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先端設備等導入計画2026|固定資産税を最大5年1/4にする要件と期限

先端設備等導入計画と固定資産税の特例について解説する記事のアイキャッチ画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:計画の認定を受けて設備を取得すると、固定資産税の課税標準が3年間2分の1、または5年間4分の1に軽減されます
  • 2ポイント2:軽減を受けるには賃上げ方針の従業員への表明が前提で、対象は令和9年3月31日までに取得した設備です
  • 3ポイント3:設備は計画の認定後に取得することが必須です。先に買うと軽減は受けられません

中小企業庁は2026年8月24日、中小企業等経営強化法に基づく先端設備等導入計画について、令和8年3月31日時点の認定状況を公表しました。あわせて、固定資産税の軽減措置を講じている市区町村の一覧も更新されています。この制度は、設備投資に伴う固定資産税の負担を最長5年間、通常の4分の1まで下げられるもので、適用対象は令和9年3月31日までに取得した設備です。期限まで1年半を切り、しかも設備は計画の認定後に取得しなければならないため、逆算するとそろそろ動き出す時期です。本記事では、公表資料に基づいて要件と手順を整理します。

先端設備等導入計画と固定資産税の特例の全体像

先端設備等導入計画と固定資産税の特例の全体像を象徴する市区町村庁舎のイラスト

市区町村が認定し、固定資産税で報いる仕組み

先端設備等導入計画は、中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を実現するための計画です。中小企業庁の資料によれば、労働生産性が年平均3パーセント以上向上することが見込まれることが要件で、設備の導入先となる市区町村が導入促進基本計画を策定している場合に、その市区町村から認定を受けることができます。認定を受けると、固定資産税の軽減措置による税制支援と、計画に基づく事業に必要な資金繰りを支援する信用保証を活用できます。

計画期間は3年間、4年間または5年間から選びます。労働生産性は、営業利益、人件費および減価償却費の合計を労働投入量(労働者数、または労働者数に1人当たり年間就業時間を乗じたもの)で除して算出し、直近の事業年度末を基準年度として比較します。計画に記載できる先端設備等の種類は、労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供される機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアです。

制度は3つの階層でできています。国(経済産業大臣)が基本方針を定め、市町村(特別区を含みます)が国と協議して同意を得たうえで導入促進基本計画を策定し、その市町村の区域内で設備を導入する中小企業者が先端設備等導入計画を申請します。国は、導入促進基本計画が国の基本方針に適合し、先端設備等の導入が円滑かつ確実に実施されると見込まれ、その実施が当該市町村の企業の生産性の向上に資するものであるときは同意するものとされています。自社の努力だけでは制度が使えず、設置場所の自治体が計画を持っているかどうかで可否が決まる、という点がこの制度の特徴です。

認定までの流れは、認定経営革新等支援機関へ事前確認を依頼し、事前確認書の発行を受けたうえで市区町村へ計画を申請し、認定を受け、その後に設備を取得するという順序です。支援機関の例として、商工会議所、商工会、中央会、地域金融機関、士業等の専門家が挙げられています。

令和8年3月31日時点の認定状況

2026年8月24日に公表された集計は、令和7年4月1日以降の実績を市区町村から取りまとめたものです。数値は、固定資産税の軽減措置を講じている1,640自治体の実績とされています。

区分件数設備投資の額設備等の数量
新規認定5,901件約4,245億円18,723台
変更認定3,365件約1,772億円9,355台

都道府県別の内訳を見ると、大阪府の新規認定は441件で、東京都の281件を上回っています。当事務所のある堺市も、固定資産税の軽減措置を講じている市区町村の一覧に掲載されています。1件あたりの設備投資額は、新規認定の全国合計の金額を件数で割ると約7,200万円で、決して大企業だけの制度ではありません。

公表資料には「うち、賃上げ表明なし」の内訳も示されています。新規認定5,901件のうち賃上げ表明なしは305件で、残りの5,596件は賃上げ方針を表明したうえでの認定です。固定資産税の特例を目的に計画をつくる事業者が大半である、と読み取れます。

中小企業への実務影響と賃上げ表明の判断

中小企業への実務影響と賃上げ表明の判断を象徴する生産設備のイラスト

賃上げ率で軽減の幅と期間が変わる

固定資産税の特例は地方税法に定めがあり、中小企業庁の資料では次のように整理されています。対象者は、資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業主等のうち、先端設備等導入計画の認定を受けた者です。大企業の子会社等は除かれます。計画認定の対象者である「中小企業者」の範囲と税制支援の規模要件は異なるため、この点は資料でも注意喚起されています。

従業員に表明した賃上げ方針軽減の内容軽減期間
雇用者給与等支給額を1.5パーセント以上増加課税標準を2分の1に軽減3年間
雇用者給与等支給額を3パーセント以上増加課税標準を4分の1に軽減5年間

