堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
法人成りのメリットとデメリット2026|法人化の判断基準を税理士が解説
この記事の要点3点
- 法人成りとは個人事業を会社組織にすることで、利益が一定規模を超えると、所得税の累進課税より法人税のほうが税率面で有利になりやすくなります。
- 役員報酬による給与所得控除、消費税の免税期間、信用力の向上などのメリットがある一方、社会保険の強制加入や赤字でも生じる法人住民税の均等割など、コスト増のデメリットもあります。
- 2026年(令和8年)4月以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税が課されるなど制度変更もあり、法人化の判断は最新ルールにもとづく試算が欠かせません。
事業が軌道に乗り、利益が増えてくると「そろそろ法人化(法人成り)したほうがよいのでは」と考える個人事業主の方は少なくありません。法人成りには節税や信用力向上といったメリットがある一方、社会保険料の負担や事務コストの増加など見落としやすいデメリットもあります。本記事では、2026年(令和8年)時点の現行ルールにもとづき、法人成りの判断基準を、税率・役員報酬・消費税・社会保険といった具体的な論点ごとに、堺市の税理士事務所として実務目線で解説します。
法人成り(法人化)とは(制度の概要)
法人成りとは、それまで個人事業主として営んできた事業を、株式会社や合同会社などの法人を設立して引き継ぐことをいいます。事業の主体が「個人」から「法人」に変わることで、課税される税目や税率、社会保険の扱い、経費にできる範囲などが大きく変わります。
個人事業主の利益には所得税が課されますが、所得税は所得が大きくなるほど税率が上がる累進課税で、最高税率は45%(このほか住民税が一律10%)です。一方、法人の利益(所得)に課される法人税は、資本金1億円以下の中小法人の場合、年800万円以下の所得部分について15%、年800万円を超える部分について23.2%という比較的フラットな税率が適用されます。このため、利益が一定規模を超えると、個人で所得税を負担するより、法人化して法人税を負担するほうが、税率の面で有利になりやすいのです。
イメージとしては、個人事業の所得税率は課税所得が増えるにつれて5%・10%・20%・23%・33%・40%・45%と段階的に上がっていきます。これに対して中小法人の法人税率は年800万円以下が15%で一定のため、利益が大きくなるほど両者の差が広がります。さらに、後述するように利益を役員報酬として受け取れば給与所得控除を使える点も加わるため、単純な税率比較以上に法人が有利になる場面があります。もっとも、ここで比較すべきは法人税だけではなく、法人住民税・法人事業税といった地方税や、後述する社会保険料まで含めた「実効的な負担」である点には注意してください。
ただし注意点もあります。年800万円以下の所得に適用される15%という軽減税率は、租税特別措置による特例で、改正のたびに適用期限が延長されてきたものです。また、令和7年4月1日以後に開始する事業年度からは、所得が年10億円を超えるような大規模法人について、年800万円以下の部分の税率が17%とされるなどの見直しも行われています。中小企業の多くは15%の対象ですが、自社に適用される税率は最新の法令で確認することが重要です。
ポイント:役員報酬による所得の分散
法人成りすると、経営者は会社から「役員報酬」を受け取る形になります。役員報酬は会社の経費(損金)になると同時に、受け取った経営者側では「給与所得控除」を差し引いて所得税を計算できます。令和7年分以後は給与所得控除の最低保障額が65万円(改正前は55万円)に引き上げられており、事業所得をそのまま受け取る個人事業より、課税対象を圧縮しやすくなります。
法人成りすると、経営者は会社から「役員報酬」を受け取る形になります。役員報酬は会社の経費(損金)になると同時に、受け取った経営者側では「給与所得控除」を差し引いて所得税を計算できます。令和7年分以後は給与所得控除の最低保障額が65万円(改正前は55万円)に引き上げられており、事業所得をそのまま受け取る個人事業より、課税対象を圧縮しやすくなります。
