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育成就労の源泉徴収2026|令和9年4月開始・国税庁文書回答と租税条約
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:国税庁は令和8年9月15日付の文書回答事例で、育成就労外国人が受け取る給与は原則として給与所得となり、源泉徴収の対象になるとの見解を示しました。育成就労制度の運用開始は令和9年4月1日です。
- 2ポイント2:影響を受けるのは、技能実習生を受け入れている、あるいは育成就労外国人の受入れを検討している中小企業です。租税条約の免税規定を前提にした給与計算を続けると、源泉徴収もれになるおそれがあります。
- 3ポイント3:いま着手すべきは、在留資格別の源泉徴収区分の棚卸しと、租税条約に関する届出書を提出している対象者の洗い出しです。給与計算ソフトの設定変更は令和9年4月より前に終えておきます。
CONTENTS目次
外国人材を受け入れている中小企業にとって、令和9年4月1日は静かに、しかし確実に実務が変わる日です。技能実習制度に代わって育成就労制度の運用が始まり、そこで働く外国人に支払う給与の所得税の扱いについて、国税庁が令和8年9月15日付で正式な見解を示しました。結論だけを先に書くと、育成就労外国人の給与は原則として給与所得であり、源泉徴収が必要になります。技能実習生について租税条約の免税規定を適用してきた事業所では、この前提が変わる可能性があります。本記事では、文書回答事例の中身と、受入企業が令和9年4月までに済ませておくべき準備を、一次資料に沿って整理します。
育成就労の源泉徴収に関する制度・改正の概要
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国税庁が令和8年9月15日に示した文書回答の内容
今回の情報源は、国税庁の文書回答事例「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」です。照会者は出入国在留管理庁政策課長と厚生労働省参事官(海外人材育成担当)の連名で、照会日は令和8年9月3日、国税庁課税部長からの回答年月日は令和8年9月15日です。関係する法令条項等として「所得税法第28条、第183条、租税条約」が挙げられています。
回答内容は「標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。」というものです。つまり、照会者が示した見解がそのまま国税庁の見解として認められた形になります。
では、照会者が求めた見解とは何か。別紙には、こう書かれています。「本件制度の目的や下記2記載の事実関係を踏まえると、育成就労外国人は、原則として、この『専ら…訓練を受ける』者に該当せず、育成就労実施者から支払を受ける給与の収入金額については、給与所得として、所得税の課税対象となり、源泉徴収の対象と取り扱って差し支えないか、お伺いします。」
租税条約の「専ら…訓練を受ける」者とは何か
別紙は、租税条約の中には「個人が『専ら…訓練を受ける』者に該当する場合には、一定の要件の下で、我が国で支払われる給与に係る所得税を免除する規定」を有しているものがあると説明し、その例として「日タイ租税条約第19条など」を挙げています。この種の規定は、一般に学生等条項と呼ばれます。
税務大学校の研究論文「外国人労働者の給与所得に対する課税関係-租税条約の取扱いを中心として-」(松岡克俊 研究部教授)は、この論点を丁寧に整理しています。同論文によれば、学生等条項のモデルとなるOECDモデル租税条約第20条は「一方の締約国に滞在する学生又は事業修習者が、生計、教育又は訓練のために受領する給付について、滞在地国で免税とすることを規定している」ものです。また、条約にいう「事業修習者」(business apprentice)は「企業内の見習研修者や日本の職業訓練所等において訓練、研修を受ける者」と定義されていると紹介されています。
なぜ技能実習と結論が分かれるのか
別紙は、育成就労制度と技能実習制度の違いを具体的に挙げています。技能実習制度では「技能実習生は我が国で修得した技能等を本国に帰国後に活用することを前提としていたことから、技能実習生の帰国が制度上の原則となっていました」が、育成就労制度は「帰国を前提とする要件等を撤廃」しています。
さらに、技能実習制度には「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」という規定がありましたが、育成就労制度には「同旨の規定は設けられておらず」、技能修得に必要な「必須業務」に従事する時間の制限も緩和され、「関連業務」や「周辺業務」の区分も廃止されたと説明されています。制度の建て付けそのものが、訓練中心から就労中心へ移ったということです。
育成就労の源泉徴収が中小企業の実務に与える影響
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そもそも育成就労制度はどういう制度か
