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労働安全衛生法 改正 2026|個人事業者保護と中小企業の5対応
📋 この記事の要点3点
- 段階施行:改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号、2025年5月14日公布)は2026年1月1日から2027年4月1日にかけて段階的に施行されます。
- 保護対象拡大:労働者と同じ場所で作業する個人事業者・一人親方・フリーランスが、安全衛生対策の保護対象および義務主体として位置づけられます。
- 中小企業の実務:注文者の配慮義務(公布日施行)、元方事業者の措置義務拡大(2027年4月1日)、ストレスチェックの全事業場義務化(公布後3年以内)など、業種・規模を問わず備えが必要です。
📍 目次
2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が、いよいよ2026年1月1日から段階的に施行されます。この改正の最大の特徴は、これまで主に「労働者を雇用する事業者」に向けられていた規制が、個人事業者・一人親方・フリーランスといった非雇用就業者にも広がる点にあります。建設業、運送業、ITフリーランスへの業務委託が多い中小企業にとって、現場の安全衛生体制を見直す転換点になる改正です。本記事では、施行スケジュール、義務の中身、そして中小企業が今すぐやるべき5つの実務対応を、一次情報をもとに税理士の視点で整理します。
改正労働安全衛生法の概要と段階施行スケジュール
改正の背景|「働く人すべて」への安全衛生対策へ
厚生労働省によると、近年は雇用関係によらない働き方が拡大し、労働者と個人事業者が同じ現場で混在して作業するケースが増えています。労働安全衛生法はこれまで「労働者の保護」を中心に組み立てられてきましたが、現場で同じ危険にさらされる個人事業者が法の枠外に置かれてきた構造を、今回の改正で大きく見直します。「労働者と同じ場所で働く個人事業者等を労働安全衛生法による保護の対象および義務の主体として位置づける」というのが、改正の中核です。
施行日別スケジュール
改正法は一度にすべて施行されるのではなく、政令・省令の整備状況に応じて段階的に効力が発生します。中小企業は自社の業種・取引関係に照らし、どの施行日に何が義務化されるかを把握しておく必要があります。
| 施行日 | 主な改正内容 | 中小企業への影響 |
|---|---|---|
| 2025年5月14日 (公布日) | 注文者の配慮義務(無理な工期・納期を設定しない努力義務等) | 業務委託・外注を行うすべての企業に発注時の配慮義務 |
| 2026年1月1日 | 個人事業者等関係の政令・省令の施行(注文者の措置に関する規定等) | 個人事業者へ業務を委託する際の注文者ルールが明確化 |
| 2026年4月1日 | 機械の労働災害防止等関係の規定(設計審査、製造時検査、性能検査、個別検定、型式検定等) | 機械装置を使う製造業・建設業で、設備の安全規制が強化 |
| 2027年1月1日 | 特定省令の追加施行 | 対象業種・作業の範囲が政令で順次拡大 |
| 2027年4月1日 | 「労働者と同じ場所で作業する個人事業者等」関係の政令・省令の本格施行 | 元方事業者・注文者の措置義務対象に個人事業者を含める |
| 公布後3年以内 (政令で定める日) | ストレスチェックの全事業場義務化(50人未満の事業場の努力義務を撤廃) | 小規模企業も含めて全事業場でメンタルヘルス対策が必要 |
ポイント:すでに公布日(2025年5月14日)から「注文者の配慮義務」は施行されています。下請けやフリーランスに業務を発注している企業は、法的義務が発生済みである点を見落とさないようにしましょう。
中小企業への実務影響|現場で何が変わるのか
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① 注文者・発注者としての配慮義務
業種を問わず、業務を委託する企業は「請負人の安全衛生を妨げるような無理な工期・納期等を設定してはならない」という配慮義務を負います。これは公布日(2025年5月14日)から施行済みのため、たとえばIT業界のフリーランスエンジニアに対する短納期発注、運送業の傭車契約での過密スケジュール、建設業の下請単価引下げを伴う工期短縮などは、安全衛生上の支障があれば法令違反のリスクがあります。発注書・契約書の見直し、スケジュール調整プロセスの文書化が望まれます。
② 元方事業者の措置義務の拡大(2027年4月1日施行予定)
建設現場や工場のように、複数の事業者が混在して作業する場では、元方事業者(元請け)が講じるべき安全衛生措置の対象が、自社・下請けの労働者だけでなく、現場で働く個人事業者にも拡大されます。たとえば、墜落防止措置や特定の有害業務に関する作業環境管理、立入禁止区域の設定などについて、一人親方や個人請負のフリーランスにも同等の配慮を行うことが求められます。建設業や設備工事業を営む中小企業は、現場の安全衛生計画の見直しが不可欠です。
③ 機械等の構造規格の強化(2026年4月1日施行)
