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中東情勢混乱で原材料不足──中小企業が今取るべき対策
中東情勢の混乱が中小企業を直撃──いま何が起きているのか
2026年に入り、中東地域の地政学リスクが一段と高まっています。ホルムズ海峡周辺の緊張激化、紅海ルートの航行リスク増大に伴い、原油・LNGだけでなく、化学原料、金属素材、食品原材料など幅広い品目の供給が滞り始めました。日本商工会議所の会頭も2026年4月の記者会見で「中小企業への影響は深刻であり、政府にはさらなる支援策を求めたい」と異例の強い口調で訴えています。
大企業であれば複数の調達先を持ち、在庫の積み増しやヘッジ取引で対応できる余力がありますが、中小企業にとってはそうした選択肢が限られます。仕入価格の急騰をそのまま販売価格に転嫁できなければ、利益率は瞬く間に圧縮され、最悪のケースでは資金ショートに至ります。
本記事では、道濟会計事務所が日々の顧問先支援の現場で感じている危機感を踏まえ、コスト管理・資金繰り・税務の3つの軸から、中小企業が今すぐ着手すべき具体策を解説します。
原材料高騰の実態──数字で見る影響度
まず現状を数字で確認しましょう。以下は、2025年4月と2026年4月を比較した主要原材料の価格推移の概観です。
| 品目 | 2025年4月(概算) | 2026年4月(概算) | 上昇率 |
| 原油(WTI) | 約72ドル/バレル | 約98ドル/バレル | +約36% |
| ナフサ | 約58,000円/kl | 約79,000円/kl | +約36% |
| アルミニウム(LME) | 約2,400ドル/トン | 約3,100ドル/トン | +約29% |
| 小麦(シカゴ) | 約600セント/ブッシェル | 約740セント/ブッシェル | +約23% |
| 海上運賃(コンテナ40ft・アジア→日本) | 約2,500ドル | 約4,800ドル | +約92% |
特に注目すべきは海上運賃の高騰です。紅海ルートの迂回に伴い、アジア発着の海上運賃はほぼ倍増しています。原材料そのものの価格に加え、物流コストが二重に利益を圧迫しているのが、今回の局面の特徴です。
当事務所の顧問先でも、製造業では「前年同月比で原材料費が25〜35%増加しているが、販売価格に転嫁できたのはそのうちの半分程度」という声が相次いでいます。飲食業や食品加工業では、食用油や小麦粉の価格上昇に加え、包装資材(石油由来フィルム)の値上がりが経営を圧迫しています。
コスト管理──利益を守る3つの即効策
1. 変動費の「見える化」と限界利益率の再計算
まず最初にやるべきは、自社の変動費構造を正確に把握し直すことです。多くの中小企業では、原材料費・外注費・運賃などの変動費を「ざっくり」としか把握していません。しかし今のような急激なコスト変動局面では、製品・サービス別の限界利益率を月次、できれば週次で追いかける必要があります。
具体的なアクション:
- 主力製品・サービスについて、2026年4月時点の仕入単価を再取得し、製品別の原価表を更新する
- 限界利益率(=売上高-変動費)÷売上高)が前年度比で何ポイント低下しているかを算出する
- 限界利益率が一定水準(例えば30%)を下回る製品は、値上げ交渉・製品仕様変更・取り扱い中止のいずれかを早急に検討する
実務上、当事務所では顧問先に対し「限界利益率20%を下回ったら赤信号」という目安をお伝えしています。これは固定費を賄えなくなるボーダーラインであり、ここを割り込む前に手を打たなければ、売上が増えれば増えるほど損失が拡大する「逆ザヤ」構造に陥ります。
2. 仕入先・調達ルートの分散と交渉戦略
特定の仕入先に依存している場合、価格交渉力が弱くなるだけでなく、供給停止リスクにも直面します。今回の中東情勢では、実際に「仕入先から納期未定の連絡が来た」というケースが当事務所の顧問先でも複数発生しています。
具体的なアクション:
- 主要原材料について、最低2社以上の仕入先を確保する(BCP=事業継続計画の観点からも必須)
- 国内代替品への切り替え可能性を検討する──円安・海上運賃高騰の環境下では、国内調達の方がトータルコストで有利になるケースが増えている
- 共同購買の検討──同業の中小企業が協力して大口発注することで、スケールメリットを得る方法もある。商工会議所や業界団体のネットワークを活用すべき
3. 固定費の棚卸しとコスト体質の改善
変動費が上昇している局面では、固定費の見直しも並行して行うべきです。「聖域なき見直し」とまでは言いませんが、以下のような項目は比較的短期間で効果が出ます。
