堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
中退共2026|10月は加入促進強化月間・掛金全額損金と国の助成
SUMMARY
この記事の要点3点
従業員の退職金をどう準備するかは、中小企業にとって後回しになりやすい課題です。しかし採用難が続くなか、退職金制度の有無は求人票で比較される項目になりました。厚生労働省は令和8年9月18日、独立行政法人勤労者退職金共済機構が令和8年10月を中小企業退職金共済制度の「加入促進強化月間」とすると発表しました。中退共は掛金が全額損金または必要経費になり、新規加入なら掛金の一部を国が助成する制度です。一方で、決算対策として掛金をまとめて計上することはできず、納付月数が短いと退職金が掛金を下回るという性質もあります。この記事では、月間の内容と制度の仕組み、そして税務上の取扱いと加入前に確認したい点を、堺市の税理士事務所の視点で整理します。
加入促進強化月間と中退共制度の概要
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令和8年10月1日から10月31日までが強化月間
厚生労働省が令和8年9月18日に公表した報道発表によると、同省所管の独立行政法人勤労者退職金共済機構は、毎年10月を中小企業退職金共済制度の「加入促進強化月間」としています。令和8年の実施期間は10月1日(木)から10月31日(土)までの1か月間で、主催は勤労者退職金共済機構、後援は厚生労働省です。
この期間中、機構はポスター・パンフレットの配布、新聞などのマスメディアやインターネットを通じた広報の強化、事業主団体を通じた周知・啓発を行い、制度に関する個別相談や説明会を実施します。厚生労働省も都道府県労働局における周知・広報や、都道府県に対する制度の周知依頼などに取り組みます。つまり10月は、説明会や個別相談の窓口がもっとも開いている月ということになります。
加入企業数は約55万社
厚生労働省の報道発表では、中退共制度には令和8年6月末時点で約55万の中小企業が加入しているとされています。掛金の一部を国が助成し、管理も簡単で、税制上の優遇措置が受けられる点がメリットとして挙げられています。
厚生労働省の報道発表では、中退共制度には令和8年6月末時点で約55万の中小企業が加入しているとされています。掛金の一部を国が助成し、管理も簡単で、税制上の優遇措置が受けられる点がメリットとして挙げられています。
中退共は中小企業退職金共済法に基づく国の制度
中小企業退職金共済制度は、中小企業の従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与することを目的として、「中小企業退職金共済法」(昭和34年法律第160号)に基づき設けられた制度です。独力では退職金制度を設けることが困難な中小企業について、事業主の相互共済の仕組みと国の援助によって退職金制度を確立しようとするものです。
制度には、主に常用労働者を対象とする「一般の中小企業退職金共済制度」と、厚生労働大臣が指定した特定の業種に期間を定めて雇用される労働者を対象とする「特定業種退職金共済制度」があります。後者には建設業退職金共済制度、清酒製造業退職金共済制度、林業退職金共済制度の3つがあります。以下は一般の中退共制度について整理します。
加入できる企業の範囲と掛金月額
厚生労働省の加入条件のページによれば、個人企業や公益法人等は常時雇用する従業員数が、その他の法人企業は常時雇用する従業員数または資本金の額・出資の総額のいずれかが、次の範囲内であれば加入できます。
| 業種 | 常用従業員数 | 資本金・出資金 |
|---|---|---|
| 一般業種(製造・建設業等) | 300人以下 | 3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 | 5千万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 | 5千万円以下 |
掛金月額は、従業員ごとに5千円から3万円の範囲で16種類から選択できます。短時間労働者については、2千円・3千円・4千円の特例掛金月額も選択でき、その際は短時間労働者であることの証明書が必要です。掛金は全額事業主負担で、いかなる場合でも従業員に負担させることはできません。増額はいつでも可能ですが、減額は従業員が同意したとき、または減額がやむを得ないとして厚生労働大臣が認めた場合に限られます。
国の掛金助成は2種類
厚生労働省が示す掛金助成は、新規加入助成と月額変更助成の2つです。新規加入助成は、新しく中退共制度に加入する事業主に対し、掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成するものです。パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)の加入者については、掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円が上乗せされます。
