堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
中小企業技術基盤強化税制2026|試験研究費12%控除と3年繰越
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:中小企業技術基盤強化税制は、試験研究費の額に原則12パーセントを乗じた金額を法人税額から控除する制度です。令和8年度改正で上乗せ措置が3年延長されました。
- 2ポイント2:青色申告書を提出する資本金1億円以下の中小企業者などが対象です。控除しきれない金額を最大3年間繰り越せる繰越税額控除制度が創設されました。
- 3ポイント3:適用には確定申告書等への記載と明細書の添付が必要です。研究に専ら従事する人の人件費など、集計の根拠を今期から整えましょう。
CONTENTS目次
製品の改良や新しい技術の開発に取り組む中小企業にとって、研究開発の費用は将来への投資である一方、資金繰りの負担にもなります。その負担を税金の面から軽くするのが、試験研究費の額に応じて法人税額を差し引く研究開発税制です。中小企業者向けには、中小企業技術基盤強化税制という専用の枠組みが用意されています。
令和8年度税制改正では、税額控除割合などの上乗せ措置の適用期限が延長され、控除しきれなかった金額を翌期以降に繰り越せる制度も創設されました。本記事では、国税庁のタックスアンサーと改正の概要に沿って、制度の仕組み、改正点、申告での注意点を解説します。
中小企業技術基盤強化税制の概要
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制度の内容
国税庁のタックスアンサーNo.5444は、中小企業技術基盤強化税制を、中小企業者等が各事業年度において試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を、その事業年度の法人税額から控除することを認めるものと説明しています。この制度を適用する事業年度は、一般試験研究費の額に係る税額控除制度(No.5442)を適用することはできません。根拠法令等は措法42の4です。
対象となる法人
適用対象は、青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等です。中小企業者とは基本的に資本金1億円以下の法人をいいますが、No.5432の研究開発税制に規定する中小企業者では、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人のうち、次の法人などが除かれています。
- ☑ 発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
- ☑ 発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人
- ☑ 適用除外事業者(基準年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人)
大規模法人には、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人や、大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人などが含まれます。また、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度と清算中の各事業年度は対象外です。
対象となる試験研究費の額
対象となる試験研究費の額は、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究(新たな知見を得るためまたは利用可能な知見の新たな応用を考案するために行うものに限ります。)のために要する費用で、損金の額に算入されるものなどです。具体的には、その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限ります。)および経費、他の者に委託をして試験研究を行う場合の委託費などが含まれます。対価を得て提供する新たな役務の開発に係る一定の試験研究の費用も対象です。
判定に使う4つの用語
税額控除割合や上乗せの判定には、No.5442の用語の説明にある次の割合を使います。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 比較試験研究費の額 | 適用年度開始の日の3年前の日から適用年度開始の日の前日までの期間内に開始した各事業年度の試験研究費の額の合計額を、その期間内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額 |
| 増減試験研究費割合 | 増減試験研究費の額(適用年度の試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した額)の比較試験研究費の額に対する割合 |
| 試験研究費割合 | 適用年度の試験研究費の額の平均売上金額に対する割合 |
| 平均売上金額 | 適用年度と売上調整年度(適用年度開始の日の3年前の日から前日までの期間内に開始した各事業年度)の売上金額の合計額を、その事業年度の数で除した金額 |
税額控除割合と控除の上限
| 区分 | 税額控除割合(No.5444) |
|---|---|
| 下記のいずれにも該当しない事業年度 | 12パーセント |
| 増減試験研究費割合が12パーセントを超える事業年度 | 12%+{(増減試験研究費割合-12%)×0.375} |
| 試験研究費割合が10パーセントを超える事業年度 | 12%+(12%×控除割増率) |
税額控除割合は17パーセントが上限です。控除額は、その事業年度の調整前法人税額の25パーセントに相当する金額が上限ですが、増減試験研究費割合が12パーセントを超える事業年度は調整前法人税額×10%、試験研究費割合が10パーセントを超える事業年度は調整前法人税額×{(試験研究費割合-10%)×2}が上乗せされます(両方は重複適用できず、前者が優先適用されます)。
中小企業への実務影響:令和8年度改正と一般型との比較
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上乗せ措置の適用期限が3年延長
