堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
返還インボイス2026|1万円未満は交付不要・振込手数料の実務
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:返品・値引き・割戻しなど「売上げに係る対価の返還等」を行うと、インボイス発行事業者には適格返還請求書(返還インボイス)の交付義務が生じます。
- 2ポイント2:ただし対価の返還等の金額が税込1万円未満であれば交付義務は免除されます。適用期限も対象者の制限もない恒久的な措置です。
- 3ポイント3:売手負担の振込手数料440円を売上値引きとして処理すれば返還インボイスは不要ですが、帳簿には対価の返還等として記録しなければ税額控除できません。
CONTENTS目次
売上代金が振り込まれたとき、振込手数料の440円が差し引かれて入金されている。請求書は50万円なのに入金は499,560円。中小企業の経理でほぼ毎日起きているこの場面は、消費税では「売上げに係る対価の返還等」という論点になります。インボイス制度では、返品や値引きを行った売手に適格返還請求書(返還インボイス)の交付義務がありますが、税込1万円未満なら免除されます。ただし「交付しなくてよい」ことと「何もしなくてよい」ことは別です。本記事では、国税庁の資料に沿って、免除の範囲と帳簿でやるべきことを整理します。
制度・改正の概要
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そもそも「売上げに係る対価の返還等」とは
商品を販売した事業者が、その取引の後に売上値引きをしたり、売上割戻金や販売奨励金を支払ったり、売り上げた商品の返品を受けたことにより売掛金の減額等を行う場合、これらの金額に対応する消費税額を調整する必要があります。国税庁は、調整が必要な取引として次のものを挙げています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 返品 | 売り上げた商品が返品されたもの |
| 値引き | 販売後に対価を減額したもの |
| 割戻し | 直接の取引先に支払う割戻し。間接の取引先に支払う飛越しリベート等を含む |
| 早出料 | 海上運送事業を営む事業者が支払う船舶の早出料 |
| 販売奨励金等 | 販売促進の目的で、対象となる課税資産の販売数量・販売高等に応じて取引先に金銭で支払うもの |
| 事業分量配当金 | 協同組合等が組合員等に支払うもののうち、課税資産の譲渡等の分量等に応じた部分 |
| 売上割引 | 対価を支払期日より前に支払を受けたこと等を基因として支払われるもの |
調整は、当初の課税資産の譲渡等を行った課税期間ではなく、対価の返還等を行った課税期間で行います。課税標準額に対する消費税額から、対価の返還等に係る消費税額を控除する方法が原則ですが、課税資産の譲渡等の金額から対価の返還等の金額を控除する経理処理を継続して行っているときは、その処理も認められます。
免税事業者だった課税期間の売上げについて課税事業者になった後に行った対価の返還等や、課税事業者だった課税期間の売上げについて事業を廃止し、または免税事業者になった後に行った対価の返還等は、調整を行うことができません。免税事業者と課税事業者を行き来する場合は特に注意が必要です。
返還インボイスの交付義務と記載事項
売上げに係る対価の返還等を行う適格請求書発行事業者は、その対価の返還等を受ける他の事業者に対して、一定の事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(適格返還請求書)を交付する義務があります。国税庁のパンフレット「インボイス制度の理解のために」(令和8年4月)は、記載事項を次の6つとしています。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| ① | 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号 |
| ② | 対価の返還等を行う年月日 |
| ③ | 対価の返還等の基となった取引を行った年月日 |
| ④ | 対価の返還等の取引内容(軽減税率の対象品目である旨) |
| ⑤ | 税率ごとに区分して合計した対価の返還等の金額(税抜き又は税込み) |
| ⑥ | 対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率 |
③については、対価の返還等の処理を合理的な方法により継続して行っているのであれば、「前月末日」や「最終販売年月日」をその取引を行った年月日として記載することも可能です。また「◯月分」などの課税期間の範囲内で一定の期間の記載もできます。⑥は適用税率と消費税額等のどちらかで足り、両方を記載しても構いません。
税込1万円未満は交付義務が免除される
