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特定生産性向上設備等投資促進税制|2026年創設の即時償却とは

特定生産性向上設備等投資促進税制|令和8年度創設の設備投資減税を解説するアイキャッチ画像
この記事の要点3点

  • 令和8年度税制改正で特定生産性向上設備等投資促進税制が創設。経済産業大臣の確認を受けた投資計画に基づく設備について、即時償却または最大7%(建物等は4%)の税額控除を選べます。
  • 機械装置だけでなく建物・構築物・ソフトウエアまで対象。ただし中小企業者等でも投資計画の総額が5億円以上であることが要件で、影響を受けるのは大型投資を計画する企業です。
  • 投資計画の確認は令和11年3月31日まで。多くの中小企業はまず中小企業経営強化税制や少額減価償却資産の特例の活用を検討し、自社がどの制度に当てはまるかを早めに見極めましょう。

令和8年度税制改正で、新たな設備投資減税「特定生産性向上設備等投資促進税制」が創設されました。機械装置だけでなく建物や構築物まで対象に含め、即時償却または最大7%の税額控除を選べる、近年でも規模の大きい優遇措置です。一方で、適用には経済産業大臣の確認や一定額以上の投資計画といったハードルがあり、「自社で使えるのか分かりにくい」という声も多く聞かれます。本記事では、堺市の道濟会計事務所が、制度の全体像から中小企業にとっての実務的な意味、既存の中小企業経営強化税制との使い分けまでを、税理士の視点で整理します。

特定生産性向上設備等投資促進税制の概要

特定生産性向上設備等投資促進税制は、令和8年度税制改正で創設された設備投資向けの優遇措置です。大規模で高付加価値な投資を後押しすることを狙いとしており、青色申告法人が、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に基づいて対象設備を取得し、事業の用に供した場合に適用できます。

制度創設の背景には、国内の生産性向上や設備の更新投資を加速させたいという政策的な狙いがあります。これまでの設備投資減税は、機械装置を中心に比較的小規模な投資を対象とするものが多く、工場の新設のように建物まで含めた大型プロジェクトには使いにくい面がありました。特定生産性向上設備等投資促進税制は、こうした既存制度では拾いきれなかった大規模かつ高付加価値の投資を対象に加えることで、企業の前向きな投資判断を税制面から支える位置づけの制度だといえます。なお、ここでいう中小企業者等とは、おおむね資本金1億円以下の法人などを指し、大規模法人に発行済株式の一定割合を保有されている法人(いわゆるみなし大企業)は除かれます。

即時償却と税額控除を選択できる

この制度の最大の特徴は、優遇措置を二つの方法から選べる点です。一つ目は即時償却で、対象設備の取得価額の全額をその事業年度の損金に算入できます。通常は法定耐用年数にわたって少しずつ費用化する減価償却を、初年度に一括で行えるイメージです。二つ目は税額控除で、取得価額の7%(建物・建物附属設備・構築物については4%)を法人税額から直接差し引けます。即時償却は課税の繰り延べ(早期の節税)であるのに対し、税額控除は税負担そのものを軽くする効果がある点で性質が異なります。

税額控除を選んだ場合、その事業年度の法人税額に対して一定の上限が設けられていますが、控除しきれなかった金額は翌事業年度以降に繰り越して使うことができます。利益が出ている年度であれば税額控除、これから黒字化を見込む段階であれば即時償却というように、自社の業績見通しに応じて有利な方を選ぶ判断が求められます。

対象となる設備の範囲

対象資産の範囲が広いことも、この制度の注目点です。具体的には、機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウエアが対象とされています。設備投資減税では建物が対象外とされることが多いなか、建物そのものが対象に含まれているのは大きな特徴で、工場や倉庫の新設をともなう大型の投資にも対応できる設計になっています。

ポイント
建物が対象に含まれるため、生産設備の導入と建屋の建設をセットで計画する製造業などにとって、検討する価値の大きい制度です。

適用を受けるための要件と手続き

対象範囲が広い一方で、適用のハードルは決して低くありません。中心となる要件は、投資計画に記載された生産性向上設備等の取得価額の合計額が、中小企業者または農業協同組合等については5億円以上(それ以外の法人は35億円以上)であることです。あわせて、その投資計画について年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれることも求められます。

手続き面では、設備を取得する前に、投資計画について経済産業大臣の確認を受ける必要があります。この確認は令和11年3月31日までに受けることとされており、確認を受けた日から5年以内に対象設備を取得し、事業の用に供することが条件です。確認を受けずに先に設備を取得してしまうと適用できないため、計画段階からのスケジュール管理が欠かせません。

注意
同一の資産について、この制度の即時償却・税額控除と、他の特別償却や税額控除(中小企業経営強化税制など)を重ねて適用することはできません。複数の優遇制度の対象になりうる設備は、どの制度を使うかを取得前に決めておく必要があります。

