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防衛特別法人税2026年4月|中小企業2400万円ラインの実務

防衛特別法人税 2026年4月施行 中小企業課税ライン2400万円の実務
この記事の要点3点

  • ポイント1:2026年4月1日以後に開始する事業年度から、すべての法人に「防衛特別法人税」(基準法人税額×4%、年間500万円控除)が課される
  • ポイント2:中小法人(軽減税率15%適用)の場合、課税所得約2,400万円までは実質的に課税されない。全法人の約94%が課税対象外と見込まれる
  • ポイント3:税額がゼロでも申告書(別表二十系列)の提出が必須。中間申告義務は2027年4月1日以後開始事業年度から開始する

2026年4月1日以後に開始する事業年度から、新しい国税「防衛特別法人税」がスタートしました。令和7年法律第13号(所得税法等の一部を改正する法律)として2025年3月31日に公布された制度で、防衛力強化のための財源確保を目的とした法人税の付加税です。「中小企業には影響が小さい」と紹介されることが多い制度ですが、課税所得2,400万円付近の中小法人や複数の関連法人を持つグループ法人は、確かに当事者になります。本記事では、堺市の中小法人を中心に法人税の年次申告を担当している道濟会計事務所が、国税庁の公表資料・財務省の税制改正大綱に基づき、防衛特別法人税の計算・申告・キャッシュフローへの影響を実務目線で整理します。3月決算法人は2027年5月の確定申告から、12月決算法人は2027年2月の確定申告から最初の申告期限を迎えます。

制度・改正の概要

防衛特別法人税は、令和6年度税制改正大綱で創設方針が示され、令和7年度税制改正で具体的な税率・課税標準・基礎控除額が確定した、法人税の付加税です。法人税法とは別建ての租税で、根拠条文は「防衛特別法人税法(令和7年法律第13号)」となります。国税庁は2025年5月時点で申告書様式(別表二十系列)・記載要領・通達を公表し、2026年4月1日からの適用に備えています。

計算式

防衛特別法人税額=(基準法人税額 − 基礎控除500万円)× 4%

「基準法人税額」とは、外国税額控除・所得税額控除・分配時調整外国税相当額の控除・試験研究費の税額控除等を差し引くの法人税額をいいます。つまり通常の法人税申告書で計算する「法人税額」よりも前段階の数値が課税ベースになります。基礎控除は年額500万円で、事業年度が12カ月未満の場合は月数按分されます。なお、通算法人(グループ通算制度の適用法人)の場合は、年500万円の基礎控除を各通算法人の基準法人税額の比で按分する仕組みです。

適用開始時期

事業年度の例最初の防衛特別法人税の適用最初の中間申告
3月決算(4月〜翌3月)2026年4月〜2027年3月期2027年11月(中間納期限)
12月決算(1月〜12月)2027年1月〜12月期2027年8月(中間納期限)
9月決算(10月〜翌9月)2026年10月〜2027年9月期2027年5月(中間納期限)

初年度は適用対象になっても中間申告は不要で、確定申告のみとなります。中間申告義務は、防衛特別法人税の課税事業年度のうち、令和9年(2027年)4月1日以後に開始するものから生じます。

外国税額控除との関係

防衛特別法人税の課税ベースは、法人税額(控除前)です。ただし算出された防衛特別法人税からは、控除しきれなかった外国税額(法人税額からの控除限度額を超える部分)を別途控除できる仕組みが設けられています。海外子会社からの配当や海外支店所得を持つ法人は、二段階で外国税額控除が行われる点に注意が必要です。具体的には、まず法人税本体で外国税額控除を適用し、控除しきれずに残った部分があれば、改めて防衛特別法人税の納付額から控除を行います。これにより、海外進出を行う中小法人や、海外子会社からの配当を受け取る中堅企業でも、二重課税が実質的に調整されるよう設計されています。

制度設計の経緯

防衛特別法人税は、政府の「防衛力整備計画」(2022年12月閣議決定)で示された防衛力強化のための財源確保策の一環として位置づけられています。当初、法人税・所得税・たばこ税の3税目への付加税方式で年間1兆円程度の財源を確保する方針が示され、令和7年度税制改正で法人税付加税分(防衛特別法人税)の具体的な税率・基礎控除額等が確定しました。所得税付加税については2027年(令和9年)からの導入が予定されており、復興特別所得税の税率を見直す形で実施される見込みです。中小法人にとっては、本制度の負担は限定的でも、将来の所得税付加税が役員報酬・配当への影響として現れる可能性があり、法人と個人の両面で備える発想が必要です。

申告と納付

申告書は法人税申告書と同時に所轄税務署へ提出します。様式は「別表二十・防衛特別法人税申告書」を中心とした一連の別表で、e-Taxにも対応しています。納付期限は法人税と同じく、原則として事業年度終了日の翌日から2カ月以内です。税額がゼロの場合でも申告書の提出は必須で、申告を怠ると延滞税・無申告加算税が発生する可能性があります。

