堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
長時間労働の監督指導2026|違法残業38.5%と残業代遡及払いの税務
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この記事の要点3点
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労働基準監督署の調査は大企業だけの話だと考えている経営者は少なくありません。しかし厚生労働省が令和8年9月15日に公表した令和7年度の監督指導結果を読むと、実際に指導を受けているのは圧倒的に小規模な事業場です。さらに、この調査で違法な時間外労働や賃金不払残業が見つかると、過去にさかのぼって残業代を支払う是正勧告につながります。そのとき問題になるのが、遡って支払った残業手当がどの年分の給与になるのかという税務上の論点です。労務の問題として処理していると、源泉徴収票の再交付まで手が回りません。この記事では、公表された数字の読み方と、遡及払いに伴う税務手続を整理します。
令和7年度の監督指導結果の概要
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29,150事業場のうち78.5%で法令違反
厚生労働省は令和8年9月15日、令和7年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を公表しました。対象期間は令和7年4月から令和8年3月までです。
この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等、長時間労働が疑われる事業場を対象としています。すなわち、無作為抽出ではなく、あらかじめ端緒をつかんだ事業場に絞って入るタイプの調査です。
| 項目 | 事業場数 | 割合 |
|---|---|---|
| 監督指導の実施 | 29,150 | 100% |
| 労働基準関係法令違反があったもの | 22,882 | 78.5% |
| 違法な時間外労働があったもの | 11,228 | 38.5% |
| 賃金不払残業があったもの | 1,901 | 6.5% |
| 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの | 5,919 | 20.3% |
違法な時間外労働があった11,228事業場について、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数を見ると、月80時間を超えるものが4,991事業場(44.5%)、うち月100時間を超えるものが2,842事業場(25.3%)、月150時間を超えるものが554事業場(4.9%)、月200時間を超えるものが111事業場(1.0%)でした。
指導を受けた事業場の8割は49人以下
この公表資料でもっとも中小企業に関係が深いのは、事業場規模別の内訳です。
| 事業場規模 | 監督指導実施事業場数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1〜9人 | 6,823 | 23.4% |
| 10〜29人 | 12,234 | 42.0% |
| 30〜49人 | 4,510 | 15.5% |
| 50〜99人 | 2,595 | 8.9% |
| 100〜299人 | 1,946 | 6.7% |
| 300人以上 | 1,042 | 3.6% |
1〜9人、10〜29人、30〜49人の3区分を合計すると23,567事業場となり、全体29,150事業場の約8割を占めます。300人以上の事業場は1,042事業場、3.6%にとどまります。監督指導は規模の大きい会社に偏っているという印象は、この数字とは一致しません。
業種は商業と製造業が上位
業種別では、商業が6,398事業場(21.9%)でもっとも多く、製造業4,567事業場(15.7%)、保健衛生業3,810事業場(13.1%)、接客娯楽業3,116事業場(10.7%)、運輸交通業2,423事業場(8.3%)、建設業2,421事業場(8.3%)と続きます。派遣業・警備業・情報処理サービス業等の「その他の事業」が3,316事業場(11.4%)です。公表資料では主な業種を計上しているため、これらの合計は全体の数と一致しません。
健康障害の防止に関する指導も広く行われている
是正勧告とは別に、健康障害の防止のために指導票を交付した事業場の状況も公表されています。過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものが12,811事業場(43.9%)、労働時間の把握が不適正なため指導したものが4,045事業場(13.9%)です。前者のうち、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するよう指導したものは6,717事業場でした。
指導票は是正勧告書と違い、法令違反そのものを指摘する書面ではありません。それでも43.9%という水準は、入られた事業場の4割超で健康管理の仕組みに不足が見つかっていることを意味します。
中小企業への実務影響と残業代遡及払いの税務
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指導の根拠になる条文
公表資料の注記によれば、「違法な時間外労働があったもの」は「労働基準法第32・40条違反」、すなわち36協定なく時間外労働を行わせていること、36協定が無効なこと、または36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせていることによるものと、労働基準法第36条第6項違反、すなわち時間外労働の上限規制を超える時間外労働があったものの件数を計上したものです。
「賃金不払残業があったもの」は労働基準法第37条違反のうち、法定の割増賃金を支払っていないものの件数です。計算誤り等は含まないとされています。
時間外労働の上限規制については、公表資料の参考資料で、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)により改正された労働基準法において、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間(限度時間)とされ、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)とされたと説明されています。限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6か月が限度で、中小企業には令和2年4月1日から施行されています。
