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中小企業防災・減災投資促進税制2026|特別償却16%と令和9年3月期限

中小企業防災・減災投資促進税制と特別償却16%の要点を示すアイキャッチ画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:中小企業防災・減災投資促進税制は、事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業者等が防災設備を取得した場合に特別償却16%を適用できる制度です。中小企業庁は令和8年7月16日付で実施要領を改正しました。
  • 2ポイント2:認定を受けられるのは令和9年3月31日まで。審査の標準処理期間は45日、GビズIDの取得にも最低2週間程度かかるため、年明けからの着手では間に合わないおそれがあります。
  • 3ポイント3:補助金で買った設備・消防法等で設置が義務づけられた設備・中古品は対象外です。設備を発注する前に、対象になるかどうかを計画に書き込んで認定を受ける必要があります。

9月1日は防災の日です。近年は台風や豪雨、地震による事業停止のリスクが現実のものとなり、自家発電設備や止水板といった「事前の備え」に投資する中小企業が増えています。その投資を後押しするのが、事業継続力強化計画の認定とセットで使う中小企業防災・減災投資促進税制です。中小企業庁は令和8年7月16日付で本税制の実施要領を改正し、翌7月17日に関連資料を更新しました。認定を受けられる期間は令和9年3月31日までで、審査期間を考えると残された時間は思ったほど長くありません。本記事では、制度の中身と、堺市をはじめとする中小企業が今から動く場合の現実的なスケジュールを整理します。

制度・改正の概要

制度・改正の概要を象徴する官公庁の建物のイラスト(中小企業防災・減災投資促進税制)

特別償却16%を認める租税特別措置法の制度

中小企業防災・減災投資促進税制は、正式には「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度」といいます。中小企業庁の実施要領によれば、本税制は「中小企業が自然災害等に備えた事前対策を強化するための設備投資を後押しするため、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第11条の3及び第44条の2において措置されている」ものです。

仕組みは単純で、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法にもとづく事業継続力強化計画(または連携事業継続力強化計画)の認定を受け、その計画に書いた対象設備を取得して事業の用に供すると、通常の減価償却に加えて取得価額の16%を初年度に償却できます。税額控除ではなく特別償却である点が、中小企業経営強化税制などと異なるところです。

令和8年7月16日に実施要領が改正された

中小企業庁の実施要領は【令和8年7月16日版】として改正され、同日から施行されています。中小企業庁のウェブサイトでは「令和8年度税制改正の内容を反映しました」と説明され、概要資料・実施要領・実施要領の新旧対照表がいずれも2026年7月17日付で掲載されました。同ページには「令和8年4月1日以後の制度内容です」と明記されています。

認定対象期間と適用対象期間は別物

本税制で最も間違えやすいのが、二つの期間の区別です。実施要領は次のように定めています。

期間の名称内容実務上の意味
認定対象期間令和元年7月16日から令和9年3月31日までの間この期間内に計画の認定を受けなければ、そもそも本税制を使えない
適用対象期間認定を受けた日から同日以後1年を経過する日までこの期間内に対象設備を取得等して事業の用に供する必要がある

つまり、令和9年3月31日は「設備を買う期限」ではなく「認定を受ける期限」です。仮に令和9年3月に認定を受けられれば、設備の取得は令和10年3月まで猶予があります。逆に、令和9年4月に認定を受けても本税制は使えません。

認定件数は累計10万件超、大阪府は7,801件

中小企業庁が公表している「地域別認定件数一覧」(令和8年7月末日時点)によれば、事業継続力強化計画の認定件数は全国累計102,591件に達しています。このうち連携事業継続力強化計画は累計1,988件です。地域別では次のとおりです。

区分累計認定件数令和8年度(4〜7月)
全国102,591件4,823件
近畿地方合計17,773件837件
大阪府7,801件392件
兵庫県4,472件192件
京都府1,792件87件

大阪府では令和8年度に入ってからの4か月で392件が新たに認定を受けています。決して珍しい制度ではなく、すでに多くの中小企業が取得しているという点は押さえておきたいところです。

中小企業への実務影響

中小企業への実務影響を象徴する自家発電設備のイラスト(対象設備と取得価額要件)

対象になる設備と取得価額のハードル

対象設備は、中小企業等経営強化法施行規則第29条にもとづき、「自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する減価償却資産」のうち次のものとされています。減価償却資産の種類ごとに取得価額の下限が決まっている点に注意してください。

減価償却資産の種類(取得価額要件)対象となるものの用途又は細目
機械及び装置
(100万円以上)
自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置(これらと同等に、自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有するものを含む)
器具及び備品
(40万円以上)
全ての設備(自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有するもの)
建物附属設備
(60万円以上)
自家発電設備、キュービクル式高圧受電設備、変圧器、配電設備、電力供給自動制御システム、照明設備、無停電電源装置、貯水タンク、浄水装置、排水ポンプ、揚水ポンプ、格納式避難設備、止水板、耐震・制震・免震装置、架台、防水シャッター