中小企業への実務影響

「中小企業には影響が小さい」と紹介されがちな本税制ですが、実務上は5つの観点で必ず確認が必要です。

1. 課税ラインの目安は「課税所得2,400万円」

軽減税率15%の中小法人を前提に計算すると、課税所得800万円までは法人税率15%、800万円超部分は23.2%です。法人税額500万円(基礎控除いっぱい)に達する課税所得を逆算すると、約2,400万円付近となります。財務省と中小企業庁の試算(令和7年度税制改正資料)によれば、本制度の課税対象となる法人は全法人の約6%(金額ベースでは法人税収全体の相当割合)、課税対象外は約94%と見込まれています。年商10億円未満の中小法人の大半は実際の納税額はゼロですが、後述のとおり申告書の提出義務は別問題として残ります。

2. 申告書の提出は税額ゼロでも必須

納税額がゼロでも申告書(別表二十系列)の提出義務がある点が、現場の実務に最も影響します。法人税の決算スケジュールに別表二十を組み込み、税理士事務所側も決算チェックリストへの追加が必要です。当事務所では2026年9月以降の決算スケジュールに別表二十確認工程を追加し、決算事前打合せの段階で顧問先に説明を始めています。決算事務報酬の見直しが必要となる可能性についても、早めの説明が望ましいです。

3. グループ通算法人は基礎控除の按分計算が必要

通算法人の場合、年間500万円の基礎控除を「各通算法人の基準法人税額の比」で按分します。たとえば親会社A社の基準法人税額が4,000万円、子会社B社が1,000万円の場合、A社の基礎控除は400万円・B社は100万円となり、それぞれ(4,000−400)×4%=144万円、(1,000−100)×4%=36万円が防衛特別法人税となります。親子のいずれかが赤字の年は、按分比率が当年度の業績で変動するため、通算グループ全体の税効果計算がより複雑になります。

4. 中間申告の準備は2027年から

初年度の確定申告までは中間申告義務が発生しませんが、令和9年4月1日以後に開始する事業年度からは、法人税の中間申告書を提出する法人について防衛特別法人税の中間申告書の提出義務も生じます。前事業年度の確定税額の2分の1(予定申告)または仮決算による方式が選択できるとされており、納付資金の予算化が必要になります。決算が2期目以降の3月決算法人は、2027年11月の中間納期限が最初のハードルです。

5. キャッシュフローへの影響

例として、課税所得5,000万円の中小法人(軽減税率15%・残部23.2%適用)を試算します。法人税額は約1,090万円(800万円×15%+4,200万円×23.2%≒1,094万円)、これから500万円を控除した594万円に4%を乗じた約24万円が防衛特別法人税となります。法人税本体に対しては約2.2%の追加負担で、年間税負担としては数十万円〜の規模感です。中堅企業に近づくほど影響は大きくなり、課税所得2億円規模では数百万円単位の上乗せが現実化します。中小法人の納税予算策定では、住民税・事業税といった地方税の予算化に加えて、防衛特別法人税の予算化(決算前の見込額算定)を月次決算サイクルに組み込むことが現実的です。なお、防衛特別法人税の金額そのものは、税効果会計上は法人税等として処理する整理が一般的になる見込みで、繰延税金資産・負債の評価における実効税率の算定にも将来的に影響します。

当事務所の見解・実務上の注意点

制度開始から1カ月余り経過したいま、堺市内の関与先で実際に発生した論点を3つに絞って共有します。

見解1:「うちは関係ない」と思い込まない確認体制を作る

中小法人の多くは課税対象外ですが、申告書提出は税額ゼロでも必須です。「税額がない」と「申告書がいらない」は同義ではありません。当事務所では、関与先の前期課税所得・特別な税額控除の状況・繰越欠損金の残額を一覧化し、防衛特別法人税の課税ラインに対する余裕度を「青信号(課税所得1,500万円以下)/黄信号(1,500〜2,200万円)/赤信号(2,200万円超)」の3段階で管理しています。赤信号の関与先には、年度途中の業績見込みを踏まえた事前シミュレーションを行い、決算月直前の節税策の検討材料を提供しています。

見解2:法人税本体の節税策は防衛特別法人税にも効く

賃上げ促進税制・中小企業経営強化税制・少額減価償却資産特例などの法人税の特別控除や即時償却を活用すると、基準法人税額自体が減少します。これは防衛特別法人税の課税ベースも同時に圧縮することを意味します。たとえば中小企業経営強化税制で500万円の即時償却を実行した場合、法人税の節税効果に加えて、課税所得が500万円減ることによる防衛特別法人税の効果(仮に課税ラインを超えていれば最大20万円程度)も合算で享受できます。法人税の節税策をすでに採用している関与先には、防衛特別法人税側の追加メリットを試算で明示することが顧客満足につながります。

