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賞与の社会保険料と源泉徴収2026|計算方法と賞与支払届を税理士が解説

賞与の社会保険料と源泉徴収2026の計算方法と賞与支払届を解説する記事のアイキャッチ
この記事の要点3点

  • 賞与(夏のボーナス)からは社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険)と源泉所得税が差し引かれます。
  • 社会保険料は標準賞与額(1,000円未満切り捨て)に料率を掛けて労使折半、源泉所得税は前月給与と扶養人数で決まる税率で計算します。
  • 賞与を支払ったら5日以内に「賞与支払届」を提出する必要があります。

夏のボーナスの季節になると、給与計算の担当者からは「賞与から何を、いくら差し引けばよいのか」「賞与支払届の提出はいつまでか」といった相談が増えます。賞与にかかる社会保険料や源泉所得税は、毎月の給与とは計算方法が異なり、上限や提出期限など特有のルールがあります。本記事では、2026年(令和8年度)の料率をもとに、賞与から差し引く社会保険料・源泉所得税の計算方法と、賞与支払届などの実務手続きを、大阪・堺の税理士が具体例を交えて解説します。

賞与にかかる社会保険料と税金の全体像

賞与(ボーナス)から差し引かれるのは、大きく分けて社会保険料と源泉所得税です。社会保険料には、健康保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満)、厚生年金保険料、雇用保険料が含まれます。これに源泉所得税を加えた金額が賞与から控除され、残りが従業員の手取りになります。住民税は毎月の給与から1年分を分割して特別徴収される仕組みのため、賞与からは差し引かないのが一般的です。それぞれの控除がどのような考え方で計算されるのかを、以下で順に見ていきます。

社会保険料は「標準賞与額」をもとに計算する

健康保険・介護保険・厚生年金の保険料は、実際の賞与額そのものではなく、賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」をもとに計算します。標準賞与額に保険料率を掛けた金額を、会社と従業員が折半で負担します。一方、雇用保険料は標準賞与額ではなく、実際に支払う賞与額に雇用保険料率を掛けて計算する点が異なります。

標準賞与額の上限

標準賞与額には上限があります。健康保険・介護保険では年度(4月1日から翌年3月31日)の累計で573万円、厚生年金保険では1か月あたり150万円が上限です。上限を超える部分には保険料がかかりません。年度の途中で複数回賞与を支給する場合は累計額で、同じ月に複数回支給する場合は合算して上限を判定します。

ポイント:賞与の範囲
社会保険でいう賞与とは、年3回以下で支給されるものを指します。年4回以上支給されるものは賞与ではなく報酬として扱われ、標準報酬月額の計算に含まれます。名称がボーナス・賞与でなくても、支給回数で判断する点に注意しましょう。

源泉所得税は前月給与をもとに税率を決める

賞与にかかる源泉所得税は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って計算します。具体的には、前月の給与から社会保険料を差し引いた金額と、扶養親族等の数をもとに算出率表で税率を求め、その税率を「賞与額から社会保険料を差し引いた金額」に掛けて計算します。扶養控除等申告書を提出している人は甲欄、提出していない人は乙欄を使います。なお、この税率には復興特別所得税が含まれています。毎月の給与が「月額表」を使って税額を求めるのに対し、賞与は「算出率表」を使う点が大きな違いです。

雇用保険料と住民税の取扱い

雇用保険料は、社会保険(健康保険・厚生年金)とは計算のベースが異なります。社会保険料が1,000円未満を切り捨てた標準賞与額をもとに計算するのに対し、雇用保険料は実際に支払う賞与額に雇用保険料率を掛けて計算します。端数処理や上限の考え方も社会保険とは別ですので、給与計算ソフトの設定を確認しておきましょう。また、住民税は前年の所得をもとに市区町村が税額を決定し、毎月の給与から1年分を12回に分けて特別徴収する仕組みのため、賞与から別途差し引くことは原則としてありません。賞与の控除項目に住民税を含めないよう注意してください。

2026年度の料率と計算方法(実務影響)

2026年(令和8年度)に賞与へ適用される主な料率を確認します。社会保険料率は令和8年3月分(4月納付分)から、雇用保険料率は令和8年4月1日から、それぞれ改定後の率が適用されます。

  • 厚生年金保険料率:18.3%(平成29年9月分以降で固定。労使折半のため従業員負担は9.15%)
  • 健康保険料率(協会けんぽ大阪支部・令和8年度):10.13%(労使折半。前年度の10.24%から引き下げ)
  • 介護保険料率(全国一律・令和8年度):1.62%(40歳以上65歳未満の方に上乗せ)
  • 雇用保険料率(一般の事業・令和8年度):合計13.5/1,000。うち従業員負担は5/1,000(0.5%)、事業主負担は8.5/1,000
  • 子ども・子育て拠出金:標準賞与額に対してかかり、全額を事業主が負担します(拠出金率は0.36%。令和2年度以降)
健康保険料率は都道府県ごとに毎年改定されます。上記は協会けんぽ大阪支部の令和8年度の料率です。健康保険組合に加入している場合は、その組合が定める料率を確認してください。

