども・子育て支援金は、単なる「新しい天引き項目が1つ増える」という話ではなく、中小企業の経営者が社会保険コストと正面から向き合うための、一つの転機だと考えています。

道濟会計事務所では、給与計算システムの設定支援から、従業員向け説明資料の作成、役員報酬の最適化シミュレーションまで、支援金導入に伴うあらゆる実務をワンストップでサポートしています。「うちの会社の場合、具体的にいくら負担が増えるのか試算してほしい」「従業員向けの説明文のひな形がほしい」といったご要望にも対応可能です。

不安なこと、分からないことがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。制度が始まってから慌てるのではなく、「今」動くことが、最善の経営判断です。

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