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電子帳簿保存法の電子取引データ保存2026|保存要件と猶予措置を解説

電子帳簿保存法の電子取引データ保存2026の保存要件を示すアイキャッチ
この記事の要点3点

  • メールやネットで授受した請求書・領収書などの電子取引データは、2024年1月から紙ではなくデータのまま保存することが義務です(宥恕措置は2023年末で終了)。
  • 保存には「真実性の要件」と「可視性(検索)の要件」を満たす必要があります。売上高5,000万円以下の事業者などは検索要件が不要です。
  • 要件どおりの保存が間に合わない場合も、相当の理由があれば猶予措置を利用できます。ただしデータ自体の保存は必須です。

取引先とのやり取りがメールやクラウドサービスに移り、請求書や領収書をデータで受け取る場面が当たり前になりました。電子帳簿保存法では、こうしてデータで授受した「電子取引」について、データのまま保存することが義務づけられています。本記事では、電子取引データ保存の制度の概要から、真実性・可視性という2つの保存要件、検索要件が不要になる売上高5,000万円以下の基準、そして相当の理由による猶予措置まで、中小企業・個人事業者が押さえておくべきポイントを税理士がわかりやすく解説します。

電子取引データ保存とは(制度の概要)

電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データで保存することに関するルールを定めた法律で、大きく「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分があります。このうち電子帳簿等保存とスキャナ保存は利用するかどうかが任意であるのに対し、電子取引のデータ保存はすべての事業者にとって義務である点が大きな特徴です。つまり、まだ会計の電子化に踏み切っていない事業者であっても、メールやインターネットで請求書・領収書を授受している以上、電子取引データの保存だけは避けて通れないということになります。所得税の申告を行う個人事業主も、法人税の申告を行う会社も、ともに対象です。

「電子取引」とは何か

電子取引とは、取引情報を電子データでやり取りする取引のことです。たとえば次のようなものが該当します。

  • 電子メールに添付して受け取った請求書・領収書・注文書などのPDF
  • インターネット通販の購入時にサイトからダウンロードした領収書
  • クラウド型の請求書・経費精算システムで受領した請求書
  • EDI取引やペーパーレスFAXで授受したデータ

これらは、紙でやり取りした書類をスキャンして保存する「スキャナ保存」とは区別されます。最初からデータで受け取ったものは、電子取引データ保存の対象です。

義務化までの経緯

電子取引データの保存義務自体は以前から定められていましたが、データのまま保存することへの準備が間に合わない事業者に配慮し、2023年12月31日までは紙に印刷して保存することを認める宥恕措置が設けられていました。

重要:この宥恕措置は2023年12月31日で終了しました。2024年1月1日以後に行う電子取引については、原則として電子データのまま保存しなければなりません。紙に印刷した控えだけを残し、元の電子データを破棄する取扱いは原則として認められない点に注意が必要です。

保存要件を満たせなかった場合の考え方

義務化と聞くと「要件を一つでも満たさなければ重いペナルティがあるのでは」と不安になりますが、国税庁の一問一答では、保存時に満たすべき要件にしたがって保存できなかったとしても、その事実をもって直ちに青色申告の承認が取り消されたり、経費や仕入税額控除が認められなくなったりするものではない旨が示されています。電子取引データが適切に保存されていない場合は、ほかの事情とあわせて総合的に判断されるとされており、まずは「データを消さずに残す」ことが何より重要です。とはいえ、これは保存要件を満たさなくてよいという意味ではなく、後述の保存要件や猶予措置にそって正しく保存する体制を整えることが本来の対応です。

中小企業への実務影響と保存要件

電子取引データを保存する際は、「真実性の要件」と「可視性の要件」の両方を満たす必要があります。これらは、保存したデータが改ざんされていないこと(真実性)と、後から確認・検索できること(可視性)を担保するためのものです。

真実性の要件

真実性の要件は、次のいずれかの方法で満たします。

方法内容
① タイムスタンプ(送信前)タイムスタンプが付された後のデータを授受する
② タイムスタンプ(受領後)データの授受後、速やかに(または事務処理規程に基づき業務処理サイクル経過後速やかに)タイムスタンプを付す
③ 訂正削除の履歴・防止訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムでデータの授受・保存を行う
④ 事務処理規程訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する

システム投資が難しい中小企業にとっては、④の事務処理規程を整備する方法が最も現実的です。国税庁は事務処理規程のサンプルを公表しており、これを自社向けに調整して運用すれば、追加のコストをかけずに真実性の要件を満たせます。

