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小規模宅地等の特例2026|自宅を80%減額する要件を税理士が解説

小規模宅地等の特例で自宅を80%減額する要件を解説する道濟会計事務所の税務ニュース
この記事の要点3点

  • 小規模宅地等の特例を使うと、亡くなった方の自宅の土地は330㎡まで評価額を80%減額でき、相続税を大きく圧縮できる(特定居住用宅地等)。
  • 影響を受けるのは自宅や事業用地を相続するすべての家庭・中小企業オーナー。配偶者は無条件だが、同居していない子(いわゆる家なき子)は6つの要件すべてを満たす必要がある。
  • この特例は申告して初めて使える。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)までに遺産分割と申告を済ませることが、適用の前提になる。

相続税の負担を大きく左右するのが「小規模宅地等の特例」です。亡くなった方が住んでいた自宅の土地や、事業に使っていた土地について、一定面積まで相続税評価額を最大80%減額できる制度で、自宅以外にめぼしい財産が少ない家庭でも、適用の有無で税額が数百万円単位で変わることがあります。一方で要件は細かく、特に同居していない子が自宅を相続する「家なき子」のケースでは判断を誤りやすい論点です。本記事では、2026年(令和8年)時点の現行ルールに基づき、小規模宅地等の特例の要件と手続きを、堺市の税理士が実務目線で解説します。制度の概要から区分ごとの限度面積、申告期限までに必ず押さえておきたい手続きの流れまで、順を追って確認していきましょう。

小規模宅地等の特例とは(制度の概要)

小規模宅地等の特例(租税特別措置法に基づく制度)は、被相続人(亡くなった方)や被相続人と生計を一にしていた親族が、居住や事業に使っていた宅地等について、相続税の課税価格に算入すべき価額を一定割合減額できる制度です。生活や事業の基盤となる土地に通常どおり相続税を課すと、自宅を売らなければ納税できないといった事態が生じかねないため、その負担を和らげる趣旨で設けられています。

対象となる宅地等は、用途に応じて次の4区分に分かれます。最もよく使われるのが、自宅の敷地である「特定居住用宅地等」で、330㎡まで評価額を80%減額できます。事業用の土地である「特定事業用宅地等」と「特定同族会社事業用宅地等」は400㎡まで80%減額、賃貸アパートなどの「貸付事業用宅地等」は200㎡まで50%減額です。

減額の効果は非常に大きく、たとえば評価額1億円・面積330㎡の自宅敷地が特定居住用宅地等に当たれば、評価額は2,000万円まで圧縮されます。8,000万円もの評価減になるため、相続税の総額が大きく変わります。被相続人だけでなく、被相続人と生計を一にしていた親族が居住や事業に使っていた宅地も、一定の要件のもとで対象になります。ここでいう「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味せず、生活費や療養費の送金などで日常の暮らしを共にしている関係を指します。

ポイント:特定居住用宅地等(自宅)を相続する人ごとに要件が異なります。配偶者には取得者ごとの要件がなく無条件で適用できますが、子などが相続する場合は、同居していたか、あるいは「家なき子」に当たるかで判断が分かれます。

同居していた親族が自宅を相続する場合は、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地等を相続開始時から申告期限まで所有していることが要件です。配偶者も同居親族もいない場合に、別居していた親族(いわゆる家なき子)が一定の要件を満たせば、特定居住用宅地等として80%減額の対象になります。

ここで強調しておきたいのは、この特例は「申告して初めて使える」制度だという点です。たとえ要件を満たしていても、相続税の申告書に特例を受ける旨を記載し、必要書類を添付して申告しなければ、減額は受けられません。相続税は、課税価格の合計額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合に申告が必要ですが、小規模宅地等の特例を適用した結果として税額がゼロになる場合でも、特例を使うためには申告が必須です。「特例で税金がかからないから申告しなくてよい」という誤解は、最も避けたい失敗の一つです。

中小企業オーナー・家庭への実務影響

家なき子特例の要件は厳格です。国税庁の示す要件によると、別居親族が特定居住用宅地等の適用を受けるには、概ね次のすべてを満たす必要があります。

  • ☑ 被相続人に配偶者がいないこと
  • ☑ 相続開始の直前に被相続人の自宅に同居していた法定相続人がいないこと
  • ☑ 相続開始前3年以内に、自己・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと
  • ☑ 相続開始時に取得者が住んでいる家屋を、過去に自分が所有していたことがないこと
  • ☑ その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで所有し続けること
  • ☑ 相続税の申告期限において日本国籍を有しないなどの一定の制限納税義務者に当たらないこと