「機械及び装置」と「器具及び備品」には、対象設備をかさ上げするための架台で、資本的支出により取得等をするものも含まれます。浸水対策として既存設備を高い位置に上げる工事は、設備そのものの買い替えでなくても対象になり得るということです。

対象外となる3つの類型は必ず確認する

実施要領は、要件を満たす設備であっても次の①〜③に該当するものは対象外としています。ここを見落とすと、計画の認定まで取ったのに償却できないという事態になります。

  • ☑ ① 消防法及び建築基準法に基づき設置が義務づけられている設備
  • ☑ ② 中古品、所有権移転外リースによる貸付資産
  • ☑ ③ 設備の取得等に充てるための国又は地方公共団体の補助金等の交付を受けて取得等をする設備

①は、スプリンクラーや消火器のように法令上そもそも設置が義務の設備を指します。「防災のための投資」であっても、義務であれば上乗せの優遇はしないという整理です。③は、補助金と税制優遇の二重取りを認めないという趣旨で、設備投資の資金計画を立てる段階で「補助金を使うか、特別償却を使うか」を選ぶ必要があります。

使えるのは「認定を受けられる事業者」より狭い

ここも実務で混同されがちな点です。事業継続力強化計画そのものは、中小企業等経営強化法第2条第1項の中小企業者であれば幅広く認定を受けられますが、税制の適用対象者はさらに絞られます。実施要領によれば、対象は「青色申告書を提出する中小企業者等」で、具体的には次のとおりです。

  • 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  • 事業協同組合、協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商店街振興組合
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

ただし、同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人、2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人、一定の通算法人、そして適用除外事業者(前3事業年度の平均所得金額が15億円超の法人)は対象外です。中小企業庁の手引きにも「税制措置の対象となる企業は、認定を受けられる対象企業の全てではありません」と注記されています。

税制以外にも5つの支援が付いてくる

認定のメリットは特別償却だけではありません。中小企業庁の「事業継続力強化計画認定制度の概要」(令和8年7月17日版)は、次の支援措置を挙げています。設備投資の資金調達まで含めて設計すると、認定を取る価値は大きく変わります。

支援措置内容
日本政策金融公庫の低利融資設備資金は基準利率から0.9%引下げ、運転資金は0.4%引下げ。貸付限度額は国民生活事業7,200万円・中小企業事業7億2,000万円(引下げの適用は貸付限度額のうち4億円まで)。貸付期間は設備資金20年以内、長期運転資金10年以内(据置期間2年以内)
信用保証の別枠・拡大普通保険2億円(組合4億円)、無担保保険8,000万円、特別小口保険2,000万円がそれぞれ別枠。新事業開拓保険は2億円→3億円、海外投資関係保険は2億円→4億円に保証枠を拡大
中小企業投資育成株式会社法の特例通常は資本金3億円以下が投資対象のところ、資本金が3億円を超える株式会社も投資を受けられる
補助金の加点新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠)、中小企業省力化投資補助金(一般型)、小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠/創業型)で加点措置
損害保険料等の割引11の損害保険会社等が、認定事業者に対しリスク実態に応じた保険料の割引を個別に検討

とくに補助金の加点は見逃せません。省力化投資補助金や新事業進出補助金への申請を予定しているなら、先に計画の認定を取っておくだけで採択の可能性が変わります。設備投資と資金繰りを一体で考える場面では、堺市の税務顧問として決算期と投資時期の噛み合わせまで含めてご相談いただけます。

当事務所の見解・実務上の注意点

当事務所の見解と実務上の注意点を象徴する虫眼鏡のイラスト(対象外設備の確認)

特別償却は「減税」ではなく「課税の繰延べ」である

まず率直に申し上げておきたいのは、特別償却16%は税金が16%安くなる制度ではないということです。初年度に多く償却すれば、その分だけ翌期以降の減価償却費は減ります。耐用年数を通じて損金になる総額は変わらないため、効果の本質は課税の繰延べ(一時差異)です。

たとえば取得価額500万円の自家発電設備を取得した場合、特別償却額は80万円です。仮に法人税・住民税・事業税の実効税率を約30%と置けば、初年度の税負担は約24万円軽くなりますが、これは翌期以降に取り戻される性質のものです。それでも、設備投資でキャッシュが出ていく年度の納税額を抑えられる意味は小さくありません。「今期は利益が出ているが来期は投資の反動で落ちそうだ」という局面ほど価値が出ます。なお実効税率は法人の規模や所在地によって異なるため、実際の効果額は個別に試算してください。

設備を発注する前に計画を出す、という順序が絶対

実施要領が定める適用手続きの手順は、①計画の作成・認定申請 → ②認定を受けた後に設備の取得等 → ③税務申告という順序です。「もう買ってしまった設備を、後から計画に書いて認定を取る」ことはできません。また、対象設備であることについては経済産業大臣の確認が必要で、この確認は計画を認定する際に併せて行われます。つまり、認定申請書に対象設備を書き込んでいなければ、その設備は対象になりません。