可視性の要件と検索要件の緩和

可視性の要件としては、パソコン・ディスプレイ・プリンタなどの見読可能装置と操作マニュアルの備付け、システム概要書等の備付け、そして検索機能の確保が求められます。検索機能は本来、次の3つを満たす必要があります。

  • 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること
  • 日付または金額の範囲を指定して検索できること
  • 2以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること

もっとも、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、範囲指定検索と組合せ検索は不要となり、取引年月日・取引金額・取引先で検索できれば足ります。さらに、次のいずれかに当てはまる事業者は、検索機能の要件そのものがすべて不要になります。

検索要件がすべて不要となる場合

  • ☑ 判定期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下である
  • ☑ 出力した書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出でき、かつダウンロードの求めに応じられる

このため、多くの中小企業・個人事業者では、データを決まった場所に整理して保存し、ダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、高度な検索システムを導入しなくても実務上の要件を満たせます。

具体例:メールでPDF請求書を受け取る場合

たとえば、取引先から毎月メールでPDFの請求書を受け取っている小規模な会社を考えます。この会社の前々事業年度の売上高が5,000万円以下であれば、検索機能の要件はすべて不要です。対応としては、受け取ったPDFを「請求書」用の共有フォルダに保存し、ファイル名を「20260710_◯◯商事_55000」のように取引年月日・取引先・金額の順で付けておきます。あわせて、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を整備して運用すれば、真実性の要件も満たせます。専用システムを導入しなくても、この運用だけで法律上の保存要件に対応できるのです。大切なのは、受け取ったデータを個人のメールボックスに放置せず、決まった場所に確実に残す習慣をつくることです。

現実的な対応のかたち

結論として、中小企業の標準的な対応は「訂正・削除の防止に関する事務処理規程を整備し(真実性)」「データを決まった場所に検索しやすいファイル名で保存する(可視性)」という組み合わせになります。専用システムがあればより安全ですが、まずはこの最低限の体制を整えることが優先です。

当事務所の見解・実務上の注意点

まずは規程とファイル名ルールから始める

電子帳簿保存法への対応というと、高価なシステム導入が必要だと身構えてしまう事業者が少なくありません。しかし、当事務所では、まず国税庁公表の事務処理規程サンプルを自社向けに整え、「取引年月日_取引先_金額」といったファイル名のルールを決めることから始めることをおすすめしています。これだけでも、コストをかけずに真実性と可視性の要件に近づけます。

紙とデータの二重管理をやめる

義務化の過渡期には、データも紙も両方残すという二重管理に陥りがちです。しかし、それでは事務負担がかえって増え、どちらが正本か分からなくなります。電子で受け取ったものはデータを正本として一本化し、紙は必要に応じて参照用に印刷する、という割り切りが、長期的には業務効率と保存の確実性の両立につながります。

猶予措置に甘えすぎない

相当の理由がある場合の猶予措置は心強い制度ですが、これはあくまで要件どおりの保存が間に合わない場合の経過的な受け皿です。猶予措置を使う場合でも、電子取引データそのものを保存し、税務調査時にダウンロードと書面提示に応じられる体制は必要です。猶予措置に甘えて「データを残さなくてよい」と誤解すると、保存義務違反となるおそれがあるため注意してください。

なお、近年は会計ソフトや請求書システムが電子帳簿保存法に対応した保存機能を備えていることが多く、こうしたサービスを使えば、ファイル名のルール付けや検索、訂正削除履歴の管理を自動で行えます。自社の取引量や担当者の体制を踏まえ、手作業の運用で十分か、システムを活用したほうがよいかを一度整理しておくとよいでしょう。判断に迷う場合は、顧問税理士に自社の取引実態を伝えて相談することをおすすめします。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

電子取引データ保存に対応するための具体的な手順は次のとおりです。難しく考えず、できるところから順番に進めましょう。

  1. ステップ1:自社の電子取引を洗い出す
    メール添付のPDF請求書、ネット通販の領収書、クラウド請求書、EDIなど、どの取引がデータでやり取りされているかを一覧にします。部署や担当者ごとに散在しがちなので、漏れなく把握することが第一歩です。
  2. ステップ2:保存場所を一元化する
    洗い出した電子取引データを、共有フォルダやクラウドストレージなど決まった場所に集約します。個人のメールボックスやパソコンに置いたままにせず、誰でも同じ場所で確認できるようにします。
  3. ステップ3:検索できるファイル名のルールを決める
    「取引年月日_取引先_金額」のようにファイル名を統一し、取引年月日・取引金額・取引先で探せるようにします。表計算ソフトで索引簿を作る方法もあり、検索機能の要件を満たしやすくなります。
  4. ステップ4:真実性の確保方法を選ぶ
    タイムスタンプ付与や訂正削除履歴の残るシステムの利用が難しい場合は、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する方法が現実的です。国税庁が規程のサンプルを公表しています。
  5. ステップ5:売上規模に応じて検索要件の要否を確認する
    前々年(前々事業年度)の売上高が5,000万円以下かどうかを確認します。該当すれば検索機能の要件は不要ですが、データ自体の保存は必要です。要件どおりが難しい場合は猶予措置の利用も検討します。
チェックリスト

