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少額減価償却資産の特例が40万円に拡大2026|中小企業の即時償却と注意点
この記事の要点3点
- 令和8年度税制改正で、少額減価償却資産の特例の対象が「取得価額30万円未満」から「40万円未満」へ拡大されました。令和8年(2026年)4月1日以後に取得して事業に使い始めた資産から適用されます。
- 対象は青色申告をしている中小企業者等(資本金1億円以下など)と個人事業主。1年間(事業年度)あたりの合計300万円という上限と、適用期限が令和11年3月31日まで延長された点が実務のポイントです。
- 一括で経費にできても償却資産税(固定資産税)の課税対象になる点、40万円「ちょうど」は対象外である点など、見落としやすい注意点を決算前に確認しておきましょう。
パソコンやソフトウェア、応接セット、業務用の機械など、数十万円の設備を購入したとき、その費用を一度に経費にできるのか、それとも何年もかけて減価償却するのか――この差は中小企業の手元資金と税負担に直結し、決算前の意思決定や資金繰りの計画を大きく左右します。これまで「30万円未満なら一括で経費」というラインで運用されてきた少額減価償却資産の特例が、令和8年度(2026年度)税制改正で「40万円未満」へと引き上げられました。本記事では、改正の正確な中身と適用開始時期、年間300万円の上限管理、そして一括費用化しても残る償却資産税といった落とし穴まで、税理士の実務目線で具体的に解説します。
少額減価償却資産の特例とは|制度と令和8年度改正の概要
少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている中小企業者等が一定額未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合に、その取得価額の全額を、使い始めた事業年度の損金(必要経費)に算入できる制度です。法人は租税特別措置法第67条の5、個人事業主は同法第28条の2に規定されています。通常は耐用年数にわたって少しずつ費用化する設備投資を、一括で経費にできるため、利益が出た年の決算対策として広く使われてきました。
この特例が設けられている趣旨は、少額の資産まで一つひとつ耐用年数にわたって減価償却の計算・管理を求めるのは、人手の限られた中小企業や個人事業主にとって事務負担が大きいためです。少額の資産は早期に費用化を認めることで、記帳の手間を減らしつつ、設備投資を後押しする狙いがあります。なお、ここでいう「中小企業者等」とは、資本金または出資金の額が1億円以下の法人などをいい、同一の大規模法人に発行済株式の2分の1以上を保有されている法人などは除かれます。青色申告であることも必須の要件です。
令和8年度税制改正では、この特例について次の3点が見直されました。いずれも令和8年(2026年)4月1日以後に取得などして事業の用に供する資産から適用されます。改正法である「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)は2026年3月31日に成立・公布され、原則として2026年4月1日に施行されています。
令和8年度改正の3つのポイント
- 対象資産の取得価額の上限を「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げ
- 適用期限を令和8年3月31日から令和11年(2029年)3月31日まで3年延長
- 対象法人の範囲を見直し、常時使用する従業員の数が400人を超える法人を除外(改正前は原則500人以下)
一方で、変わらない部分も押さえておく必要があります。1つの事業年度に特例を適用できる取得価額の合計額は300万円が上限である点、青色申告が前提である点、そして資本金または出資金の額が1億円以下であることなどの中小企業者等の要件は維持されています。つまり「1台あたりの上限」が30万円から40万円に上がった一方で、「年間で使える総額」は300万円のまま据え置かれた、という構造です。
取得価額の判定と「40万円未満」の意味
判定の基準となる取得価額には、本体価格のほか、引取運賃・据付費・購入手数料など事業の用に供するために直接要した付随費用が含まれます。消費税の取扱いは会社の経理方式によって異なり、税抜経理であれば税抜金額で、税込経理であれば税込金額で判定します。同じ資産でも経理方式によって40万円のラインをまたぐことがあるため注意が必要です。また「40万円未満」とは40万円を含まない金額を指すため、取得価額がちょうど40万円のものは対象外となります。
10万円・20万円・40万円の3つのラインの関係
減価償却資産の少額判定には、本特例のほかにも複数の制度があり、金額帯によって使える仕組みが異なります。下表のとおり整理すると、自社の購入予定の資産がどの制度に当てはまるかを判断しやすくなります。
40万円への拡大が中小企業へ与える実務影響
今回の改正で実務上もっとも大きいのは、これまで一括費用化のラインに「あと少し」で届かなかった30万円台の設備が、特例の対象に取り込まれた点です。たとえば取得価額35万円のノートパソコンや業務用機器は、改正前は通常の減価償却(耐用年数にわたる費用化)が必要でしたが、令和8年4月1日以後の取得であれば全額をその年の損金にできます。利益が出た事業年度に、設備投資のタイミングを合わせて節税効果を得やすくなったといえます。
