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育児休業の保険料免除2026|同居の親族のみの事業は対象外・総務省あっせん

育児休業の社会保険料免除と総務省あっせんを解説する記事のアイキャッチ画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:総務省行政評価局は令和8年9月17日、育児休業による健康保険・厚生年金保険の保険料免除について、厚生労働省に見直しの検討を求めるあっせんを行いました(総評行第46号)。
  • 2ポイント2:影響を受けるのは同居の親族のみを雇う事業所です。労働基準法第116条第2項により労働者に当たらないため育児・介護休業法が適用されず、現行では保険料免除の対象になりません。
  • 3ポイント3:今すぐやるべきことは、従業員が代表者と同居する親族だけかどうかの確認と、過去に提出した育児休業等取得者申出書の点検です。あとから免除が取り消される事例が実際に起きています。

従業員が育児休業に入ったとき、事業主が「育児休業等取得者申出書」を出せば、健康保険・厚生年金保険の保険料が本人負担分も会社負担分も免除される——多くの会社で当然のように行われている手続です。ところが、家族だけで経営している会社では、この免除がそもそも受けられないことがあります。令和8年9月17日、総務省行政評価局はこの取扱いについて厚生労働省にあっせんを行い、見直しの検討を求めました。本記事では、現在の取扱いがどうなっているのか、家族経営の会社が何に注意すべきかを、一次資料に沿って整理します。

総務省あっせんの概要と現行の取扱い

同居の親族のみを雇う事業と育児休業の保険料免除の関係を表す住宅のイラスト

総務省は令和8年9月17日、「健康保険及び厚生年金保険の育児休業による保険料免除の見直しについて(あっせん)」(総評行第46号)を厚生労働省保険局長および年金局長あてに発出しました。総務省設置法第4条第1項第14号の規定に基づく、行政機関等の業務に関する苦情の申出についてのあっせんです。あわせて同日、報道資料と「あっせんのポイント」「あっせん文」「別紙」の3つの資料が公表されました。

きっかけとなった行政相談

あっせん文に記載された相談内容は次のとおりです。家族4人(相談者、夫、息子、息子の妻)で会社を経営しており、夫が代表取締役を務めている。家族4人は同居している。息子の妻が出産し、育児に専念するため、年金事務所に健康保険および厚生年金保険の育児休業による保険料免除の申出を行ったところ、免除が認められた。子が1歳になったときも免除の延長が認められた。その後、子が1歳半になったときに、免除の再延長手続をするため年金事務所に出向いたところ、息子の妻は免除の対象ではなく、これまでの免除が誤りであったとして、免除されていた保険料を納付するよう求められた——というものです。

いったん認められた免除が後から取り消され、さかのぼって保険料の納付を求められたわけです。会社負担分と本人負担分の両方が対象になりますから、1年半分ともなれば金額は小さくありません。この相談は全国に共通する課題として行政改善推進会議(座長:江利川毅(公財)医療科学研究所相談役)に付議されました。あっせん文には、同会議の開催について「令和7年9月11日第135回、同年12月12日第136回、8年3月12日第137回、同年6月24日第138回開催」と記載されています。

なぜ免除されないのか

総務省の別紙が整理している法律関係は明快です。育児休業による保険料免除の根拠は健康保険法(大正11年法律第70号)第159条と厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第81条の2ですが、別紙は「免除対象となるのは、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)(以下「育児・介護休業法」という。)等の適用対象者のみ」としています。

そして育児・介護休業法の「労働者」は、労働基準法(昭和22年法律第49号)に規定する「労働者」と同義であり、「同居の親族のみを雇う事業に雇用される者は除外」されます(令和7年2月5日付け職発0205第4号・雇均発0205第2号)。労働基準法の適用除外規定(別紙の引用では「第百十六条」②)は、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」と定めています。以下では読みやすさのため第116条第2項と表記します。つまり、同居の親族だけで回している事業所に雇われている人は労働基準法上の労働者に当たらず、育児・介護休業法の育児休業を取得できないため、保険料免除の対象にもならない、という連鎖です。

用語の整理
「同居の親族のみを雇う事業」とは、事業主と同居している親族だけを雇用している事業を指します。同居の親族以外の従業員が1人でもいれば、この除外には当たりません。健康保険・厚生年金保険の被保険者であることと、育児・介護休業法の「労働者」に当たることは、別の話であるという点が理解の鍵です。

中小企業への実務影響

育児休業の保険料免除の公平性という実務影響を表す天秤のイラスト

この問題が深刻なのは、間違って申出をしてしまっても、その場では止まらない仕組みになっているからです。

申出書に添付書類はなく、チェックもされていない

総務省の別紙によれば、手続は事業主が「育児休業等取得者申出書」を提出することで行われ、新規申出や延長・再延長の申出の都度提出しますが、添付書類は不要です。記載事項は被保険者の氏名・生年月日、事業所の名称・所在地、育児休業等を開始した年月日、子の氏名・生年月日、終了する年月日、個人番号または基礎年金番号などに限られます。