遡って支払う残業代はどの年分の給与になるか
ここからが税理士事務所の領域です。是正勧告を受けて過去分の割増賃金を一括で支払うことになったとき、その残業手当は支払った年の給与ではありません。
国税庁の質疑応答事例「過去に遡及して残業手当を支払った場合」は、労働基準監督署から実労働時間に即した割増賃金を支払うよう行政指導を受け、過去3年間の実労働時間に基づく残業手当と実際に支払った残業手当との差額を一括して支払う事例について、次のように回答しています。「照会の場合は、本来各支給日に支払うべき残業手当が一括して支払われたものと認められますので、本来の残業手当が支払われるべきであった各支給日の属する年分の給与所得となります」。根拠として所得税基本通達36-9(1)が挙げられています。
労務の是正は税務の作業を連れてきます
過去の年分の給与所得が増えるということは、その年の源泉徴収税額と年末調整の結果が変わるということです。労務面で不足額を支払って終わりにはなりません。どの年分にいくら帰属するかを月ごとに割り付ける作業が必要になります。
過去の年分の給与所得が増えるということは、その年の源泉徴収税額と年末調整の結果が変わるということです。労務面で不足額を支払って終わりにはなりません。どの年分にいくら帰属するかを月ごとに割り付ける作業が必要になります。
同じ質疑応答事例は、給与規程等の改訂が過去に遡って実施されたために残業手当の差額が一括支給されるような場合についても触れており、その差額について支給日が定められているときはその支給日、支給日が定められていないときはその改訂の効力が生じた日になるとしています(所得税基本通達36-9(3))。実労働時間に基づく不足額の精算なのか、規程改訂に伴う差額支給なのかで取扱いが分かれる点に注意が必要です。
| 場面 | 収入すべき時期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 行政指導により過去の実労働時間に基づく差額を一括支給 | 本来の残業手当が支払われるべきであった各支給日の属する年分 | 所得税基本通達36-9(1) |
| 給与規程等の遡及改訂により差額を一括支給(支給日の定めあり) | その支給日 | 所得税基本通達36-9(3) |
| 給与規程等の遡及改訂により差額を一括支給(支給日の定めなし) | その改訂の効力が生じた日 | 所得税基本通達36-9(3) |
なお国税庁は、この質疑応答事例について、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引等に適用する場合には回答内容と異なる課税関係が生ずることがあると注記しています。自社の事案にそのまま当てはめる前に、堺市の税務顧問など専門家に個別の判断を確認してください。
労働時間の管理方法の実態
公表資料では、監督指導を実施した事業場における労働時間の管理方法も集計されています。使用者が自ら現認することにより確認していたのが2,201事業場、タイムカードを基礎に確認していたのが10,498事業場、ICカード・IDカードを基礎に確認していたのが6,237事業場、PCの使用時間の記録を基礎に確認していたのが1,071事業場、自己申告制により確認していたのが6,517事業場です。部署等によって異なる管理方法を採用している場合は複数に計上されています。
当事務所の見解・指摘されやすい3つの論点
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1つ目は「記録どうしのずれ」を放置していること
公表資料に掲載された事例のうち、河川の管理業務を行う事業場(労働者数約130人)の事例では、各労働者が記録していた始業・終業時刻の記録とパソコンの使用時間記録との間に1時間以上の乖離がある日が複数認められ、記録上は休日や年次有給休暇として処理されている日にもパソコンの使用記録があったにもかかわらず、事業場では乖離の理由を把握していない状況が認められたとされています。
この事業場は、労働時間を適正に把握するよう指導されたうえ、過去に遡って実態調査を行うよう指導され、その結果、36協定で定めた上限時間(月91時間)を超え、労働基準法に定められた上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内)も超える違法な時間外・休日労働(最長で1か月当たり199時間)が認められて是正勧告を受けています。さらに実態調査前に把握していた労働時間数分のみで賃金を支払っていたため、不足額を遡及して支払うよう是正勧告(労働基準法第37条違反)を受けました。乖離を説明できない記録が残っていること自体が、遡及払いの引き金になっています。
2つ目は勤怠システムの「後から修正できる」仕様
ソフトウェア業を営む事業場(労働者数約400名)の事例では、従来の勤怠システムで自動反映された各労働者の入退室時間が後から修正できる仕様になっていたため、システムを改修したうえで経営者を含む社内研修で周知したとされています。客観的な記録が上書きできる状態は、労働時間の適正把握の観点で弱点になります。給与計算を外部に委託していても、元データの信頼性は自社の責任です。記帳・経理代行をご利用の場合でも、勤怠データの確定手順は社内で定めておく必要があります。
3つ目は36協定の特別条項そのものが上限を超えていること
電気設備工事業を営む事業場(労働者数約20名)の事例では、現場労働者7人について36協定で定めた上限時間(特別条項:月99時間)を超え、かつ労働基準法に定められた時間外・休日労働の上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内)を超える違法な時間外・休日労働(最長で1か月当たり237時間)が認められました。特別条項を結んでいれば安心という理解は誤りで、36協定の限度時間を超えれば労働基準法第32条違反、法定の上限を超えれば同法第36条第6項違反として、別々に是正勧告の対象になります。
前年度と比べて改善はしているが母数は増えている
公表資料の前年度比較によれば、令和6年度は監督指導実施26,512事業場のうち法令違反21,495事業場(81.1%)、違法な時間外労働11,230事業場(42.4%)でした。令和7年度は実施29,150事業場に対して法令違反22,882事業場(78.5%)、違法な時間外労働11,228事業場(38.5%)です。割合は下がっていますが、監督指導を受けた事業場の数そのものは増えています。改善したから安心という読み方はできません。
