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賞与の社会保険料2026|標準賞与額の上限と計算方法を税理士が解説

賞与の社会保険料2026|標準賞与額の上限と計算方法
この記事の要点3点

  • 賞与(ボーナス)にも毎月の給与と同じく健康保険・厚生年金・介護保険の社会保険料がかかり、夏の賞与を支給したら5日以内に「賞与支払届」を年金事務所へ提出する必要があります。
  • 計算の基礎は税引き前の支給額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」で、健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回あたり150万円という上限が影響するのは賞与額が大きい役員・従業員です。
  • 令和8年度(2026年度)は協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率が3月分(4月納付分)から改定されたため、夏の賞与では最新の料率で計算し、退職予定者の支給月にも注意してください。

夏の賞与の支給時期になると、中小企業の経理担当者から「賞与の社会保険料はどう計算するのか」「給与と同じ料率でよいのか」というご相談が増えます。賞与にかかる社会保険料は、毎月の給与とは別に「標準賞与額」を基礎として計算し、独自の上限や届出のルールがあります。本記事では、令和8年度(2026年度)の最新の保険料率を踏まえ、賞与の社会保険料の計算方法と実務上の注意点を、税理士の視点から具体的に解説します。

賞与の社会保険料の仕組みと2026年度の改正概要

賞与(ボーナス)に対しても、毎月の給与と同じように健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料がかかります。平成15年4月の総報酬制の導入により、賞与も保険料の対象となり、年間の賞与にかかる保険料負担が明確化されました。ここでいう「賞与」とは、賃金・給料・手当・賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下支給されるものを指します。年4回以上支給されるものは標準報酬月額(毎月の給与)の対象に算入されるため、賞与としての保険料計算からは外れます。

標準賞与額とは何か

賞与の社会保険料を計算する基礎となるのが「標準賞与額」です。標準賞与額は、税引き前の賞与支給総額から1,000円未満の端数を切り捨てた額をいいます。たとえば賞与の支給額が48万6,500円であれば、標準賞与額は48万6,000円となります。この標準賞与額に各保険料率を掛けて、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料を算出します。毎月の給与で用いる「標準報酬月額」が等級表にあてはめて決まるのに対し、賞与は実際の支給額をそのまま使う(千円未満切り捨てのみ)点が大きな違いです。

標準賞与額には上限がある

標準賞与額には、健康保険と厚生年金保険でそれぞれ異なる上限が設けられています。健康保険(介護保険を含む)は、年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)の累計額で573万円が上限です。一方、厚生年金保険は、1か月あたり150万円が上限となります。同じ月に2回以上の賞与が支給された場合は合算して上限を判定します。上限を超えた部分には保険料はかかりませんが、上限に達するのは賞与額が相当に大きい役員や一部の従業員に限られます。一般的な中小企業の従業員賞与であれば、上限を意識する場面は多くありませんが、役員賞与(事前確定届出給与)を高額に設定している場合は注意が必要です。

令和8年度(2026年度)の料率改定

令和8年度(2026年度)は、協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険料率と介護保険料率が、令和8年3月分(4月納付分)から改定されました。全国健康保険協会の公表によると、健康保険料率の全国平均は9.90%(前年度の全国平均10.00%から引下げ)、介護保険料率(40歳以上64歳以下の介護保険第2号被保険者が対象)は1.62%(前年度1.59%から引上げ)となっています。健康保険料率は都道府県ごとに異なるため、夏の賞与の計算では自社が加入する都道府県の最新料率を確認することが欠かせません。厚生年金保険料率は平成29年9月以降18.3%で固定されており、令和8年度も変更はありません。子ども・子育て拠出金率も令和8年度は0.36%(1,000分の3.6)で据え置かれています。

料率改定は「3月分(4月納付分)から」という点に注意が必要です。社会保険料は当月分を翌月の給与から控除するのが一般的なため、改定後の料率がいつの賞与・給与から適用されるのかを、自社の控除方法(当月控除か翌月控除か)に照らして確認してください。夏の賞与は改定後の料率が適用される時期にあたるため、特に料率の反映漏れに注意します。

育児休業中に支給した賞与の保険料は免除される

見落とされやすいのが、育児休業等の期間中に支給した賞与の社会保険料の免除です。被保険者が育児休業等を取得している場合、一定の要件を満たすと、その期間中に支給された賞与にかかる健康保険料・厚生年金保険料が被保険者・事業主ともに免除されます。ただし、令和4年10月の改正により、賞与にかかる保険料の免除は「育児休業等の期間が1か月を超える場合」に限られることとなりました。賞与月に短期間だけ育児休業を取得しても賞与の保険料は免除されない点に注意が必要です。育児休業を取得している従業員へ夏の賞与を支給する場合は、免除の要件を満たすかどうかを必ず確認してください。

中小企業の給与計算への実務影響と計算手順

賞与の社会保険料は、被保険者(従業員・役員)と会社が折半で負担します(子ども・子育て拠出金を除く)。給与計算の担当者は、夏の賞与の支給にあたって、最新料率での計算と期限内の届出という2つの実務に対応する必要があります。ここでは具体的な計算手順を確認します。