中小企業への実務影響と3制度の使い分け

「規模の大きい優遇制度ができた」と聞くと期待が高まりますが、まず冷静に押さえておきたいのは、多くの中小企業にとってこの制度のハードルは高いという事実です。中小企業者等でも投資計画の総額で5億円以上が求められるため、年間の設備投資が数百万円から数千万円規模にとどまる事業者の場合、この制度の対象にはなりません。だからこそ、「自社がどの制度を使うべきか」を整理することが、実務上もっとも重要になります。

5億円要件の意味するもの

5億円という金額は、新工場の建設や大型の生産ラインの入れ替えなど、複数年にわたる大規模プロジェクトを想定した水準です。逆に言えば、成長志向で大型投資に踏み切る中堅規模の企業や、設備集約型の製造業にとっては、即時償却や税額控除のメリットが投資判断を後押しする材料になります。自社の中期的な設備投資構想がこの規模に達するかどうかが、検討に入る最初の分かれ目です。

中小企業経営強化税制・少額減価償却資産の特例との関係

大型投資に該当しない中小企業が活用しやすいのは、引き続き中小企業経営強化税制少額減価償却資産の特例です。中小企業経営強化税制は、中小企業者等が経営力向上計画の認定を受けたうえで対象設備を取得した場合に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選べる制度です。令和8年度税制改正では、対象となる工具の取得価額要件が1台または1基あたり40万円以上に引き上げられたうえで、適用期限が延長されました。

少額減価償却資産の特例も令和8年度税制改正で見直され、対象となる取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられています(年間合計300万円まで)。少額の備品やパソコンなどを機動的に費用化したい場合に有効です。これら3つの制度は、投資の規模に応じて役割が分かれていると整理すると分かりやすくなります。

項目特定生産性向上設備等投資促進税制中小企業経営強化税制少額減価償却資産の特例
位置づけ令和8年度創設の大型投資向け既存制度(令和8年度に一部見直し)既存制度(令和8年度に40万円へ拡充)
主な優遇措置即時償却、または取得価額の7%(建物等は4%)の税額控除即時償却、または取得価額の10%(資本金3,000万円超は7%)の税額控除取得価額の全額を取得年度に損金算入
対象資産機械装置・工具・器具備品・建物・建物附属設備・構築物・ソフトウエア経営力向上計画に記載した機械装置・工具・ソフトウエア等取得価額40万円未満の減価償却資産
規模の目安投資計画の総額が中小企業者等で5億円以上対象設備ごとの取得価額要件あり1個・1組40万円未満、年間合計300万円まで
必要な手続き経済産業大臣による投資計画の確認経営力向上計画の認定確定申告時に明細書を添付

税額控除の繰越と重複適用の整理

実務で見落としやすいのが、優遇制度の重複適用は認められないという点です。たとえば1台の機械装置について、特定生産性向上設備等投資促進税制の即時償却と中小企業経営強化税制の税額控除を両方使うことはできません。同じ設備が複数の制度の対象になりうる場合は、税効果を試算したうえで、設備の取得前にどの制度を選ぶかを決めておく必要があります。

また、税額控除を選んだものの当期の法人税額が小さく控除しきれなかった場合でも、その控除しきれない金額は翌事業年度以降に繰り越せます。黒字と赤字を繰り返しやすい時期にある企業は、即時償却による早期の損金算入と、税額控除の繰越のどちらが資金繰りに資するかを、複数年のシミュレーションで比較することが望まれます。

もう一つ実務で意識したいのが、即時償却を選んだ場合の会計と税務のつながりです。即時償却はあくまで税務上の取扱いであり、設備そのものが物理的になくなるわけではありません。初年度に取得価額の全額を損金算入すると、翌年度以降はその設備に係る減価償却費が計上されなくなるため、表面的な利益が膨らんで見えることがあります。金融機関への決算説明や、翌期以降の納税予測にも影響するため、即時償却を使う際は「初年度に大きく節税できる」という効果だけでなく、その後の年度の損益の見え方まで含めて検討しておくと安心です。

当事務所の見解・実務上の注意点

まずは「対象になるかどうか」の判定から

新しい優遇制度が登場すると「とにかく使いたい」という意識が先行しがちですが、特定生産性向上設備等投資促進税制については、まず自社の投資計画が5億円以上の規模に達するかを冷静に確認することが出発点です。当事務所がご相談を受ける堺市周辺の中小企業の多くは、年間の設備投資がこの規模に届かないため、現実的には中小企業経営強化税制や少額減価償却資産の特例の活用が中心になります。制度の存在を知ったうえで、自社にとって本当に検討すべき制度はどれかを切り分けることが、限られた時間を有効に使うコツです。