中小企業・個人事業者への実務影響
法人成りの判断は「節税できるかどうか」だけでなく、社会保険・事務負担・資金繰りまで含めた総合的な検討が必要です。ここではメリットとデメリットの両面を、実務に即して整理します。
メリットの一つ目は、前述の税率差と所得分散による節税です。利益を役員報酬として経営者や家族(役員)に分散することで、累進課税の個人事業よりも世帯全体の税負担を抑えやすくなります。給与所得控除を活用できる点も、個人事業の事業所得にはない利点です。
二つ目のメリットは、消費税の納税義務に関するものです。新たに設立した法人は、設立1期目・2期目には基準期間(前々事業年度)が存在しないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。タイミングよく法人成りすれば、最長で2年程度、消費税が免除される可能性があります。ただし、資本金の額が1,000万円以上の新設法人は当初から課税事業者となり、また特定期間(原則として前事業年度開始から6か月間)の課税売上高が1,000万円を超える場合なども免除されません。さらに、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を受けると、設立当初から課税事業者となるため、取引先との関係で登録が必要なケースでは、この免税メリットは実質的に得られない点に注意が必要です。
三つ目のメリットは、信用力と資金調達力の向上、経費にできる範囲の拡大、決算期を自由に設定できることなどです。法人は金融機関や取引先からの信用を得やすく、退職金の損金算入や生命保険の活用など、個人事業にはない選択肢が広がります。
一方、デメリットの一つ目は社会保険の強制加入です。法人は、社長一人の会社であっても健康保険・厚生年金保険への加入が原則として義務づけられます。保険料は会社と本人が折半で負担しますが、会社負担分は実質的なコスト増となり、法人化で増えた税メリットを上回ってしまうこともあります。
二つ目のデメリットは、赤字でも生じる法人住民税の均等割です。法人住民税には所得に関係なく課される均等割があり、赤字の事業年度であっても最低でも年7万円程度(資本金等や従業員数により増加)を納める必要があります。さらに、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、基準法人税額から年500万円を控除した額に対して4%の防衛特別法人税が課されることになり、法人の税負担を考えるうえで新たな考慮要素となっています。
三つ目のデメリットは、設立費用と事務負担の増加です。会社の設立には登録免許税などの費用がかかり、設立後も法人税申告は個人の確定申告より複雑で、税理士への依頼が一般的です。これらのランニングコストを上回るメリットがあるかどうかが、法人成りの判断の分かれ目になります。
会社形態と設立費用の目安
法人成りで選ばれる会社形態は、主に株式会社と合同会社です。設立時の登録免許税は、株式会社が資本金額の0.7%(最低15万円)、合同会社が同じく0.7%(最低6万円)で、株式会社はこのほかに定款認証の手数料(数万円程度)もかかります。設立コストを抑えたい場合は合同会社、対外的な信用や将来の資金調達を重視する場合は株式会社が選ばれる傾向にあります。いずれも個人事業の開業届(費用なし)に比べて初期コストがかかる点は押さえておきましょう。
法人成りで選ばれる会社形態は、主に株式会社と合同会社です。設立時の登録免許税は、株式会社が資本金額の0.7%(最低15万円)、合同会社が同じく0.7%(最低6万円)で、株式会社はこのほかに定款認証の手数料(数万円程度)もかかります。設立コストを抑えたい場合は合同会社、対外的な信用や将来の資金調達を重視する場合は株式会社が選ばれる傾向にあります。いずれも個人事業の開業届(費用なし)に比べて初期コストがかかる点は押さえておきましょう。
このほか、法人ならではのメリットとして欠損金(赤字)の繰越期間の長さがあります。法人は青色申告であれば欠損金を最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺できますが、個人事業の場合は青色申告でも純損失の繰越は3年間にとどまります。事業の浮き沈みが大きい業種では、この差が将来の税負担に影響します。また、家族へ給与を支払う場合も、個人事業では青色事業専従者給与などの制約がありますが、法人では家族を役員や従業員として給与を支払い損金にできるため、所得分散の自由度が高まります。
