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不服申立て2026|税務調査の処分に納得できない時の3手続と期限

税務調査の処分に対する不服申立ての手続と期限を解説する記事のタイトル画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:税務調査で更正処分を受けたら、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に「再調査の請求」か「審査請求」を選んで申し立てます。期限を過ぎると内容を問わず却下されます。
  • 2ポイント2:令和7年度の認容割合は再調査の請求が8.0%、審査請求が7.2%、訴訟の国側敗訴が4.0%です。決して高くはありませんが、争点を絞れば道は残っています。
  • 3ポイント3:最大の分岐点は不服申立ての前にあります。調査官の勧奨に応じて修正申告を出すと、その内容について不服申立てはできなくなります。応じるかどうかは任意です。

税務調査の終盤で、調査官から「この部分は経費として認められません。修正申告をお願いします」と言われたとき、多くの経営者は「税務署が言うのだから仕方がない」と考えます。しかしその場で押印した一枚が、あとから争う道をすべて閉ざしてしまうことをご存じでしょうか。国税庁は令和8年6月に令和7年度の不服申立ての実績を公表し、再調査の請求が前年度比20.3%増の1,713件に達したことを明らかにしました。本記事では、処分に納得できないときに使える3つの手続と期限、そして統計から読み取れる現実的な勝ち筋を、堺市の税理士事務所の視点で整理します。

不服申立ての制度概要と3つの救済ルート

再調査の請求・審査請求・訴訟という3つの救済ルートを示す道標のイラスト

国税に関する法律に基づく処分について、国税庁は救済制度を次のように整理しています。処分庁である税務署長等に対する「再調査の請求」と、国税不服審判所長に対する「審査請求」という行政上の救済制度(不服申立制度)があり、さらに裁判所に対して訴訟を提起して処分の是正を求める司法上の救済制度があります。中小企業の実務で問題になるのは、税務調査の結果として行われる更正処分・決定処分、加算税の賦課決定処分、そして滞納処分としての差押えです。

再調査の請求は処分をした税務署長等へ

再調査の請求は、税務署長等が更正・決定や差押えなどの処分をした場合に、その処分に不服がある納税者が税務署長等に対してその処分の取消しや変更を求める手続です。提出時期は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内で、提出先は納税地を所轄する税務署長または国税局長です。手続根拠は国税通則法第81条とされています。提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。

再調査の請求書を受理した税務署長等は、その処分が正しかったかどうかを改めて見直し、その結果を再調査決定書謄本により納税者に通知します。国税庁は簡易迅速な手続により納税者の権利利益の救済を図るため、再調査の請求について標準審理期間を3か月と定めています。なお、再調査の請求に係る決定により、納税者に不利益となるような変更がされることはありません。

審査請求は第三者機関である国税不服審判所へ

審査請求は、税務署長や国税局長などが行った処分に不服がある場合に、その処分の取消しや変更を求めて国税不服審判所長などに対して不服を申し立てる制度です。国税不服審判所は、審査請求人である納税者と、賦課徴収を行う税務署や国税局との間に立ち、公正な第三者的立場で裁決を行います。裁決により納税者に不利益となるような変更がされることはありません。

重要なのは、審査請求は再調査の請求を経ずに直接行うことができるという点です。期限は二通りに分かれます。再調査の請求を経ずに行う場合は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内、再調査の請求を経てから行う場合は再調査決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内です。後者はわずか1か月しかないため、再調査決定書が届いてから検討を始めたのでは間に合いません。審査請求の標準審理期間は1年と定められています。

訴訟は裁決を経てから6か月以内

国税不服審判所長の裁決を受けた後、なお処分に不服がある場合には、裁判所に訴えを提起することができます。この訴えの提起は、裁決があったことを知った日、すなわち裁決書謄本の送達を受けた日の翌日から6か月以内に行う必要があります。タックスアンサーが示す根拠法令等は「通則法75、77、115、行政事件訴訟法14」です。

