堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
賃上げ促進税制 令和8年度改正|教育訓練費上乗せ廃止と中小実務
📅 公開日:2026年5月12日 |
🔄 最終更新日:2026年5月12日 |
⏱️ 読了時間:約10分 |
👤 監修:道濟会計事務所(堺市の税理士)
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📋 この記事の要点3点
- 大企業向け措置は2026年3月31日で廃止済み:全法人向けの賃上げ促進税制は終了し、現在使えるのは中堅・中小企業向けのみです。
- 中小企業も「教育訓練費の上乗せ措置」が廃止:従来の上乗せ最大+10%が使えなくなり、控除率の上限が下がります。
- 中堅企業(従業員2,000人以下)は要件改定+令和9年3月廃止予定:2026年4月以降開始事業年度から、4%・5%・6%の段階的控除構造へ変更されます。
2025年12月に公表された令和8年度税制改正大綱は、賃上げ促進税制に大きなメスを入れました。大企業(全法人向け)の措置は2026年3月31日をもって廃止され、中堅企業向けも閾値が引き上げられたうえで令和9年3月末廃止予定、そして中小企業向けでも「教育訓練費の上乗せ措置」が廃止されます。「中小企業向けは現行維持」と一言で語られがちですが、実は中小企業オーナーが必ず把握すべき細かな変更が複数含まれています。本記事では財務省・国税庁の一次情報をもとに、令和8年度(2026年4月以降開始事業年度)から何が変わったのか、中小企業の実務にどう影響するのか、今期決算で何をすべきかを税理士の視点で整理します。
賃上げ促進税制 令和8年度改正の全体像
賃上げ促進税制は、給与等の支給額が一定割合以上増加した法人について、その増加額の一部を法人税額から控除できる制度です。令和8年度税制改正では、企業規模ごとに次のように見直されました。
企業規模別の改正サマリー
| 区分 | 令和8年度改正後の取扱い |
|---|---|
| 大企業(全法人向け) | 令和8年3月31日をもって廃止(適用期限到来による終了) |
| 中堅企業(常時使用従業員2,000人以下) | 適用期限(令和9年3月31日)到来をもって廃止。令和8年4月1日〜令和9年3月31日開始事業年度につき要件見直し |
| 中小企業 | 現行制度を維持。ただし教育訓練費に係る上乗せ措置は廃止 |
中堅企業向け:閾値と控除率の改定
令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度について、中堅企業向け(常時使用従業員2,000人以下)の措置は次のように見直されます。
- 原則の税額控除率(10%)が適用できる場合:継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上(現行:3%以上)である場合。
- 上乗せ措置:増加割合が4%以上の場合に税額控除率を15%加算する措置を、増加割合5%以上で5%加算、6%以上で15%加算する2段階構造に変更。
- 教育訓練費に係る上乗せ措置:廃止。
つまり、これまで「3%賃上げで10%控除+15%上乗せ=25%」を狙えた企業は、令和8年4月以降、同じ控除率を得るには6%の賃上げが必要になります。中堅企業にとっては実質的な要件強化です。
中小企業向け:「現行維持」の中身
中小企業者等向けの賃上げ促進税制は、令和6年度改正で創設された5年間の繰越控除制度を含む現行のしくみが基本的に維持されます。ただし、教育訓練費の上乗せ措置については「中小企業向けの措置における教育訓練費に係る上乗せ措置は、廃止する」と大綱に明記されており、企業規模を問わず廃止されました。
📌 ポイント整理
「中小企業向け賃上げ促進税制は維持」とよく言われますが、より正確には「本体は維持されるが、教育訓練費上乗せだけは廃止される」です。教育訓練費を多めに使って上乗せ控除を狙っていた企業にとっては実質的な減税縮小となります。
「中小企業向け賃上げ促進税制は維持」とよく言われますが、より正確には「本体は維持されるが、教育訓練費上乗せだけは廃止される」です。教育訓練費を多めに使って上乗せ控除を狙っていた企業にとっては実質的な減税縮小となります。
大企業向け廃止が示す政策メッセージ
大企業向け(全法人向け)措置の廃止は、令和8年度改正における最も象徴的な変更です。大綱の説明によれば、税制全体の中で「賃上げ促進税制(給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度)の見直しによる増収見込額」は平年度7,780億円程度(地方法人税等を含む)とされており、税収中立性も配慮された大規模な見直しと位置付けられます。
このメッセージは明確です。「賃上げは大企業にとって所与の経営判断とすべきで、税制でインセンティブを与える対象は中堅・中小企業に絞る」という政策スタンスへの転換です。中小企業オーナーは、この流れの中で「自社が政策的に支援対象として位置付けられている期間に、税制を最大限活用すべき」という視点を持つ必要があります。
中小企業への実務影響と注意点