2026年度の改定でおさえておきたいのは、雇用保険料率が前年度から引き下げられた点です。一般の事業の従業員負担は前年度の5.5/1,000から5/1,000(0.5%)へと下がり、その分だけ手取りがわずかに増える方向に働きます。健康保険料率も、協会けんぽ大阪支部では前年度の10.24%から10.13%へ引き下げられました。一方で厚生年金保険料率は平成29年9月分以降18.3%で固定されており、変更はありません。これらの料率は、社会保険料は令和8年3月分(4月納付分)から、雇用保険料は令和8年4月1日からの適用が原則です。賞与の支給時期によって適用する料率を取り違えないよう、給与計算の基準日を確認しておきましょう。なお、子ども・子育て拠出金は厚生年金の被保険者がいる事業主に課されるもので、従業員から徴収するものではなく、給与明細の控除欄には現れません。

計算例|賞与50万円・40歳未満の場合(協会けんぽ大阪)

賞与の総支給額が50万円、年齢が40歳未満(介護保険の対象外)の従業員を例に、従業員負担分を計算します。標準賞与額は1,000円未満を切り捨てて500,000円です。

控除項目計算式(従業員負担分)金額
健康保険料500,000円 × 10.13% ÷ 225,325円
厚生年金保険料500,000円 × 18.3% ÷ 245,750円
雇用保険料500,000円 × 0.5%2,500円
社会保険料 合計73,575円

源泉所得税は、前月の給与(社会保険料控除後)と扶養親族の数に応じた税率を、賞与から社会保険料を差し引いた金額(500,000円 − 73,575円 = 426,425円)に掛けて計算します。たとえば算出率表で求めた税率が4.084%であれば、426,425円 × 4.084% = 約17,415円が源泉所得税となります。この場合の手取り額は、500,000円 − 73,575円 − 17,415円 = 約409,010円です。40歳以上65歳未満の方は、これに介護保険料(500,000円 × 1.62% ÷ 2 = 4,050円)が加わります。なお、会社側はこの従業員負担分とほぼ同額の社会保険料(健康保険・厚生年金は折半、雇用保険は事業主分8.5/1,000)に加え、子ども・子育て拠出金(500,000円 × 0.36% = 1,800円)も負担します。賞与を支給する際は、従業員の手取りだけでなく、会社が負担する法定福利費も含めた総額で資金を準備しておくことが大切です。

料率は時点・保険者で異なります
上記の税率4.084%はあくまで計算手順を示すための仮の数値です。実際の源泉所得税の税率は、従業員ごとの前月給与と扶養親族の数によって変わります。また健康保険料率は加入する保険者(協会けんぽの都道府県支部・健康保険組合)によって異なります。

賞与の保険料率・負担区分の早見表

2026年(令和8年度)に賞与へ適用される料率と、計算のベースとなる金額・負担区分を一覧にまとめます。

項目料率(令和8年度)計算のベース負担区分
健康保険(協会けんぽ大阪)10.13%標準賞与額労使折半
介護保険(40〜64歳)1.62%標準賞与額労使折半
厚生年金18.3%標準賞与額労使折半
雇用保険(一般の事業)13.5/1,000(本人5/1,000)実際の賞与額労使で按分
子ども・子育て拠出金0.36%標準賞与額事業主のみ
源泉所得税算出率表による賞与-社会保険料従業員

当事務所の見解・実務上の注意点

賞与の計算は毎月の給与より頻度が低い分、担当者が手順を忘れやすく、ミスが起きやすい処理です。当事務所が実務でとくに注意していただきたいと考えるポイントを整理します。

賞与支払届の提出漏れに注意

もっとも多いのが賞与支払届の提出漏れ・遅延です。支払日から5日以内という期限は短く、賞与支給の事務に追われて後回しになりがちです。提出が漏れると、保険料の決定や被保険者の将来の年金額の計算に影響します。賞与の支給と支払届の提出はセットの作業として、給与計算のチェックリストに必ず組み込み、支給日から逆算して提出スケジュールを管理しておきましょう。

上限・対象期間の管理

標準賞与額の上限(健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月150万円)は、年に複数回賞与を支給する企業や、役員賞与が高額になる場合に効いてきます。年度の途中で上限に達する見込みがある場合は、累計額を管理しておく必要があります。また、退職する月に支給する賞与は、資格喪失のタイミングによって社会保険料がかからないことがあるなど、支給月の判定にも注意が必要です。

源泉所得税の特別な計算ケース

源泉所得税は通常、算出率表の税率を賞与に掛けて計算しますが、前月に給与の支払がない場合や、賞与が前月給与の10倍を超える場合は、月額表を使う特別な計算が必要です。創業まもない会社で初めて賞与を出すケースや、役員へ多額の賞与を支給するケースでは、この特別計算に該当しやすいため、計算方法を取り違えないよう注意してください。判断に迷う処理は、賞与の支給前に専門家へ確認することで、後からの修正や追徴のリスクを避けられます。

