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役員報酬の改定2026|定期同額給与の3か月ルールと事前確定届出給与

役員報酬の改定2026 定期同額給与の3か月ルールと事前確定届出給与の届出期限
この記事の要点3点

  • 役員報酬を損金(経費)にするには「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに当てはめる必要があり、定期同額給与の改定は原則として会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行います。
  • 影響を受けるのは中小企業のオーナー経営者です。3月決算法人なら定時株主総会が開かれる6月が、まさに役員報酬を見直す期限の時期にあたります。
  • 期首から3か月を過ぎての増額や、事前確定届出給与の届出忘れ・届出どおりに支給しない処理は、損金不算入として法人税が増えるリスクがあります。今すぐ改定スケジュールの確認が必要です。

「役員報酬は社長が好きなときに自由に変えられる」と思っていませんか。実は、法人税の世界では役員報酬の払い方に厳格なルールがあり、決められた形に当てはめないと「経費(損金)」として認められず、その分だけ法人税が増えてしまいます。とりわけ定期同額給与の改定には「事業年度開始から3か月以内」という期限があり、3月決算法人にとっては定時株主総会のある6月が勝負どころです。本記事では、国税庁の取扱いにもとづき、役員報酬の3つの類型と改定の期限、事前確定届出給与の届出のポイントを、中小企業の実務目線で税理士が解説します。

役員報酬の損金算入と改定の概要

法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は、損金の額に算入されません(国税庁No.5211)。さらに、これらに該当する給与であっても、不相当に高額な部分の金額は損金になりません。つまり役員報酬は「3つの型のどれかに正しく当てはめ、かつ金額が過大でないこと」が損金算入の条件になります。

従業員の給与であれば、いつ・いくら上げても全額が経費になります。これに対し役員報酬に厳しいルールがあるのは、利益が出そうな期末に役員報酬を引き上げて利益を圧縮するといった、恣意的な利益操作を防ぐためです。中小企業の多くはこのうち「定期同額給与」を使っており、必要に応じて「事前確定届出給与」を役員賞与の代わりに併用します。逆にいえば、この2つの型と期限さえ正しく押さえておけば、役員報酬で損をすることはほとんどありません。まずは自社がどの型をどう使っているかを確認することが出発点になります。

計算例:期限を1か月過ぎた増額で起きること
3月決算法人で、月額50万円の社長報酬を「業績好調だから」と8月から月70万円に増額したとします。増額が認められる通常改定の期限(6月30日)を過ぎているため、上乗せした月20万円分は定期同額給与と認められないおそれがあります。8月から翌3月までの8か月分、20万円×8=160万円が損金不算入となれば、実効税率を約30%とすると約48万円も法人税等が増える計算です。同じ増額でも、6月の株主総会で決議していれば全額が損金になりました。タイミングひとつで税負担が変わる典型例です。

なお、不相当に高額な役員給与は損金になりません。高額かどうかは、その役員の職務の内容、会社の収益や使用人への給与の支給状況、同業同規模の他社の支給状況などに照らして判断されます(実質基準)。加えて、定款や株主総会の決議で定めた役員給与の限度額を超える部分も損金になりません(形式基準)。役員報酬の総額の上限は株主総会で枠を定めておくのが実務の基本です。

役員報酬の3つの類型

まずは3つの類型の違いを整理します。中小企業で実際によく使われるのは、上の2つです。

類型内容主な使いどころ
定期同額給与支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、各支給時期の支給額(または源泉税等控除後の額)が同額である給与毎月の役員報酬(基本給)
事前確定届出給与所定の時期に確定した額の金銭等を支給する定めに基づき、事前に税務署へ届け出て支給する給与役員に対する賞与(ボーナス)
業績連動給与利益等の指標に連動して算定される給与(有価証券報告書での開示など要件が厳格)主に上場企業など(中小では使いにくい)

定期同額給与が改定できる3つの場合

定期同額給与は「毎月同じ額」が原則ですが、次の場合には期中の改定が認められ、改定後も定期同額給与として損金算入できます。

改定の種類内容
通常改定会計期間開始の日から3か月を経過する日(3月経過日等)までにされる改定。最も一般的な定時株主総会での改定がこれにあたる
臨時改定事由による改定役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定
業績悪化改定事由による改定経営状況が著しく悪化したこと等による減額改定(減額に限る)。一時的な資金繰りや単に業績目標に達しなかったことは含まれない

中小企業への実務影響|3か月ルールと届出期限

もっとも重要なのが「通常改定は会計期間開始の日から3か月を経過する日まで」というルールです。これを過ぎてから役員報酬を増額すると、増額分が定期同額給与と認められず、損金不算入になるおそれがあります。