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令和8年度改正は「中小企業は現行維持」と聞いて安心していると、決算実務でつまずく可能性があります。中小企業オーナーが押さえるべき実務影響を整理します。
1. 教育訓練費上乗せ廃止のインパクト
従来の中小企業向け賃上げ促進税制では、給与等支給額の増加割合に応じた基本控除(15%〜30%)に加え、教育訓練費が一定割合以上増加した場合に上乗せ(+10%)が認められていました。令和8年度改正によりこの教育訓練費上乗せが廃止されたため、控除率の上限が引き下げられる結果となります。
背景には、2025年1月に公表された会計検査院の調査で、「実際に増加した教育訓練費以上に税額控除されているケースがある」と指摘されたことがあるとされています。研修費や外部講師費用を活用して節税を図っていた企業は、令和8年4月以降開始事業年度では同じ手法が使えなくなります。
2. 「全法人向け廃止」の意味
賃上げ促進税制には「全法人向け措置」「中堅企業(常時使用従業員2,000人以下)向け措置」「中小企業者等向け措置」の3つの規定が存在します。令和8年度税制改正大綱では、このうち全法人向け措置を令和8年3月31日で廃止することが明記されました。中堅企業向け・中小企業者等向けはそれぞれ別の規定として残ります。中小企業オーナーは原則として中小企業者等向け措置を適用するため、「全法人向け廃止」の影響を直接は受けません。ただし、グループ法人課税の対象となる場合や、複数規定の選択適用を検討していた場合は、税理士と適用関係を整理する必要があります。
3. 繰越控除制度は中小企業向けで維持
令和6年度改正で創設された中小企業向け繰越控除制度(賃上げを実施したものの法人税額が少なく控除しきれない場合、未控除額を5年間繰越できる制度)は令和8年度改正でも維持されています。赤字基調の中小企業でも将来の黒字化局面で控除を活用できる仕組みです。中小企業技術基盤強化税制(中小研究開発税制)でも、控除限度超過額を3年間繰り越せる制度が新設されており、中小企業の税額控除設計はより柔軟になっています。
⚠️ よくある誤解:「中小企業の定義」
賃上げ促進税制における「中小企業者等」は、租税特別措置法上の中小企業者等を指します。資本金1億円以下の法人でも、資本金10億円以上の大企業(適用除外事業者)の100%子会社等に該当する場合は「みなし大企業」として中小企業向け措置を適用できないケースがあります。グループ会社構造を持つ法人は、現行制度の適用可否を税理士に確認することを強く推奨します。
賃上げ促進税制における「中小企業者等」は、租税特別措置法上の中小企業者等を指します。資本金1億円以下の法人でも、資本金10億円以上の大企業(適用除外事業者)の100%子会社等に該当する場合は「みなし大企業」として中小企業向け措置を適用できないケースがあります。グループ会社構造を持つ法人は、現行制度の適用可否を税理士に確認することを強く推奨します。
当事務所の見解・実務上の留意事項
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当事務所として、令和8年度改正後の賃上げ促進税制を活用する中小企業に向けて、特に強調したい実務ポイントを3点お伝えします。
1. 「給与等支給額」の算定誤りに注意
賃上げ促進税制の適用判定では、「給与等支給額」「継続雇用者給与等支給額」「比較給与等支給額」の3つを正確に算定する必要があります。実務でよくあるミスは次のようなものです。
- 役員給与・退職手当・出向受入分の処理を誤る
- パート・アルバイト・派遣社員の取扱いを誤る
- 育休・産休による休業期間中の従業員を継続雇用者から除外し忘れる
- 給与等支給額に含まれる手当・賞与の範囲を取り違える
これらは決算直前ではなく、期中の給与計算段階から区分を整理しておくことが重要です。決算が終わってから「実は控除が取れた」「逆に取れなかった」と気付くケースが現場では少なくありません。
2. 教育訓練費の廃止を踏まえた人材投資の見直し
教育訓練費上乗せが廃止されたからといって、人材育成投資自体を縮小すべきではありません。むしろ、令和8年度以降は税制ではなく経営判断として「人材投資の費用対効果」を厳密に検証する局面になります。当事務所では、人材育成費の中身を整理し、本来必要な投資と税制目当てに膨らませていた部分を区別する作業を顧問先と一緒に進めています。
3. 賃上げの「コミットメント」は中長期戦略として位置付ける
中小企業向け繰越控除制度の存在からも分かるとおり、賃上げは単年度の節税策ではなく、5年スパンの賃金政策として位置付けるべきです。賃上げを表明する補助金(中小企業新事業進出補助金、ものづくり補助金など)との組み合わせも視野に入れ、税制・補助金・金融機関融資を統合的に設計することで、賃上げの財源と税負担軽減を同時に確保できます。
4. 決算前シミュレーションの必要性
賃上げ促進税制は確定申告書に明細書を添付しなければ適用できない制度です。控除可能額の試算、必要な書類の準備、明細書の作成漏れ防止のために、決算月の2〜3か月前から税理士と試算を始めるのが理想です。とくに3月決算法人であれば、12月〜1月ごろから給与等支給額の見通しを立てて、適用要件を満たすかを確認しておきましょう。
