堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
欠損金の繰越控除2026|中小法人は10年100%控除と繰戻し還付を解説
この記事の要点3点
- 青色申告法人の赤字(欠損金)は、最長10年間繰り越して将来の黒字と相殺できます(平成30年4月1日以後に開始した事業年度で生じた欠損金。それ以前発生分は9年。国税庁タックスアンサーNo.5762)。
- 資本金1億円以下の中小法人等は所得金額の100%まで控除できますが、資本金1億円超の大法人は控除前所得の50%が上限です。影響を受けるのは、赤字を計上したすべての法人です。
- すぐやるべきことは、赤字の年でも必ず期限内に青色申告書を提出し、その後も連続して申告書を出し続けること。資金繰りが厳しい中小企業は、前年の法人税を取り戻す「繰戻し還付」も選択肢になります。
創業期や業績が落ち込んだ年に出た赤字を、翌年以降の黒字と相殺して法人税を抑えられるのが「欠損金の繰越控除」です。中小企業にとっては、苦しい時期の赤字を将来の節税につなげられる、きわめて重要な制度です。ところが、青色申告や連続した申告といった要件を一つでも外すと、せっかくの赤字を税金の計算に使えなくなってしまいます。本記事では、国税庁のタックスアンサーにもとづき、繰越控除の仕組み、中小法人と大法人の違い、そして赤字を確実に活かすための実務ポイントを、堺市の税理士が解説します。なお本記事は現行の恒久的なルールを扱っており、特定年度の改正による新設・延長を前提とするものではありません。
1. 欠損金の繰越控除の概要
欠損金とは、税務上の所得計算でマイナスとなった金額、平たくいえば「税務上の赤字」です。欠損金の繰越控除とは、ある事業年度に生じた欠損金を翌期以降に繰り越し、黒字(所得)が出た年度にその所得から差し引いて、課税所得を圧縮できる制度をいいます。会社の利益は年度ごとに区切って課税されますが、事業は何年も続くものです。ある年に大きく赤字を出し、翌年に黒字へ転じた場合、その黒字に丸ごと課税されると、通算では損をしているのに税金だけ取られるという不合理が生じます。繰越控除は、こうした年度区切りの弊害をやわらげ、複数年度を通じた、より実態に近い課税を実現するための重要な仕組みといえます。
繰越期間は最長10年
国税庁タックスアンサーNo.5762によると、繰越控除の対象となるのは、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額です。この10年という期間は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度で生じた欠損金に適用されます。平成30年4月1日前に開始した事業年度で生じた欠損金の繰越期間は9年です。
適用を受けるための要件
繰越控除を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 欠損金額が生じた事業年度において、青色申告書である確定申告書を提出していること。
- その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出していること(欠損が生じた年以降は、白色申告であっても連続して提出していれば差し支えありません)。
- 欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類を保存していること。
ポイント:最も重要なのは「欠損が出た年に青色申告書を提出していること」と「その後も連続して申告書を提出し続けること」です。赤字だからと申告を後回しにしたり、期限後申告で青色申告の要件を満たさなくなったりすると、その年の欠損金は繰り越せなくなります。
古い欠損金から順番に控除する
複数年度にわたって欠損金がある場合は、最も古い事業年度に生じた欠損金から順に控除していきます。10年の繰越期間を過ぎた欠損金は切り捨てとなり、使えなくなるため、計画的な活用が大切です。
具体例で見る繰越控除の効果
たとえば、資本金1,000万円の中小法人で、1期目に500万円の赤字(欠損金)が出たとします。2期目が黒字で所得200万円、3期目も黒字で所得400万円だった場合、中小法人等は所得の100%まで控除できるため、2期目は所得200万円から200万円を控除して課税所得ゼロ、残り300万円の欠損金を3期目に繰り越します。3期目は所得400万円から残り300万円を控除して、課税所得は100万円になります。このように、1期目の赤字を2期・3期の黒字と相殺することで、黒字年の法人税を大きく抑えられます。もし大法人(控除前所得の50%が限度)であれば、2期目は所得200万円の50%=100万円までしか控除できず、中小法人との差が明確に出ます。
2. 中小企業への実務影響(中小法人と大法人の違い)
繰越控除で特に重要なのが、「1年あたりに控除できる金額の上限」が会社の規模によって異なる点です。
中小法人等は所得の100%を控除できる
資本金1億円以下の中小法人等(資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人などを除く)は、繰越控除をする事業年度の所得金額の100%まで、繰越欠損金を控除できます。つまり、過去の繰越欠損金が十分にあれば、黒字が出た年の課税所得をゼロまで圧縮することも可能です。
大法人は控除前所得の50%が上限
