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金利上昇時代の借入コスト増と資金繰り対策

個人向け国債利率が過去最高を更新──いま何が起きているのか

2026年4月、財務省が募集を開始した個人向け国債(変動10年)の初回適用利率が年1.40%前後に達し、2003年の制度開始以来の過去最高水準を更新しました。固定5年型は1.6%台、固定3年型も1.3%前後と、いずれも高い水準で推移しており、「金利のある世界」がいよいよ本格化したことを如実に示しています。

日銀は2025年1月に政策金利を0.5%へ引き上げた後も、段階的に追加利上げを実施してきました。2026年春時点の短期政策金利は0.5〜0.75%の領域にあるとみられ、市場では年内にさらなる追加利上げが織り込まれています。長期金利(10年国債利回り)は一時1.5%台をつけました。長らくゼロ金利・マイナス金利に慣れてきた中小企業にとって、この変化は「対岸の火事」ではなく、まさに自社の損益計算書と資金繰りに直結する経営課題です。

本記事では、道濟会計事務所が日頃の顧問先対応で実感している「金利上昇の実務インパクト」を、借入コスト・税務・資金繰りの3つの切り口で徹底解説します。今すぐ確認すべきチェックリストも掲載していますので、ぜひ最後までご覧ください。

金利上昇が中小企業の借入コストに与えるインパクト

変動金利借入の返済額はどれだけ増えるか

中小企業の銀行借入は、その多くが短期プライムレート連動の変動金利で設定されています。短期プライムレートは2024年初頭の1.475%から、2026年4月時点で1.875%程度まで上昇しています。この約0.4%の差がどれほどのインパクトを持つか、具体的な数字で確認しましょう。

借入残高金利1.475%
(2024年初)
金利1.875%
(2026年4月)
年間利息増加額金利2.25%
(年内想定)
年間利息増加額
(2024年初比)
3,000万円約44.3万円約56.3万円+12.0万円約67.5万円+23.3万円
5,000万円約73.8万円約93.8万円+20.0万円約112.5万円+38.8万円
1億円約147.5万円約187.5万円+40.0万円約225.0万円+77.5万円
2億円約295.0万円約375.0万円+80.0万円約450.0万円+155.0万円

借入残高2億円の企業では、年内にさらに利上げが実施された場合、年間155万円もの利息コスト増となります。これは中小企業にとって従業員1人分の賞与に相当する金額であり、決して無視できるものではありません。

しかも、上記は「元金が一定」と仮定した単純計算です。実際には運転資金の追加借入や設備投資ローンの借換えなどが発生するため、影響はさらに大きくなる可能性があります。

固定金利借入への切替えは本当に正解か

「金利が上がるなら、今のうちに固定金利に切り替えたほうがいいのでは?」というご相談が、最近急増しています。しかし、ここには注意すべきポイントがあります。

まず、固定金利は現時点の市場の金利上昇見通しをすでに「織り込み済み」です。2026年4月時点で、銀行の固定金利型ローン(5年固定)は概ね2.0~2.5%で提示されるケースが多く、現在の変動金利(1.875%前後)より高い水準からスタートすることになります。

つまり、固定金利への切替えは「これ以上金利が上がる」というシナリオへの保険であると同時に、「想定ほど上がらなかった場合に余計なコストを払う」リスクも内包しています。

当事務所では、以下のような判断基準を顧問先にご案内しています。

  • 借入残高が大きく、かつ利益率が低い企業:金利上昇の影響が損益に直結するため、一部を固定金利に切り替えてリスクヘッジする価値がある
  • キャッシュリッチで繰上返済が可能な企業:無理に固定金利にせず、変動金利のまま金利上昇分を繰上返済で吸収するほうが合理的な場合が多い
  • 数年以内に大型設備投資を予定している企業:将来の借入コストを確定させるため、固定金利での資金調達を前倒しで検討すべき

重要なのは「全額を一気に切り替える」のではなく、変動と固定のミックスでリスクを分散することです。借入ポートフォリオ全体を俯瞰した設計が求められます。

金利上昇局面で知っておくべき税務上のポイント

支払利息の損金算入と「過大支払利子税制」

金利が上昇すると支払利息が増加し、結果として法人税の課税所得が減少する──これは基本的な理屈としてはその通りです。支払利息は原則として全額損金算入が可能です。

しかし、関連者(親会社・オーナー個人・グループ会社等)からの借入がある場合は、「過大支払利子税制」(措法66条の5の2)に十分注意が必要です。この制度は、関連者への純支払利子等の額が調整所得金額の20%を超える部分について損金不算入とするものです。