その対価の返還等の金額が税込1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除されます(消費税法57条の4第3項、消費税法施行令70条の9第3項第2号。国税庁の表記では新消法57の4③、新消令70の9③二)。国税庁は具体例として、売手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合を挙げ、通常その金額は1万円未満となるため交付義務が免除される、としています。
この免除は、インボイス制度開始日である令和5年10月1日以降の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用され、適用期限や適用対象者について特段の制限はありません。基準期間の課税売上高1億円以下などの要件が付いた「少額特例」(税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存を不要とする措置)とは別の制度です。
中小企業への実務影響
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振込手数料の処理は3パターンある
売手が振込手数料相当額を負担する場合、その処理には次の3つがあります。どれを選ぶかで、必要になる書類と帳簿の書き方が変わります。
| 処理 | 消費税の扱い | 必要になるもの |
|---|---|---|
| A. 売上値引きとして処理 | 売上げに係る対価の返還等 | 税込1万円未満なら返還インボイスの交付は不要。帳簿に対価の返還等の明細等の記録が必要 |
| B. 課税仕入れとして処理 | 支払手数料の課税仕入れ | 金融機関や取引先から受領するインボイスが必要 |
| C. 経理は支払手数料、消費税は対価の返還等 | 売上げに係る対価の返還等 | 元の売上げの適用税率に従った区分と、帳簿への対価の返還等に係る事項の記載が必要 |
Bを選ぶと、1件440円の手数料についても金融機関等からのインボイスを保存しなければならず、件数が多い事業者ほど負担が重くなります。国税庁が例示しているのも、500,000円の請求に対し買手が振込手数料相当額440円を減額した499,560円を支払い、売手が440円を対価の返還等として処理する場合で、この場合は値引き額が1万円未満のため返還インボイスの交付は不要とされています。
Cを選ぶ場合、国税庁は「支払手数料のコードを売上げに係る対価の返還等と分かるように別に用意するといった、通常の支払手数料と判別できるように明らかにする対応が考えられます」としています。会計ソフトの補助科目やコードを分けておかないと、期末に集計できなくなります。
税額控除の要件は帳簿の保存
対価の返還等の金額に係る消費税額について控除を受けるには、対価の返還等をした金額の明細等を記録した帳簿を保存する必要があります。課税資産の譲渡等の金額から対価の返還等の金額を控除する経理処理を行っている場合も同様です。交付した返還インボイスの写しに記載された消費税額等に基づいて計算した金額を使う場合には、その返還インボイスまたは電磁的記録もあわせて保存しなければなりません。
税額そのものは、税込みの対価の返還等の金額に110分の7.8(軽減税率の適用対象となった売上げに係るものは108分の6.24)を乗じて算出します。440円の振込手数料であれば、440×7.8÷110=31.2円が国税部分の消費税額です。1件では小さくとも、月100件・年1,200件であれば、国税部分だけで年間37,440円の差になります。
交付義務の免除は、帳簿記載の免除ではありません。「1万円未満だから何もしなくてよい」と誤解して、振込手数料を単なる支払手数料として課税仕入れに計上したままインボイスも保存していない、という状態が最も危険です。この場合、仕入税額控除も対価の返還等の控除も根拠を欠くことになります。
1枚の請求書にまとめる方法と修正
前月の売上げに係る値引きを当月の売上げから差し引いて請求する場合、前月の売上げに係る適格返還請求書と当月の売上げに係る適格請求書を交付する必要がありますが、それぞれに必要な記載事項を記載して1枚の請求書で交付することも可能です。さらに、当月の売上代金から前月の売上値引き代金を控除した金額と、その控除した金額に基づき計算した消費税額等を税率ごとに記載する方法も認められています。ただしこの方法は取引先ごとの継続適用が必要です。同じ取引先について月によって書き方を変えることはできません。
交付した返還インボイスに誤りがあった場合は、修正した適格返還請求書を交付する必要があります。交付した写しは、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します。電磁的記録で提供した場合は、提供した電磁的記録のまま保存することも可能です。
買手の立場では取適法の論点になる
ここまでは売手が振込手数料を負担する前提の話ですが、そもそも買手が一方的に振込手数料を差し引いてよいのかという問題があります。令和8年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)では、代金を中小受託事業者の銀行口座へ振り込む際の手数料を中小受託事業者に負担させ、代金の額から差し引くことは、負担の合意の有無にかかわらず本法違反として問題となるとされています。消費税の処理を整える前に、取引条件そのものが適法かを確認しておく必要があります。