  • ☑ 自社の電子取引をすべて洗い出した
  • ☑ 保存場所を一元化した
  • ☑ 検索できるファイル名のルールを決めた
  • ☑ 事務処理規程など真実性の確保方法を選んだ
  • ☑ 売上規模に応じた検索要件の要否を確認した

よくある質問(FAQ)

Q. 電子取引データはなぜ紙に印刷して保存してはいけないのですか?
A. 電子帳簿保存法では、注文書・請求書・領収書などをデータでやり取りした「電子取引」については、そのデータを電子のまま保存することが義務づけられているためです。2023年12月31日までは紙に印刷して保存することを認める宥恕措置がありましたが、2024年1月1日以後はこの宥恕措置が終了し、原則としてデータ保存が必要になりました。紙に印刷した控えを併せて持つこと自体は問題ありませんが、元の電子データを保存せず紙だけにすることは原則として認められません。
Q. どのようなものが電子取引データに当たりますか?
A. 電子取引とは、取引情報を電子データでやり取りする取引をいいます。具体的には、電子メールに添付して受け取った請求書や領収書のPDF、インターネット通販の購入時にダウンロードした領収書、クラウド型の請求書システムで受領した請求書、EDI取引のデータ、ペーパーレスFAXで受け取ったデータなどが該当します。紙で受け取った請求書をスキャンしたものは「スキャナ保存」であり、電子取引とは区別されます。日常的にメールやネットで授受している書類の多くが対象になります。
Q. 保存要件の「真実性の要件」と「可視性の要件」とは何ですか?
A. 真実性の要件とは、保存したデータが改ざんされていないことを担保するための要件で、タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、または訂正・削除の防止に関する事務処理規程の整備・運用などのいずれかを満たす必要があります。可視性の要件とは、保存したデータを後から確認・検索できるようにするための要件で、パソコンやプリンタなどの見読可能装置の備付け、システム概要書等の備付け、そして取引年月日・取引金額・取引先で検索できる機能の確保が求められます。
Q. 検索要件が不要になるのはどんな場合ですか?
A. 税務職員のダウンロードの求めに応じられる場合は、日付・金額の範囲指定検索や2項目以上の組合せ検索は不要となり、取引年月日・取引金額・取引先で検索できれば足ります。さらに、判定の基礎となる期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下の事業者や、出力した書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出でき、かつダウンロードの求めに応じられる事業者は、検索機能の要件そのものがすべて不要になります。小規模な事業者ほど負担が軽くなる仕組みです。
Q. 相当の理由による猶予措置とはどんな制度ですか?
A. 保存要件にしたがって電子取引データを保存することが間に合わない事業者向けの、恒久的な措置です。所轄税務署長が要件どおりに保存できない「相当の理由」があると認め、かつ税務調査等の際にデータのダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出の求めの両方に応じられるようにしている場合は、真実性や検索などの保存要件を満たせなくても保存が認められます。ただし、この場合でも電子取引データそのものを保存しておくことは必要で、データを残さず紙だけにしてよいという制度ではありません。
Q. スキャナ保存と電子取引データ保存はどう違いますか?
A. スキャナ保存は、紙で受け取った請求書や領収書などをスキャナやスマホで読み取って画像データとして保存する制度で、利用するかどうかは任意です。一方、電子取引データ保存は、最初から電子でやり取りした取引データを電子のまま保存する制度で、こちらは義務です。同じ取引先からの請求書でも、紙で郵送されたものはスキャナ保存(任意)、メールで届いたPDFは電子取引データ保存(義務)と取扱いが分かれます。両者を混同しないように整理しておくことが大切です。
Q. 小規模な個人事業主でも電子取引データの保存は必要ですか?
A. はい、事業の規模にかかわらず、所得税・法人税の対象となる事業者が電子取引を行っていれば、電子取引データの保存義務の対象になります。ただし前述のとおり、売上高が5,000万円以下であれば検索機能の要件がすべて不要になるほか、相当の理由がある場合の猶予措置も利用できるため、小規模な事業者ほど現実的な負担は軽くなります。まずは受け取ったデータを消さずに整理して保存することから始めれば、最低限の対応はできます。

参考資料・出典

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本記事は道濟会計事務所が監修しました。

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