出入国在留管理庁の資料「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)によれば、令和6年6月21日に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、「技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました」。運用開始は令和9年4月1日です。
制度の目的は「我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保すること」とされ、受入れには育成就労外国人ごとに作成する「育成就労計画」の認定(期間は3年以内、外国人育成就労機構による認定)が必要です。監理支援機関は許可制で、技能実習制度の監理団体も改めて許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできません。なお同資料の注記によれば、令和8年7月時点で、特定技能産業分野19分野のうち育成就労産業分野として設定がない分野は自動車運送業分野と航空分野のみです。
源泉徴収義務者として何が変わるか
国税庁タックスアンサーNo.2502「源泉徴収義務者とは」によれば、会社や個人が人を雇って給与を支払う場合、その支払の都度、支払金額に応じた所得税等を差し引き、原則として「給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません」。同ページは、令和9年分以後は「所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税」となる旨も併記しています。根拠法令等として「所法6、183、184、200、204、230」等が挙げられています。
育成就労外国人の給与が給与所得として源泉徴収の対象になるということは、源泉徴収税額表に基づく通常の給与計算に乗せるということです。これまで租税条約の免税規定を前提に源泉所得税を0円として処理していた事業所ほど、切り替えの影響が大きくなります。
居住者か非居住者かの判定は引き続き必要
税額の計算は、まず居住者と非居住者の区分から始まります。国税庁タックスアンサーNo.2010「納税義務者となる個人」によれば、居住者とは「日本国内に住所があるかまたは現在まで引き続いて1年以上居所がある個人」をいい、居住者のうち日本国籍がなく、過去10年以内に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人は非永住者とされます。
非居住者に該当する場合の扱いは異なります。国税庁タックスアンサーNo.2884によれば、非居住者等に対する国内源泉所得のうち「給与その他人的役務の提供に対する報酬、退職手当等」の源泉徴収税率は20.42パーセントです。入国直後の期間の扱いを含め、区分の判定は個別事情によりますので、自己判断で決め打ちしないことをおすすめします。
| 確認する項目 | 一次資料での記載 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 給与の所得区分 | 給与所得として所得税の課税対象(令和8年9月15日文書回答) | 源泉徴収税額表による通常処理 |
| 租税条約の免税規定 | 原則として「専ら…訓練を受ける」者に該当しない | 免税を前提にした設定の見直し |
| 納付期限 | 支払った月の翌月10日まで(No.2502) | 納期の特例の適用有無も確認 |
| 非居住者の税率 | 給与その他人的役務の提供に対する報酬は20.42パーセント(No.2884) | 居住者判定を先に確定させる |
給与計算と源泉所得税の納付を社内で回している中小企業にとっては、判定表の作り替えが実務の中心になります。毎月の給与計算や納付書の作成まで含めて外部に任せたい場合は、給与計算を含む経理代行のような形で体制を組む選択肢もあります。
当事務所の見解・実務上の注意点
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「技能実習なら免税」と機械的に覚えていないか
今回の文書回答で気をつけたいのは、これが「育成就労外国人について」の回答であって、技能実習生の取扱いを直接変更するものではないという点です。前掲の税務大学校の研究論文は、在留資格「技能実習1号」および「技能実習2号」の外国人労働者は条約上の「事業修習者」に「該当する可能性が高い」と考察する一方、在留資格「特定技能」については「一般的に租税条約上の『事業修習者』又は『事業習得者』に該当しないとされている」と整理しています。これはあくまで研究論文における考察であり、個々の事案の結論そのものではありませんが、在留資格ごとに結論が分かれうることを示しています。
実務でありがちなのは、「外国人だから免税」「実習生だから0円」といった大づかみの覚え方です。同じ事業所の中に技能実習生と育成就労外国人が並存する移行期には、この覚え方が最も危険になります。判定は在留資格と租税条約の条項の両方を見て、一人ずつ行うほかありません。
条約ごとに条文の書き方が違う
