堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
居住用賃貸建物の消費税2026|仕入税額控除の制限と転用時の調整
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:令和2年10月1日以後に行う居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額は、仕入税額控除の対象になりません。対象は税抜1,000万円以上の高額特定資産などに当たる建物です。
- 2ポイント2:アパート・マンションを取得する不動産賃貸業の法人・個人や、店舗併用住宅を建てる事業者が影響を受けます。店舗部分は合理的に区分すれば控除できます。
- 3ポイント3:第三年度の課税期間の末日までに課税賃貸用へ転用・譲渡すると控除額を調整できるため、取得日と用途別の賃料を記録しておきましょう。
CONTENTS目次
アパートやマンションなど、住宅として貸す建物を取得するときは、建物代金に含まれる消費税が仕入税額控除の対象になるかどうかで、資金計画が大きく変わります。令和2年4月の消費税法等の改正により、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額は仕入税額控除の対象とされなくなりました。
一方で、取得後の一定期間内に事務所用や民泊用などの課税賃貸用に供した場合や、他の者に譲渡した場合には、控除できなかった税額の一部を後から控除額に加える調整の仕組みがあります。本記事では、国税庁の通達・質疑応答事例・リーフレットに沿って、判定のポイントと実務上の注意点を解説します。
居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限とは
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制限の内容と適用時期
国税庁の消費税のパンフレットは、国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象にならないと説明しています。この規定は、令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額について適用されます。ただし、令和2年3月31日までに締結した契約に基づき令和2年10月1日以後に行われる課税仕入れ等には適用されません(経過措置)。根拠となる条文は消費税法第30条第10項です。
居住用賃貸建物の定義
居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものをいいます。つまり、次の2つの条件を両方満たす建物が対象です。
- ☑ 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物ではないこと
- ☑ 高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当すること
高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。調整対象固定資産は、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置などの棚卸資産以外の資産で、消費税等を除いた税抜価格が100万円以上のものです。調整対象自己建設高額資産は、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の100/110に相当する金額等の累計額が1,000万円以上となったものをいいます。
住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物
消費税法基本通達11-7-1は、建物の構造及び設備の状況その他の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいうとして、次の例を挙げています。
| 通達の例 | 内容 |
|---|---|
| (1) | 建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など、建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物 |
| (2) | 旅館又はホテルなど、旅館業法第2条第1項に規定する旅館業に係る施設の貸付けに供することが明らかな建物 |
| (3) | 棚卸資産として取得した建物であって、所有している間、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかなもの |
判定は課税仕入れを行った日の状況で行う
通達11-7-2は、居住用賃貸建物に該当するかどうかは課税仕入れを行った日の状況により判定するとしています。同日において住宅の貸付けの用に供しないことが明らかでない建物は居住用賃貸建物に該当しますが、課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日において、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかにされたときは、居住用賃貸建物に該当しないものとして差し支えないとされています。取得時点の用途の見込みと、その期の末日までの状況の両方が判定に関わるということです。
同じ改正で住宅の貸付けの非課税範囲も見直された
令和2年4月の改正では、住宅の貸付けに係る契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない場合であっても、その貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合は、消費税を非課税とすることとされました(令和2年4月1日以後に行われる住宅の貸付けから適用)。居住用か事業用かの区分は、賃料の非課税判定と仕入税額控除の制限の両方に関わります。
中小企業への実務影響:店舗併用・修繕・法人税の処理
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店舗併用住宅は合理的に区分すれば店舗部分を控除できる
建物の一部が店舗用になっている居住用賃貸建物について、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分とそれ以外の居住用賃貸部分とに合理的に区分しているときは、居住用賃貸部分に係る課税仕入れ等の税額についてのみ仕入税額控除が制限されます。通達11-7-3は、合理的に区分しているとは、使用面積割合や使用面積に対する建設原価の割合など、その建物の実態に応じた合理的な基準により区分していることをいうとしています。