一方、資本金1億円超の大法人は、繰越控除をする事業年度の繰越控除前の所得金額の50%が控除限度額です(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)。この控除限度割合は段階的に引き下げられてきた経緯があり、平成24年度〜平成27年度は80%、平成27年度〜平成28年度は65%、平成28年度〜平成29年度は60%、平成29年度〜平成30年度は55%、そして現在の50%となっています。
| 区分 | 資本金1億円以下の中小法人等 | 資本金1億円超の大法人 |
|---|---|---|
| 1年あたりの控除限度 | 所得金額の100% | 控除前所得の50% |
| 繰越期間 | 10年(H30.4.1以後発生分) | 10年(H30.4.1以後発生分) |
| 繰戻し還付 | 利用できる | 原則として適用停止 |
個人事業(青色申告)は3年繰越
なお、個人事業主の場合は法人とは別の制度です。青色申告をしている個人事業主は、事業から生じた純損失を翌年以後3年間繰り越して、各年の所得から控除できます。法人の10年とは期間が異なる点に注意してください。
地方税にも波及する
欠損金の繰越控除は法人税だけでなく、法人住民税(法人税割)や法人事業税の計算にも影響します。法人税の所得が繰越控除で圧縮されれば、これに連動する地方税の負担も軽くなります。ただし、法人住民税には所得にかかわらず課される「均等割」があり、こちらは繰越控除で赤字になっても納める必要があります。「赤字でも均等割は発生する」点は、資金繰りを考えるうえで押さえておきましょう。
もう一つの選択肢「欠損金の繰戻し還付」
赤字が出たとき、将来へ繰り越すのではなく、前期の黒字に「繰り戻し」て、すでに納めた法人税の還付を受ける制度が、欠損金の繰戻し還付です(国税庁タックスアンサーNo.5763)。当期に生じた欠損金を、その事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(前期)に繰り戻し、前期に納付した法人税の還付を請求します。資金繰りを早期に改善したい中小企業にとって、有力な選択肢になります。
繰戻し還付を受けるには、(1)還付所得事業年度(前期)から欠損事業年度の前事業年度まで連続して青色申告書を提出していること、(2)欠損事業年度の青色申告書を期限内に提出していること、(3)その申告書と同時に還付請求書を提出すること、が必要です。なお、この制度は資本金1億円以下の中小企業者等が対象で、それ以外の法人については原則として適用が停止されています(災害損失欠損金や解散等の場合を除く)。法人税の還付に連動して、地方法人税についても還付が受けられます。
3. 当事務所の見解・実務上の注意点
欠損金の繰越控除は「使える制度」である一方、要件を一つ外すだけで効果がゼロになるシビアな制度でもあります。当事務所が関与先にお伝えしている注意点を整理します。
(1) 連続申告を絶対に切らさない
繰越控除の生命線は「連続して確定申告書を提出していること」です。赤字の年に申告を怠ったり、提出を忘れたりすると、その後の黒字年で繰越控除が使えなくなります。赤字でも黒字でも、毎期必ず期限内に申告する体制を維持してください。
重要:2期連続で期限内に申告書を提出しないと、青色申告の承認が取り消される場合があります。青色申告が取り消されると、その事業年度以降に生じた欠損金は繰り越せなくなるほか、各種の青色申告特典も失います。期限管理は欠損金活用の前提条件です。
(2) 帳簿書類の保存を徹底する
欠損金を繰り越すには、その欠損が生じた事業年度の帳簿書類を保存しておくことが要件です。10年という長期にわたって控除に使う可能性があるため、帳簿・証憑の保存期間にも余裕を持って管理してください。とくに欠損金の繰越期間が10年に延長されたことに合わせ、青色申告法人の帳簿書類の保存期間も原則10年とされています。古い年度の赤字を後年の黒字と相殺する段階で「帳簿がない」とならないよう、電子データを含めて確実に保管しておきましょう。
別表七(一)で繰越欠損金を「見える化」する
繰越欠損金は、法人税申告書の別表七(一)「欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書」で管理します。ここには、発生した事業年度ごとに欠損金額・前期までの控除済額・当期の控除額・翌期繰越額が記載されます。毎期この明細を正しく引き継ぐことで、どの年度の欠損金がいつ切り捨てになるかを把握でき、控除のタイミングを計画的に検討できます。決算のたびに別表七(一)の残高を確認する習慣をつけると、繰越期間切れによる切り捨てを防げます。
(3) 組織再編・株主変更時は利用制限に注意
合併や会社分割などの組織再編、あるいは欠損等法人の株主が大きく入れ替わって事業内容も変わるようなケースでは、繰越欠損金の引継ぎや利用に制限がかかる場合があります。たとえば、特定の株主が発行済株式の50%超を取得して支配関係が生じ、その後に旧事業を廃止して別の事業を始めるなど、一定の事由に該当すると、それまでの繰越欠損金が使えなくなることがあります。これは、赤字会社を買収して黒字会社の節税に使う「欠損金の取引」を防ぐための制度です。M&Aや事業承継で支配関係が変わる予定がある場合は、繰越欠損金の取扱いを事前に税理士へ確認してください。