いずれも令和9年3月31日までに取得した設備が対象です。3パーセント以上を選んだ場合、軽減後の課税標準は1.5パーセント以上の場合のさらに半分になり、軽減期間も3年間から5年間に延びます。総額では大きな差が生まれます。ただし賃上げは実際の人件費の増加を伴います。設備投資の効果と人件費の増加を並べて、資金繰りが回るかを先に確かめてください。設備資金の調達を含めて検討される場合は、資金調達のご相談とあわせてご相談いただくのが早道です。

対象設備には最低取得価格がある

対象設備は、賃上げ表明を位置づけた計画に従い取得する設備であり、かつ認定経営革新等支援機関の確認を受けた投資利益率5パーセント以上の投資計画に記載されたものに限られます。減価償却資産の種類ごとの最低取得価格は次のとおりです。

減価償却資産の種類最低取得価格
機械装置160万円以上
測定工具及び検査工具30万円以上
器具備品30万円以上
建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除く)60万円以上

そのほか、生産、販売活動等の用に直接供されるものであること、中古資産でないことが要件です。なお、これらの金額や範囲は市町村によって異なる場合があるとされています。計画に記載できる設備の種類にはソフトウエアも含まれますが、固定資産税の特例の対象として最低取得価格が示されているのは上記の4種類です。ソフトウエアを含めて計画を組む場合でも、軽減額の試算には含めないでください。

軽減されるのは税率ではなく課税標準です。固定資産税は賦課期日である1月1日時点で所有している償却資産に課されるため、設備を取得したあとは、設備が所在する市町村へ償却資産の申告を行うことで特例の適用を受けます。取得の翌年1月1日を最初の賦課期日として数えることになるので、期末ぎりぎりに取得した設備でも軽減の年数が減るわけではありません。ただし、申告を忘れると特例は適用されません。認定を取っただけで完了と考えず、申告までを一連の作業として担当者を決めておいてください。

投資利益率と賃上げ率の計算式

投資利益率は、営業利益と会計上の減価償却費の増加額を設備投資額で割って求めます。分子の増加額は設備の取得等をする翌年度以降3年度の平均額、分母は設備の取得等をする年度におけるその取得等をする設備の取得価額の合計額です。将来3年度の見込みを立てる必要があるため、設備の稼働計画と受注見込みを数字にする作業が実質的な山場になります。

賃上げ率は、計画認定の申請日の属する事業年度(令和7年4月1日以後に開始する事業年度に限ります)または当該申請日の属する事業年度の翌事業年度における雇用者給与等支給額を【A】、申請日の属する事業年度の直前の事業年度における雇用者給与等支給額を【B】として、(【A】−【B】)÷【B】で計算します。雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

当事務所の見解・実務上の注意点

実務上の注意点と令和9年3月末の取得期限を象徴する砂時計のイラスト

最大の落とし穴は「取得が先、認定が後」になること

中小企業庁の資料は、先端設備等について、先端設備等導入計画の認定後に取得することが必須であると明記しています。これが実務で最も多く聞く失敗です。展示会で見た機械を発注し、納品されてから顧問税理士に相談したところ、固定資産税の軽減は使えないと分かった、という順序です。認定申請の前に、認定経営革新等支援機関へ事前確認を依頼し、投資計画に関する確認書の発行を受け、市区町村の審査を経る必要があるため、思い立ってから認定までには相応の日数がかかります。

令和9年3月31日という期限から逆算すると、令和8年度中に取得を終える計画であれば、支援機関への相談は年内に始めておきたいところです。設備の納期が半年以上かかる業種では、発注時点で認定が下りていなければ間に合いません。堺市の税務顧問としてご支援する場合も、設備投資の話が出た時点で「発注はまだですか」と最初に確認するようにしています。

賃上げ表明は書面と保存まで含めて設計する

賃上げ方針の表明は、単に社内で口頭で伝えれば足りるというものではありません。中小企業庁の資料では、賃上げ方針を策定して従業員へ表明した旨を認定申請書に記載し、従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面を添付するとされています。表明の相手は従業員代表のみでも可とされていますが、後日の説明を考えれば、日付の入った書面を作成して保存しておくべきです。

1.5パーセントと3パーセントの選択は、税額だけで決めないでください。3パーセントを選べば軽減は5年間4分の1と有利ですが、雇用者給与等支給額を3パーセント増やす方針を従業員に表明することになります。設備投資による生産性向上が人件費の増加を吸収できるかを、月次の資金繰り表で確認したうえで決めてください。

他の設備投資支援と並べて比較する

この制度が軽減するのは固定資産税であり、法人税や所得税ではありません。中小企業向けの設備投資支援には、法人税の特別償却や税額控除を伴うものが別にあります。どれを使うかは、設備の種類、取得価額、その期の課税所得の見込みによって答えが変わります。固定資産税は赤字でも課税されるため、課税所得が出ていない年に取得する設備であれば、固定資産税の軽減のほうが実感できる効果になることもあります。制度ごとに手続の主体が国か市区町村かも異なるため、着手前に一覧にして比較することをおすすめします。