そのうえで別紙は、「保険料免除の申出を審査している日本年金機構では、申出に係る被保険者が同居の親族のみを雇う事業に雇用される者ではないかをチェックしていない」と明記しています。事務センターの業務処理マニュアルでは「記入された被保険者が、事業主でないか確認する」こととされていますが、同居の親族かどうかまでは確認されていないということです。手続の流れは、事業主が申出書を提出し、年金事務所が点検・補正を行い、事務センターが内容を審査したうえで「育児休業等取得者確認通知書」を通知する、というものです。確認できなかったときは「届出等に関するお知らせ」により事務処理ができなかった旨とその理由が通知されます。

周知資料にも書かれていない

別紙は、育児休業等取得者申出書の裏面や日本年金機構のホームページでは、免除の対象となる期間は育児・介護休業法に基づく育児休業等期間に限るとは記載されているものの、「同居の親族のみを雇う事業に雇用される者は免除の対象にならないとは明示されていない」としています。実際、申出書の裏面には「原則、事業主等は労働者にあたらず、この法律に基づく育児休業等は取得できないため、申出はできません」と役員等についての注意は書かれていますが、同居の親族についての記載はありません。

今回のあっせんで制度が変わったわけではありません
あっせんの内容は、厚生労働省に「保険料を免除することについて検討すること」を求めるものです。現時点で、同居の親族のみを雇う事業に雇用される者が保険料免除を受けられるようになったわけではありません。厚生労働省の措置結果は令和9年3月17日(水)までに総務省へ知らせることとされており、現行の取扱いはそれまで変わりません。

誤って免除を受けていた場合に起きること

あっせん文の相談事例では、誤りが判明した時点で、免除されていた保険料の納付を求められています。健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者と事業主がそれぞれ2分の1を負担します(別紙)。したがって納付を求められる金額は、本人負担分だけでなく事業主負担分も含まれます。給与から天引きしていない過去分の本人負担分をどう精算するかという、労務面の難しい問題も生じます。行政改善推進会議では、保険料免除は申請主義であるため、免除を受けたい場合には必要な書類を提出してもらい、書類がそろわないときには認めないとするのが原則であろう、という意見も出されています。

どのくらいの規模の話か

別紙が掲げる厚生年金保険のデータでは、令和6年度末現在の適用事業所数は2,881千か所、被保険者数は4,285万人(男子2,529万人・女子1,756万人)で、このうち育児休業等による保険料免除者数は総数51万人(男子3.8万人・女子47万人)です。なお、この免除者数には産前産後休業期間の保険料免除者が含まれています。また、令和5年度に日本年金機構へ「育児休業等取得者申出書」の手続が行われた件数は約105万件とされています。

誤った申出と正しい申出の違い

事業所の状況育児・介護休業法の適用育児休業による保険料免除
同居の親族以外の従業員が1人でもいるあり申出により認められる
同居の親族のみを雇う事業なし(労働基準法第116条第2項)対象外
対象となるのは事業主本人なし(労働者に当たらない)対象外

社会保険の届出は、税務顧問とは別に社会保険労務士が担当していることも多い分野ですが、役員報酬の設定や家族従業員の給与水準は法人税の論点と直結します。堺市の税務顧問として関与する立場からも、家族構成と雇用実態の把握は欠かせないと考えています。

当事務所の見解・実務上の注意点

保険料免除の判定で注意すべき実務上の論点を示す灯台のイラスト

今回の件から中小企業が学ぶべき点は、「窓口で受理された=適法に処理された」ではない、ということに尽きます。

受理されても後から取り消されることがある

相談事例では、最初の申出も1歳到達時の延長も認められています。誤りが判明したのは、子が1歳半になって再延長の手続に行ったときでした。行政改善推進会議でも「年金事務所の窓口で何らかの方法でチェックをしないと、本件のような事案が再び生じるのではないか」という意見が出ています。裏を返せば、現状は窓口で止まらない可能性があるということです。

保険料の免除は毎月の資金繰りに直結します。免除されているつもりで資金計画を立て、1年半後にまとめて請求されれば、家族経営の会社にとっては相当な負担です。受理されたことを根拠に「問題なし」と判断しないことが、この件の最大の教訓です。

「同居」の判定は形式ではなく実態で考える

労働基準法の定義規定(第九条)は「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下『事業』という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定めています。同居の親族のみを使用する事業に適用しない理由は、事業主と生計を一にする親族の間では、通常の労使関係と同じ指揮命令や賃金の支払が成立しにくいためと考えられます。社会保険の加入手続と労働法の適用範囲は連動していないため、「社会保険に入っているのだから労働者だろう」という推測は成り立ちません。

当事務所からの補足
同居の親族のみを雇う事業に当たるかどうかは、従業員の入退社によって年の途中でも変わります。非同居の従業員が退職して家族だけになった直後に育児休業が始まるようなケースでは、判定が変わる可能性があります。育児休業の予定が出た時点で、その時の雇用実態を年金事務所に照会しておくことをお勧めします。