具体的な設例で見る節税効果
たとえば、法人税の実効税率を概ね30%と仮定し、取得価額35万円のパソコンを令和8年4月以後に購入して事業に使い始めたとします。本特例を使えば35万円の全額をその年の損金にできるため、単純計算で約10万5,000円の法人税等の負担を、購入した事業年度に前倒しで軽減できます。通常の減価償却(パソコンの法定耐用年数は4年)であれば、初年度に費用化できるのは一部にとどまり、残りは翌年度以降に繰り越されます。本特例は税負担そのものを消すわけではなく、費用化の時期を早める「課税の繰延べ」である点は理解しておく必要がありますが、手元資金を厚くしたい中小企業にとっては有効な選択肢です。
対象となる資産の種類は幅広く、パソコンや機械装置といった有形固定資産のほか、無形固定資産であるソフトウェアも取得価額が基準未満であれば対象になります。また、新品である必要はなく、中古資産であっても取得価額で判定するため、取得価額が40万円未満であれば対象です。
| 取得価額 | 使える主な制度 | 費用化の方法 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 少額の減価償却資産 | 全額即時損金 | 原則対象外 |
| 20万円未満 | 一括償却資産 | 3年間で均等償却 | 対象外 |
| 40万円未満 (改正前は30万円未満) | 少額減価償却資産の特例 | 全額即時損金(年300万円まで) | 対象 |
| 40万円以上 | 通常の減価償却 | 耐用年数で償却 | 対象 |
注目すべきは、20万円未満の「一括償却資産」は3年均等償却ではあるものの償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象外であるのに対し、本特例で一括費用化した30万円台・40万円未満の資産は償却資産税の課税対象になるという違いです。法人税・所得税は減るものの、市町村に申告する償却資産税の負担は残ります。金額帯が重なる20万円未満の資産については、節税額と償却資産税の両面を見て、どの制度を使うかを選ぶ余地があります。なお、償却資産税は毎年1月1日時点で所有する償却資産について、その年の1月31日までに資産が所在する市町村へ申告します。本特例で一括費用化した資産も申告対象に含めることを忘れないようにしましょう。課税標準額の合計が150万円未満の場合は償却資産税が課されない免税点の取扱いもあるため、自社の保有資産額とあわせて確認しておくと安心です。
従業員数要件の引き下げに注意
もう一つの実務影響が、対象法人の従業員数要件の引き下げです。改正前は常時使用する従業員の数が500人以下(一定の特定法人は300人以下)であれば対象でしたが、令和8年度改正で「常時使用する従業員の数が400人を超える法人」が除外されました。多くの中小企業には影響しませんが、従業員数が400人前後の成長企業は、自社が引き続き特例の対象になるかを確認しておくべきです。
貸付け用の資産は対象外
令和4年4月1日以後に取得する資産のうち、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものは、本特例の対象から除かれています。節税目的で購入して他者に貸し付けるといったスキームは認められない点に留意してください。
令和4年4月1日以後に取得する資産のうち、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものは、本特例の対象から除かれています。節税目的で購入して他者に貸し付けるといったスキームは認められない点に留意してください。
当事務所の見解・実務上の注意点
当事務所では、今回の40万円への拡大を「使える枠が広がった」とだけ捉えるのではなく、年間300万円という総額上限とのバランスで管理することをおすすめしています。1台あたりの上限が上がった分、数台購入すると300万円の枠を早く使い切ってしまうため、期末にまとめ買いをする場合は枠の残りを意識した購入計画が重要になります。とくに、利益の出ている事業年度に設備投資が集中しがちな業種では、特例で一括費用化する資産と、あえて通常の減価償却を選ぶ資産を意図的に振り分けることで、複数年にわたって平準的に節税効果を得る発想も有効です。
1. 国税庁の公表情報がまだ改正前の表記である点に注意
本記事執筆時点では、国税庁のタックスアンサー(No.5408)は令和7年4月1日現在の法令に基づく「30万円未満」「令和8年3月31日まで」という表記のままになっています。これは公表ページの更新が追いついていないためで、改正法はすでに成立・施行済みです。令和8年4月1日以後の取得であれば40万円未満で適用できますが、表記の食い違いに惑わされないよう、適用にあたっては顧問税理士に確認することをおすすめします。
2. 「取得して事業の用に供した」タイミングが基準
特例は、資産を取得しただけでなく実際に事業で使い始めた日が属する事業年度に適用します。令和8年3月31日までに事業供用した資産は従来の30万円未満が、令和8年4月1日以後に事業供用した資産は40万円未満が基準です。期末ぎりぎりに納品された設備は、年度内に使い始めているかどうかで適用の可否が変わるため、検収日や使用開始日の記録を残しておきましょう。
3. 明細書の添付を忘れない