国税庁の質疑応答事例は、廊下や共用のエントランスなどの共用部分についても、これらの合理的な基準で区分しているときは、共用部分のうち居住用賃貸部分に区分された部分の税額が制限されるとしています。また、居住用賃貸部分にのみ使用される廊下やエントランスを店舗部分と居住用賃貸部分の使用面積割合で区分することは、合理的に区分しているとはいえないと注記しています。さらに、合理的な区分を行った結果、居住用賃貸部分の税抜価額が1,000万円未満であったとしても、その部分の仕入税額控除は制限されます。同じ事例の注記は、居住用賃貸建物はその附属設備を含めて税抜価格が1,000万円以上の建物をいうと説明しています。
建物の資本的支出も対象になる
通達11-7-5は、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額には、その建物に係る資本的支出(資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分)に係る税額が含まれるとしています。ただし、資本的支出自体が高額特定資産の仕入れ等に該当しない場合などは、この制限は適用されないことにも留意するとしています。大規模な改修を行う際は、支出の単位と金額を確認する必要があります。
自ら建設する場合は累計額が1,000万円以上となった課税期間から
自己建設高額特定資産である居住用賃貸建物については、累計額が1,000万円以上となった課税期間以後のその建物に係る課税仕入れ等の税額に制限が適用され、その前の課税期間以前に行われた課税仕入れ等の税額には消費税法第30条第1項の規定の適用があることに留意するとされています(通達11-7-4)。
仕入控除税額の計算方式の判定にも影響する
課税売上高が5億円超または課税売上割合が95パーセント未満の事業者は、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかで仕入控除税額を計算します。国税庁のタックスアンサーNo.6401は、一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更することはできませんとしています。制限の対象となる建物の税額を誤って課税仕入れ等に含めると、方式の有利判定そのものが誤り、その誤りが翌期まで続くおそれがあります。
高額特定資産を取得した場合の特例との関係
居住用賃貸建物は、定義のうえで高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に当たる建物です。国税庁の届出書に関するパンフレットは、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行った場合は、その仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、免税事業者になることができないとしています。また、その3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は、消費税簡易課税制度選択届出書を提出することができないとしています。課税方式を検討する際は、この特例との関係も併せて確認する必要があります。
法人税では控除対象外消費税額等として処理する
国税庁の法人税の質疑応答事例は、税抜経理方式を適用する法人が居住用賃貸建物を取得した場合、控除できない仮払消費税等の額は資産に係る控除対象外消費税額等に該当し、法人税法施行令第139条の4の規定により、損金経理した金額のうち一定の金額を損金の額に算入できるとしています。また、後に仕入控除税額の調整計算が行われた場合に生じる差額は、その調整が行われた事業年度の益金の額に算入され、取得した事業年度の控除対象外消費税額等を遡及して修正する必要はないとしています。
当事務所の見解・転用時の調整で損をしないための注意点
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調整の仕組みを知っておくことが最大の対策
制限の適用を受けた居住用賃貸建物について、第三年度の課税期間の末日にその建物を有しており、かつ、その全部又は一部を調整期間に課税賃貸用に供した場合には、計算した消費税額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算します。第三年度の課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいい、調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。加算額は、取得時に制限された税額に、調整期間中の建物の貸付けの対価の額の合計額のうち課税賃貸用に供したものに係る金額の割合を乗じて求めます。
国税庁のリーフレットの具体例(単位:万円)では、居住用賃貸建物の取得消費税額2,000について、調整期間に居住用に賃貸した賃料合計が600、事業用に賃貸した賃料合計が400であった場合に、800をR6/3期の仕入控除税額に加算するとしています。また、調整期間に他の者に譲渡した場合は、譲渡対価も割合の計算に含めて、譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算します。
民泊への転用も課税賃貸用に当たります。国税庁の質疑応答事例は、民泊サービスは非課税となる住宅の貸付け以外の貸付けである施設の貸付けに当たるとし、居住用賃貸建物の一部を民泊サービスの用に供した場合は調整の対象になるとしています。
当事務所が重視する3つの実務ポイント
第一に、取得前に用途を確定させ、その根拠を残すことです。判定は課税仕入れを行った日の状況で行われるため、店舗・事務所として貸す予定の区画があるなら、図面や募集条件などで客観的に示せる状態にしておくことが大切です。
第二に、用途別の賃料を調整期間の終わりまで区分して記録することです。調整額は賃料の割合で計算するため、居住用と事業用の賃料が混在した帳簿では計算できません。第三年度の課税期間がいつになるかを、取得した時点で台帳に書いておくことをおすすめします。
第三に、修繕や増改築の支出を建物ごとに管理することです。資本的支出も制限の対象になり得るため、工事の発注単位と金額を確認してから経理処理を決める必要があります。
当事務所では、建物の取得計画の段階から消費税と法人税の両面で試算を行い、届出の時期や記録の方法までご提案しています。不動産賃貸を含む事業全体の申告体制を見直したい方は、堺市の税務顧問のページもご覧ください。