厚生労働省も課題として受け止めている

別紙に記載された関係行政機関(厚生労働省保険局および年金局)の見解では、「今後の制度改正に向けて検討すべき課題としたい」としたうえで、年金事務所の窓口での受付の場面や電話による照会の際に保険料免除の対象であるかどうか確認を行う旨のマニュアルの整備を検討する、申出書や電子申請の申請画面において保険料免除の対象とはならない者を具体的に記載するなどの方策を検討する、毎月事業所へ送付する保険料納付のための「納入告知書」に同封するチラシを活用して周知を行う、といった対応が挙げられています。今後、申出書の様式や記載欄が変わる可能性が高いと見ておくべきでしょう。

今すぐやるべきこと

育児休業の保険料免除で家族経営の会社が確認する手順を表すチェックリストのイラスト

家族が中心になって運営している会社では、育児休業の予定が出てから慌てないよう、次の順で確認してください。判定を誤ると、あとから1年分以上の保険料をまとめて求められることになります。

  1. ステップ1:現在の従業員構成を書き出す
    在籍している被保険者全員について、代表者と同居しているかどうかを一覧にします。同居の親族以外が1人でもいれば、育児・介護休業法の適用があり、通常どおり免除の対象です。パート・アルバイトを含め、被保険者になっている人を漏れなく拾ってください。
  2. ステップ2:過去に出した育児休業等取得者申出書を確認する
    直近数年分の提出控えを確認し、対象者が同居の親族のみを雇う事業に雇用される者に当たらないかを点検します。該当するおそれがあれば、早い段階で年金事務所へ相談してください。延長・再延長の手続が残っている場合は、そのタイミングで指摘される可能性があります。
  3. ステップ3:これから育児休業に入る予定があれば事前に照会する
    申出書には添付書類がなく、窓口でのチェックも行われていません。提出前に、事業所の状況を具体的に伝えたうえで対象になるかを管轄の年金事務所または事務センターに確認します。口頭の照会にとどめず、いつ誰に何を確認したのかを社内に記録として残しておくと、後日の説明に役立ちます。
  4. ステップ4:提出期限を押さえておく
    日本年金機構の案内では、この申出は「育児休業等の期間中または育児休業等終了後の終了日から起算して1カ月以内の期間中」に行わなければならないとされています。対象になる会社は期限を逃さないようにしてください。申出は、育児休業等を取得するたびに事業主が手続きします。
  5. ステップ5:資金繰り計画は免除なしの前提でも組んでおく
    判定が微妙な場合は、免除が認められなかったときに備え、本人負担分・事業主負担分の両方を支払う前提でも資金が回るかを試算しておきます。育児休業は1年から最長2年に及ぶこともあるため、月額の差が累積すると影響は大きくなります。

よくある質問

Q. 今回のあっせんで、家族だけの会社でも育休の保険料が免除されるようになったのですか?
A. いいえ。あっせんは厚生労働省に対して「保険料を免除することについて検討すること」を求めたものです。制度そのものはまだ変わっていません。厚生労働省の措置結果は令和9年3月17日(水)までに総務省へ知らせることとされており、現行の取扱いはそれまで維持されます。将来の改正を前提に申出を行うことはできません。
Q. 同居の親族以外の従業員が1人でもいれば免除を受けられますか?
A. その場合は労働基準法第116条第2項の適用除外に当たらず、育児・介護休業法が適用されますので、申出により保険料免除が認められます。行政改善推進会議でも、同居の親族以外の者が1人でも雇用されている事業と比べて本件の取扱いは公平といえないのではないか、という意見が出ています。ただし、従業員構成は年の途中でも変わりますので、育児休業の開始時点の実態で判断されることになります。
Q. 免除されていた保険料をさかのぼって請求されることは本当にあるのですか?
A. 今回のあっせんの端緒となった行政相談が、まさにその事案です。免除が認められ、1歳到達時の延長も認められた後、子が1歳半で再延長の手続に行った際に、これまでの免除が誤りであったとして納付を求められたと記載されています。受理されたことは適法性の保証にはなりません。だからこそ総務省は、誤って申し出ることを防止するための様式の見直しやマニュアルの整備を求めています。
Q. 代表取締役自身は育児休業の保険料免除を受けられますか?
A. 受けられません。育児休業等取得者申出書の裏面には「原則、事業主等は労働者にあたらず、この法律に基づく育児休業等は取得できないため、申出はできません」と記載されています。日本年金機構の「子育て支援制度の各種手続き(概要)」でも、役員で育児休業制度を利用できない場合は被保険者であっても申出不可とされています。事務センターの業務処理マニュアルでも、記入された被保険者が事業主でないか確認することとされています。
Q. 保険料が免除される期間はいつからいつまでですか?
A. 免除期間は、育児休業を開始した日が含まれる月から終了した日の翌日が含まれる月の前月までです。開始日の属する月と終了日の翌日が属する月が同一の場合でも、開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合は免除となります(令和4年10月1日以降に開始した育児休業等に限ります)。免除された期間は、将来の年金額を計算する際には保険料を納めた期間として扱われます。
Q. 賞与にかかる保険料も免除されますか?
A. 育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料も免除されます。ただし、令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、当該賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除となります。短期間の育休では賞与分は免除されない点に注意してください。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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