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令和9年度税制改正要望2026|中小企業4税制の期限と今期の判断
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:経済産業省は令和8年8月31日、令和9年度税制改正要望を公表しました。賃上げ促進税制・経営強化税制・軽減税率・投資促進税制の中小企業向け4税制が、そろって令和8年度末に適用期限を迎えます。
- 2ポイント2:4税制はいずれも「見直しを行った上で延長」を要望する内容です。ただし要望はあくまで要望であり、実際の可否と中身が固まるのは12月の与党税制改正大綱です。
- 3ポイント3:要望とは無関係に期限が確定しているものもあります。法人版事業承継税制の特例措置は、特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日です。残り約1年しかありません。
CONTENTS目次
毎年8月末は、各省庁が翌年度の税制改正要望を出しそろえる時期です。経済産業省は令和8年8月31日、経済産業政策局企業行動課の名前で令和9年度経済産業省税制改正要望を取りまとめ、公表しました。中小企業の経営者にとって見逃せないのは、設備投資と賃上げ、そして法人税率という経営判断に直結する4つの制度が、いずれも令和8年度末に適用期限を迎えるという点です。要望の中身は「延長」ですが、決まったわけではありません。本記事では要望の内容を整理したうえで、決定を待つべきところと、待たずに動くべきところを切り分けます。
令和9年度税制改正要望の概要と4税制の適用期限
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経済産業省は要望のポイントの冒頭で、基本的な状況認識と対応の方向性を3点にまとめています。第一に、令和8年度税制改正で創設した大胆な投資促進税制の積極的な活用を始め、成長投資を税制面でも強力に後押しし、2040年度国内設備投資額250兆円の実現を目指すこと。第二に、労働供給制約社会において賃上げは供給力強化政策そのものであり成長戦略の起点であるとして、今後5年間を重点期間と位置づけ、中小企業の稼ぐ力の強化に向けて税制での取組を強化すること。第三に、複数年にわたる投資の予見可能性を一層高めるとともに、租税特別措置の政策効果についての点検結果も適切に反映していくことです。
期限を迎える中小企業向け4税制
要望書の中で、中小企業の稼ぐ力強化として並べられているのが次の4制度です。適用期限はいずれも令和8年度末、すなわち令和9年3月31日です。3月決算法人であれば当期がまさに最終年度にあたります。
| 制度 | 現行の措置内容 | 経済産業省の要望 |
|---|---|---|
| 中小企業向け賃上げ促進税制 | 全雇用者の給与等支給総額が前年度比1.5%以上増加で増加額の15%を税額控除、2.5%以上増加で30%。くるみんまたはえるぼし二段階目以上で控除率5%上乗せ | 適用期限を3年延長(令和11年度末まで)。適用要件の基準を給与等支給総額から従業員一人あたりの給与支給額へ変更 |
| 中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画の認定に基づく設備投資について即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%) | 各類型の活用実績や政策効果を踏まえメリハリをつけた見直しを行い、インセンティブを強化したうえで延長 |
| 中小企業軽減税率 | 年800万円以下の所得金額について、本則19%を租税特別措置で15%に軽減(単年所得10億円超の中小企業者等は17%) | 政策効果を高める観点から見直しを行った上で延長 |
| 中小企業投資促進税制 | 一定の設備投資について取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限る) | 中小企業の更なる設備投資を促進するため、政策効果を高める観点から見直しを行った上で延長 |
要望に含まれるその他の中小企業関連項目
4税制のほかにも、中小企業に関わる要望が並んでいます。事業承継税制については、令和8年度与党税制改正大綱に「適用期限到来後のあり方については、世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念に加えて、本措置の適用状況や課税の公平性等の観点も踏まえて多角的な検討を行い、令和9年度税制改正において結論を得る」と記載されており、これを踏まえて抜本的に見直し・強化を行うとしています。交際費課税の特例については、中小企業の販路開拓・販売促進等に必要な交際費について800万円まで全額損金算入を可能とする特例措置の適用期限の延長を要望しています。