- 保険料の見直し:火災保険・賠償責任保険などは、複数社の見積比較で年間10〜20%削減できるケースがある
- 通信費・ITコスト:法人携帯のプラン見直し、クラウドサービスの契約プラン適正化など
- リース契約の見直し:リース満了時に再リースに切り替えるだけで月額費用が大幅に下がる場合がある
- 不採算拠点・設備の整理:遊休資産の売却は、固定費削減と同時にキャッシュ創出にもつながる
当事務所では、月次決算の際に「固定費チェックリスト」を使い、各項目について前年同月比・予算比のかい離をチェックしています。こうした地道な管理が、非常時には大きな差を生みます。
資金繰り対策──キャッシュが尽きる前に動く
1. 資金繰り表の精度を上げる
コスト増加は即座にキャッシュフローを悪化させます。売掛金の回収は従来のサイクルで進む一方、買掛金の支払額だけが膨らむため、運転資金の不足が短期間で顕在化します。
具体的には、向こう3か月間の資金繰り表を「楽観シナリオ」「現状維持シナリオ」「悲観シナリオ」の3パターンで作成することを推奨します。悲観シナリオでは、原材料費がさらに15〜20%上昇し、売上が5〜10%減少した場合を想定してください。このシナリオで資金がマイナスになる月があれば、今すぐ対策を講じる必要があります。
2. 公的金融機関・制度融資の活用
政府は中東情勢に起因する中小企業への影響を踏まえ、以下の支援策を講じています。
| 制度名 | 概要 | ポイント |
| 日本政策金融公庫 セーフティネット貸付 | 社会的・経済的環境の変化により業況が悪化した中小企業向けの融資制度 | 基準金利より低い特別利率が適用される場合あり。運転資金は最長8年 |
| セーフティネット保証 (4号・5号) | 信用保証協会の100%保証(4号)または80%保証(5号)が付く制度 | 自治体の認定が必要。売上減少要件を満たせば別枠で保証が受けられる |
| 各自治体の緊急融資制度 | 都道府県・市区町村が独自に設ける低利融資 | 自治体により条件が異なる。信用保証料の補助がある場合も |
| 小規模企業共済の 貸付制度 | 共済契約者が掛金の範囲内で低利融資を受けられる | 即日〜数日で融資実行される。緊急時の「つなぎ資金」として有効 |
⚠ 注意:融資の申し込みは「資金が足りなくなってから」では遅すぎます。金融機関の審査には通常2〜4週間かかり、セーフティネット保証の認定申請にも時間を要します。「まだ大丈夫」と思っている今こそ申し込みのタイミングです。資金ショートが目前に迫ってからの駆け込み申請は、審査でも不利に働く傾向があります。
3. 売掛金回収の前倒しと支払条件の見直し
融資に頼る前に、まず自社内でできるキャッシュフロー改善策を実行しましょう。
- 売掛金の早期回収:得意先に対し「早期支払割引(例:10日以内の支払で2%割引)」を提案する。年利換算で24%程度のコストにはなるが、資金ショートを防ぐ効果は大きい
- ファクタリングの活用:売掛債権を売却して即座に資金化する方法。手数料は2〜10%程度だが、融資とは異なり負債が増えない
- 買掛金の支払サイト延長交渉:仕入先との関係を損なわない範囲で、支払サイトを30日→45日に延長できないか交渉する。これだけでも運転資金に大きな余裕が生まれる
- 在庫の適正化:過剰在庫は「眠っている現金」。ABC分析で低回転在庫を特定し、処分セールやB2B在庫マッチングサービスで現金化する
税務面での対策──使える制度をフル活用する
1. 棚卸資産の評価方法の見直し
原材料費が急騰している局面では、棚卸資産の評価方法が利益に大きく影響します。最終仕入原価法を採用している企業が多いですが、この方法では期末時点の高い仕入価格が棚卸資産の評価額に反映され、結果として売上原価が相対的に低く計算され、利益(=課税所得)が過大に見える可能性があります。
一方、総平均法や移動平均法を採用している場合は、期中の価格変動が平準化されるため、急騰局面での利益の振れ幅が小さくなります。
棚卸資産の評価方法の変更は、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。3月決算の企業であれば、2027年3月期から変更するには2027年3月31日までの提出が必要です。検討を始めるなら今からでも遅くありません。
2. 中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制の活用
原材料不足への対応として、省エネ設備への更新や生産工程の自動化投資を検討している企業も多いでしょう。こうした設備投資に対しては、税制優遇を最大限活用すべきです。
| 制度名 | 対象企業 | 優遇内容 | 適用期限 |