もう一つ見落とされやすいのが、租税条約は相手国ごとに条文が異なるという点です。前掲の研究論文は、OECDモデル租税条約第20条には「ただし、その給付が当該一方の締約国外の源泉から生じたものに限る。」という限定が付いているのに対し、「中国との日中租税条約第21条では、この『ただし、その給付が当該一方の締約国外の源泉から生じたものに限る。』部分が記載されておらず、国内外問わず、いずれから受領した給付についても免税という取扱いになっている」と説明しています。出身国が違えば結論も変わりうるということです。
当事務所からの実務的な指摘
租税条約の適用は届出書の提出が前提です。国税庁タックスアンサーNo.2888によれば、届出書は「最初にその所得の支払を受ける日の前日までに、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長に提出」することとされ、提出がない場合、支払者は条約の限度税率ではなく「国内法に規定する税率によって源泉徴収を行います」。過去に提出済みの届出書の管理状況は、この機会に必ず確認してください。
租税条約の適用は届出書の提出が前提です。国税庁タックスアンサーNo.2888によれば、届出書は「最初にその所得の支払を受ける日の前日までに、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長に提出」することとされ、提出がない場合、支払者は条約の限度税率ではなく「国内法に規定する税率によって源泉徴収を行います」。過去に提出済みの届出書の管理状況は、この機会に必ず確認してください。
なお、同ページによれば、届出書を提出していなかった場合でも、後日「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を支払者を通じて提出することで差額の還付を請求できるとされています。ただし、これは事後の救済手段であり、本来は事前提出が原則である点は変わりません。
源泉徴収もれは会社の負担として跳ね返る
源泉所得税は、徴収して納付する義務が支払者側にあります。徴収しそびれた分は、まず会社が納付を求められ、その後に本人から回収する流れになります。外国人材の場合、帰国や転籍によって回収が難しくなることもあり、結果として会社の持ち出しになりかねません。令和9年4月からの新規受入れ分だけでなく、移行対象者の扱いも含めて、事前に整理しておく価値は十分にあります。判断に迷う論点は、堺市の税務顧問としてご相談をお受けしています。
今すぐやるべきこと
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令和9年4月1日までに、次の順番で進めることをおすすめします。いずれも特別な準備は要らず、社内にある従業員名簿と給与計算ソフトの登録内容を突き合わせれば着手できます。外国人材が1人か2人という事業所であれば、半日あれば一巡できる分量です。逆に、受入れ人数が二桁になっている事業所ほど、手をつける時期が遅れると年末調整の時期と重なって身動きが取れなくなります。
- ステップ1:在留資格別に従業員名簿を棚卸しする
技能実習、特定技能、留学、技術・人文知識・国際業務など、在留資格ごとに人数と氏名を一覧化します。在留カードの記載と給与計算ソフトの登録が一致しているかも、この段階で確かめてください。育成就労へ移行する見込みの人を別欄で区別しておくと、後の作業が楽になります。 - ステップ2:租税条約に関する届出書の提出状況を確認する
誰について、どの条約のどの条項で、いつ提出したのかを台帳にします。控えが見当たらない人がいれば、その時点で源泉徴収の扱いが正しいかを疑ってください。届出書は支払者を経由して税務署長に提出する書類ですので、会社側に控えが残っているのが本来の姿です。 - ステップ3:給与計算ソフトの源泉徴収設定を洗い出す
税額0円で登録されている従業員を抽出し、その根拠を一人ずつ突き合わせます。設定変更の適用開始月をいつにするかを、あらかじめ決めておきます。ソフトによっては在留資格や租税条約の区分を保持する項目がないこともあり、その場合は別表で管理する方法を決めておく必要があります。 - ステップ4:居住者・非居住者の判定基準を文書化する
国税庁タックスアンサーNo.2010の定義をもとに、入国日・住所・居所の記録をどこに残すかを決めます。判定の根拠資料が残っていないことが、後日の調査で最も困る点です。判定を誰がいつ行ったかまで残しておくと、担当者が替わっても引き継げます。 - ステップ5:監理支援機関や登録支援機関と情報を共有する
給与の手取り額が変わる可能性があるため、本人への説明の段取りを含めて、受入れ体制側と早めにすり合わせます。手取りが減る場合、事前の説明がないと定着率にも響きます。説明に使う資料は、母国語版を用意できるかどうかも確認しておきましょう。
移行期に特に注意したい点
技能実習生として在留している方が育成就労へ移行する場合、同じ人の源泉徴収の扱いが期の途中で変わる可能性があります。年末調整や源泉徴収票の作成にも影響しますので、切り替え日を記録に残してください。
技能実習生として在留している方が育成就労へ移行する場合、同じ人の源泉徴収の扱いが期の途中で変わる可能性があります。年末調整や源泉徴収票の作成にも影響しますので、切り替え日を記録に残してください。
よくある質問
- Q. 育成就労外国人の給与は、必ず源泉徴収しなければならないのですか?