今すぐやるべきこと

先端設備等導入計画の認定を受ける手順を象徴する階段のイラスト

設備投資の予定がある事業者は、次の順で進めてください。順番を入れ替えると軽減が受けられなくなります。特にステップ2からステップ4までは書面の準備と自治体の審査に日数がかかるため、設備の納期と並行して逆算しておく必要があります。着手の目安は、取得予定日の3か月以上前です。年度末の取得を狙う場合は特に余裕を見てください。

  1. ステップ1:設置予定の市区町村が導入促進基本計画を策定しているか確認する
    中小企業庁が公表している「先端設備導入に係る固定資産税の軽減措置を講じている市区町村」の一覧で、設備の設置場所の自治体を確認します。対象設備や対象業種が自治体によって異なる場合もあります。
  2. ステップ2:賃上げ方針を決めて従業員に表明する
    雇用者給与等支給額の増加率を1.5パーセント以上とするか3パーセント以上とするかを決め、従業員(代表のみも可)へ表明し、表明したことを証する書面を作成します。
  3. ステップ3:認定経営革新等支援機関に事前確認と投資計画の確認を依頼する
    労働生産性が年平均3パーセント以上向上する見込みかの確認と、年平均の投資利益率が5パーセント以上となる見込みかの確認を受け、確認書の発行を受けます。
  4. ステップ4:市区町村へ認定申請し、認定を受ける
    先端設備等導入計画に係る認定申請書に、支援機関の確認書と賃上げ方針の表明を証する書面を添えて提出します。審査には日数がかかります。
  5. ステップ5:認定後に設備を取得し、所在する市町村へ税務申告を行う
    取得は必ず認定後です。取得後は、設備が所在する市町村へ償却資産の申告を行い、特例の適用を受けます。
  • ☑ 設置場所の市区町村が軽減措置を講じている
  • ☑ 取得予定日が令和9年3月31日以前である
  • ☑ 設備の取得価額が種類ごとの最低取得価格を満たす
  • ☑ 中古資産ではなく、生産・販売活動等の用に直接供する
  • ☑ 賃上げ方針を表明した書面を保存している
  • ☑ 発注・契約は計画認定の後に行う段取りになっている

よくある質問

Q. 設備を先に買ってしまったのですが、後から計画認定を受けられますか?
A. 固定資産税の特例には使えません。中小企業庁の資料は、先端設備等については「先端設備等導入計画」の認定後に取得することが必須であると明記しています。認定前に取得した設備は対象になりません。納期が読みにくい設備ほど、発注のタイミングと計画申請のタイミングを先に押さえておく必要があります。すでに取得済みの設備については、別の税制で対応できないかを個別に検討することになります。
Q. 賃上げ方針を表明しないと、計画の認定自体を受けられないのですか?
A. 認定は受けられます。中小企業庁が公表した令和8年3月31日時点の集計では、令和7年度の新規認定5,901件のうち305件が賃上げ表明なしでした。ただし固定資産税の特例の対象設備は、雇用者給与等支給額を1.5パーセント以上または3パーセント以上増加させる賃上げ方針を従業員に表明したことを位置づけた計画に従い取得する設備とされています。表明がなければ、資金繰りの信用保証など税制以外の支援措置の活用にとどまります。
Q. ソフトウエアも固定資産税の特例の対象になりますか?
A. 先端設備等導入計画に記載できる減価償却資産の種類には、機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備とあわせてソフトウエアが挙げられています。一方、固定資産税の特例の対象設備として最低取得価格が示されているのは、機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備の4つです。計画に載せられる設備と、固定資産税が軽減される設備は範囲が異なる点にご注意ください。ソフトウエアを含めて計画を組む場合でも、軽減の試算には含めないでください。
Q. どの市区町村でも固定資産税の軽減を受けられるのですか?
A. 受けられません。この計画は、設備の導入先となる市区町村が導入促進基本計画を策定している場合に、その市区町村から認定を受けられる仕組みです。中小企業庁は、令和8年3月31日時点で固定資産税の軽減措置を講じている市区町村を一覧で公表しており、集計値もこの1,640自治体の実績とされています。対象設備や地域、業種が市区町村によって異なる場合もあるため、設置場所の自治体で先に確認してください。
Q. 認定経営革新等支援機関の確認書は何のために必要なのですか?
A. 確認の内容は2つに分かれます。1つは、計画に記載した設備の導入によって労働生産性が年平均3パーセント以上向上することが見込まれるかの確認です。もう1つは、年平均の投資利益率が5パーセント以上となることが見込まれるかの確認で、こちらは固定資産税の特例を受ける場合に必要です。税制の適用を受けない場合は前者の確認のみとされています。商工会議所、商工会、中央会、地域金融機関、士業等の専門家が支援機関の例として挙げられています。依頼から確認書の発行までにも日数がかかるため、設備の選定と並行して早めに相談してください。顧問税理士が認定経営革新等支援機関であれば、そのまま依頼できます。

参考資料・出典

本記事は上記の一次資料の記載に基づいて作成しています。対象設備の範囲や手続の詳細は市区町村によって異なる場合があります。実際の申請にあたっては、設備の設置場所の市区町村および認定経営革新等支援機関、税理士にご確認ください。

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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