月額変更助成は、掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の3分の1を増額月から1年間助成するものです。20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象になりません。
中小企業への実務影響と税務上の取扱い
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掛金は法人なら損金、個人企業なら必要経費
中退共の税務上の最大の特徴は、掛金が全額必要経費になることです。厚生労働省は「掛金については全額事業主が負担することとなっていますが、税法上全額損金又は必要経費扱いとなります」と説明しています。法人企業なら損金、個人企業なら必要経費として、掛金の全額を計上できます。なお厚生労働省は、資本金の額または出資の総額が1億円を超える法人の法人事業税には外形標準課税が適用される旨を注記しています。
損金算入の時期は「現実に納付」が条件
ここが実務でもっとも誤解されやすい点です。法人税基本通達9-3-1(退職金共済掛金等の損金算入の時期)は、法人が支出する退職金共済契約の掛金等の額について、「現実に納付又は払込みをしない場合には、未払金として損金の額に算入することができないことに留意する」と定めています。
決算対策としての使い方には限界があります
思ったより利益が出たので決算月に1年分をまとめて未払計上する、という処理は中退共の掛金ではできません。損金になるのは現実に納付した分だけです。中退共を経費対策として考えるなら、決算間際ではなく、期首または期の早い段階で加入して納付を始める必要があります。
思ったより利益が出たので決算月に1年分をまとめて未払計上する、という処理は中退共の掛金ではできません。損金になるのは現実に納付した分だけです。中退共を経費対策として考えるなら、決算間際ではなく、期首または期の早い段階で加入して納付を始める必要があります。
使用人としての職務を有する役員は加入できる
法人税基本通達9-3-1の(注)は、「独立行政法人勤労者退職金共済機構の退職金共済契約の場合にも、その契約に係る被共済者には、その法人の役員で部長、支店長、工場長等のような使用人としての職務を有している者が含まれる」としています。
さらに国税庁の質疑応答事例「退職金共済掛金等の損金算入」は、同族会社の判定の基礎となった株主等である役員について、「法人税法上は、同族会社の判定株主等で一定の要件を満たすものは使用人兼務役員として認めない」としつつ、中小企業退職金共済法における被共済者の範囲には事実上使用人としての職務に従事している者を含むことを踏まえ、「同族会社の判定株主等である役員であっても、使用人としての職務に従事している者については、同通達の取扱いの適用があると解して差し支えありません」と回答しています。関係法令通達として法人税法施行令第71条第1項、第135条、法人税基本通達9-3-1が挙げられています。
一方で、厚生労働省の加入条件のページは「個人企業の場合、事業主は加入することができません」「法人企業の場合、役員は原則として加入することができません」と明記しています。役員であれば誰でも入れるわけではなく、使用人としての職務を有しているかどうかが分かれ目になります。
受け取る側の課税は一時金か分割かで変わる
厚生労働省は、従業員に支給された退職金について「一時払いの場合は、退職所得扱い、分割払いの場合の各分割退職金は雑所得扱いで公的年金等控除の対象となります」としています。
一時金として受け取る場合の退職所得は、国税庁タックスアンサーNo.1420によれば、収入金額(源泉徴収される前の金額)から退職所得控除額を差し引いた残額に2分の1を掛けて計算します。退職所得控除額は勤続年数20年以下なら40万円に勤続年数を掛けた額(80万円に満たない場合は80万円)、20年超なら800万円に70万円と勤続年数から20年を差し引いた年数を掛けた額を加えた金額です。分離課税であり、給与と合算されない点も従業員にとっての利点です。
| 場面 | 取扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業主が掛金を支払うとき | 法人は損金、個人企業は必要経費として全額 | 厚生労働省の説明 |
| 損金に算入できる時期 | 現実に納付した事業年度。未払金計上は不可 | 法人税基本通達9-3-1 |
| 従業員が一時金で受け取るとき | 退職所得(退職所得控除と2分の1課税) | 国税庁タックスアンサーNo.1420 |
| 従業員が分割で受け取るとき | 雑所得(公的年金等控除の対象) | 厚生労働省の説明 |
退職金は機構から従業員へ直接支払われる
中退共の運用の流れは4段階です。事業主が中退共と退職金共済契約を結ぶと従業員ごとの共済手帳が送付され、毎月の掛金を金融機関に納付します。従業員が退職したときは事業主が「被共済者退職届」を中退共へ提出し、「退職金共済手帳(請求書)」を従業員に渡します。そして従業員の請求に基づいて中退共から退職金が直接支払われます。事業主が従業員に代わって退職金を受け取ることはできません。