なお、期限には救済の仕組みもあります。再調査の請求から3か月を経過しても決定がない場合には、決定を待たずに国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができます。同様に、審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合には、裁判所に訴訟を起こすことができます。また、災害等の理由により再調査の請求または審査請求を期限までにできないときは、期限が延長されます。

令和7年度の実績が示す中小企業への実務影響

令和7年度の不服申立ての発生件数と処理状況を象徴する重ねた書類のイラスト

国税庁と国税不服審判所が令和8年6月に公表した令和7年度の概要から、3つのルートの実際の数字を並べます。制度の説明だけでは判断材料になりません。どれだけの人が使い、どれだけが認められているのかを知ったうえで、費やす時間と労力に見合うかを考える必要があります。

区分再調査の請求審査請求訴訟
申立先所轄税務署長等国税不服審判所長裁判所
令和7年度の発生件数1,713件(前年度比20.3%増)3,159件(前年度比10.7%減)202件(前年度比3.1%増)
令和7年度の処理・終結件数1,448件3,128件201件
納税者側が認められた件数認容116件(一部96件・全部20件)認容226件(一部146件・全部80件)国側敗訴8件(一部2件・全部6件)
その割合8.0%7.2%4.0%
標準審理期間(不服申立て)3か月1年―(行政上の不服申立てではないため対象外)

再調査の請求が2割増える一方、審査請求は1割減った

令和7年度の再調査の請求の発生件数は1,713件で、前年度と比べ20.3%の増加となりました。内訳では課税関係が1,627件、徴収関係が86件です。他方で審査請求の発生件数は3,159件で、前年度と比べ10.7%の減少です。訴訟の発生件数は202件で3.1%の増加でした。件数の規模でみると、審査請求が3,159件で最も多く、次いで再調査の請求が1,713件、訴訟は202件です。

ここで見落とせないのが、審査請求の発生件数に占める直接審査請求の割合が79.8%に達しているという事実です。つまり、審査請求をした納税者の8割は再調査の請求を経ていません。平成28年4月1日以後の処分については再調査の請求を経ずに審査請求ができるようになっており、その選択肢が実務に定着していることを示す数字です。

処理のスピードは制度が保証している

再調査の請求では、処理件数1,448件のうち3か月以内の処理件数割合が99.8%に達しています。この割合は、相互協議事案、公訴関連事案および国際課税事案のほか、令和2年度以降は災害等による調査の中断や納税者の都合によって3か月以内に処理できなかった事案を除いて算出されています。審査請求では、令和7年度の1年以内の処理件数割合が98.8%です。標準審理期間が形骸化していないことは、申し立てる側にとって計画が立てやすい要素といえます。

認容割合は年度によって大きく動く
審査請求の認容割合は、令和6年度が17.9%(処理3,872件中、認容693件)だったのに対し、令和7年度は7.2%(処理3,128件中、認容226件)でした。国税不服審判所が公表した概要には、この変動の理由は示されていません。特定の年度の割合だけを根拠に「今年は通りやすい」「もう無駄だ」と判断するのは危険です。割合は同種の事案が大量に処理された年度に大きく振れる性質があり、自社の争点が認められるかどうかとは別の話だと切り分けてください。

棄却が最も多いという現実

令和7年度の再調査の請求1,448件の処理の内訳は、取下げ等263件、却下136件、棄却933件、認容116件です。審査請求3,128件では、取下げ348件、却下379件、棄却2,175件、認容226件でした。棄却の構成比は再調査の請求で64.4%、審査請求で69.5%を占めます。さらに却下の構成比が再調査の請求で9.4%、審査請求で12.1%あります。却下は中身を審理してもらえずに門前払いとなるもので、期限徒過や申立ての対象にならない事項が典型です。争う前の段階で形式要件を落とさないことが、まず最初の関門になります。訴訟でも同じ傾向で、令和7年度の終結201件の内訳は取下げ等9件、却下15件、棄却169件、国側敗訴8件でした。行政段階と司法段階のどちらにおいても、納税者側の主張が全面的に通る事案は限られているのが実情です。