賞与の社会保険料の計算式

賞与から控除する各保険料は、次の式で計算します。いずれも標準賞与額に料率を掛け、労使折半(厚生年金・健康保険・介護保険)したうえで、被保険者負担分を賞与から差し引きます。

保険の種類計算式(被保険者負担分)負担割合
健康保険料標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2労使折半
介護保険料(40〜64歳)標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2労使折半
厚生年金保険料標準賞与額 × 18.3% ÷ 2労使折半
子ども・子育て拠出金標準賞与額 × 0.36%全額事業主負担

具体例で確認します。賞与支給額が60万円、加入先が協会けんぽ・健康保険料率を仮に10.00%(自社の都道府県の率に置き換えてください)、対象者が30歳(介護保険料の負担なし)の場合、標準賞与額は60万円です。健康保険料の被保険者負担は60万円×10.00%÷2=3万円、厚生年金保険料の被保険者負担は60万円×18.3%÷2=5万4,900円となり、合計8万4,900円が賞与から控除されます。会社は同額に加えて子ども・子育て拠出金(60万円×0.36%=2,160円)も負担します。40歳以上64歳以下の従業員には、これに介護保険料(標準賞与額×1.62%÷2)が加算されます。

ポイント:賞与の所得税(源泉徴収)は「前月の給与から社会保険料を控除した金額」と扶養親族等の数で求めた賞与の税率を用いて計算します。社会保険料の計算とは仕組みが異なるため、賞与計算では「社会保険料の控除」と「源泉所得税の計算」を分けて整理すると間違いが起きにくくなります。

賞与支払届の提出という重要な実務

賞与を支給したら、会社は「被保険者賞与支払届」を、支給日から5日以内に管轄の年金事務所(または事務センター)へ提出しなければなりません。この届出により、各被保険者の標準賞与額が決定され、保険料の納付額が確定するとともに、将来の年金額(厚生年金)にも反映されます。届出を忘れると保険料の未納や年金記録の漏れにつながるため、賞与支給とセットで必ず行う実務です。なお、賞与を支給しなかった場合でも、事前に届け出ている賞与支払予定月に支給がなかったときは「賞与不支給報告書」の提出が必要です。

料率改定を反映し忘れるリスク

給与計算ソフトを使っている場合でも、令和8年度の協会けんぽ料率(3月分・4月納付分から改定)がソフトに正しく反映されているかを、夏の賞与の計算前に必ず確認してください。料率の更新を怠ると、被保険者負担分の控除額を誤り、後から差額調整が必要になります。特に都道府県ごとに健康保険料率が異なるため、支店が複数の都道府県にある会社は、それぞれの加入先の料率を確認することが重要です。

介護保険料の対象になる「40歳到達」のタイミング

介護保険の第2号被保険者(40歳以上64歳以下)には、健康保険料に加えて介護保険料がかかります。実務でつまずきやすいのが、40歳になる従業員の取扱いです。介護保険料は「40歳の誕生日の前日が属する月」から徴収が始まります。たとえば7月1日が誕生日の従業員は、前日である6月30日が属する6月から介護保険料の対象です。夏の賞与の支給月にちょうど40歳に到達する従業員がいる場合は、介護保険料を徴収すべきかどうかを誕生日から正確に判定してください。逆に65歳に到達すると、介護保険料は給与・賞与からの天引きではなく、原則として年金からの徴収などに切り替わります。

電子申請と端数処理の実務

賞与支払届は、e-Gov電子申請やGビズIDを利用したオンライン提出が可能で、紙の届出よりも処理が早く控えの管理もしやすくなります。従業員数が一定規模以上の特定の法人には電子申請が義務づけられている点にも留意してください。また、被保険者から控除する保険料に1円未満の端数が生じた場合、事業主が給与から控除するときは50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合は切り上げるのが原則です(労使の特約があればその方法によります)。賞与計算では端数処理の方法を社内で統一し、毎回同じ基準で処理することがトラブル防止につながります。

当事務所の見解・実務上の注意点

賞与の社会保険料は計算式自体はシンプルですが、実務では「いつ支給したか」「誰に支給したか」によって取扱いが変わる場面があり、ここでミスが起きやすいのが実情です。当事務所が中小企業の給与計算を支援するなかで、特に注意を促している3つの論点を解説します。

退職月(資格喪失月)の賞与は保険料がかからない

社会保険料は「月単位」で発生し、資格を喪失した月(退職日の翌日が属する月)の保険料はかかりません。これは賞与も同様で、退職する月に支給した賞与には、原則として健康保険料・厚生年金保険料がかかりません(月末退職を除く)。たとえば6月20日に退職する従業員に6月10日に賞与を支給した場合、その賞与には保険料がかかりません。ただし、保険料はかからなくても標準賞与額の届出(賞与支払届)は必要で、健康保険の年度累計573万円の上限管理に用いられます。退職予定者への賞与は、保険料の控除要否を必ず確認してください。