個人事業と法人の比較表
個人事業のまま続ける場合と法人成りする場合の主な違いを整理すると、次のようになります。自社の利益規模や事業計画に照らして、どちらが適しているかを検討してください。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 利益への課税 | 所得税(累進課税・最高45%+住民税10%) | 法人税(中小法人は年800万円以下15%・超過分23.2%) |
| 経営者の給与 | 事業所得(給与所得控除なし) | 役員報酬として損金算入+給与所得控除 |
| 消費税 | 基準期間の課税売上高で判定 | 新設法人は原則1〜2期免税(資本金1,000万円以上等は除く) |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金が中心 | 健康保険・厚生年金に原則強制加入(会社負担あり) |
| 赤字時の負担 | 所得税・住民税は原則生じない | 法人住民税の均等割(最低年7万円程度)が生じる |
| 事務負担・コスト | 比較的簡素 | 設立費用・申告の複雑化・顧問報酬など増加 |
なお、個人事業主には所得税のほかに個人事業税(事業主控除290万円を差し引いた所得に対して課税)も課されます。利益が大きくなるほど、これらの個人課税の合計と法人課税の差が広がるため、利益規模が判断の大きな分かれ目になります。
当事務所の見解・実務上の注意点
当事務所では法人成りのご相談を数多くお受けしていますが、「節税額」だけで判断して後悔されるケースも見られます。実務上、特に意識していただきたい点を3つに絞ってお伝えします。
「所得が増えてきたら」だけで決めない
一般に、利益(所得)が増えるほど法人化の税メリットは大きくなりますが、社会保険料の会社負担や均等割、顧問報酬などのコスト増を差し引いた「手取りベース」で比較することが重要です。額面の税率差だけを見て法人化すると、増えたコストでメリットが相殺されてしまうことがあります。必ず複数年のシミュレーションで判断してください。
消費税の免税メリットはインボイスで変わる
かつては「消費税の免税期間を最大化するために法人成りする」という考え方が一般的でしたが、インボイス制度の下では、取引先が適格請求書を求める場合に登録(=課税事業者化)が事実上必要になり、免税メリットを得にくくなっています。自社の取引先がインボイスを必要とするかどうかを確認したうえで、免税メリットをどこまで見込めるかを判断しましょう。
役員報酬の設定は事前に慎重に
法人成り後の役員報酬は、原則として事業年度開始から3か月以内に決め、その後は毎月同額(定期同額給与)とする必要があります。期中に自由に増減できないため、会社に残す利益と個人で受け取る報酬のバランスを、社会保険料も含めて事前に設計することが欠かせません。報酬設定を誤ると、想定した節税効果が得られないこともあります。役員報酬を高く設定すれば法人の利益(法人税)は抑えられますが、その分だけ個人の所得税・住民税と社会保険料が増えるため、法人と個人を合わせた負担が最小になる水準を探ることがポイントです。
最後に、法人成りはタイミングも重要です。年の途中で法人化する場合、その年は個人事業の所得と法人の所得の両方について申告が必要になり、事務負担が一時的に増えます。また、個人で使っていた事業用資産(車両・備品・棚卸資産など)を法人へ引き継ぐ際には、その評価や消費税の取扱いにも注意が必要です。期首からのスムーズな移行や、消費税の免税メリットを最大化する観点からも、法人化の時期は税理士と相談しながら計画的に決めることをおすすめします。
今すぐやるべきこと(チェックリスト)
法人成りを検討する際に、実務で踏むべき手順を順番に整理します。次のステップに沿って自社の状況を確認してください。
- ステップ1:直近の事業所得を把握する
確定申告書をもとに、直近の事業所得(利益)と今後の見通しを確認します。利益規模が法人化の判断の出発点になります。 - ステップ2:法人化後の税負担を試算する