見解3:通算グループの基礎控除按分は決算前にシミュレーションする

通算法人の場合、各社の基礎控除は基準法人税額の比で按分されます。決算が締まらないと正確な按分比が分からない一方、概算シミュレーションは決算1〜2カ月前から可能です。当事務所は通算グループの関与先について、決算3カ月前を目安に各通算法人の概算基準法人税額を試算し、グループ全体での防衛特別法人税負担と各社の負担額を見える化しています。決算後の修正申告を避けるためにも、グループ通算採用法人は申告期限の2カ月前までに最終試算を完了させるスケジュールを推奨します。

今すぐやるべきこと

中小法人の経理担当者・経営者が、初年度の確定申告までに踏むべき5つのステップです。

  1. ステップ1:前期の基準法人税額を確認し、500万円との距離を測る(2026年5月まで)
    前期の法人税申告書から「外国税額控除等の控除前法人税額」を抽出します。直近期で基準法人税額が500万円を超えていれば、今期も防衛特別法人税の納税が発生する可能性が高くなります。500万円の50%以下なら課税ライン外と見込まれ、申告書の提出のみで完結します。
  2. ステップ2:決算月直前の業績予測を踏まえた事前試算(決算2カ月前)
    決算月の2カ月前を目安に、最終損益見込みから基準法人税額と防衛特別法人税を試算します。課税ラインを超える見込みなら、賃上げ促進税制や中小企業経営強化税制等の活用、決算賞与の妥当な範囲での支給、修繕費の前倒し計上など、法人税の節税策を再検討します。
  3. ステップ3:申告書様式(別表二十)の準備(決算月)
    e-Taxまたは紙申告いずれの場合も、別表二十・別表二十付表の様式を会計事務所と確認します。会計ソフトの法人税申告書作成機能のアップデート状況も同時に確認します。
  4. ステップ4:法人税申告書との同時提出(決算翌月から2カ月以内)
    法人税申告書と一緒に防衛特別法人税申告書を所轄税務署へ提出します。電子申告(e-Tax)にも対応しているため、すでに法人税をe-Tax提出している法人は同じ仕組みで提出できます。提出忘れは延滞税・無申告加算税の対象になるため、決算チェックリストに必ず追加します。
  5. ステップ5:令和9年4月以後の中間申告の準備(2027年初頭から)
    令和9年4月1日以後に開始する事業年度では、法人税の中間申告書を提出する法人は防衛特別法人税の中間申告書も提出する義務が生じます。前年確定額の2分の1を予定申告するか仮決算で計算するか、税理士と協議のうえ方針を固定し、キャッシュフロー計画に反映します。

よくある質問

Q. 中小法人で課税所得が2,400万円以下なら、本当に何もしなくてよいですか。
A. 防衛特別法人税の納税は発生しませんが、申告書(別表二十系列)の提出は税額ゼロでも必須です。提出を怠ると無申告加算税の対象になる可能性があります。決算スケジュールに別表二十確認工程を必ず組み込み、税理士と提出のうえ完了を確認してください。
Q. 基礎控除500万円は法人税額から引くのですか、課税所得から引くのですか。
A. 課税所得ではなく「基準法人税額」から引きます。基準法人税額とは、外国税額控除や所得税額控除を差し引く前の法人税額です。たとえば法人税額が700万円なら、(700万円−500万円)×4%=8万円が防衛特別法人税となります。法人税の計算では税額控除前の金額を起点にする点に注意してください。
Q. 赤字決算でも申告書を出す必要がありますか。
A. 法人税額がゼロ(赤字決算)の場合は基準法人税額もゼロのため防衛特別法人税はかかりません。ただし、法人税の確定申告書を提出する義務がある法人は防衛特別法人税の申告書も併せて提出する必要があります。期限内に出さないと無申告となるため、青色申告の取消リスクや延滞税のリスクが法人税本体に及ぶ可能性もあります。
Q. 外国税額控除を多く使う法人は二重課税になりませんか。
A. 防衛特別法人税の算出後に、法人税で控除しきれなかった外国税額(控除限度超過額)を改めて控除する二段階の仕組みが設けられています。これにより、海外子会社配当や海外支店所得を持つ法人でも二重課税は調整されます。具体的な控除額の計算は申告書別表で行うため、税理士と早めに整理してください。
Q. グループ通算法人での基礎控除はどう按分しますか。
A. 年500万円の基礎控除を、各通算法人の基準法人税額の比で按分します。たとえば通算グループ全体の基準法人税額が5,000万円のうち、A社4,000万円・B社1,000万円なら、基礎控除はA社400万円・B社100万円となります。グループの構成や業績で按分比が変動するため、決算1〜2カ月前のシミュレーションを推奨します。
Q. 中間申告はいつから始まりますか。
A. 防衛特別法人税の中間申告義務は、令和9年(2027年)4月1日以後に開始する課税事業年度から発生します。3月決算法人なら2027年4月開始事業年度(2028年3月期)から、半期経過時点で中間納付期限が訪れます。初年度(2026年4月開始事業年度)は中間申告不要で、確定申告のみとなります。

参考資料・出典

道濟会計事務所の税務相談

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監修:道濟寛樹(税理士・道濟会計事務所代表)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。





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