減価償却資産の取得価額基準についても要望が出ています。少額減価償却資産の10万円未満、一括償却資産の20万円未満という基準は1998年以来見直しが行われておらず、足下の物価上昇等を踏まえた引上げを行うという内容です。なお、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、令和8年度税制改正で対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げられており、こちらは既に決着済みの改正です。
中小企業への実務影響と確定している期限
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要望が意味するのは「今の条件では終わる」ということ
延長要望が出ているという事実は、裏を返せば現行の条文上の適用期限が令和9年3月31日で切れるということです。しかも4制度のうち3制度は「見直しを行った上で延長」という書き方であり、単純延長ではありません。賃上げ促進税制については要望の中身がすでに具体的で、適用要件の基準を現行制度の雇用者全体の給与等支給総額から従業員一人あたりの給与支給額に見直すと明記されています。仮にこの見直しが実現すれば、判定方法そのものが変わります。
経済産業省が挙げている理由は明確です。現行制度では、賃上げを行ったものの従業員数の減少により給与等支給総額が増額とならなかった企業は税制適用を受けられません。生産年齢人口の継続的な減少を見据え、こうした企業が制度の適用を受けられるようにするため、基準を一人あたりに改めるという説明です。人手不足で人員が減っている中小企業にとっては、有利な方向の見直しといえます。
要望と決定は別物です
要望書は各省庁が翌年度の税制改正に向けて提出するものであり、その内容がそのまま制度になるわけではありません。経済産業省自身、事業承継税制について「令和9年度税制改正において結論を得る」という令和8年度与党税制改正大綱の記載を引用したうえで要望を組み立てており、結論が出るのはこれからです。要望どおりに決まるとは限らず、要望に無い項目が入ることも、要望が縮小されることもあります。本記事で紹介した要望内容を前提に投資や賃上げの実行時期を決めることは避けてください。
要望書は各省庁が翌年度の税制改正に向けて提出するものであり、その内容がそのまま制度になるわけではありません。経済産業省自身、事業承継税制について「令和9年度税制改正において結論を得る」という令和8年度与党税制改正大綱の記載を引用したうえで要望を組み立てており、結論が出るのはこれからです。要望どおりに決まるとは限らず、要望に無い項目が入ることも、要望が縮小されることもあります。本記事で紹介した要望内容を前提に投資や賃上げの実行時期を決めることは避けてください。
要望とは無関係に確定している期限がある
ここが最も重要です。法人版事業承継税制の特例措置について、中小企業庁は特例承継計画の提出期限を令和9年9月30日までと明示しています。制度そのものは10年間限定の時限的な措置で、贈与・相続等の実行期限は令和9年12月31日までです。個人版事業承継税制は、計画申請が令和10年9月末まで、贈与・相続等が令和10年12月31日までとなっています。この計画提出期限は令和9年度税制改正の要望対象ではなく、現に確定している期限です。
| 項目 | 法人版の一般措置 | 法人版の特例措置 |
|---|---|---|
| 猶予対象株式数 | 総株式数の最大3分の2まで | 上限なし |
| 猶予割合 | 贈与税100%・相続税80% | 贈与税・相続税ともに100% |
| 承継方法 | 複数株主から1名の後継者に承継可能 | 複数株主から最大3名の後継者に承継可能 |
| 雇用確保要件 | 承継後5年間で平均8割の雇用維持が必要 | 未達成の場合でも猶予継続可能 |
| 適用期限 | なし | 10年以内の贈与・相続等(令和9年12月31日まで)。令和9年9月末までの計画申請が必要 |
特例措置と一般措置の差は小さくありません。猶予対象が総株式数の3分の2までか上限なしか、相続税の猶予割合が80%か100%かという違いは、株価の高い会社ほど税額に直結します。特例措置を使う可能性が少しでもあるなら、令和9年9月30日までに特例承継計画を提出しておく必要があります。計画を出しておけば必ず使わなければならないというものではありませんので、選択肢を残す意味でも早めの提出が現実的です。相続税申告のサポートと同じく、株式評価と後継者の確定に時間がかかる論点です。
軽減税率が失効した場合の影響を数字で置く
中小企業軽減税率は、中小法人の年800万円以下の所得金額について、本則の19%を租税特別措置で15%に引き下げるものです。大法人の税率は所得区分なしで23.2%、中小法人でも年800万円超の所得金額は23.2%が適用されます。仮に軽減税率が延長されず本則の19%に戻った場合、年800万円の所得がある法人では、800万円に4%分を乗じた32万円の法人税額の増加が生じる計算になります。これは本則と租特の税率差から機械的に算出した試算であり、実際の負担は法人住民税や事業税を含めて変わります。なお、この措置には対象外となる規定もあり、過去3年平均で所得15億円超の中小企業は対象外とされ、適用対象法人の範囲から通算法人を除外することとされています。