- A. 令和8年9月15日付の国税庁の文書回答は、照会に係る事実関係を前提とする限り、育成就労外国人は原則として租税条約の「専ら…訓練を受ける」者に該当せず、給与は給与所得として所得税の課税対象および源泉徴収の対象になるとしています。ただし同回答は一般的な回答であり、個々の取引に適用する場合は異なる課税関係が生じることがある旨も付記されています。
- Q. いま雇っている技能実習生の源泉徴収も、すぐに変更が必要でしょうか?
- A. 今回の文書回答は育成就労外国人についての回答です。技能実習生として在留している間の扱いを直ちに変更するものではありません。もっとも、育成就労へ移行した時点からは新しい前提で判断することになりますので、移行の予定がある方から順に確認を進めてください。移行日をまたぐ月の給与については、どの時点の扱いを適用するかを事前に決めておくと、計算のやり直しを避けられます。
- Q. 出身国によって源泉徴収の結論が変わることはありますか?
- A. 租税条約は相手国ごとに条文が異なります。税務大学校の研究論文は、OECDモデル租税条約第20条にある「ただし、その給付が当該一方の締約国外の源泉から生じたものに限る。」という限定が日中租税条約第21条には記載されておらず、国内外問わずいずれから受領した給付についても免税という取扱いになっていると説明しています。出身国ごとに条文を確認する必要があります。
- Q. 育成就労制度はいつから始まり、どの分野が対象になりますか?
- A. 出入国在留管理庁の資料によれば、育成就労制度は令和9年4月1日から運用を開始します。対象は育成就労産業分野で、同資料の注記では、令和8年7月時点で特定技能産業分野19分野のうち育成就労産業分野として設定がない分野は自動車運送業分野と航空分野のみとされています。
- Q. 租税条約に関する届出書を出し忘れていた場合はどうなりますか?
- A. 国税庁タックスアンサーNo.2888によれば、届出書等を支払を受ける日の前日までに提出していない場合、支払者は条約の限度税率ではなく国内法に規定する税率によって源泉徴収を行います。その後、届出書とともに「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を支払者を通じて提出することで、差額の還付を請求できるとされています。
- Q. 源泉徴収した所得税は、いつまでに納めればよいですか?
- A. 国税庁タックスアンサーNo.2502によれば、差し引いた所得税等は原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めます。納期の特例の承認を受けている場合は取扱いが異なりますので、自社がどちらに該当するかを確認してください。同ページは、令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税を差し引くことになる旨も併記しています。
- Q. 源泉徴収をし忘れた場合、会社と本人のどちらが負担するのですか?
- A. 源泉所得税は、支払者が徴収して国に納付する仕組みです。したがって、徴収しそびれた分もまず会社が納付を求められ、その後に本人から回収することになります。外国人材の場合は帰国や転籍で回収が難しくなることもありますので、事前の判定と設定の見直しを優先してください。
参考資料・出典
- 国税庁|育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について(文書回答事例)
- 国税庁|同上(照会・別紙)
- 国税庁|No.2502 源泉徴収義務者とは
- 国税庁|No.2010 納税義務者となる個人
- 国税庁|No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率
- 国税庁|No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)
- 国税庁 税務大学校|外国人労働者の給与所得に対する課税関係-租税条約の取扱いを中心として-
- 出入国在留管理庁|育成就労制度の制度概要・関係法令
- 出入国在留管理庁|育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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