扶養親族の数と前月給与の確認

源泉所得税の税率は、前月の給与(社会保険料控除後)の金額と扶養親族等の数で決まります。年の途中で結婚・出産などにより扶養親族が増減した場合は、賞与の計算前に扶養控除等申告書の記載が最新になっているかを確認しましょう。扶養親族の数を誤ると税率を取り違え、源泉徴収額が過不足になります。仮に賞与時点での源泉徴収に過不足があっても、最終的には年末調整で1年分の所得税が精算されますが、毎回の控除額が大きくずれると従業員の手取り感に影響するため、できるだけ正確に計算することが望ましいといえます。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

賞与を支給する際の実務の流れを、順を追って整理します。

  1. ステップ1:賞与額を確定し、標準賞与額を計算する
    支給する賞与額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てて標準賞与額を求めます。健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月150万円の上限を超えていないかも確認します。
  2. ステップ2:社会保険料を計算する(労使折半)
    標準賞与額に各保険料率を掛けて、健康保険料・厚生年金保険料を計算し、会社と従業員で折半します。40歳から64歳の従業員は介護保険料も上乗せします。雇用保険料は標準賞与額ではなく実際の賞与額に料率を掛けて計算します。
  3. ステップ3:源泉所得税を計算する
    前月の給与(社会保険料控除後)と扶養親族等の数から、賞与に対する源泉徴収税額の算出率表で税率を求め、賞与額から社会保険料を差し引いた金額にその税率を掛けて源泉所得税を計算します。
  4. ステップ4:手取り額を計算して支給する
    賞与総額から社会保険料と源泉所得税を差し引いた金額が手取り額です。給与明細に控除内訳を明記し、従業員に交付します。
  5. ステップ5:賞与支払届を5日以内に提出する
    賞与を支払った日から5日以内に、被保険者賞与支払届を事務センターまたは年金事務所へ提出します。源泉所得税は原則として翌月10日(納期の特例の適用を受けている場合は半年ごと)までに納付します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 賞与から差し引かれるものには何がありますか?
A. 賞与(ボーナス)からは、健康保険料・介護保険料(40歳以上65歳未満)・厚生年金保険料・雇用保険料といった社会保険料と、源泉所得税が差し引かれます。住民税は原則として毎月の給与から特別徴収されるため、賞与からは差し引かれないのが一般的です。社会保険料は会社と従業員が折半で負担し、源泉所得税は前月の給与と扶養親族の数に応じて計算します。
Q2. 賞与支払届はいつまでに提出すればよいですか?
A. 被保険者賞与支払届は、賞与を支払った日から5日以内に、事務センターまたは年金事務所へ提出します。年3回以下で支給される賞与が対象で、提出が遅れると保険料の決定や将来の年金額の計算に影響するおそれがあります。電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参のいずれの方法でも提出できます。
Q3. 標準賞与額に上限はありますか?
A. あります。標準賞与額は税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額で、健康保険・介護保険では年度(4月1日から翌年3月31日)の累計で573万円、厚生年金保険では1か月あたり150万円が上限です。上限を超える部分には保険料がかかりません。複数回賞与を支給する場合は、累計額や同月内の合算で上限を判定します。
Q4. 賞与にかかる社会保険料率は2026年度でいくらですか?
A. 厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、労使折半のため従業員負担は9.15%です。健康保険料率は都道府県ごとに毎年改定され、協会けんぽ大阪支部の令和8年度の料率は10.13%(労使折半)です。40歳から64歳の方は介護保険料率1.62%が上乗せされます。雇用保険料率は一般の事業で令和8年度は合計13.5/1,000、うち従業員負担は5/1,000(0.5%)です。
Q5. 前月に給与がない場合や賞与が多額の場合の源泉徴収はどうなりますか?
A. 前月に給与の支払がない場合は、賞与から社会保険料を差し引いた金額を6(賞与の計算期間が半年を超えるときは12)で割り、月額表で税額を求めてから乗じて計算します。また賞与額(社会保険料控除後)が前月給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合も、同様に月額表を使う特別な計算方法になります。通常はこれらに該当せず、算出率表で求めた税率を賞与に乗じる方法で計算します。
Q6. 育児休業中に支給した賞与の社会保険料は免除されますか?
A. 一定の要件を満たせば免除されます。育児休業等の期間中に支給された賞与の社会保険料は、その月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業等を取得している場合に免除の対象となります(令和4年10月以降の取扱い)。免除されるのは社会保険料(健康保険・厚生年金)で、雇用保険料や源泉所得税の取扱いとは区別して考える必要があります。

参考資料・出典

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本記事は道濟会計事務所が監修しました。監修:道濟寛樹(税理士・道濟会計事務所代表)





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