2026年4月1日からは、設計審査・製造時検査・性能検査・個別検定・型式検定等の規定が改正・拡充されます。製造業・建設業で機械装置を新規導入する場合、「規格適合品か」「検定証票が貼付されているか」を確認したうえで購入する運用が改めて重要になります。中古機械の譲受けや海外メーカーからの直輸入では、適合性確認の証票・書類の有無を必ずチェックしてください。
④ 個人事業者自身の義務(2027年4月1日施行予定)
個人事業主・一人親方自身にも、安全装置のない機械を使用しない、危険・有害業務に関する安全衛生教育を受講するといった義務が課されます。これは「保護対象」だけでなく「義務の主体」としても位置づけるという改正の本質を体現する規定です。中小企業が業務委託先の個人事業者に安全衛生教育を案内・支援することは、法令対応とリスク回避の両面でメリットがあります。
⑤ ストレスチェックの全事業場義務化(公布後3年以内)
これまで従業員50人以上の事業場のみに義務付けられていたストレスチェックが、規模を問わず全事業場で義務化される見込みです。施行は公布後3年以内(2028年5月14日まで)に政令で定める日とされ、小規模事業場向けのマニュアル整備や地域産業保健センターの体制拡充が国主導で進められています。50人未満の中小企業も「いずれ義務化される」前提で、産業医・地域産業保健センターとの連携体制を早めに準備しておくことが望ましいでしょう。
⑥ 高年齢労働者の労働災害防止(事業者の努力義務)
同改正では、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善・作業管理等の措置を講ずることが事業者の努力義務として位置づけられました。中小企業では70歳・75歳と現役で働き続けるベテラン従業員も少なくありません。視認性の確保(照度の引き上げ、表示の拡大)、転倒・墜落リスクの低減(手すり・スロープの設置)、重量物作業のアシスト機器導入などは、業務改善助成金や中小企業省力化投資補助金の対象になり得るため、設備投資計画と一体で検討する価値があります。
業種別の影響度マップ
| 業種 | 主な影響ポイント | 優先対応 |
|---|---|---|
| 建設業 | 一人親方への措置義務拡大、機械等の検定強化、墜落防止 | 元請として安全衛生計画書を全面刷新 |
| 製造業 | 機械の構造規格・型式検定の強化、化学物質管理 | 設備導入時の適合性確認フロー整備 |
| 運送業 | 傭車契約での無理な納期、長時間労働 | 配車計画と契約条件の文書化 |
| IT・情報通信 | フリーランスエンジニアへの短納期発注、メンタルヘルス | 発注書ひな形の見直し、ストレスチェック準備 |
| サービス業(小売・飲食) | ストレスチェック義務化、高年齢労働者対策 | 地域産業保健センターとの連携整備 |
当事務所の見解|税務だけでなく労務リスクも統合管理を
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当事務所が中小企業の経営者・経理担当者から相談を受けるなかで強く感じるのは、「労務リスクを税務リスクと切り離して考える企業ほど、結果的に経営を脅かす損失を被りやすい」という現実です。労働安全衛生法上の義務違反は、直接的には行政指導や労災発生時の安全配慮義務違反として現れますが、その影響は税務・財務にも波及します。
外注費認定リスクとの関連
個人事業者を「労働者」と扱うべきか「外注先」と扱うべきかは、長年にわたり税務調査の論点でもあります。今回の改正で個人事業者への安全衛生措置を強化することは、実態として「労働者性」を高める要素にもなり得ます。形式上は業務委託でも、現場の指揮命令・時間管理・安全衛生措置の実態が雇用に近づくと、消費税の仕入税額控除の否認、源泉徴収義務、社会保険料の遡及徴収といった重大な税務・社会保険リスクが生じます。「現場では労働者並みに保護しつつ、契約は完全な業務委託」という運用が両立できる契約設計の見直しが急務です。
労災発生時の損害賠償・税務処理
労災発生時の損害賠償金は、原則として法人税法上の損金算入が可能ですが、安全配慮義務違反が認定されると懲罰的な要素を含む賠償金が課されるケースも増えています。改正法施行後は、個人事業者を含む現場全体の安全配慮が求められるため、賠償リスクの算定範囲も広がります。万一の労災発生に備えて、上乗せ労災保険・賠償責任保険の見直しと、その保険料の損金処理を併せて検討すべきタイミングです。
安全衛生投資と税制優遇の組み合わせ
改正対応のための設備投資・教育投資は、税制面でも優遇措置との組み合わせが可能です。たとえば、機械装置の更新には中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除)の検討余地があります。労働者の安全衛生教育や個人事業者向け教育費は、令和8年度改正で見直しが入った賃上げ促進税制との関連はないものの、研修費として損金算入できるほか、労働者向けの教育訓練費は要件次第で同税制の上乗せ要件への影響も生じ得ます。さらに、業務改善助成金(厚労省、令和8年度は予算35億円・3コースに再編)や中小企業省力化投資補助金は、設備投資の自己負担を圧縮する有力な手段です。