当事務所の見解・実務上の注意点

不服申立ての争点を精査する税理士の視点を表す虫眼鏡のイラスト

勝負は不服申立ての前、修正申告の勧奨の場面で決まる

実務で最も重い論点は、統計の数字ではありません。国税庁は税務調査手続に関する質問応答集で、調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、その内容を説明する際に原則として修正申告または期限後申告を勧奨するとしています。そして続けて、この修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の方の任意の判断であると明記しています。勧奨に応じない場合には調査結果に基づき更正等の処分が行われますが、勧奨に応じなかったからといって、修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはないとも書かれています。

そのうえで国税庁は、修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできますが、不服申立てをすることはできませんと注意を促しています。ここが分岐点です。修正申告は税務当局の処分ではなく納税者自身の申告ですから、取り消すべき処分がそもそも存在しません。争点が残っているのに反射的に修正申告書へ押印すると、この記事で説明した3つのルートはすべて閉じます。逆に、勧奨に応じずに更正処分を受ければ、処分の理由が附記された通知書が交付され、そこから3か月の検討期間が始まります。

3つの割合を掛け合わせて考えないこと

8.0%、7.2%、4.0%という数字を見ると、順に進めば確率が積み重なるように感じられます。しかしこの3つはそれぞれ分母が異なる別々の母集団の割合であり、掛け算にも足し算にもなりません。再調査の請求で棄却された案件がそのまま審査請求の分母になるわけではなく、直接審査請求が8割を占めることからも、両者の母集団が大きく違うことがわかります。自社の案件が認められる可能性は、統計ではなく争点の性質で決まります。事実認定が争点なのか、法令解釈が争点なのかによって、選ぶべきルートも用意すべき証拠もまったく違います。

形式で落とさない、証拠は最初から揃える

却下の構成比が1割前後あるという事実は、内容以前に手続で失敗している案件が一定数あることを意味します。とくに再調査の請求を経てから審査請求に進む場合の1か月という期限は短く、再調査決定書が届いてから顧問税理士に相談したのでは検討時間がほとんど残りません。再調査の請求を出す時点で、決定が不本意だった場合に審査請求へ進むのかどうかを決めておくのが安全です。堺市の税務顧問として日常的に帳簿と契約書を確認している立場からお伝えすると、争えるかどうかは調査が始まる前の証憑の残し方でほぼ決まります。稟議書、見積書、議事録、業務日報といった、金額の裏付けではなく事実の裏付けになる書類が残っているかが分かれ目です。

また、代理人を立てる場合、代理人が税理士であれば委任状に代えて税理士法第30条に規定する書面である税務代理権限証書を提出することとされています。日常の記帳から関与している専門家であれば、調査官への説明資料も短時間で組み立てられます。記帳代行・経理代行を通じて日々の証憑が整理されている会社ほど、いざというときの立ち上がりが早いというのが率直な実感です。