本特例の適用を受けるには、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付し、取得価額の合計額などを記載する必要があります。少額な資産は管理が漏れやすいため、固定資産台帳や補助科目で「特例適用分」を区別して記帳しておくと、決算時の集計と明細書作成がスムーズです。
4. 適用期限の延長を前提に投資計画を立てる
今回の改正で適用期限が令和11年(2029年)3月31日まで延長されたことで、当面の数年間はこの特例を前提に設備投資の計画を立てられるようになりました。とはいえ、この種の特例措置は2〜3年ごとに見直され、期限到来時に廃止・縮小される可能性もゼロではありません。「いつまでも使える制度」と考えず、利益が出ている事業年度に計画的に活用する姿勢が大切です。設備投資を検討している場合は、補助金や他の中小企業向け税制(中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制など)との併用可否も含めて、早めに顧問税理士へ相談することをおすすめします。
今すぐやるべきこと(チェックリスト)
令和8年度改正を自社の節税に活かすために、設備投資の前後で次のステップを確認しておきましょう。
- ステップ1:自社が中小企業者等の要件を満たすか確認する
資本金1億円以下であること、青色申告であること、常時使用する従業員数が400人以下であることなどを確認します。要件を満たさない場合は本特例を使えません。 - ステップ2:購入予定資産の取得価額と事業供用日を整理する
本体価格に付随費用を加えた取得価額を、自社の消費税経理方式(税抜・税込)で計算し、40万円未満かどうかを判定します。あわせて、いつ使い始めるか(事業供用日)を確認します。 - ステップ3:年間300万円の枠の残りを確認する
同一事業年度ですでに特例を適用した資産の合計額を把握し、新たな購入で300万円の上限を超えないかを試算します。超える分は通常の減価償却となります。 - ステップ4:償却資産税まで含めて有利・不利を判断する
20万円未満の資産は一括償却資産(償却資産税の対象外)との比較を、30万円台の資産は通常償却との比較を行い、トータルの税負担で判断します。 - ステップ5:明細書添付と帳簿区分を準備する
確定申告書に添付する明細書の作成に備え、特例適用分を固定資産台帳や補助科目で区分して記帳します。
よくある質問
- Q. 40万円への引き上げはいつ取得した資産から使えますか?
- A. 令和8年(2026年)4月1日以後に取得して事業の用に供した減価償却資産から、40万円未満が対象になります。令和8年3月31日までに事業で使い始めた資産は、従来どおり30万円未満が基準です。取得日ではなく「事業の用に供した日」が属する事業年度で判定する点に注意してください。
- Q. 取得価額がちょうど40万円の資産は特例の対象になりますか?
- A. 対象になりません。本特例は「取得価額が40万円未満」の資産が対象で、40万円を含みません。したがって取得価額が40万円ちょうどの資産は通常の減価償却が必要です。本体価格だけでなく、運賃や据付費などの付随費用も取得価額に含めて判定します。
- Q. 一括で経費にすれば固定資産税はかからないのですか?
- A. かかる場合があります。本特例で全額を損金にしても、その資産は償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象として市町村への申告が必要です。法人税・所得税は減りますが、償却資産税は別途負担が残ります。一方、20万円未満の一括償却資産は償却資産税の対象外です。
- Q. 1年間に使える金額に上限はありますか?
- A. あります。1つの事業年度に本特例を適用できる取得価額の合計額は300万円が上限です。事業年度が1年未満の場合は月数按分で計算します。1台あたりの上限が40万円未満に上がっても、年間の総額枠は300万円のまま変わっていないため、まとめ買いの際は枠の残りを意識してください。
- Q. 個人事業主でもこの特例は使えますか?
- A. 使えます。青色申告をしている個人事業主は、租税特別措置法第28条の2により本特例の対象です。法人と同様に、令和8年4月1日以後に取得・事業供用した資産から40万円未満が基準となり、年間300万円の上限や明細書の添付などの要件も共通です。白色申告の場合は本特例を使えない点に注意してください。
- Q. 中古で買った資産やソフトウェアも対象になりますか?
- A. なります。本特例は資産が新品か中古かを問わず、取得価額が基準未満かどうかで判定するため、中古資産でも取得価額が40万円未満であれば対象です。また、無形固定資産であるソフトウェアも対象に含まれます。耐用年数の長短ではなく、あくまで取得価額で判断する点がポイントです。
- Q. リースで導入した資産も特例の対象になりますか?
- A. 所有権移転外ファイナンスリース取引のように、税務上は賃借人がその資産を取得したものとして取り扱われるリース資産は、取得価額が40万円未満であれば本特例の対象になり得ます。一方、単純な賃貸借(オペレーティングリース)として処理されるものは資産の取得に当たらず対象外です。判断に迷う場合は契約形態を確認のうえ顧問税理士にご相談ください。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。