ふるさと納税の指定基準を改正へ:付加価値算出の厳格化と確認事務の効率化
ふるさと納税の指定基準を改正へ:付加価値算出の厳格化と確認事務の効率化
令和7年6月24日、自治税務局市町村税課より、ふるさと納税の指定基準の改正等に関する発表がありました。今回の見直しは、返礼品の「付加価値基準」の明確化や「調達費用の妥当性確保」、そして「確認事務の効率化」が主な柱となり、令和8年10月の指定から適用される予定です。
「付加価値基準」の算出方法を明確化・厳格化
これまで、返礼品となる製品等の「付加価値」の算出方法が地方団体によって様々であり、同じ製品が複数の自治体で地場産品と主張されたり、真にその地域で付加価値が生じているか疑義がある事例が見られました。
今回の改正では、これらの課題に対応するため、以下の点が明確化されます。
- 価格に基づく算出を原則化: 付加価値割合の算出方法として、価格に基づく算出を原則とします。
- 製造者の証明と公表の義務化: 製造・加工品等の返礼品については、当該返礼品の製造等を行う者が価値の過半が区域内で生じたことを証明し、さらに地方団体は、返礼品提供開始日までにその証明事項を一覧で公表することが義務付けられます。
これにより、返礼品が本当にその地域の「地場産品」としてふさわしいものか、透明性が確保されることになります。
返礼品等の調達費用の妥当性を確保
返礼品の確認事務において、地方団体による返礼品の調達費用が、取扱事業者が一般に販売する小売価格に比べて相当程度高額なケースが確認されていました。例えば、海外から6万円で輸入したワインが、倉庫保管のみで「6万円の付加価値」がつき、返礼品として12万円で納品され、一方で一般顧客には8万円で販売されるといった事例がありました。
この問題に対し、以下の対策が講じられます。
- 一般販売価格の証明・公表: 「付加価値基準」に基づく返礼品については、製造等を行う者による「価値の過半が区域内で生じた」ことの証明に加え、一般販売価格も併せて証明書に記載し、その内容を公表します。
- 不当な高額調達の防止: 「合理的な理由なく、一般販売価格より高額で調達することがないようにすること」を別途通知し、自治体側の調達における妥当性を確保します。
これにより、返礼品の価格と実態の乖離を防ぎ、納税者の信頼を維持する狙いです。
返礼品確認事務の効率化
令和6年度の指定時で約100万件を超える返礼品の確認件数がある中、地方団体からは事務の効率化・簡素化の要望が挙がっていました。これを受け、総務省は以下の措置を導入します。
- 一部書類の提出省略: 令和7年度の返礼品事前確認において、基準不適合等がなかった団体(令和6年度約1,200団体)については、令和8年指定手続きから一部書類の提出が省略され、返礼品の事前確認が不要となります。これにより、地方団体の事務負担軽減と返礼品提供の円滑化が図られます。
- 抽出調査と通報窓口の設置: 総務省は、返礼品等の基準適合性を確認するため、一部団体を抽出調査するほか、基準適合性に疑いのある返礼品等に係る「通報窓口」を設置することで、監視体制を強化します。
今回の改正は、ふるさと納税制度の透明性と公平性を高めつつ、実務の効率化も図ることを目的としています。納税者にとっても、より安心して寄付できる制度へと進化していくことが期待されます。