かつては「3年以内に持ち家がなければよい」という比較的緩い基準でしたが、平成30年度の改正で、自分の持ち家を親族や同族会社に売って形式的に「家なき子」を装う節税を防ぐため、上記のように要件が厳格化されています。これにより、実家を出て賃貸暮らしを続けている子が親の自宅を相続するようなケースが、本来の対象として想定されています。

具体例で考えてみましょう。父が亡くなり、母はすでに他界、長男は地方で長年ずっと賃貸住宅に住んでいるという場合、長男が実家(父の自宅敷地)を相続すれば家なき子に該当しやすく、330㎡まで80%減額を受けられる可能性があります。反対に、長男が3年以内に自分名義のマンションに住んでいた、あるいは持ち家を子に贈与して名義だけ外して住み続けていた、といった場合は要件を満たさず適用できません。改正前は「持ち家を同族会社や親族に売って自分は賃貸扱いにする」といった形式的な対策が横行したため、現在は取得者本人が過去に所有していた家屋に住んでいないことまで求められます。形式ではなく、実際に持ち家を持たずに暮らしてきたかどうかが問われるのです。

中小企業オーナーにとっては、自宅だけでなく、自社が事業に使っている土地(特定同族会社事業用宅地等)も重要です。同族会社に貸している事業用地について、一定の要件のもと400㎡まで80%減額できれば、自社株評価とあわせて事業承継時の相続税負担を大きく抑えられます。なお、賃貸不動産(貸付事業用宅地等)には3年縛りがあり、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた宅地は原則として対象外です。ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた場合は、この除外の対象になりません。

同様の3年縛りは特定事業用宅地等にもあります。相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地は、原則として特定事業用宅地等から除外されます(その宅地の上で事業に使われている減価償却資産の価額が宅地の価額の15%以上であるなど、一定規模以上の事業を相続開始前3年を超えて営んでいた場合は除きます)。これは、相続税の節税だけを目的に駆け込みで土地を事業用・貸付用に転用する動きを防ぐために設けられたものです。自宅敷地(特定居住用)にはこの3年縛りはありませんが、事業用・貸付用の土地で特例を見込む場合は、いつから事業を始めたかという時期が重要になります。

区分ごとの限度面積・減額割合(比較表)

4つの区分の限度面積と減額割合を整理すると次のとおりです。

区分主な用途限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人等の自宅の敷地330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人等の事業用の土地400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等同族会社の事業用の土地400㎡80%
貸付事業用宅地等賃貸アパート・駐車場などの土地200㎡50%
ポイント:特定居住用宅地等(330㎡)と特定事業用・特定同族会社事業用宅地等(400㎡)は、合計730㎡まで完全併用が可能です。一方、貸付事業用宅地等を併用する場合は、限度面積を調整する計算が必要になります。

たとえば、自宅敷地が200㎡(特定居住用)、自社の工場敷地が300㎡(特定事業用)という中小企業オーナーのケースでは、合計500㎡ですが、特定居住用330㎡・特定事業用400㎡の枠内にいずれも収まるため、両方とも80%減額の対象にできます。自宅と事業用地の双方で大きな評価減を受けられるため、事業承継を控えた経営者にとって、この特例の使い方は相続税対策の要になります。逆に、貸付アパートの敷地まで欲張って併用しようとすると、限度面積の調整で思ったほど減額できないこともあるため、どの土地に枠を割り当てるかの設計が重要です。

当事務所の見解・実務上の注意点

小規模宅地等の特例で最も多いトラブルは、「使えると思っていたのに使えなかった」というものです。当事務所が特に注意を促したいのは次の3点です。

第一に、申告期限までの遺産分割です。この特例は、相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、計算明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付して初めて適用されます(当初申告要件)。誰がその宅地を取得するかが申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)までに決まっていないと、原則として適用できません。遺産分割でもめると、特例を逃して相続税が跳ね上がるおそれがあります。なお、期限までに分割できない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後日の分割で適用を受けられる道は残されています。

第二に、二世帯住宅と老人ホームの取扱いです。二世帯住宅は、建物が構造上分離されていても、区分所有登記がされていなければ同居とみなして特例の対象になり得ます。また、被相続人が老人ホームに入居して自宅に住んでいなかった場合でも、要介護認定を受けて入居しているなど一定の要件を満たせば、特定居住用宅地等として認められる余地があります。形式だけで「住んでいなかったから対象外」と判断しないことが大切です。

第三に、申告期限までの居住・所有の継続です。同居親族や家なき子が適用を受けるには、取得した宅地を申告期限まで所有し続けることが要件です。相続後すぐに売却すると要件を満たさなくなる場合があるため、売却のタイミングは慎重に検討してください。判断に迷う場合は、相続が発生する前の生前対策の段階で、税理士に居住実態や登記の状況を確認しておくことをおすすめします。