同一月に複数回支給した場合と上限の管理

厚生年金保険の標準賞与額の上限(1か月150万円)は、同じ月に2回以上の賞与を支給した場合、合算して判定します。また、健康保険の年度累計573万円の上限は、年度の途中で転職・再就職した場合、新たな勤務先では通算されず、その勤務先での支給分だけで判定される点にも注意が必要です。高額の役員賞与を支給する同族会社では、上限を超える部分に保険料がかからないことを前提に、役員報酬と役員賞与のバランスを検討する場面もあります。

賞与の社会保険料は「会社のコスト」でもある

実務上の重要ポイント:賞与は従業員のモチベーション向上に有効ですが、会社負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金の折半分+子ども・子育て拠出金)を含めると、支給額の約15%前後が法定福利費として上乗せされます。賞与の原資を検討する際は、額面だけでなく会社負担の社会保険料を含めた総コストで資金繰りを考えることが、健全な賞与設計につながります。

賞与の支給額・支給回数・支給時期は、社会保険料の負担や資金繰りに直結します。決算賞与による節税を検討する場合も、社会保険料の会社負担を織り込んだうえで効果を判断することが大切です。具体的な金額設計は、自社の状況に応じて専門家とともに検討することをおすすめします。

今すぐやるべきこと

夏の賞与の支給を控えた中小企業が、賞与の社会保険料を正しく処理するために取り組むべき手順を、順を追って整理します。

  1. ステップ1:令和8年度の最新料率を確認する
    自社が加入する協会けんぽの都道府県別の健康保険料率(令和8年3月分・4月納付分から改定済み)、介護保険料率1.62%、厚生年金保険料率18.3%を確認します。健康保険組合に加入している場合は、その組合の料率を確認してください。
  2. ステップ2:給与計算ソフトの料率設定を更新する
    賞与計算を行う前に、ソフトの保険料率が令和8年度に更新されているかをテスト計算で確認します。料率が古いままだと控除額を誤ります。
  3. ステップ3:対象者と上限・年齢区分を整理する
    40歳以上64歳以下の介護保険料負担者、退職予定者、健康保険の年度累計573万円・厚生年金1か月150万円の上限に近い高額賞与者を洗い出します。
  4. ステップ4:賞与から各保険料を控除して支給する
    標準賞与額(千円未満切り捨て)に料率を掛け、被保険者負担分を控除します。源泉所得税は社会保険料控除後の計算であることに注意します。
  5. ステップ5:支給日から5日以内に賞与支払届を提出する
    管轄の年金事務所・事務センターへ被保険者賞与支払届を提出します。電子申請(e-Gov・GビズID)も活用できます。
確認チェックリスト

  • ☑ 自社の都道府県の令和8年度健康保険料率を確認したか
  • ☑ 介護保険料(40〜64歳)の対象者を区分したか
  • ☑ 退職予定者の賞与の保険料控除要否を確認したか
  • ☑ 賞与支払届を支給日から5日以内に提出する準備をしたか

よくある質問

Q. 賞与の社会保険料は毎月の給与と同じ料率で計算してよいですか?
A. 健康保険料率・介護保険料率・厚生年金保険料率は、毎月の給与も賞与も同じ率を使います。ただし基礎となる金額が異なり、給与は等級表で決まる標準報酬月額、賞与は実際の支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額を用います。令和8年度は協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率が改定されているため、最新の率で計算してください。
Q. 賞与の標準賞与額に上限はありますか?
A. あります。健康保険(介護保険を含む)は年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計で573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限です。上限を超えた部分には保険料がかかりません。一般的な従業員賞与では上限に達する場面は少なく、高額な役員賞与などで意識する論点です。
Q. 退職する月に支給した賞与にも社会保険料はかかりますか?
A. 原則としてかかりません。社会保険料は資格を喪失した月(退職日の翌日が属する月)には発生しないため、その月に支給した賞与にも保険料はかかりません(月末退職の場合を除く)。ただし保険料がかからない場合でも、賞与支払届の提出は必要です。
Q. 賞与支払届はいつまでに提出すればよいですか?
A. 賞与を支給した日から5日以内に、管轄の年金事務所または事務センターへ被保険者賞与支払届を提出します。e-Govなどの電子申請も利用できます。提出により標準賞与額が決定し、保険料額と将来の年金額に反映されます。
Q. 子ども・子育て拠出金も賞与から控除するのですか?
A. いいえ、子ども・子育て拠出金は全額事業主負担で、従業員の賞与から控除しません。標準賞与額に令和8年度の拠出金率0.36%を掛けた額を、会社が厚生年金保険料とあわせて納付します。被保険者の負担はなく、会社のコストとして計上される点を押さえておきましょう。
Q. 育児休業中の従業員に賞与を支給した場合、保険料はどうなりますか?
A. 育児休業等の期間が1か月を超える場合に限り、その期間中に支給した賞与の健康保険料・厚生年金保険料が被保険者・事業主ともに免除されます。令和4年10月の改正で要件が変わり、賞与月に短期間だけ育児休業を取得しても賞与の保険料は免除されません。免除の要件を満たすかどうかを支給前に確認してください。

参考資料・出典

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