重要警告:安全衛生対策費用を「機械装置」と「修繕費」のいずれで計上するかで、即時損金算入の可否が変わります。ガード・センサー類の後付け設置などは、本体機械と一体で資本的支出と判断されるケースもあるため、見積取得時から税理士に相談されることをおすすめします。
注意:本改正への対応を「社労士マター」と位置づけて税理士・会計担当と切り離すと、契約形態の見直しに伴う税務影響を見落としがちです。労務・税務の両面から契約・経理フローを点検することで、二重の見落としを防げます。
今すぐやるべき5つの対応ステップ
- ステップ1:業務委託先・取引現場の棚卸し
外注先・一人親方・フリーランスとの取引を一覧化し、「労働者と同じ場所で作業しているか」「危険・有害業務に従事しているか」を整理します。建設業・製造業・運送業・IT業界など業種ごとに、改正の影響度が異なります。 - ステップ2:発注書・契約書の見直し
無理な工期・納期になっていないか、安全衛生措置の責任分担が明確か、災害発生時の対応手順が定められているかを確認します。とくに公布日(2025年5月14日)から施行されている注文者の配慮義務は、すでに法的効力が発生している点に注意してください。 - ステップ3:機械・設備の適合性確認(2026年4月施行への備え)
製造業・建設業で新規導入する機械装置について、構造規格適合品であること、必要な検定証票が貼付されていることを購入時に確認するフローを社内ルールに組み込みます。中古機械・海外直輸入品はとくに留意が必要です。 - ステップ4:元請けとしての現場安全衛生計画の刷新(2027年4月施行への備え)
建設業・設備工事業など複数事業者が混在する現場を持つ企業は、安全衛生計画書のひな形に「同じ場所で作業する個人事業者」を明示的に組み込み、立入禁止区域の周知、墜落防止措置、有害業務の作業環境管理の対象に含める運用を整備します。 - ステップ5:ストレスチェック実施体制の準備(公布後3年以内施行への備え)
従業員50人未満の事業場も、地域産業保健センターや外部産業医との連携体制を早めに構築します。簡易ストレスチェックツールの試行導入、結果の取扱い規程の整備、面接指導につなぐフローの設計が事前準備の柱になります。
📌 道濟会計事務所の税務・労務統合相談
本改正への対応は、契約形態・経理処理・社会保険・税務リスクが交錯する複合論点です。当事務所では税務面からの契約見直しと労務リスクの統合的な点検をご提供します。初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
- Q. 労働安全衛生法の改正は2026年に何が施行されますか?
- A. 2026年1月1日に個人事業者等関係の政令・省令が、2026年4月1日に機械の労働災害防止等に関する規定が施行されます。発注時の配慮義務は2025年5月14日(公布日)からすでに施行済みです。
- Q. 一人親方やフリーランスを雇う中小企業はどこから対応すべきですか?
- A. まず発注書・契約書を見直し、無理な工期・納期になっていないかを確認してください。次に現場で同じ場所で作業しているかを棚卸しし、2027年4月施行の措置義務拡大に備えて安全衛生計画書を刷新します。
- Q. ストレスチェックは50人未満の事業場でも義務化されますか?
- A. はい、改正法は「公布後3年以内(2028年5月14日まで)に政令で定める日から、全事業場で義務化」とされています。50人未満の事業場は努力義務から義務に変わるため、地域産業保健センター等との連携体制を早期に整備しておくことが推奨されます。
- Q. 注文者の配慮義務に違反するとどうなりますか?
- A. 直接の罰金規定がない努力義務的規定ですが、無理な工期で労災が発生すれば民事上の安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。発注書での工期算定根拠の文書化が予防策になります。
- Q. 改正に対応すると外注費が「給与」と認定されるリスクはありますか?
- A. 安全衛生上の保護を強化すること自体は労働者性の決定的な要素ではありません。ただし指揮命令・時間管理・専属性が伴う場合は、税務上「給与」と認定され、消費税の仕入税額控除否認・源泉徴収義務・社会保険料の遡及徴収につながるリスクがあります。契約形態と実態の整合性を税務面から点検することが重要です。
参考資料・出典
- 厚生労働省:労働安全衛生法の改正について
- 厚生労働省:個人事業者等の安全衛生対策について
- 厚生労働省リーフレット:労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて(PDF)
- 厚生労働省:個人事業者等の健康管理に関するガイドラインの策定について
- 関連通達:基発0514第1号(令和7年5月14日)、基発0330第1号(令和8年3月30日)、基発0331第11号(令和8年3月31日)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。公開日:2026年5月15日