当事務所の見解・加入前に確認したい注意点
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納付月数が短いと退職金は掛金を下回る
中退共の紹介記事は掛金の全額損金と国の助成を強調しがちですが、当事務所が加入前にかならず説明しているのは、掛金納付月数と退職金額の関係です。厚生労働省鳥取労働局が掲載している制度の詳細版によれば、掛金の納付が1年未満の場合は退職金が支給されず、1年以上2年未満の場合は掛金相当額を下回る額になります。2年から3年6か月では掛金相当額となり、3年7か月から掛金相当額を上回る額になります。これは長期加入者の退職金を手厚くするための設計です。
| 掛金納付月数 | 退職金額の水準 |
|---|---|
| 1年未満 | 支給されない |
| 1年以上2年未満 | 掛金相当額を下回る |
| 2年から3年6か月 | 掛金相当額 |
| 3年7か月から | 掛金相当額を上回る |
入社から2年以内の離職が多い業種では、支払った掛金が従業員の手取りに結びつかない期間が長く続きます。それでも制度に価値があるのは、定着した従業員に対して確実に退職金を用意できるからです。離職率と掛金月額をセットで設計しないと、経費は出ていくのに従業員には届かないという状態になります。加入の可否より先に、自社の平均勤続年数を確認してください。
掛金は下げにくく、積立金は会社に戻らない
掛金の減額には従業員の同意または厚生労働大臣の認定が必要です。業績が悪化したから来月から半分にする、という調整はできません。また退職金は機構から従業員へ直接支払われるため、積み立てた資金を会社の運転資金に回すこともできません。中退共は「解約できる貯蓄」ではなく「外部に切り離した退職金債務」だと理解しておくことが重要です。掛金月額は、業績が落ち込んだ年でも払い続けられる水準から始めるのが実務的です。
小規模企業共済との重複加入はできない
厚生労働省の加入条件のページは、小規模企業共済制度に加入している方は中退共制度と重複して加入することができないとしています。あわせて、特定業種退職金共済制度との同一従業員の重複加入、社会福祉施設職員等退職手当共済制度との重複加入もできません。経営者自身の退職金は小規模企業共済、従業員の退職金は中退共、という住み分けで設計するのが基本になります。どちらを優先するかは所得水準と会社の利益水準によって変わるため、堺市の税務顧問として顧問先には決算予測と合わせて助言しています。
加入後に中小企業でなくなった場合の出口も確認を
厚生労働省は、加入後に従業員の増加などにより条件を満たさなくなった場合、中退共制度との契約は解除され、従業員には解約手当金が支払われるとしています。ただし一定の要件を備えていれば、確定給付企業年金制度または特定退職金共済制度に退職金相当額を引き継ぐことができます。成長途上の企業ほど、この出口の扱いを加入時に確認しておく価値があります。
今すぐやるべきこと
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10月の加入促進強化月間は、説明会や個別相談が集中的に実施される期間です。検討中の企業は次の順序で進めてください。
- ステップ1:自社が加入できる規模かを確認する
業種ごとの常用従業員数と資本金・出資金の基準に照らします。個人企業や公益法人等は常用従業員数のみで判定します。法人企業は従業員数と資本金のいずれかが基準内であれば加入できます。 - ステップ2:加入させる従業員の範囲を決める
従業員は原則として全員加入です。厚生労働省は、期間を定めて雇われている場合、試みの雇用期間中の場合、休職期間中の場合、定年などで短期間内に退職することが明らかである場合、加入することに反対する意思を表明した場合は加入させなくてもよいとしています。 - ステップ3:平均勤続年数から掛金月額を決める
16種類の掛金月額から従業員ごとに選びます。減額しにくい制度であることを踏まえ、業績が落ち込んだ年でも払い続けられる水準にします。短時間労働者には2千円からの特例掛金月額があります。 - ステップ4:役員の扱いを税理士に確認する
法人の役員は原則として加入できませんが、部長・支店長・工場長等のような使用人としての職務を有している役員は被共済者に含まれます。同族会社の判定株主等である役員が含まれるかは個別判断になるため、加入申込みの前に確認してください。 - ステップ5:期首からの納付開始を前提に日程を組む
掛金は現実に納付しなければ損金になりません。決算間際の駆け込みではなく、納付開始を早めるほど当期に計上できる金額が増えます。新規加入助成が始まるのも加入後4か月目からです。 - ステップ6:既存の退職金制度との整理を行う
小規模企業共済に加入している方は中退共に重複加入できません。建設業退職金共済など特定業種退職金共済制度との同一従業員の重複加入もできません。就業規則の退職金規程と中退共の給付をどう対応させるかも、加入と同時に整理しておく必要があります。
よくある質問
- Q. 中退共の掛金は決算月にまとめて1年分を損金にできますか?