今すぐやるべきこと:建物を取得する前後の確認手順
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- ステップ1:取得予定の建物が居住用賃貸建物に当たるか判定する
一の取引単位につき税抜の支払対価の額が1,000万円以上か、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物に当たるかを、通達11-7-1の例と照らして確認します。令和2年3月31日までに締結した契約に基づくものかどうかも、契約書の日付で確かめます。 - ステップ2:店舗併用なら区分の基準を決めて資料を残す
使用面積割合や使用面積に対する建設原価の割合など、建物の実態に応じた基準を選び、共用部分の扱いも含めて計算資料を保存します。居住用賃貸部分にのみ使用される廊下などを全体の面積割合で按分しないよう注意します。 - ステップ3:課税方式と届出への影響を試算する
個別対応方式と一括比例配分方式の有利判定は、制限対象の税額を除いて行います。高額特定資産の特例により、免税事業者に戻れない期間や簡易課税を選べない期間が生じないかも確認します。一括比例配分方式を選んだ場合は2年間以上継続して適用する必要があるため、翌期の見込みも含めて判断します。 - ステップ4:第三年度の課税期間を台帳に記録する
仕入れ等の日、その日の属する課税期間、第三年度の課税期間の末日を建物ごとに記録し、用途別の賃料を区分して集計できる勘定科目を設けます。調整期間とは、仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいうため、その期間の賃料の合計額を後から確実に集計できるようにしておきます。 - ステップ5:転用・譲渡があれば調整計算を申告に反映する
事務所用・民泊用への転用や売却があった場合は、第三年度の課税期間又は譲渡した日の属する課税期間の申告で加算額を計算し、法人は益金算入の処理も確認します。税抜経理方式の法人では、取得時に生じた控除対象外消費税額等を遡及して修正する必要はないため、調整した事業年度の処理だけを確認すれば足ります。
よくある質問
- Q. 居住用賃貸建物に当たるかどうかは、いつの時点で判断しますか?
- A. 課税仕入れを行った日の状況により判定します。その日に住宅の貸付けの用に供しないことが明らかでない建物は居住用賃貸建物に該当します。ただし、課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日において、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかにされたときは、居住用賃貸建物に該当しないものとして差し支えないとされています(消費税法基本通達11-7-2)。
- Q. 1階が店舗のマンションを買った場合、すべての消費税が控除できなくなりますか?
- A. 店舗部分と居住用賃貸部分とを合理的に区分しているときは、居住用賃貸部分に係る税額についてのみ控除が制限されます。区分の基準は、使用面積割合や使用面積に対する建設原価の割合など建物の実態に応じたものとされ、共用部分も同じ基準で区分します。区分の根拠となる図面や計算資料は保存しておきましょう。
- Q. 取得したアパートの一部で民泊を始めた場合、控除できなかった消費税は戻りますか?
- A. 第三年度の課税期間の末日までに民泊サービスを開始した場合は、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整の対象になります。国税庁の質疑応答事例は、民泊サービスは施設の貸付けに当たり、課税賃貸用に供した場合に該当するとしています。加算額は、調整期間の賃料のうち課税賃貸用に係る割合で計算します。
- Q. 居住用賃貸建物を売却したときにも調整はありますか?
- A. あります。制限の適用を受けた居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合は、譲渡対価なども含めて計算した割合を取得時の税額に乗じ、譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算します。売却の時期が第三年度の課税期間の末日より前かどうかを確認してください。
- Q. 建物の大規模修繕の消費税も制限の対象になりますか?
- A. 居住用賃貸建物に係る資本的支出の税額は制限の対象に含まれます(消費税法基本通達11-7-5)。ただし、資本的支出自体が高額特定資産の仕入れ等に該当しない場合や、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物に係る課税仕入れ等に該当する場合は、制限は適用されません。工事ごとに金額と対象を確認しましょう。
- Q. 税抜経理の法人は、控除できなかった消費税をどう処理しますか?
- A. 資産に係る控除対象外消費税額等として、法人税法施行令第139条の4の規定により、損金経理した金額のうち一定の金額を損金の額に算入できます。後に調整計算で仕入控除税額が増えた場合の差額は、その事業年度の益金の額に算入され、取得した事業年度の処理を遡って修正する必要はありません。
- Q. 1,000万円未満のアパートを買った場合も制限されますか?
- A. 居住用賃貸建物は、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当する建物に限られます。高額特定資産は、一の取引単位につき課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上のものです。なお、1,000万円以上の建物を合理的に区分した結果、居住用賃貸部分が1,000万円未満になっても制限は適用されます。
参考資料・出典
- 国税庁 消費税法基本通達 第7節 居住用賃貸建物
- 国税庁 質疑応答事例(居住用賃貸建物の合理的な区分)
- 国税庁 質疑応答事例(居住用賃貸建物を民泊に転用した場合の調整)
- 国税庁 質疑応答事例(居住用賃貸建物の控除対象外消費税額等)
- 国税庁 消費税法改正のお知らせ(令和2年4月)
- 国税庁 消費税のあらまし(居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限等)
- 国税庁 No.6401 仕入控除税額の計算方法
- 国税庁 消費税の届出書(高額特定資産を取得した場合)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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