当事務所の見解・実務上の注意点
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返還インボイスは、インボイス制度のなかでも「知らないまま毎月間違え続ける」典型的な論点です。金額が小さく、1件ごとの誤りが目立たないため、税務調査の場面まで発覚しないことが少なくありません。当事務所が実際に見てきたつまずき方は、大きく3つに分かれます。
つまずき1:交付免除を「処理不要」と読み替えてしまう
最も多いのがこれです。「1万円未満は免除」という見出しだけが記憶に残り、帳簿の記載も税率区分も省略されてしまいます。免除されているのは書類を相手に渡す義務だけで、自社の消費税計算に必要な記録は一切免除されていません。国税庁のパンフレットでも、免除の説明と帳簿記載の必要性は別の段落で書き分けられています。
つまずき2:勘定科目だけ見て消費税区分を決めてしまう
支払手数料という科目名から反射的に課税仕入れとしてしまうケースです。同じ「支払手数料」でも、振込手数料を実際に金融機関へ支払った買手にとっては課税仕入れですが、売手が負担する振込手数料相当額を売上から差し引かれた場合は、経理科目が支払手数料でも消費税では対価の返還等になり得ます。科目と消費税区分を切り離して考える習慣がないと、必ずどこかで取り違えます。仕訳の入口から整えたい場合は、記帳代行・経理代行サービスで科目設計から引き受けています。
つまずき3:継続適用の条件を見落とす
1枚の請求書に値引き控除後の金額だけを書く方法は便利ですが、取引先ごとの継続適用が条件です。担当者が代わったタイミングで書式が変わり、同じ取引先について月ごとに方法が混在している例を見かけます。請求書テンプレートを取引先ごとに固定し、変更するときは課税期間の切れ目で行うのが安全です。
この3つに共通しているのは、いずれも「制度を知らなかった」ことが原因ではないという点です。返還インボイスという言葉自体は知っていても、免除の射程・科目と税区分の関係・継続適用という3つの条件が実務に落ちていないために起きます。逆に言えば、この3点を社内ルールとして文書化しておけば、担当者が代わっても再発しません。
簡易課税・2割特例を選んでいる場合
簡易課税制度や2割特例を適用している場合、仕入税額は売上高から計算するため仕入側のインボイス保存は問題になりませんが、売上げに係る対価の返還等は課税標準の側の論点であり、売上高そのものが変わる以上、影響は避けられません。「簡易課税だからインボイスは関係ない」という理解は、売手としての交付義務と対価の返還等の場面では通用しません。自社の課税方式と実務が噛み合っているかは、堺市の税理士による税務顧問で毎月点検しています。
今すぐやるべきこと
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今日から着手できる順に整理します。決算前ではなく、月次の締めのタイミングで手を付けるのが最も負担が軽くなります。
- ステップ1:自社の値引き・返品の発生パターンを洗い出す
返品、値引き、割戻し、販売奨励金、売上割引、そして売手負担の振込手数料。どの取引でいくらの対価の返還等が発生しているかを、まず取引先ごとに一覧にします。1万円以上になるものがあれば、そこだけは返還インボイスの交付が必要です。 - ステップ2:振込手数料の処理方針を3択から1つに決める
売上値引きとして処理するか、課税仕入れ(支払手数料)として処理するか、経理は支払手数料のまま消費税だけ対価の返還等とするか。課税仕入れとするなら金融機関等からのインボイスの保存が必要になるため、多くの中小企業では売上値引き処理が現実的です。 - ステップ3:会計ソフトの勘定科目コードを分ける
経理を支払手数料としたまま消費税を対価の返還等とする場合は、通常の支払手数料と判別できるよう専用のコードを用意します。税率ごとの区分も同時に設定し、月次で集計できる状態にします。 - ステップ4:帳簿の記載事項をチェックする
対価の返還等をした金額の明細等が帳簿に記録されているかを確認します。交付が免除されていても帳簿の保存は税額控除の要件です。適用税率ごとの区分も忘れずに記載します。 - ステップ5:買手として差し引いている場合は取引条件を見直す
自社が買手として振込手数料を代金から差し引いているなら、取適法上の代金の減額に当たるおそれがあります。令和8年1月1日施行の取適法では、負担の合意があっても問題となるとされています。取引条件そのものの見直しが必要です。
この5つのうち、優先順位が最も高いのはステップ2の処理方針の統一です。同じ会社のなかで担当者ごとに処理が違うと、帳簿の記載も税率区分もばらつき、結果として集計そのものができなくなります。まず方針を1つに決めてから、コードと帳簿を整えてください。
よくある質問
- Q. 返還インボイスの1万円未満の免除は、いつまで使える措置ですか?