- A. できません。法人税基本通達9-3-1は、法人が支出する退職金共済契約の掛金等の額について、現実に納付または払込みをしない場合には未払金として損金の額に算入することができないことに留意する、と定めています。損金になるのは実際に納付した分だけです。したがって決算直前に加入しても、その事業年度に落とせるのは納付済みの月数分に限られます。利益調整の手段としてではなく、退職金制度として期首から計画的に導入してください。
- Q. 役員も中退共に加入できますか?
- A. 厚生労働省の加入条件のページは、法人企業の場合、役員は原則として加入することができないとしています。ただし法人税基本通達9-3-1の(注)は、被共済者には部長、支店長、工場長等のような使用人としての職務を有している役員が含まれるとしています。国税庁の質疑応答事例では、同族会社の判定株主等である役員であっても、使用人としての職務に従事している者には同通達の取扱いの適用があるとされています。なお個人企業の事業主自身は加入できません。
- Q. 従業員が1年未満で退職した場合、掛金はどうなりますか?
- A. 厚生労働省鳥取労働局が掲載する制度の詳細版によれば、掛金の納付が1年未満の場合は退職金が支給されません。支払った掛金は事業主に返還されず、長期加入者の退職金を手厚くする原資に充てられる設計です。1年以上2年未満でも掛金相当額を下回り、掛金相当額を上回るのは3年7か月からです。試用期間中の従業員を加入させなくてもよいとされているのは、この設計と無関係ではありません。離職率の高い職種では掛金月額を抑えることも検討してください。
- Q. 業績が悪くなったら掛金を減らせますか?
- A. 減額は、従業員が同意した場合、または減額がやむを得ないとして厚生労働大臣が認定した場合に限られます。増額はいつでも可能ですが減額は自由にできないため、掛金月額は低めの水準から始め、業績が安定してから増額するほうが実務的です。増額のときは、掛金月額が18,000円以下の従業員について増額分の3分の1を1年間助成する月額変更助成も使えます。
- Q. 小規模企業共済と中退共はどちらを選ぶべきですか?
- A. 厚生労働省の加入条件のページは、小規模企業共済制度に加入している方は中退共制度と重複して加入することができないとしています。小規模企業共済は経営者や個人事業主自身の退職金、中退共は従業員の退職金という役割の違いがあります。所得水準と会社の利益水準によって優先順位が変わるため、決算予測と合わせて判断してください。
- Q. 短時間労働者やパートも加入させられますか?
- A. 加入できます。厚生労働省は、短時間労働者について2千円・3千円・4千円の特例掛金月額を選択できるとしており、申込みの際は短時間労働者であることの証明書が必要です。特例掛金月額の加入者には新規加入助成の上乗せがあり、掛金月額2,000円なら300円、3,000円なら400円、4,000円なら500円が加算されます。
参考資料・出典
- 厚生労働省「10月は中小企業退職金共済制度の加入促進強化月間」(令和8年9月18日報道発表)
- 厚生労働省「一般の中小企業退職金共済制度(中退共制度)」
- 厚生労働省「一般の中小企業退職金共済制度のしくみ」
- 厚生労働省「加入条件」
- 厚生労働省「中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成」
- 厚生労働省「中小企業退職金共済制度とはどのような制度ですか。」
- 厚生労働省鳥取労働局掲載「よくわかる中小企業退職金共済制度 詳細版(あらまし)」
- 厚生労働省神奈川労働局「中小企業退職金共済制度のご案内」
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節「保険料等」(9-3-1 退職金共済掛金等の損金算入の時期)
- 国税庁 質疑応答事例「退職金共済掛金等の損金算入」
- 国税庁 タックスアンサーNo.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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