今すぐやるべきこと
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厚生労働省は、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。10月中に次の順序で自己点検を済ませてください。
- ステップ1:36協定の限度時間と実績を突き合わせる
協定で定めた1か月の上限時間と、直近12か月の実績で最も長い労働者の時間数を比較します。協定の限度時間を超えていれば、法定の上限内であっても労働基準法第32条違反です。 - ステップ2:客観的記録と申告記録の差を確認する
入退室記録、パソコンのログ、タイムカードと、給与計算に使った労働時間を突き合わせます。乖離がある日について理由を説明できるかを点検します。 - ステップ3:勤怠記録が上書きできる仕様になっていないか確認する
自動取得した記録を後から修正できる場合、修正履歴が残る設定にします。修正の申請と承認の手順を文書化します。 - ステップ4:不足額が見つかったら年分ごとに割り付ける
実労働時間に基づく残業手当の不足は、本来支払われるべきであった各支給日の属する年分の給与所得になります。支払総額だけでなく、どの年分にいくら帰属するかを月別に整理します。 - ステップ5:源泉徴収と年末調整のやり直しを税理士に相談する
過去の年分の給与所得が増えると、その年の源泉徴収税額が変わります。対象者が退職済みの場合も含め、必要な手続を確認してください。 - ステップ6:月80時間超の労働者への面接指導の体制を整える
公表資料では、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが5,919事業場ありました。労働者からの申出があったときに医師による面接指導を実施できる仕組みを先に用意します。申出が適切になされるようにするための仕組みをあらかじめ定めることも指導事項に含まれています。 - ステップ7:削減の方策を文書にして残す
公表資料の事例では、人員の増員、非効率業務の洗い出し、承認フローの簡素化など、具体的な方策の実施によって法律違反が解消したとされています。指導を受けてから考えるのではなく、時間外労働が月45時間を超えた月の対応手順を先に決めておきます。
よくある質問
- Q. 従業員が10人程度の会社でも監督指導の対象になりますか?
- A. なります。令和7年度に監督指導を受けた29,150事業場のうち、1〜9人が6,823事業場(23.4%)、10〜29人が12,234事業場(42.0%)を占めており、この2区分だけで6割を超えます。300人以上の事業場は1,042事業場(3.6%)にとどまります。規模が小さいことは対象外の理由になりません。
- Q. 是正勧告で過去の残業代を支払うと、いつの年の給与になりますか?
- A. 国税庁の質疑応答事例は、労働基準監督署の行政指導を受けて過去の実労働時間に基づく差額を一括して支払う場合、本来の残業手当が支払われるべきであった各支給日の属する年分の給与所得になるとしています。根拠は所得税基本通達36-9(1)です。支払った年の給与としてまとめて処理することはできません。
- Q. 給与規程を遡って改訂した場合も同じ扱いですか?
- A. 異なります。同じ質疑応答事例は、給与規程等の改訂が過去に遡って実施されたために残業手当の差額が一括支給される場合、その差額について支給日が定められているときはその支給日、定められていないときはその改訂の効力が生じた日になるとしています。根拠は所得税基本通達36-9(3)です。国税庁タックスアンサーNo.2509も、給与規程の改訂に伴う新旧給与の差額の支給について同じ整理を示しています。実労働時間の精算なのか規程改訂に伴う差額なのかを、支払う前に区別してください。
- Q. 36協定を結んでいれば上限規制の対象外になりますか?
- A. なりません。公表資料の参考資料によれば、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間とされ、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内とされています。限度時間を超えて延長できるのは年6か月が限度です。中小企業にも令和2年4月1日から適用されています。
- Q. 自己申告制で労働時間を管理していても問題ありませんか?
- A. 自己申告制そのものが禁止されているわけではありません。ただし公表資料は、自己申告により把握した労働時間と入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した事業場内にいた時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすることを求めています。あわせて、労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等、適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないとされています。令和7年度は4,045事業場が労働時間の把握が不適正であるとして指導を受けています。
- Q. 監督指導が増える時期はありますか?
- A. 厚生労働省は、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。令和7年度の監督指導実施事業場数は29,150で、令和6年度の26,512から増えています。点検は指導を受けてからではなく、10月のうちに済ませておくのが現実的です。
参考資料・出典
- 厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果を公表します」(令和8年9月15日報道発表)
- 厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」(報道発表資料本体)
- 国税庁 質疑応答事例「過去に遡及して残業手当を支払った場合」
- 国税庁 タックスアンサーNo.2509「給与所得の収入金額の収入すべき時期」
- 厚生労働省 報道発表資料一覧(2026年9月)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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