国税庁の令和8年度法人税関係法令の改正の概要は、増減試験研究費割合が12%を超える場合又は試験研究費割合が10%を超える場合の税額控除割合の上乗せ措置及び控除税額の上限の上乗せ措置の適用期限が、それぞれ3年延長されたとしています。研究開発費を前年より増やした企業や、売上高に対する研究開発費の比率が高い企業は、引き続き12パーセントを超える控除割合を使える可能性があります。
繰越税額控除制度の創設
同じ改正で、青色申告書を提出する法人が繰越税額控除限度超過額を有する場合に、調整前法人税額からその金額を控除できる繰越税額控除制度が創設されました。控除できるのは、その事業年度の税額控除額との合計で調整前法人税額の25%(上乗せ措置の適用を受ける事業年度は上乗せ後の割合)が上限で、イメージ図では翌期以降最大3年間の繰越しとされています。No.5444も、控除しきれなかった金額について3年間の繰越しができると説明しています。
繰越税額控除には条件があります。繰越税額控除の適用を受けようとする事業年度において試験研究費の額が比較試験研究費の額を超える場合に限り適用でき、一般試験研究費の額に係る税額控除制度の適用を受ける事業年度は適用できません。また、繰越税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度(繰越税額控除の適用を受けない事業年度を含みます。)の確定申告書に、繰越税額控除限度超過額の明細書を添付する必要があります。
繰越税額控除限度超過額とは、事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度(その事業年度まで連続して青色申告書を提出している場合の各事業年度に限ります。)の中小企業者等税額控除限度額のうち、控除しきれない金額の合計額をいいます。青色申告を途中でやめると、繰り越した金額を使えなくなる点に注意が必要です。
他の税額控除と併用するときの90パーセント制限
タックスアンサーNo.5450は、一の事業年度で複数の税額控除制度の適用を受けようとする場合に、税額控除可能額の合計額が調整前法人税額の90パーセント相当額を超えるときは、その超える部分の金額は控除できないとしています。そのうえで、中小企業技術基盤強化税制や中小企業者等における賃上げ促進税制などの一定の制度については、控除しきれなかった金額として繰越税額控除に関する規定を適用するとしています。賃上げや設備投資の税額控除と同時に使う年度は、控除の順序と繰越額を確認しておく必要があります。
国外への委託研究は控除対象が段階的に縮小
他の者に委託する試験研究のうち、その委託に基づき行われる試験研究が国外において行われるもの(医薬品等の一定の臨床試験を除く国外委託試験研究)は、その試験研究費の額の50パーセント相当額が控除対象とされました。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度については70パーセント相当額、令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度については60パーセント相当額です。
一般試験研究費の税額控除との比較
| 項目 | 中小企業技術基盤強化税制(No.5444) | 一般試験研究費(No.5442) |
|---|---|---|
| 対象法人 | 青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等 | 青色申告書を提出する法人 |
| 税額控除割合の上限 | 17パーセント | 14パーセント |
| 設立事業年度など | 原則の12パーセント | 8.5% |
| 繰越税額控除 | 3年間の繰越しができる | 適用を受ける事業年度は繰越税額控除を適用できない |
一般試験研究費の制度では、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度について、増減試験研究費割合が0パーセントに満たない場合の税額控除割合が8.5%-その満たない部分の割合×8.5/30とされるなど、研究開発費を減らした年度の控除割合が下がる仕組みです。中小企業者は、原則として12パーセントを確保できる中小企業技術基盤強化税制の方が有利になる場面が多いと考えられますが、どちらか一方しか選べないため、毎期試算して判断します。
当事務所の見解・試験研究費の税額控除で損をしないための注意点
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見落としやすいのは集計と書類の段階
この制度の適用を受けるためには、控除の対象となる控除対象試験研究費の額、試験研究費の額および控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。制度の要件を満たしていても、記載や添付が不十分では控除を受けられないおそれがあります。当事務所では、次の3点を特に重視しています。
第一に、人件費の対象者を明確にすることです。人件費は、専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限られます。開発部門の担当者でも、営業や製造の業務を兼ねている場合は対象になるかの検討が必要です。担当業務と従事状況を記録しておくことが、計算の根拠になります。
第二に、過去3年分の試験研究費を整理しておくことです。比較試験研究費の額は、適用年度開始の日の3年前の日から適用年度開始の日の前日までの期間内に開始した各事業年度の試験研究費の額の平均で計算します。過去の集計がないと、上乗せ措置や繰越税額控除の条件を判定できません。試験研究費割合の計算に使う平均売上金額も過去3年分の売上金額が基礎になるため、試験研究費と売上金額を同じ表で年度ごとに管理しておくと、毎期の判定が速くなります。
第三に、控除しきれない年度にも明細書を出し続けることです。繰越税額控除制度は、繰越税額控除の適用を受けない事業年度であっても明細書の添付が必要とされています。赤字で法人税額がない年度に手続を省くと、翌期以降に控除の機会を失うおそれがあります。No.5444の手続きの欄も、繰越税額控除限度超過額の明細書は、それが生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に添付する必要があるとしています。
第四に、サービス開発の費用は要件を確認してから含めることです。対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究は、大量の情報の分析、分析で発見された法則を利用した役務の設計、その法則と役務が妥当であることの確認のすべてが行われる場合に対象となり、分析は情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエアを用いて行われるものとされています。システム開発の費用であれば何でも対象になるわけではありません。