(4) 「繰越」か「繰戻し」かを判定する
赤字が出たとき、将来の黒字に備えて繰り越すか、前年の黒字に繰り戻して法人税の還付を受けるか(繰戻し還付)を選べる場合があります。資金繰りを優先するなら還付、今後の黒字が見込めるなら繰越、と状況によって有利不利が変わります。たとえば、来期以降の業績回復が見込みにくく、手元資金を厚くしたい局面では繰戻し還付が有効です。逆に、来期に大きな黒字が確実で、税率や所得の見通しから将来の控除メリットが大きい場合は、繰越控除を選ぶ判断もあります。両方を試算して選ぶことをおすすめします。
(5) 災害損失欠損金は青色申告でなくても繰り越せる
震災・風水害・火災などの災害により棚卸資産や固定資産に生じた損失にもとづく「災害損失欠損金」は、青色申告でない事業年度に生じたものであっても、一定の要件のもとで繰り越すことができます。通常の繰越控除が青色申告を前提とするのに対し、災害損失欠損金には例外がある点は覚えておくとよいでしょう。実際に被災した場合は、損失の範囲や証憑の整理が重要になるため、早めに税理士へご相談ください。
4. 今すぐやるべきこと
赤字を確実に将来の節税につなげるために、次の手順で対応します。欠損金の繰越控除は、特別な届出をしなくても、要件を満たしていれば申告書上で自動的に適用される制度です。だからこそ、日々の申告と帳簿管理という「当たり前の積み重ね」こそが、いざ黒字化したときの節税効果を左右します。
- ステップ1:赤字でも期限内に青色申告書を提出する
欠損金を繰り越す出発点は、欠損が生じた年に青色申告書を期限内に提出することです。「赤字だから申告は不要」という誤解は禁物です。 - ステップ2:別表七(一)で欠損金を管理する
繰越欠損金は法人税申告書の別表七(一)で、発生年度・残額・当期控除額を管理します。毎期、残高を正しく繰り越せているか確認します。 - ステップ3:連続申告を継続する
赤字・黒字を問わず、毎期必ず期限内に申告書を提出し、青色申告の承認を維持します。期限管理の仕組みを社内に整えます。 - ステップ4:資金繰りが厳しければ繰戻し還付を検討する
前期が黒字で法人税を納めている中小企業者等は、当期の欠損金を前期に繰り戻して法人税の還付を請求できます。確定申告書と同時に還付請求書を提出します。 - ステップ5:繰越と繰戻しの有利判定を行う
顧問税理士とともに、繰越控除と繰戻し還付のどちらが自社にとって有利かを試算し、資金繰りと将来の利益計画をふまえて選択します。
チェックリスト
- ☑ 欠損が生じた年に青色申告書を期限内に提出したか
- ☑ その後も毎期、連続して申告書を提出しているか
- ☑ 別表七(一)で繰越欠損金の残高を正しく管理しているか
- ☑ 欠損が生じた年度の帳簿書類を保存しているか
- ☑ 繰戻し還付を使うべきかを試算したか
5. よくある質問
- Q. 繰越欠損金は何年間使えますか?
- A. 平成30年4月1日以後に開始した事業年度で生じた欠損金は、最長10年間繰り越して将来の所得から控除できます。平成30年4月1日前に開始した事業年度で生じた欠損金の繰越期間は9年です。いずれも、古い事業年度に生じた欠損金から順に控除し、期間を過ぎた分は切り捨てとなります。
- Q. 白色申告でも欠損金を繰り越せますか?
- A. 原則として繰り越せません。繰越控除は、欠損が生じた事業年度に青色申告書を提出していることが要件です。ただし、欠損が生じた年以降の各事業年度については、連続して確定申告書を提出していれば、白色申告であっても繰越控除の適用自体は妨げられません。最も重要なのは「欠損年が青色」であることです。
- Q. 中小法人と大法人で控除できる金額はどう違いますか?
- A. 資本金1億円以下の中小法人等は、繰越控除をする事業年度の所得金額の100%まで控除できます。一方、資本金1億円超の大法人は、控除前所得の50%が控除限度額です(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)。中小企業は黒字をゼロまで圧縮できる余地が大きい点が特徴です。
- Q. 赤字の年に申告を忘れると繰越控除はどうなりますか?
- A. 欠損が生じた年に青色申告書を期限内に提出していないと、その年の欠損金は繰り越せなくなる恐れがあります。さらに、2期連続で期限内申告がないと青色申告の承認が取り消される場合があり、以後の欠損金繰越も使えなくなります。赤字でも必ず期限内に申告することが大切です。
- Q. 繰戻し還付と繰越控除はどちらが有利ですか?
- A. 状況によります。前期に法人税を納めていて資金繰りを早く改善したい中小企業者等は、繰戻し還付で前期の税金を取り戻すほうが有利な場合があります。一方、今後の黒字が確実に見込めるなら、繰越控除で将来の所得と相殺するほうが効果的なこともあります。両方を試算して選ぶことをおすすめします。
6. 参考資料・出典
- 国税庁タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
- 国税庁タックスアンサー No.5763 欠損金の繰戻しによる還付
- 国税庁 C1-52 欠損金の繰戻しによる還付の請求
- 国税庁タックスアンサー No.2070 青色申告制度(個人事業者の純損失の繰越し)
道濟会計事務所の税務相談
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