当事務所の見解・実務上の注意点
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「延長されるだろう」という前提が最も危険
中小企業投資促進税制も経営強化税制も、これまで何度も延長されてきました。そのため実務では「今回も延びるだろう」という空気が生まれがちです。しかし今回の要望書は、4制度のうち3制度について「現状維持ではなく」「メリハリをつけた見直しを行い」「政策効果を高める観点から見直しを行った上で」という表現を使っています。延長されたとしても中身が変わる可能性が高いということです。とくに経営強化税制は、各類型の活用実績や対象設備の政策効果等を踏まえて見直すとされており、いま使える類型が次年度も同じ条件で使えるとは限りません。
設備投資の実行時期を判断するうえでは、現行制度の条件で確実に適用を受けられる令和9年3月31日までと、条件が不確定な令和9年4月1日以後を分けて考えるのが合理的です。すでに投資計画が具体化しているなら、期限内に取得・事業供用まで終わらせる段取りを組む価値があります。経営強化税制は経営力向上計画の認定が前提です。中小企業庁は、この制度について「工業会等による証明書」「経済産業大臣による確認書」は設備の取得前に申請する必要があるとしたうえで、これらは計画申請前に取得する必要があるとも明示しています。つまり、証明書または確認書の取得、計画の申請、設備の取得という順序が制度側で決まっています。設備を先に買ってしまうと組み直しがきかない場面があるため、投資の意思決定と同時に書類の段取りを始めてください。
賃上げ促進税制は「今の要件」で当期を締める
賃上げ促進税制の要望は、判定基準を一人あたりに変えるという内容です。仮に実現しても、それは令和9年度税制改正後に開始する事業年度からの話です。当期については現行制度、すなわち雇用者全体の給与等支給総額が前年度比1.5%以上増加という要件で判定します。ここを取り違えると、人員が減って総額が伸びなかった期に「一人あたりでは増えているから使えるはず」と誤った前提で申告してしまいます。現行制度では、控除しきれなかった金額を5年間繰り越すことが可能で、控除上限は法人税額等の20%とされています。繰越しの余地も含めて当期の数字で判断してください。
判定に必要なのは制度知識より正確な集計
賃上げ促進税制の判定でつまずく原因の大半は、制度の理解不足ではなく給与データの集計精度です。役員給与を除いた国内雇用者への給与等支給額を、前期と当期で同じ定義で拾えているか。助成金など控除すべき金額を正しく差し引いているか。この確認を決算間際に始めると、間に合わずに適用を見送るという結果になります。記帳代行・経理代行で毎月の給与データを整えている会社は、期中の段階で見込みが立つため、期末に賃上げ幅を微調整するという選択肢まで持てます。
もう一点、要望書には中小企業以外の項目も多数含まれています。事業ポートフォリオ転換・強化促進税制の創設や、電気・ガス供給業の収入金課税の見直し、外国子会社合算税制の見直しなど、自社に関係しない項目まで追う必要はありません。12月の与党税制改正大綱が出た段階で、自社に関係する項目だけを拾い直すのが効率的です。堺市の税務顧問としては、大綱公表後に顧問先ごとの影響を整理してお伝えする形をとっています。
今すぐやるべきこと
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12月の大綱を待つ項目と、待たずに動く項目を分けて進めます。
- ステップ1:自社の決算期と令和9年3月31日の関係を確認する
4税制の適用期限は令和8年度末です。3月決算法人なら当期が最終年度、12月決算法人なら次期の第1四半期までが現行条件で使える期間になります。まず自社の事業年度と期限の位置関係を紙に書き出してください。 - ステップ2:進行中・検討中の設備投資を棚卸しする
機械装置や器具備品、ソフトウェアの購入予定を一覧にし、取得予定時期を書き込みます。現行の経営強化税制や投資促進税制の対象になりそうなものについて、令和9年3月31日までに取得・事業供用が完了する見込みかを判定します。 - ステップ3:経営力向上計画の認定スケジュールを逆算する
経営強化税制は経営力向上計画の認定が前提です。中小企業庁は「工業会等による証明書」「経済産業大臣による確認書」を設備の取得前に申請する必要があるとし、これらは計画申請前に取得する必要があるとしています。証明書または確認書の取得から逆算して着手時期を決めてください。 - ステップ4:事業承継の可能性があるなら特例承継計画を検討する
法人版事業承継税制の特例措置は、特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日です。後継者が確定していなくても、選択肢を残すために提出を検討する価値があります。株式評価と後継者要件の確認には時間がかかるため、年内に着手するのが安全です。 - ステップ5:12月の与党税制改正大綱で内容を確認する