当事務所では、試験研究費の範囲の整理から明細書の作成、一般型との有利判定までを決算スケジュールに組み込んでご支援しています。研究開発を続ける企業の税務体制を整えたい方は、堺市の税務顧問のページもご覧ください。
今すぐやるべきこと:決算前の確認手順
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- ステップ1:自社が中小企業者に当たるか確認する
資本金の額、株主構成(同一の大規模法人に2分の1以上、複数の大規模法人に3分の2以上を所有されていないか)、基準年度の所得金額による適用除外事業者の判定を、事業年度ごとに確認します。青色申告書を提出していることも前提条件です。 - ステップ2:試験研究費に当たる費用を洗い出す
原材料費、専ら従事する者の人件費、経費、委託費を勘定科目から抽出します。売上原価等の原価の額に含まれている費用は対象から除かれるため、製造原価との区分も確認します。国外で行われる委託研究がある場合は、控除対象となる割合を区分して把握します。研究に専ら従事する者の名簿と従事状況の記録も、この段階で用意します。 - ステップ3:過去3年分と売上金額を集計する
比較試験研究費の額と平均売上金額を計算し、増減試験研究費割合と試験研究費割合を求めて、上乗せ措置の対象になるかを判定します。設立事業年度や比較試験研究費の額が0である事業年度は、増減試験研究費割合による税額控除割合の上乗せの対象外である点も確認します。 - ステップ4:一般型と比べて有利な制度を選ぶ
中小企業技術基盤強化税制と一般試験研究費の税額控除制度の控除額を試算し、税額控除割合の上限(17パーセントと14パーセント)の違いも踏まえて、繰越税額控除の適用可否も含めて、その事業年度に適用する制度を決めます。賃上げ促進税制など他の税額控除と併用する場合は、調整前法人税額の90パーセントの制限も考慮します。 - ステップ5:申告書への記載と明細書の添付を確認する
控除対象試験研究費の額などを確定申告書等に記載し、計算の明細書を添付します。控除しきれない金額がある場合は、繰越税額控除限度超過額の明細書を翌期以降も毎期添付します。法人税額がなく控除を受けない事業年度でも、明細書の添付を省略しないよう決算チェックリストに組み込みます。
よくある質問
- Q. 研究開発を専門に行っていない中小企業でも使えますか?
- A. 対象は青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等で、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する費用があれば対象になり得ます。ただし、試験研究は新たな知見を得るためまたは利用可能な知見の新たな応用を考案するために行うものに限られます。日常的な品質管理などとの区別を、社内で整理しておくことが大切です。
- Q. 赤字で法人税がかからない年度は、税額控除が無駄になりますか?
- A. 令和8年度改正で繰越税額控除制度が創設され、控除しきれなかった金額は翌期以降最大3年間繰り越せるようになりました。ただし、繰越税額控除を受ける事業年度に試験研究費の額が比較試験研究費の額を超えていることが条件で、控除しきれない金額が生じた事業年度以後は毎期、明細書の添付が必要です。
- Q. 一般試験研究費の税額控除と両方を使うことはできますか?
- A. できません。中小企業技術基盤強化税制を適用する事業年度は、一般試験研究費の額に係る税額控除制度を適用することはできません。事業年度ごとにどちらか一方を選ぶため、両方の控除額を試算して有利な方を選びます。繰越税額控除も、一般試験研究費の制度を適用する事業年度には適用できない点に注意してください。
- Q. 研究担当者の給与は全額を試験研究費にできますか?
- A. 人件費は、専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限られます。研究以外の業務を兼ねている担当者の給与をそのまま含めることはできない場合があるため、担当業務や従事状況を記録し、対象者の範囲を明確にしておくことが必要です。迷う場合は決算前に専門家へ相談してください。
- Q. 海外の会社に研究を委託した費用も対象になりますか?
- A. 令和8年度改正により、委託に基づく試験研究が国外において行われるものは、医薬品等の一定の臨床試験を除き、その試験研究費の額の50パーセント相当額が控除対象とされました。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度は70パーセント相当額、令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度は60パーセント相当額です。
- Q. 研究用の機械を買った場合、特別償却と併用できますか?
- A. 減価償却資産の取得価額のうちに試験研究費の額が含まれる場合において、その試験研究費の額について本制度による税額控除の適用を受けたときは、その減価償却資産については、他の制度による特別償却または他の制度による税額控除の規定の重複適用は認められません。どちらの制度を使うかを取得前に検討しましょう。
- Q. 資本金が1億円以下なら必ず中小企業者になりますか?
- A. なりません。資本金の額または出資金の額が1億円以下でも、発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人などは除かれます。所得金額の年平均額が15億円を超える適用除外事業者も対象外です。親会社の規模や株主構成の変化も毎期確認してください。
参考資料・出典
- 国税庁 No.5444 中小企業技術基盤強化税制
- 国税庁 No.5442 一般試験研究費の額に係る税額控除制度
- 国税庁 No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者
- 国税庁 No.5450 法人税の額から控除される特別控除額の特例
- 国税庁 令和8年度法人税関係法令の改正の概要
- 国税庁 令和8年度法人税関係法令の改正の概要(一括ダウンロード版PDF)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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