| 中小企業経営強化税制 | 青色申告の中小企業者等 | 即時償却 or 取得価額の10%税額控除(資本金3,000万円超は7%) | 2027年3月31日まで(延長の可能性あり) |
| 中小企業投資促進税制 | 青色申告の中小企業者等 | 30%特別償却 or 7%税額控除 | 2027年3月31日まで |
| 少額減価償却資産の特例 | 青色申告の中小企業者等 | 30万円未満の資産を全額損金算入(年間合計300万円まで) | 2026年3月31日まで(延長見込み) |
特に中小企業経営強化税制の「即時償却」は、設備投資額の全額をその事業年度の損金に算入できるため、原材料費の上昇で膨らんだ利益(あるいは想定より利益が出た場合)を圧縮する効果があります。ただし、即時償却と税額控除は選択制であり、赤字の場合は税額控除を選んで繰越すことも検討すべきです。当事務所では、向こう3期分のシミュレーションを行い、どちらが有利かを判定するサービスを提供しています。
3. 欠損金の繰戻還付の活用
原材料費の急騰により、今期が赤字に転落してしまう可能性がある場合は、「欠損金の繰戻還付」制度を思い出してください。これは、当期に発生した欠損金を前期の所得に繰り戻して、前期に納付した法人税の還付を受けられる制度です。
資本金1億円以下の中小法人等に限り認められており、還付請求書を確定申告書と同時に提出する必要があります。前期に黒字で法人税を納付していれば、今期の赤字と相殺する形で現金が戻ってくるため、資金繰り改善に直結します。
ただし、この制度を利用すると税務調査の対象になりやすいという実務上の傾向があります。帳簿の整備と欠損金の発生原因の説明資料をしっかり準備しておくことが重要です。
4. 消費税──仕入税額控除とインボイスの再確認
仕入価格が上昇すると、消費税の仕入税額控除額も増加するため、消費税の納税額は理論上減少します。しかし、インボイス制度下では、適格請求書の保存がない仕入については控除が制限されます。2026年10月以降は経過措置の控除割合が50%に縮小されることにも注意が必要です(2023年10月〜2026年9月は80%控除、2026年10月〜2029年9月は50%控除)。
新しい仕入先に切り替える際は、その仕入先が適格請求書発行事業者かどうかを必ず確認してください。免税事業者からの仕入は、経過措置が縮小する2026年10月以降、実質的なコスト増要因になります。
⚠ 重要:2026年10月からインボイス経過措置が80%→50%に縮小
免税事業者からの仕入について、現在は仕入税額の80%を控除できますが、2026年10月1日以降は50%に縮小されます。仕入先の変更を検討している企業は、この点を踏まえた調達先選定を行ってください。消費税の負担増が知らぬ間に積み上がるリスクがあります。
免税事業者からの仕入について、現在は仕入税額の80%を控除できますが、2026年10月1日以降は50%に縮小されます。仕入先の変更を検討している企業は、この点を踏まえた調達先選定を行ってください。消費税の負担増が知らぬ間に積み上がるリスクがあります。
5. 役員報酬の機動的な見直し
法人税法上、役員報酬は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当しなければ損金算入できません。しかし、業績の著しい悪化等のやむを得ない事情がある場合は、期中での役員報酬の減額改定が認められています。
原材料費の急騰で業績が大幅に悪化した場合、役員報酬の減額は資金繰り改善の有効な手段です。税務上「業績悪化改定事由」として認められるためには、経営状況の悪化を客観的に示す資料(月次決算書、受注減少データ、原材料費の上昇データ等)を整備しておく必要があります。
なお、逆に業績が回復した際の増額改定は、定時株主総会後の改定でなければ損金不算入となるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
経営判断のフレームワーク──「値上げ」か「値上げしないか」
原材料費の上昇局面で最も難しい経営判断が「販売価格への転嫁」です。値上げすれば顧客離れのリスクがあり、値上げしなければ利益が消失する。このジレンマに対し、当事務所では以下のフレームワークでの検討を推奨しています。
ステップ1:コスト構造の透明化
まず、製品・サービスごとの原価構成を正確に把握します。「原材料費が全体の何%を占めているか」「そのうち中東情勢の影響を受ける品目は何%か」を明確にすることで、値上げの必要幅が見えてきます。
ステップ2:顧客セグメント別の価格感度分析