税務申告の際は、対象設備の償却限度額の計算明細書を添付します。また、認定通知書と認定を受けた計画の写しは税務調査等の際に必要になるため、申告書の控えとセットで保管してください。

令和9年3月31日から逆算すると、動くのは今

認定期限は令和9年3月31日ですが、申請してすぐ認定されるわけではありません。中小企業庁の手引きは「審査の標準処理期間は45日です」と明記しています。さらに、電子申請システムのログインにはGビズIDアカウント(プライムもしくはメンバー)が必要で、手引きは「GビズIDアカウントの取得には、最低でも2週間程度必要です」と注意を促しています。

この二つを単純に足すだけでも約2か月です。当事務所の逆算では、GビズIDを持っていない事業者が令和9年3月31日までの認定を確実にするには、遅くとも令和9年1月中には準備に着手する必要があります。修正依頼が入れば審査はさらに延びますから、実際にはもっと早い方が安全です。9月1日の防災の日を、社内で計画づくりを始めるきっかけにするのが現実的でしょう。

今すぐやるべきこと

今すぐやるべきことを象徴するチェックボックスのイラスト(事業継続力強化計画の認定手順)

認定取得から特別償却の適用までは、次の6ステップで進めます。

  1. ステップ1:GビズIDアカウントの有無を確認する
    事業継続力強化計画の申請は電子申請システムから行い、ログインにはGビズIDアカウント(プライムもしくはメンバー)が必要です。未取得なら最低でも2週間程度かかるため、真っ先に着手してください。
  2. ステップ2:導入したい防災設備を洗い出し、対象要件に当てはめる
    機械及び装置は100万円以上、器具及び備品は40万円以上、建物附属設備は60万円以上という取得価額要件を満たすかを確認します。あわせて、消防法・建築基準法で設置が義務づけられた設備でないか、中古品でないか、補助金の交付を受けて取得するものでないかを点検します。
  3. ステップ3:単独型か連携型かを判断し、計画を作成する
    自社のみで計画する場合は単独型、複数事業者と連携する場合は連携型です。計画実施期間の上限は3年です。中小企業庁の「策定の手引き」(令和8年7月17日版)を参照しながら作成します。
  4. ステップ4:対象設備を計画に明記して認定を申請する
    申請先は主たる事業所の所在地を管轄する経済産業局です。大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県・福井県は近畿経済産業局 経営力向上室(06-6966-6119)が窓口となります。対象設備であることの経済産業大臣の確認は、認定の際に併せて行われます。
  5. ステップ5:認定を受けてから設備を取得し、事業の用に供する
    取得等と事業供用は、認定を受けた日から1年を経過する日までに行う必要があります。発注日ではなく事業の用に供した日で判定されるため、納期の長い設備は余裕をもって発注してください。
  6. ステップ6:税務申告で償却限度額の計算明細書を添付する
    申告時に対象設備の償却限度額の計算明細書を添付します。認定通知書と認定計画の写しは、税務調査等に備えて保管しておきます。
計画づくりに社内の知見が足りない場合は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が専門家派遣による策定支援を行っています。近畿本部の連絡先は06-6264-8613です。認定後の実効性向上支援(単独型)は、日本中小企業診断士協会連合会が担当しています。

よくある質問

Q. 令和9年3月31日までに設備を買えば間に合いますか?
A. いいえ。令和9年3月31日は「事業継続力強化計画の認定を受ける期限」です。設備の取得等と事業供用は、認定を受けた日から1年を経過する日までに行えばよいため、認定さえ間に合えば設備の取得は翌年度にずれ込んでも構いません。逆に、設備を先に買っても認定が令和9年4月以降になれば本税制は使えません。
Q. 補助金で導入した防災設備にも特別償却を使えますか?
A. 使えません。実施要領は「設備の取得等に充てるための国又は地方公共団体の補助金等の交付を受けて取得等をする設備」を対象外と定めています。補助金を使うか特別償却を使うかは、設備投資の資金計画を組む段階で選択することになります。どちらが有利かは補助率と自社の課税所得によって変わります。
Q. 個人事業主でも対象になりますか?
A. なります。実施要領は適用対象者に「常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主」を挙げています。ただし青色申告書を提出していることが前提で、かつ認定対象期間内に事業継続力強化計画の認定を受けている必要があります。白色申告の場合は対象になりません。
Q. スプリンクラーや消火設備は対象になりますか?
A. 消防法及び建築基準法に基づき設置が義務づけられている設備は、実施要領で明確に対象外とされています。法令上の義務として設置するものは、防災目的であっても上乗せの優遇は受けられません。対象になるのは、自家発電設備や止水板、耐震・制震・免震装置のように、義務を超えて自主的に備える設備です。
Q. 認定を取ると設備を買わなくても何かメリットはありますか?
A. あります。日本政策金融公庫の低利融資(設備資金は基準利率から0.9%引下げ)、信用保証の別枠、補助金の加点措置、損害保険料の割引の検討などは、設備を取得しなくても受けられる支援です。とくに省力化投資補助金や新事業進出補助金への申請を予定している場合、加点だけでも取得する価値があります。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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