金利上昇に伴い、関連者借入の利率を引き上げた場合、従来はこの制度の適用を受けなかった企業でも、閾値を超えてしまうケースが生じ得ます。特に、オーナーが個人的に会社に貸し付けている場合や、グループ間で資金融通を行っている場合は、金利改定のタイミングで必ず試算を行ってください。

⚠ 実務上の注意
オーナーから会社への貸付金に対する適正利率も上昇しています。国税庁が公表する「認定利息」の基準となる利率は、特例基準割合の変動に連動します。2026年分の特例基準割合は前年より上昇しており、オーナー貸付に対して低すぎる利率を設定すると、経済的利益として給与認定されるリスクがあります。顧問税理士と一緒に現在の利率が適正水準かどうか確認しましょう。

借換えに伴う諸費用の税務処理

金利上昇対策として借換え(リファイナンス)を実施する場合、以下の費用が発生することがあります。それぞれの税務処理を正確に把握しておくことが重要です。

費用の種類税務上の取扱い実務上のポイント
既存ローンの繰上返済手数料(違約金)支払時に全額損金算入固定金利ローンの中途解約では金利スワップ解約損が発生することも。金額が大きい場合は期ズレに注意
新規ローンの融資手数料繰延資産として借入期間で償却(20万円未満は一括損金可)手数料の金額によって処理が変わるため、契約書の確認が必須
抵当権設定・抹消の登録免許税支払時に全額損金算入(租税公課)不動産担保の差替えでは、設定と抹消の両方が発生するため注意
司法書士報酬支払時に全額損金算入消費税の仕入税額控除対象
信用保証料保証期間で按分して損金算入短期前払費用の特例(1年以内)が使えるか検討の余地あり

借換えの意思決定にあたっては、これらの諸費用を含めたトータルコストで比較することが不可欠です。「金利が下がったから得した」と思っても、手数料やスワップ解約損を含めると実質的にはマイナスだった、というケースは珍しくありません。

2026年度税制改正で注目すべき関連項目

2026年度税制改正大綱(2025年12月閣議決定)には、金利上昇局面を意識した中小企業支援策がいくつか盛り込まれています。実務上特に重要なものを整理します。

  • 中小企業経営強化税制の延長・拡充:即時償却または税額控除(資本金の規模に応じて7〜10%)の適用期限が延長されています。最新の適用期限・控除率については税制改正大綱の確定内容をご確認ください。設備投資の自己資金比率を高めて借入依存度を下げる戦略に活用できます。
  • 中小企業投資促進税制の継続:特別償却30%または7%税額控除も引き続き適用可能です。
  • 賃上げ促進税制の強化:給与等支給増加割合に応じた税額控除率が拡大されています。人件費増を税額控除で一部カバーし、浮いたキャッシュを借入返済に充てるという間接的な活用法も検討に値します。

金利コストの増加に対して、税制優遇を最大限活用して実質的な負担を軽減する──これが金利上昇時代の「攻め」の税務戦略です。

資金繰り対策──いま経営者が取り組むべき5つのアクション

アクション1:借入金の棚卸しを実施する

まず最初に着手すべきは、自社の借入金の全体像を正確に把握することです。驚くべきことに、複数の銀行から借入を行っている中小企業の多くが、全借入の一覧表を持っていません。

以下の項目をExcelなどで一覧化してください。

  • 借入先金融機関名
  • 借入残高(毎月更新)
  • 金利タイプ(変動 or 固定)と現在の適用金利
  • 金利見直し時期(変動金利の場合)
  • 毎月の返済額(元金+利息)
  • 最終返済日
  • 担保の有無と内容
  • 保証協会付きかプロパーか

この一覧表があるだけで、「どの借入から優先的に対処すべきか」が一目瞭然になります。当事務所では顧問先に対して、この一覧表の作成と四半期ごとの更新を強く推奨しています。

アクション2:金利上昇シミュレーションを行う

借入金の棚卸しができたら、次は金利が0.25%・0.5%・1.0%上昇した場合のそれぞれについて、年間の利息増加額を試算します。

このシミュレーションを損益計画・資金繰り表に反映させることで、「金利が○%上がると営業利益がゼロになる」「金利が○%上がると月末の現預金残高が危険水域に入る」といった臨界点を事前に把握できます。