確認・認定の手続きが実務の山場になる

この制度も中小企業経営強化税制も、税務申告だけで完結せず、経済産業大臣の確認や経営力向上計画の認定といった事前手続きが必要です。とくに特定生産性向上設備等投資促進税制では、投資利益率15%以上の見込みを示す投資計画を作成し、設備取得前に確認を受けなければなりません。確認を受ける前に設備を取得・契約してしまうと適用できなくなるため、「いつまでに何をするか」の逆算が欠かせません。設備の発注時期と手続きのスケジュールがずれることが、実務上もっとも多い失敗パターンです。

認定経営革新等支援機関としての関与

道濟会計事務所は、堺市の認定経営革新等支援機関です。経営力向上計画の策定支援や、設備投資にあたっての税制適用の可否判断、複数制度を比較したうえでの有利選択など、計画段階からの伴走を行っています。設備投資は金額が大きく、いったん取得してしまうと制度選択をやり直せません。だからこそ、発注や契約に踏み切る前の段階で、税理士や支援機関に相談しておくことを強くお勧めします。

今すぐやるべきこと

特定生産性向上設備等投資促進税制を含む設備投資減税を検討する場合、取得前の準備が成否を分けます。以下のステップで進めてください。

  1. ステップ1:今後の設備投資計画を棚卸しする
    向こう3〜5年で予定している機械装置・建物・ソフトウエアなどの投資内容と金額を一覧化し、投資の総額がどの程度の規模になるかを把握します。
  2. ステップ2:自社が使える制度を見極める
    投資計画の総額が5億円以上であれば特定生産性向上設備等投資促進税制、それ未満であれば中小企業経営強化税制や少額減価償却資産の特例というように、規模に応じて検討対象の制度を絞り込みます。
  3. ステップ3:投資利益率と税効果を試算する
    特定生産性向上設備等投資促進税制では年平均投資利益率15%以上の見込みが要件です。あわせて、即時償却と税額控除のどちらが自社の業績見通しに合うかを複数年で試算します。
  4. ステップ4:確認・認定の手続きスケジュールを組む
    経済産業大臣の確認や経営力向上計画の認定は、設備の取得前に完了させる必要があります。発注予定日から逆算して、申請に必要な書類と提出時期を整理します。
  5. ステップ5:税理士・認定支援機関に早めに相談する
    制度選択は設備取得後にやり直せません。発注や契約の前に、専門家に適用可否と有利選択の判断を仰ぎましょう。

よくある質問

Q. 特定生産性向上設備等投資促進税制はいつまでに手続きをすればよいですか。
A. 投資計画について経済産業大臣の確認を受けるのは令和11年3月31日までとされています。確認を受けた日から5年以内に対象設備を取得し、事業の用に供することが条件です。設備の取得前に確認を受ける必要があるため、計画段階から早めの準備が必要です。
Q. 即時償却と税額控除はどちらを選ぶべきですか。
A. 一概には言えません。即時償却は取得価額の全額を初年度に損金算入する課税の繰り延べで、税額控除は法人税額そのものを減らす効果があります。利益が安定して出ている企業は税額控除、これから黒字化を見込む段階の企業は即時償却が向く傾向がありますが、複数年の業績見通しを踏まえた試算が欠かせません。
Q. 中小企業ですが投資額が5億円に届きません。使える制度はありますか。
A. 中小企業経営強化税制や少額減価償却資産の特例の活用が現実的です。中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定を受けて対象設備を取得した場合に即時償却または税額控除を選べます。少額減価償却資産の特例は令和8年度税制改正で対象が取得価額40万円未満に拡充されました。
Q. 建物も本当に対象になるのですか。
A. はい。特定生産性向上設備等投資促進税制では、機械装置や工具などに加えて建物・建物附属設備・構築物も対象資産に含まれます。ただし建物等について税額控除を選ぶ場合の控除率は4%で、機械装置等の7%より低く設定されています。
Q. 同じ設備で複数の優遇制度を併用できますか。
A. できません。同一の資産について、特定生産性向上設備等投資促進税制と、他の特別償却や税額控除を重ねて適用することは認められていません。複数の制度の対象になりうる設備は、取得前にどの制度を使うかを決めておく必要があります。
Q. 確認を受ける前に設備を取得してしまった場合はどうなりますか。
A. 特定生産性向上設備等投資促進税制は、投資計画について経済産業大臣の確認を受けたうえで設備を取得することが前提です。確認前に取得・契約した設備は対象外となるおそれが高いため、発注のタイミングは手続きの進捗とあわせて慎重に管理してください。
Q. 投資計画の年平均投資利益率15%以上とは、どのように考えればよいですか。
A. 投資によって見込まれる利益の増加額などを投資額と対比し、年平均でどの程度の利益率になるかを示す指標です。特定生産性向上設備等投資促進税制では、この投資利益率が年平均15%以上となることが見込まれる投資計画であることが要件とされています。算定には一定の前提や根拠資料が必要となるため、投資計画の作成段階で税理士や認定経営革新等支援機関に相談しながら進めることをお勧めします。

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参考資料・出典

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