- A. 期限はありません。国税庁は、この免除はインボイス制度開始日である令和5年10月1日以降の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用され、適用期限や適用対象者について特段の制限はない、と明示しています。基準期間の課税売上高1億円以下(又は特定期間5千万円以下)の事業者に限られる「少額特例」とは別の制度で、規模による線引きもありません。少額特例が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期限付きであるのに対し、こちらは期限のない措置である点が大きな違いです。
- Q. 1万円未満かどうかは、1回ごとと1か月分のどちらで判定しますか?
- A. 1回の対価の返還等の金額で判定します。国税庁が例示している振込手数料相当額440円のような金額であれば、通常は1万円未満となり交付義務は免除されます。返品や値引きも同様に、その返還等1件あたりの税込金額で判定します。月末に複数件をまとめて処理していても、判定の単位はあくまで個々の対価の返還等です。逆に、1件で1万円以上になる値引きや割戻しについては、金額の大小にかかわらず返還インボイスの交付が必要になります。
- Q. 交付が免除されるなら、帳簿にも何も書かなくてよいのでしょうか?
- A. いいえ。免除されるのは書類の交付義務だけで、税額控除の要件は別です。売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の控除を受けるには、対価の返還等をした金額の明細等を記録した帳簿を保存する必要があります。課税資産の譲渡等の金額から対価の返還等の金額を控除する経理処理を行っている場合も同じです。また、交付した返還インボイスの写しに記載された消費税額等をもとに控除額を計算する場合には、その写しまたは電磁的記録もあわせて保存する必要があります。
- Q. 振込手数料を支払手数料として処理した場合はどうなりますか?
- A. 経理処理を支払手数料としたまま、消費税法上は売上げに係る対価の返還等とすることもできます。その場合でも適用税率は元の課税資産の譲渡等の税率に従うため、税率ごとの区分と、帳簿への対価の返還等に係る事項の記載が必要です。国税庁は、支払手数料のコードを対価の返還等と分かるよう別に用意するなど、通常の支払手数料と判別できる対応を挙げています。なお、振込手数料相当額を課税仕入れとして処理する場合は、金融機関や取引先から受領するインボイスの保存が必要になります。
- Q. 前月の値引きを当月の請求から差し引く場合、請求書は2枚必要ですか?
- A. 1枚にまとめられます。前月の売上げに係る適格返還請求書と当月の売上げに係る適格請求書を、それぞれ必要な記載事項を記載したうえで1枚の請求書として交付することが可能です。さらに、当月の売上代金から前月の売上値引き代金を控除した金額と、その控除後の金額に基づき計算した消費税額等を税率ごとに記載する方法も認められますが、この方法は取引先ごとの継続適用が必要です。同じ取引先について、ある月は控除後の金額だけ、別の月は両方を併記するといった使い分けはできません。
参考資料・出典
- 国税庁「少額な返還インボイスの交付義務免除の概要」
- 国税庁 タックスアンサー No.6359「値引き、返品、割戻しなどを行った場合の税額の調整(売上げに係る対価の返還等)」
- 国税庁「インボイス制度の理解のために」(令和8年4月)
- 国税庁 タックスアンサー No.6497「仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」
- 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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