すべての顧客に一律で値上げするのではなく、顧客をセグメント分けし、価格感度を分析します。長期取引先・大口顧客には丁寧な説明と段階的な値上げを、スポット顧客には市場価格に連動した価格設定を行うなど、メリハリのある対応が重要です。
ステップ3:値上げ以外の選択肢の検討
価格転嫁が難しい場合は、以下の代替策も検討してください。
- 製品仕様の見直し(原材料の代替、容量の適正化)
- サービスの付加価値向上による単価アップ
- 不採算製品の廃止と高収益製品への経営資源集中
- 受注時の価格スライド条項の導入(原材料価格が一定以上変動した場合に自動的に価格を調整する契約条項)
ステップ4:取引先への説明資料の準備
値上げ交渉は「お願い」ではなく「根拠ある提案」であるべきです。原材料の価格推移データ、業界の動向資料、自社の企業努力(コスト削減の実績)を示す資料を用意し、取引先が社内稟議を通しやすい形で提案することが重要です。下請法の観点からも、発注者側が不当な買いたたきを行うことは禁止されていますので、適正な価格転嫁は法的にも正当な権利です。
補助金・助成金の最新情報
現在活用可能な主な補助金・助成金を整理します。原材料費の上昇対策としてのコスト削減投資、省エネ投資、事業転換などに活用できるものがあります。
| 制度名 | 補助上限額 | 活用場面 |
| ものづくり補助金 | 750万円〜1,250万円(類型による) | 生産工程の効率化、省エネ設備導入 |
| 事業再構築補助金 | 最大1,500万円(成長枠) | 新分野展開、業態転換 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万円〜200万円 | 販路開拓、業務効率化 |
| 省エネ補助金(経産省) | 設備費の1/3〜1/2 | 高効率空調・ボイラー等の更新 |
補助金は採択まで時間がかかりますが、省エネ設備への更新はエネルギーコストの削減に直結するため、中長期的な収益改善策として有効です。申請書類の作成には経営計画の策定が必要ですので、税理士や中小企業診断士に早めにご相談ください。
今すぐやるべき5つのアクション
ここまでの内容を踏まえ、優先度の高い順に整理します。
✅ アクション1:資金繰り表の作成・更新(今週中)
向こう3か月の資金繰り表を3パターン(楽観・現状維持・悲観)で作成。悲観シナリオで資金がマイナスになる月を特定する。
向こう3か月の資金繰り表を3パターン(楽観・現状維持・悲観)で作成。悲観シナリオで資金がマイナスになる月を特定する。
✅ アクション2:製品別・サービス別の限界利益率の再計算(今週中)
最新の仕入単価で原価表を更新し、赤字製品・低収益製品を洗い出す。
最新の仕入単価で原価表を更新し、赤字製品・低収益製品を洗い出す。
✅ アクション3:融資・保証制度の事前相談(来週中)
日本政策金融公庫、取引銀行、信用保証協会に現状を説明し、利用可能な制度を確認する。「まだ必要ない」段階での相談が最も有利。
日本政策金融公庫、取引銀行、信用保証協会に現状を説明し、利用可能な制度を確認する。「まだ必要ない」段階での相談が最も有利。
✅ アクション4:仕入先の適格請求書発行事業者登録の確認(5月中)
2026年10月のインボイス経過措置縮小に備え、免税事業者からの仕入がある場合は代替先の検討を開始する。
2026年10月のインボイス経過措置縮小に備え、免税事業者からの仕入がある場合は代替先の検討を開始する。
✅ アクション5:税理士との緊急ミーティング(5月中)
棚卸資産の評価方法、設備投資の税制優遇、役員報酬の改定、欠損金の繰戻還付など、税務面での対策を総合的に検討する。
棚卸資産の評価方法、設備投資の税制優遇、役員報酬の改定、欠損金の繰戻還付など、税務面での対策を総合的に検討する。
道濟会計事務所からのメッセージ
中東情勢の混乱は、残念ながら短期間で収束する見通しが立っていません。原材料費の高止まりは数か月から1年以上続く可能性があり、中小企業にとっては体力勝負の局面です。
しかし、過去のリーマンショックやコロナ禍を乗り越えてきた中小企業の底力を、私たちは知っています。重要なのは「早めに動くこと」「数字に基づいて判断すること」「使える制度をすべて使い切ること」です。
当事務所では、顧問先に対し月次決算の早期化、資金繰りシミュレーション、税制優遇の活用提案を積極的に行っています。「うちの会社は大丈夫だろうか」と少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。現状分析から具体的な対策の立案まで、税理士として全力でサポートいたします。
この危機を乗り越えた先に、より強い経営体質を手に入れた企業が待っています。一緒に、この局面を乗り切りましょう。