臨界点を知っているのと知らないのとでは、経営判断のスピードと精度が全く違います。楽観的な見通しだけでなく、最悪のシナリオを「数字で」確認しておくことが重要です。

⚠ こんな企業は特に要注意です
・変動金利の借入比率が全借入の80%以上を占めている
・借入総額が年間売上高の50%以上に達している
・営業利益率が3%未満で、利息増加の吸収余力が乏しい
・手元現預金が月商の1ヶ月分未満しかない

上記に1つでも該当する場合は、早急に金融機関との対話を開始すべきです。「まだ大丈夫」と思っているうちに対応が後手に回り、資金ショートに陥るケースを私たちは何度も見てきました。

アクション3:メインバンクとの対話を強化する

金利上昇局面では、金融機関との関係性がこれまで以上に重要になります。具体的には、以下のようなコミュニケーションを能動的に行うことをお勧めします。

  • 決算報告の場で金利交渉を行う:決算書を持参して業績報告を行う際に、「他行の提示条件」も含めて金利の引下げ(または据置き)を交渉しましょう。金融機関にとって優良な貸出先を失うことは大きな損失であり、交渉の余地は十分にあります。
  • 経営計画書を提出する:金利上昇を織り込んだ3~5年の経営計画書があると、金融機関の信頼度は格段に上がります。「この企業はリスクを認識し、対策を講じている」という安心感が、金利優遇や融資枠の維持につながります。
  • 複数行との取引を維持する:1行取引の企業は金利交渉力が弱くなりがちです。最低でも2~3行との取引関係を持ち、競争環境を作ることが有利な条件を引き出すポイントです。

アクション4:運転資金の圧縮に取り組む

金利コストを根本的に削減するには、そもそもの借入額を減らすことが最も効果的です。運転資金の圧縮に直結する取り組みとして、以下を検討してください。

① 売掛金の回収サイト短縮

取引先との交渉により、回収サイトを「月末締め翌月末払い」から「月末締め翌月20日払い」に10日短縮するだけでも、月商3,000万円の企業なら常時約1,000万円の資金が浮く計算です。金利1.875%で換算すると年間約18.8万円のコスト削減につながります。

② 在庫の適正化

過剰在庫は「倉庫に眠っている現金」です。在庫回転期間を1ヶ月短縮できれば、その分だけ運転資金の必要額が減り、借入を圧縮できます。月次での在庫管理会議の実施、デッドストックの処分、発注ロットの見直しなど、地道な取り組みが効果を生みます。

③ 買掛金の支払サイト見直し

仕入先に対して支払サイトの延長を交渉するのも一つの手段ですが、これは取引関係の悪化リスクもあるため慎重に行う必要があります。むしろ、早期支払い割引(2/10, net 30 など)を提示されている場合に、その割引率と借入金利を比較して、どちらが有利かを判断するほうが実務的です。

例えば「10日以内の支払いで2%割引」という条件は、年利換算で約36%に相当します。これは借入金利よりはるかに高いリターンですから、手元資金に余裕があれば早期支払いを選択したほうが合理的です。

アクション5:公的支援制度をフル活用する

金利上昇局面において、中小企業が活用できる公的支援制度を改めて確認しましょう。

制度名概要ポイント
セーフティネット保証(4号・5号)売上減少等の要件を満たす場合、信用保証協会の別枠保証が利用可能金利上昇による業績悪化が要件に該当する可能性あり。市区町村の認定が必要
日本政策金融公庫の低利融資民間金融機関より低い金利で融資を受けられる経営環境変化対応資金など、金利上昇対応の融資メニューがある
経営改善サポート保証経営改善計画を策定した中小企業向けの保証制度認定支援機関(税理士等)の関与が要件。当事務所でも対応可能
中小企業省力化投資補助金等の各種補助金生産性向上・省力化のための設備投資に対する補助金補助金で設備投資の自己負担を減らし、借入依存度を下げる戦略に活用。公募時期・要件は随時確認が必要
小規模事業者持続化補助金販路開拓等の取り組みに対する補助金売上増による借入返済原資の確保という間接的な効果

特に、日本政策金融公庫の融資は民間金融機関と比べて金利が低い傾向にあるため、金利上昇局面では相対的な魅力が高まります。既存借入の一部を公庫融資に借り換えることで、利息負担を抑えることができる場合があります。ただし、公庫融資にも審査がありますので、早めの相談が肝要です。