当事務所では顧問先の決算スケジュールにあわせて、賃上げ促進税制の試算シートを作成し、ぎりぎりの賃上げで控除を取り逃すケースや、要件未達となる落とし穴を未然に防ぐ取り組みを進めています。給与の最終調整や賞与支給の判断材料としても、このシミュレーションは有効です。
💡 中堅企業(従業員2,000人以下)の判断ポイント
中堅企業向け措置は令和9年3月31日で廃止予定です。令和8年4月1日〜令和9年3月31日開始事業年度については新しい4%・5%・6%の閾値で運用しつつ、令和9年4月以降の賃金政策は税制以外の根拠(採用競争力・離職率改善・労使関係)で組み立てる必要があります。
中堅企業向け措置は令和9年3月31日で廃止予定です。令和8年4月1日〜令和9年3月31日開始事業年度については新しい4%・5%・6%の閾値で運用しつつ、令和9年4月以降の賃金政策は税制以外の根拠(採用競争力・離職率改善・労使関係)で組み立てる必要があります。
今すぐやるべきこと(5ステップ)
令和8年度改正後の賃上げ促進税制を最大限活用するためのアクションを、5ステップで整理しました。
- ステップ1:自社の区分(中小企業/中堅企業/大企業)を確認する
租税特別措置法上の中小企業者等に該当するか、みなし大企業に該当しないかを資本金・株主構成・グループ関係から確認します。中堅企業(従業員2,000人以下)は新しい4%・5%・6%の閾値が適用されます。 - ステップ2:継続雇用者の給与等支給額を期中から区分管理する
継続雇用者・新規採用者・退職者の給与を月次で集計できる体制を整え、「継続雇用者給与等支給額」「比較給与等支給額」を期末時点で算定できるようにします。 - ステップ3:教育訓練費の予算配分を見直す
令和8年4月以降は教育訓練費上乗せが使えないため、税制目当てで膨らんでいた研修費があれば棚卸し、本来必要な人材育成投資に集中させます。 - ステップ4:5年間の繰越控除計画を立てる
赤字年度や法人税額が少ない年度でも、賃上げを実施すれば控除枠を繰り越せます。中期経営計画と連動させて、いつ控除を取り切るかを設計します。 - ステップ5:補助金・税制を統合した賃上げ財源計画を税理士と検討する
新事業進出補助金やものづくり補助金の「賃上げ要件」と賃上げ促進税制の控除を組み合わせ、賃上げ財源と税負担軽減を同時に確保する戦略を策定します。
よくある質問(FAQ)
- Q. 賃上げ促進税制は令和8年度改正でいつから何が変わりますか?
- A. 大企業(全法人)向け措置は2026年(令和8年)3月31日をもって廃止されました。中堅企業(常時使用従業員2,000人以下)向けは2026年4月1日以降開始事業年度から閾値を3%→4%に引き上げる等の見直しが行われ、適用期限の2027年3月31日到来をもって廃止予定です。中小企業向けは現行制度が維持されますが、教育訓練費に係る上乗せ措置は廃止されました。
- Q. 中小企業の教育訓練費の上乗せ措置はいつから使えなくなりますか?
- A. 令和8年度税制改正で中小企業向け教育訓練費の上乗せ措置は廃止されました。改正法令に従い、2026年4月以降に開始する事業年度から適用されない見込みです。具体的な適用時期の詳細は適用法令と通達で必ず確認してください。
- Q. 賃上げ促進税制で控除しきれなかった金額は繰り越せますか?
- A. はい。令和6年度税制改正で創設された中小企業向け繰越控除制度により、控除しきれなかった金額は最大5年間繰り越せます。この制度は令和8年度改正でも維持されており、法人税額が少ない年度でも将来の控除枠として活用できます。
- Q. 中堅企業向けの新しい控除率はどう計算しますか?
- A. 令和8年4月1日〜令和9年3月31日開始事業年度では、継続雇用者給与等支給額の増加割合4%以上で原則控除率10%、5%以上で+5%加算、6%以上で+15%加算となります。教育訓練費上乗せは廃止されたため、最大控除率は25%(10%+15%)となります。
- Q. 中小企業者の定義は何ですか?
- A. 賃上げ促進税制における中小企業者等は租税特別措置法上の定義に従います。原則として資本金1億円以下の法人ですが、適用除外事業者(前3事業年度の平均所得が15億円超など)や「みなし大企業」(大企業の100%子会社など)に該当する場合は中小企業向け措置を適用できないことがあります。判定が難しい場合は税理士に相談してください。
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参考資料・出典
- 令和8年度税制改正の大綱(3/9)法人課税:財務省
- 令和8年度税制改正の大綱(概要):財務省(PDF)
- No.5927-2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制):国税庁
- 中小企業向け「賃上げ促進税制」:中小企業庁
- 令和8年度 経済産業関係 税制改正について:経済産業省(PDF)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。公開日:2026年5月12日/最終更新日:2026年5月12日