今すぐやるべきこと

不服申立ての3か月の期限を逆算することを表す砂時計のイラスト

処分の通知を受け取ってから動き出すのでは遅い場面があります。以下の順で確認してください。

  1. ステップ1:通知書の日付を確認し、期限を逆算する
    更正通知書や賦課決定通知書を受け取ったら、まず通知を受けた日を確定します。再調査の請求も、再調査を経ない審査請求も、期限は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内です。カレンダーに期限日を書き込み、その2週間前を社内の判断期限として設定してください。
  2. ステップ2:修正申告を出す前に、争点があるかを整理する
    調査官から修正申告を勧奨されている段階なら、まだ選択の余地があります。指摘項目を一覧にして、事実関係そのものに争いがあるもの、法令の解釈に争いがあるもの、単純な計算誤りで争う余地がないものの3つに仕分けします。争点が残るなら、修正申告に応じると不服申立てができなくなる点を踏まえて判断します。
  3. ステップ3:処分理由の附記を読み込む
    国税通則法の改正により、申請に対する拒否処分と不利益処分の全体について理由附記が行われます。更正処分の通知書には、どの事実をどう評価してその金額になったのかが書かれています。この記載と自社の認識のどこがずれているかを特定することが、主張の出発点です。
  4. ステップ4:再調査の請求か直接審査請求かを選ぶ
    事実認定の食い違いで、税務署が持っていない資料を追加で示せば結論が変わりそうな案件は、標準審理期間3か月の再調査の請求が向きます。法令解釈が争点で税務署の判断が変わる見込みが薄い案件は、第三者機関である国税不服審判所への直接審査請求を検討します。令和7年度は審査請求の79.8%が直接審査請求でした。
  5. ステップ5:証拠書類を時系列で編綴する
    再調査の請求では、請求の趣旨および理由を計数的に説明する資料を添付できます。取引の実態を示す契約書、稟議書、メール、業務日報を時系列に並べ、どの事実がどの書類で裏付けられるかの対応表を作ります。この作業は期限内に終わらないことが多いため、処分を受ける前から着手してください。
  • ☑ 通知を受けた日と3か月後の期限日を書面で記録した
  • ☑ 指摘項目を争点ありと争点なしに仕分けした
  • ☑ 修正申告に応じると不服申立てができなくなることを社内で共有した
  • ☑ 再調査の請求を選ぶ場合、決定後1か月で審査請求に進む判断基準を決めた
  • ☑ 事実を裏付ける証憑を時系列で整理した

よくある質問

Q. 修正申告に応じないと、税務署から不利に扱われませんか?
A. 国税庁は税務調査手続に関する質問応答集で、修正申告の勧奨に応じるかどうかはあくまでも納税者の任意の判断であり、応じなかったからといって修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはないと明記しています。勧奨に応じない場合は、調査結果に基づいて更正等の処分が行われ、その処分に対して不服申立てができる状態になります。
Q. 再調査の請求と審査請求は、どちらを先に選ぶべきですか?
A. どちらを先にしても構いません。再調査の請求を経ずに直接審査請求を行うことができ、令和7年度は審査請求の発生件数3,159件のうち79.8%が直接審査請求でした。追加資料を示せば処分庁の判断が変わる余地がある事実認定の争いなら、標準審理期間3か月の再調査の請求が向きます。法令解釈の争いで処分庁の判断が変わる見込みが薄いなら、第三者的立場で裁決を行う国税不服審判所への直接審査請求が選択肢になります。なお再調査の請求を経てから審査請求に進む場合、期限は再調査決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月しかありません。
Q. 再調査の請求をしたら、かえって重い処分に変更されませんか?
A. そのような扱いはされません。国税庁のパンフレット「暮らしの税情報」には、再調査の請求に係る決定により納税者に不利益となるような変更がされることはないと明記されています。審査請求についても同様に、裁決により納税者に不利益となるような変更がされることはないとされています。したがって、申し立てたことによって当初の処分より税額が増えるという心配は不要です。ただし申立ての手間と時間、専門家に依頼する費用は自社の負担になりますので、争点の大きさと見合うかどうかは別途検討してください。
Q. 再調査の請求をしたのに、いつまでも決定が来ない場合はどうなりますか?
A. 再調査の請求から3か月を経過しても再調査の請求に係る決定がない場合には、決定を待たずに国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができます。同様に、審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合には、裁判所に訴訟を起こすことができます。手続が滞っても、次の段階へ進む道は制度上確保されています。実際には令和7年度の再調査の請求で3か月以内の処理件数割合は99.8%、審査請求で1年以内の処理件数割合は98.8%に達しており、標準審理期間はおおむね守られています。
Q. 税務調査そのものに納得できない場合も不服申立てできますか?
A. できません。国税庁は、調査を行うこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たらないとしています。事前通知をしないこと自体も同様に処分には当たらず、不服申立ての対象外です。不服申立ての対象になるのは、更正・決定などの課税処分、加算税の賦課決定処分、差押えなどの滞納処分といった、税務署長等が行った処分です。調査の進め方そのものに疑問があるときは、不服申立てではなく、調査担当者やその上司、税務署の担当窓口に対して説明を求めるという対応になります。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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