重要:3月決算法人は6月末が改定リミット
3月決算法人(事業年度4月1日〜翌3月31日)の場合、会計期間開始の日(4月1日)から3か月を経過する日は6月30日です。多くの中小企業は6月下旬に定時株主総会を開いて役員報酬を改定しますが、この6月末を過ぎてからの増額改定は、原則として損金算入が認められません。決算が固まり「今期は利益が出そうだから役員報酬を上げよう」と動くのが7月以降になると手遅れになる、という点に注意が必要です。

決算月別・改定期限と届出期限の早見表

自社の決算月によって、定期同額給与の改定期限(期首から3か月経過日)と、事前確定届出給与の届出期限(期首から4か月経過日。決議日から1か月のほうが早ければそちら)は次のように変わります。代表的な決算月で整理しました。

決算月事業年度開始定期同額の改定期限(3か月経過日)事前確定届出給与の届出期限(4か月経過日)
3月決算4月1日6月30日7月31日
9月決算10月1日12月31日翌年1月31日
12月決算1月1日3月31日4月30日

いずれの場合も、株主総会等で決議した日から1か月を経過する日のほうが早ければ、そちらが届出期限になります。届出期限は会計期間開始から4か月経過日が「上限」であり、決議が早ければ期限も前倒しになる点に注意してください。自社の総会開催日から逆算してスケジュールを組むことが大切です。

増額分・減額分の取扱い

期首から3か月以内の通常改定であれば、改定前と改定後でそれぞれ定期同額給与として全額が損金になります。一方、期限を過ぎてから増額した場合は、その事業年度を通じて「上乗せされた部分」が定期同額給与の枠からはみ出し、損金不算入と判断されるリスクがあります。減額の場合も、業績悪化改定事由など正当な理由がなければ、減額前との差額部分の取扱いが問題になります。改定は「いつ・いくら・どんな理由で」を株主総会議事録に明確に残しておくことが欠かせません。

使用人兼務役員の使用人分は別扱い

部長や工場長などの肩書きを持ちながら役員も兼ねる「使用人兼務役員」については、使用人としての職務に対する給与部分は、原則として一般の従業員と同じように損金に算入できます(不相当に高額な部分を除く)。ただし、誰が使用人兼務役員に当たるかには要件があり、代表取締役や同族会社の一定の株主などは使用人兼務役員になれません。賞与を出す際に「役員分」と「使用人分」を区分できるかは、節税の観点でも実務上重要なポイントです。

事前確定届出給与は「届出期限」が命

役員に賞与を支給して損金にしたい場合は、事前確定届出給与を使います。これは事前に税務署へ届け出ることが絶対条件で、届出書の提出期限は次のいずれか早い日です(国税庁C1-23)。

  • ☑ 株主総会等の決議をした日(その職務執行開始日が後の場合はその日)から1か月を経過する日
  • ☑ その会計期間開始の日から4か月を経過する日(会計期間4月経過日等)

新設法人がその設立時に開始する役員の職務について定めをした場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限です。3月決算法人なら、6月の株主総会で決議した場合は「決議日から1か月」と「会計期間開始(4月1日)から4か月=7月31日」を比べて早いほうが期限になります。届出が1日でも遅れると、その賞与は損金になりません。

「同額」の判定はどう見るか

定期同額給与は「各支給時期における支給額が同額」であることが原則です。ここでいう同額は、税金や社会保険料を差し引く前の額面(総支給額)で判定するのが基本です。したがって、年の途中で社会保険料の料率改定や住民税の特別徴収額の変更があり、結果として手取り額が月ごとに上下しても、額面が一定であれば定期同額給与として扱われます。なお、源泉徴収される所得税や特別徴収される住民税などを控除した後の金額が同額である場合も定期同額給与に含まれる、という取扱いもあります。いずれにせよ、額面の支給額を期中でみだりに動かさないことが大原則です。社長個人の都合で「今月は多めに」といった調整を加えると、定期同額性が崩れて損金不算入を招くため注意してください。

当事務所の見解・実務上の注意点

当事務所では、決算月の2〜3か月前から翌期の役員報酬シミュレーションを行い、株主総会のスケジュールとあわせてご提案しています。実務でとくに注意すべき点を3つ挙げます。

1. 「届出どおりに支給する」ことが最重要

事前確定届出給与は、届け出た金額・時期のとおりに支給して初めて損金になります。「資金繰りが厳しいから今回は減額しよう」「少し上乗せしよう」と届出と異なる支給をすると、原則としてその賞与の全額が損金不算入になりかねません。届出した以上は、そのとおりに払うか、払わない(不支給)かのいずれかで対応し、安易な増減は避けるべきです。業績の変動が読みにくい場合は、無理のない金額で届け出ておくことが安全です。