なお、補助金制度は年度ごとに公募内容や対象が変更されることがあります。最新の公募状況は各制度の公式サイトや、当事務所のような認定支援機関にお問い合わせください。

見落としがちな「預金金利上昇」のメリットも忘れずに

ここまで借入コスト増のリスクを中心にお伝えしてきましたが、金利上昇にはプラスの側面もあることを忘れてはなりません。

普通預金金利は大手銀行でも0.25%前後にまで上昇しており、定期預金ではさらに高い利率が提示されています。手元に余剰資金がある企業にとっては、これまでほぼゼロだった受取利息が無視できない金額になってきました。

例えば、常時5,000万円の普通預金残高がある企業であれば、年間の受取利息は約12.5万円(税引前、金利0.25%の場合)となります。ゼロ金利時代には数百円だったことを考えれば、大きな変化です。

さらに積極的に考えるならば、当面使う予定のない資金を3ヶ月・6ヶ月の定期預金個人向け国債(法人は購入不可ですが、オーナー個人としての資産運用として)に振り向けることで、インカムゲインを得ることもできます。

なお、法人の受取利息には法人税が課されますが、源泉徴収された所得税は法人税から控除(税額控除)できますので、二重課税にはなりません。ただし、復興特別所得税を含む源泉税額の計算と申告書への記載を正確に行う必要があります。

オーナー経営者が個人で注意すべきこと

住宅ローンへの影響

中小企業のオーナー経営者の多くは、個人でも住宅ローンを抱えています。変動金利型の住宅ローンを利用している場合、借入コスト増は法人だけでなく個人の家計にも直撃します。

住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートに連動しているものが大半です。現在の利率水準を確認し、必要に応じて固定金利への借換えや繰上返済を検討しましょう。

なお、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は借換え後も一定の要件を満たせば引き続き適用可能ですが、借換え後の残高が借換え前の残高を上回る場合は控除額の計算に注意が必要です。

役員報酬の見直しタイミング

金利上昇で会社の支払利息が増加し、利益が圧迫される場合、役員報酬の水準を見直す必要が生じることもあります。法人税法上、役員報酬の変更は原則として事業年度開始から3ヶ月以内の定期同額給与の改定時期に行う必要があります(特殊事情による臨時改定は除く)。

3月決算法人であれば、6月の株主総会が改定のタイミングですので、4月中に金利上昇の影響を織り込んだ利益シミュレーションを完了させ、適正な役員報酬水準を決定することが重要です。

道濟会計事務所からのメッセージ──不安を「行動」に変えましょう

金利上昇というニュースを目にして、漠然とした不安を感じている経営者の方は少なくないと思います。しかし、不安の正体は「わからないこと」「見えていないこと」です。

自社の借入構造を正確に把握し、金利上昇時のインパクトを数字で可視化し、対策を一つずつ実行に移していけば、金利上昇は必ず乗り越えられます。むしろ、ゼロ金利時代に緩んでいた財務規律を引き締め、筋肉質な経営体質に転換するチャンスと捉えることもできます。

以下に、今すぐ着手すべきアクションアイテムをまとめます。

優先度アクション期限の目安
★★★借入金一覧表の作成・更新今週中
★★★金利上昇シミュレーション(+0.25%/+0.5%/+1.0%)2週間以内
★★★オーナー貸付金の利率適正性チェック今月中
★★☆メインバンクとの面談設定・金利交渉1ヶ月以内
★★☆固定金利への一部切替え検討1ヶ月以内
★★☆売掛金回収サイト・在庫水準の見直し四半期以内
★☆☆公的支援制度(公庫融資・保証協会等)の情報収集1ヶ月以内
★☆☆余剰資金の運用方針見直し四半期以内

金利のある世界は、決してマイナスばかりではありません。しかし、準備なく迎えれば大きなダメージを受けるのもまた事実です。当事務所では、顧問先の皆さまに対して借入構造の分析から金融機関交渉の同席、税制優遇の最大活用まで、ワンストップでサポートしております。

「うちの会社は大丈夫だろうか」──その疑問を、ぜひ具体的な数字に変えてみてください。数字が見えれば、打つべき手も見えてきます。金利上昇という変化の波を、経営を強くする機会に変えていきましょう。

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