役員報酬の設定を仮定し、法人税・所得税・住民税・個人事業税の合計を、個人事業のまま続けた場合と比較します。 - ステップ3:社会保険料の負担を見積もる
役員報酬に応じた健康保険・厚生年金の会社負担分を計算し、税メリットから差し引いて手取りベースで比較します。 - ステップ4:消費税とインボイスの影響を確認する
新設法人の免税メリットが得られるか、取引先がインボイス登録を求めるかを確認し、消費税の扱いを判断します。 - ステップ5:設立費用・ランニングコストを確認する
登録免許税などの設立費用や、申告・顧問にかかる継続費用を把握し、総合的にメリットが上回るかを判断します。
チェックリスト
- ☑ 直近・今後の事業所得の見通しを把握したか
- ☑ 法人化後の税負担を手取りベースで試算したか
- ☑ 社会保険料の会社負担を見積もったか
- ☑ 消費税の免税メリットとインボイスの影響を確認したか
- ☑ 設立費用・継続コストを上回るメリットがあるか
よくある質問(FAQ)
- Q. 法人成りはどのくらいの利益から検討すべきですか?
- A. 一概には言えませんが、所得税の累進税率と法人税率の差や、給与所得控除の活用効果から、事業所得が一定規模(目安として年数百万円以上)になると法人化の税メリットが出やすくなります。ただし社会保険料や均等割などのコスト増を差し引いた手取りベースでの試算が不可欠です。
- Q. 法人成りすると消費税は必ず2年間免除されますか?
- A. 必ずではありません。新設法人は基準期間がないため原則として設立1〜2期は免税ですが、資本金が1,000万円以上の場合や、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは免除されません。インボイス登録を受けると当初から課税事業者になる点にも注意が必要です。
- Q. 役員報酬は自由に変えられますか?
- A. 自由には変えられません。役員報酬を損金にするには、原則として事業年度開始から3か月以内に金額を決め、その後は毎月同額(定期同額給与)とする必要があります。期中に安易に増減すると損金にならない部分が生じるため、事前の設計が重要です。
- Q. 赤字でも法人だと税金がかかりますか?
- A. かかります。法人住民税には所得に関係なく課される均等割があり、赤字の事業年度でも最低で年7万円程度(資本金等や従業員数により増加)を納める必要があります。個人事業主であれば赤字の年に所得税・住民税は原則生じないため、この点は法人のデメリットといえます。
- Q. 2026年から法人の税負担に変化はありますか?
- A. あります。令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度からは、基準法人税額から年500万円を控除した額に対して4%の防衛特別法人税が課されます。中小企業でも対象となり得るため、法人化後の税負担を見積もる際には織り込んでおくことをおすすめします。
- Q. 株式会社と合同会社はどちらがよいですか?
- A. 一概には言えませんが、設立コストを抑えたい場合は登録免許税が最低6万円で定款認証も不要な合同会社、対外的な信用力や将来の資金調達・株式公開を重視する場合は株式会社が選ばれる傾向にあります。税務上の取扱いは基本的に同じため、設立コスト・信用力・運営のしやすさといった点を比較し、事業の方向性に合わせて選択するとよいでしょう。
- Q. 法人化すると赤字を繰り越せる期間は変わりますか?
- A. 変わります。法人は青色申告であれば欠損金を最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺できますが、個人事業の純損失の繰越は青色申告でも3年間です。赤字と黒字の波が大きい事業では、繰越期間の長い法人のほうが将来の税負担を平準化しやすいといえます。
道濟会計事務所の税務相談
法人成りの判断は、利益規模・役員報酬・社会保険・消費税まで含めた総合的なシミュレーションが欠かせません。本記事に関する個別のご相談・具体的な試算のサポートは、当事務所へご連絡ください。初回相談は無料です。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。