要望が通ったかどうか、通った場合に条件がどう変わったかは大綱で確定します。大綱公表後に、本記事のステップ1から4で整理した自社の計画を見直し、令和9年4月1日以後の投資計画を再設定してください。
- ☑ 自社の事業年度と令和9年3月31日の関係を整理した
- ☑ 設備投資の予定を一覧化し、期限内に取得・事業供用できるか判定した
- ☑ 経営力向上計画の認定に要する期間を逆算した
- ☑ 特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日であることを社内で共有した
- ☑ 当期の賃上げ促進税制は現行要件で判定することを経理担当と確認した
よくある質問
- Q. 要望が出ているのだから、4税制は延長されると考えてよいですか?
- A. そう考えるのは危険です。税制改正要望は各省庁が翌年度の税制改正に向けて取りまとめて公表するものであり、決定ではありません。経済産業省は事業承継税制について、令和8年度与党税制改正大綱に「令和9年度税制改正において結論を得る」と記載されていることを引用しており、結論はこれから出る段階です。要望が縮小されることも、要望に無い項目が加わることもあります。加えて今回の要望は「見直しを行った上で延長」という表現が多く、延長されても条件が変わる可能性が高い点にご注意ください。
- Q. 中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制は、どちらを使うべきですか?
- A. 設備の内容と会社の規模によります。経営強化税制は経営力向上計画の認定が前提で、即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)を選択できます。投資促進税制は計画認定が不要で、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除ですが、税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限られます。なお経営強化税制のE類型の適用を受ける場合、その投資計画の期間中は投資促進税制の適用を受けることはできません。
- Q. 特例承継計画は、後継者が決まっていなくても出せますか?
- A. 特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日です。計画には後継者に関する記載が必要ですが、提出したからといって必ず事業承継税制を使わなければならないわけではありません。将来使う可能性が残るのであれば、期限内に提出して選択肢を確保しておくという考え方が実務的です。特例措置は猶予対象株式数に上限がなく相続税の猶予割合も100%で、一般措置より有利な条件が並んでいます。具体的な記載内容は認定経営革新等支援機関にご相談ください。
- Q. 少額減価償却資産の30万円未満という基準は変わったのですか?
- A. 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、令和8年度税制改正で対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満に引き上げられました。改正前は30万円未満です。これは既に決着済みの改正であり、令和9年度税制改正要望の対象ではありません。今回の要望に入っているのは、これとは別の一般的な基準、すなわち少額減価償却資産の10万円未満と一括償却資産の20万円未満の引上げです。
- Q. 賃上げ促進税制の基準が一人あたりに変わったら、当期の判定も変わりますか?
- A. 変わりません。要望が実現した場合でも、それは改正後に開始する事業年度からの適用になります。当期は現行制度、すなわち雇用者全体の給与等支給総額が前年度比1.5%以上増加すれば増加額の15%、2.5%以上増加すれば30%を税額控除するという要件で判定します。くるみんまたはえるぼし二段階目以上の認定があれば控除率が5%上乗せされます。控除しきれなかった金額は5年間の繰越しが可能で、控除上限は法人税額等の20%です。
参考資料・出典
- 経済産業省「令和9年度税制改正について」(令和8年8月31日 経済産業政策局企業行動課)
- 経済産業省「令和9年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント」
- 経済産業省「令和9年度税制改正に関する経済産業省要望(概要)」
- 中小企業庁「中小企業経営強化税制」
- 中小企業庁「中小企業投資促進税制」
- 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」三 法人課税
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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