もう一つ実務で見落とされがちなのが、誰がどの宅地で特例を使うかという「枠の配分」です。複数の宅地がある場合や、貸付事業用宅地等を併用する場合は、限度面積を調整する計算が必要になります。具体的には、特定居住用宅地等の面積に200/330を、特定事業用・特定同族会社事業用宅地等の面積に200/400を掛けた値と、貸付事業用宅地等の面積との合計が200㎡以下に収まる範囲で適用します。どの宅地から優先的に特例を当てるかで減額額が変わるため、評価額の高い土地を優先するなど、有利になる組み合わせを試算することが大切です。

さらに、配偶者の税額軽減との兼ね合いも考えどころです。配偶者は無条件で小規模宅地等の特例を使えるうえ、配偶者の税額軽減により法定相続分または1億6,000万円までは相続税がかからないため、一次相続では配偶者に自宅を寄せると目先の税額を抑えられます。しかし、その配偶者が亡くなる二次相続では特例の適用者が限られ、かえって全体の税負担が重くなることもあります。一次相続だけでなく二次相続まで見据えて、誰が自宅を相続するかを決めることをおすすめします。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

  1. ステップ1:対象になる宅地を洗い出す
    自宅の敷地、事業用地、同族会社へ貸している土地、賃貸不動産の土地など、被相続人や生計を一にする親族が使っていた宅地を整理します。
  2. ステップ2:誰が相続するかと要件を確認する
    配偶者・同居親族・家なき子のいずれに当たるかを判定し、特に家なき子の6要件(持ち家の有無・過去の所有・所有継続など)を一つずつ確認します。
  3. ステップ3:限度面積と併用の有無を試算する
    特定居住用330㎡・事業用400㎡の併用や、貸付事業用との調整計算を踏まえ、減額額の目安を試算します。
  4. ステップ4:申告期限までの分割を最優先で進める
    相続開始から10か月の申告期限を確認し、宅地の取得者を早期に確定させます。間に合わない場合は分割見込書の提出を検討します。
  5. ステップ5:添付書類をそろえて申告する
    計算明細書、遺産分割協議書の写し、住民票や戸籍など、特例適用に必要な書類を準備して相続税の申告を行います。
重要:小規模宅地等の特例を適用して相続税額がゼロになる場合でも、特例を使うには相続税の申告が必要です。「税額がゼロだから申告は不要」と考えて申告期限を過ぎてしまうと、特例そのものが受けられなくなるおそれがあります。相続が発生したら、まず申告の要否と期限を確認することが、特例を確実に活かす第一歩です。

よくある質問(FAQ)

Q. 配偶者が自宅を相続する場合も要件はありますか?
A. 配偶者が特定居住用宅地等を取得する場合、取得者ごとの要件(居住継続や所有継続など)はありません。無条件で330㎡まで80%減額の対象になります。ただし特例を使う旨を相続税の申告書に記載して申告することは必要です。
Q. 親と別居していた子でも自宅の特例は使えますか?
A. 被相続人に配偶者も同居の法定相続人もいない場合に、いわゆる家なき子の6要件をすべて満たせば使えます。具体的には、相続開始前3年以内に自己や配偶者・3親等内の親族・特別関係法人の所有家屋に住んでいないことなどが必要です。
Q. 遺産分割が申告期限までにまとまらないとどうなりますか?
A. 原則として小規模宅地等の特例は適用できません。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して提出しておけば、後日分割が確定した時点で更正の請求により特例の適用を受けられます。
Q. 被相続人が老人ホームに入っていた自宅でも対象になりますか?
A. 要介護認定などを受けて老人ホーム等に入居していたなど一定の要件を満たす場合は、自宅に住んでいなくても特定居住用宅地等として認められる余地があります。入居の事情や自宅の使用状況によって判断が変わるため、個別の確認が必要です。
Q. 賃貸アパートの土地はどのくらい減額できますか?
A. 貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額の対象です。ただし相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた土地は原則として対象外で、3年を超えて特定貸付事業を続けていた場合はこの除外の対象になりません。
Q. 自宅と事業用の土地は両方とも特例を使えますか?
A. 特定居住用宅地等(330㎡)と特定事業用・特定同族会社事業用宅地等(400㎡)は、合計730㎡まで完全に併用できます。一方、貸付事業用宅地等を併用する場合は、限度面積を調整する計算が必要で、合計が実質200㎡相当に収まる範囲での適用となります。
Q. 二世帯住宅でも自宅の特例は使えますか?
A. 建物が構造上分かれている二世帯住宅でも、区分所有登記がされていなければ、同居しているものとして特定居住用宅地等の対象になり得ます。区分所有登記がされている場合は取扱いが異なるため、登記の状況を確認することが大切です。

参考資料・出典

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本記事は道濟会計事務所が監修しました。





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