2. 社会保険料とのトータルで考える

役員報酬を上げれば法人税は下がりますが、社長個人の所得税・住民税や社会保険料は増えます。逆に事前確定届出給与(賞与)をうまく組み合わせると、社会保険料の負担を調整できる場合もあります。法人税・所得税・社会保険料の三者をトータルで最適化する視点が欠かせません。目先の法人税だけを見て役員報酬を決めると、かえって手取りが減ることもあります。

3. 議事録と改定の根拠を必ず残す

役員報酬の改定は、株主総会(または取締役会)の決議が前提です。臨時改定事由や業績悪化改定事由による期中改定を行う場合は、その事由が客観的に確認できる資料(組織変更の記録、月次試算表の推移など)を残しておくことが、税務調査での説明に直結します。「なんとなく期中に変えた」という処理が、後日否認される最大の原因です。

4. 改定期限を逃したら「翌期」を見据える

もし通常改定の期限(期首から3か月)を過ぎてしまった場合、その事業年度の途中で安易に増額するのは避けるべきです。期中の増額は損金不算入のリスクを抱えるため、原則として現状の報酬を維持し、次の事業年度の期首改定で見直すのが安全策です。どうしても期中に変える必要があるなら、臨時改定事由・業績悪化改定事由に該当するかを慎重に検討し、根拠を固めたうえで行います。役員報酬は「年に一度、期首にじっくり決める」ものと捉え、決算予測とセットで前広に準備することが、結果的にいちばんの節税につながります。期限管理を税理士と共有し、毎期のスケジュールに組み込んでおきましょう。

今すぐやるべきこと(チェックリスト)

役員報酬の改定を検討している経営者は、次のステップで進めてください。とくに3月決算法人は6月中の対応が必要です。

  1. ステップ1:自社の決算月と改定リミットを確認する
    会計期間開始の日から3か月を経過する日(3月決算なら6月30日)を確認し、定期同額給与の改定期限を把握します。
  2. ステップ2:翌期の業績を見込んで報酬額を試算する
    翌期の売上・利益の見込みをもとに、法人税・所得税・社会保険料のバランスを踏まえた役員報酬額を試算します。
  3. ステップ3:定時株主総会で改定を決議し議事録を残す
    改定額・改定時期・理由を株主総会議事録に明記し、改定後の支給額がいつから変わるかを経理に共有します。
  4. ステップ4:賞与を出すなら事前確定届出給与を届け出る
    役員賞与を損金にしたい場合は、株主総会決議日から1か月と会計期間開始から4か月のいずれか早い日までに届出書を提出します。
  5. ステップ5:届出どおりに支給し、改定後は同額を維持する
    定期同額給与は次の改定時期まで毎月同額を維持し、事前確定届出給与は届出どおりの金額・時期で支給します。

よくある質問

Q. 3月決算法人ですが、役員報酬の改定はいつまでに行えばよいですか?
A. 定期同額給与の通常改定は、会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行う必要があります。3月決算法人(事業年度4月1日開始)の場合は6月30日が期限です。多くの会社は6月の定時株主総会で改定しています。これを過ぎてからの増額は損金不算入のリスクがあります。
Q. 期の途中で役員報酬を増やしたら、どうなりますか?
A. 期首から3か月を過ぎた後の増額は、臨時改定事由などの正当な理由がない限り、増額した上乗せ部分が定期同額給与と認められず、損金不算入と判断されるおそれがあります。役員の地位や職務の重大な変更といった事情がある場合は臨時改定事由に該当する余地がありますので、根拠資料を残したうえで税理士に相談してください。
Q. 業績が悪化したので役員報酬を下げたいのですが、可能ですか?
A. 経営状況が著しく悪化したこと等の業績悪化改定事由に該当すれば、期中の減額改定が認められます。ただし、一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことだけでは、この事由には含まれません。減額の根拠を客観的に示せるよう、月次試算表などの資料を整えておくことが重要です。
Q. 役員に賞与を出して経費にする方法はありますか?
A. 事前確定届出給与を使えば、役員賞与も損金にできます。株主総会等の決議日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日までに、税務署へ届出書を提出する必要があります。届け出た金額・時期のとおりに支給することが条件です。
Q. 事前確定届出給与を届け出た金額と違う額で支給したらどうなりますか?
A. 届け出た金額・時期と異なる支給をすると、原則としてその賞与の全額が損金不算入になりかねません。増額・減額のいずれであっても同様です。業績が読みにくい場合は無理のない金額で届け出て、そのとおり支給するか、不支給とするかで対応するのが安全です。
Q. 設立したばかりの会社では、役員報酬をいつ決めればよいですか?
A. 新設法人の場合、定期同額給与は設立日から3か月を経過する日までに改定(最初の金額設定)を行う必要があります。また、設立時から事前確定届出給与を出す場合の届出書の提出期限は、設立の日以後2か月を経過する日です。創業初年度は資金繰りが読みにくいため、無理のない金額で設定し、軌道に乗ってから翌期に見直すのが安全です。

参考資料・出典

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