堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
非上場株式の評価見直し2026|第6回会議が示した残余利益5年と4類型
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:国税庁は令和8年9月16日の第6回有識者会議で、取引相場のない株式の評価を残余利益方式へ見直す案の各論を示しました。
- 2ポイント2:加算期間は5年程度、算定の基礎は法人税申告書、特定の評価会社は4類型という具体案が中小企業の自社株評価を左右します。
- 3ポイント3:過去5期の利益と純資産、役員退職金やオペレーティングリースの有無を今のうちに整理し、承継の実行時期を見直してください。
CONTENTS目次
国税庁は令和8年9月16日、取引相場のない株式の評価に関する有識者会議の第6回会議を開き、その資料を公表しました。この会議は令和8年4月20日の第1回から回を重ねており、非上場株式の相続税・贈与税の評価方法を残余利益方式へ見直す方向で議論が進んでいます。第6回で示されたのは方向性だけでなく、加算期間を5年程度とする案、法人税申告書を算定の基礎とする案、特定の評価会社を4類型に整理する案といった、自社株の金額に直結する具体案でした。本記事では、第6回資料に書かれている内容だけを根拠に、中小企業の事業承継にどう効くのかを整理します。
制度・改正の概要
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残余利益方式とは何を計算する方法か
第6回資料は、残余利益モデルについて、企業価値評価に本来使うべきは将来の予測利益であるとしたうえで、将来の無限期間分の当期純利益を予測することは極めて困難であると述べています。そのため、現実的には過去の実績に紐づけて将来数年分だけを評価対象に含めることも一案とのご意見を踏まえ、加算期間は5年程度としてはどうか、という案が示されました。計算は、直前期末の純資産価額を出発点に、第1期から第5期までの残余利益を還元率で割り引いて加算し、しんしゃく率を乗じる形です。残余利益は、年利益金額から前期末の純資産価額に還元率を乗じた金額を差し引いて求めます。つまり、株主が通常期待する収益を超えて稼げている部分だけが、簿価純資産に上乗せされる構造です。
加算期間5年とターミナルバリューの扱い
加算する期間について資料は、期間が長いほど理論式と近似する一方で将来予測の精度にブレが生じる恐れがあり、期間が短いほど理論式との乖離が生じる一方で将来予測の精度について一定の担保が可能である、というトレード・オフを示しています。そのうえで、一般的に上場企業等で策定される中期経営計画の年数が3〜5年とされていることも参考として、加算する期間は5年程度としてはどうかとされました。予測利益は、恣意的な予測値ではなく過去の損益計算書の実績値と紐づける必要があることから、課税時期前5年の法人の正常利益から算出する案です。6年目以降の残余利益を現在価値に割り引いて足し込むターミナルバリューについては、算定が困難であること、残余利益は年数とともに逓減し0に近似していくと考えられることを踏まえ、過小評価の可能性があるものの安全性を考慮し加算しないこととしてはどうか、とされています。
算定の基礎を法人税申告書に置く案
資料は、中小企業が適用する会計基準として企業会計基準、中小会計指針、中小会計要領、法人税法を並べ、適用する基準の違い又は同じ基準でも会計処理の選択適用により、同一の事象についても会計処理上で企業間の差が生じると指摘しています。そのうえで、企業における会計処理の選択の自由を尊重しつつ、課税の公平性の観点から、すべての企業が一定の統一基準で作成をする法人税法に基づく会計帳簿(法人税申告書)に基づき、株価の算定をすることとしてはどうか、という案が示されました。参考例では、直前期末の純資産価額を別表五(一)の利益積立金と資本金等の合計から導き、将来予測に用いる利益を別表四の金額から導く流れが示されています。資料は、法人税法上の帳簿を使用する場合は、受取配当金の益金不算入や特別償却等について反映された簿価純資産及び利益となる、と注記しています。
用語の確認
第6回資料では、計算式の説明で「しんしゃく率」、試算表の見出しで「斟酌率」という表記がいずれも使われています。本記事では、引用する箇所の表記に合わせて書き分けています。
第6回資料では、計算式の説明で「しんしゃく率」、試算表の見出しで「斟酌率」という表記がいずれも使われています。本記事では、引用する箇所の表記に合わせて書き分けています。
中小企業への実務影響
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規模区分ごとに評価水準がどう動くか
第6回資料には、令和2年分から5年分の相続税及び贈与税の申告のうち、取得した財産に取引相場のない株式がある申告の中から無作為に抽出した評価会社を対象とした試算が載っています。対象は1,378社で、会計検査院及び国税庁が実施した実態把握の対象申告データ(4年間分)が使われており、残余利益方式の評価額は加算期間5年、還元率8%と仮定した数値です。純資産価額を100とした場合の現行評価額の中央値は、全体で58.2、大会社で38.2、中会社で53.4、小会社で63.8でした。規模が大きい会社ほど純資産価額に対する評価額が低い、という現行制度の傾向がここに表れています。
| 区分 | ROEの中央値 | 現行評価額(純資産価額=100) | 残余利益方式 斟酌率0.8 | 残余利益方式 斟酌率0.7 |
|---|---|---|---|---|
| 全体(n=1,378) | 1.8% | 58.2 | 57.3 | 50.1 |
| 大会社(n=128) | 3.9% | 38.2 | 63.8 | 55.8 |
| 中会社(n=820) | 2.1% | 53.4 | 59.2 | 51.7 |
| 小会社(n=430) | 0.6% | 63.8 | 50.5 | 44.2 |
資料は、大会社の残余利益による評価額は現行の申告評価額比では上昇するものの、対純資産価額比では斟酌率0.8で63.8となり現行の小会社の評価水準と概ね同程度、斟酌率0.7で55.8となり現行の中会社の評価水準と概ね同程度になる、と整理しています。規模別の評価方式を廃止することで、異なる規模区分の評価会社が発行した非上場株式を取得した者間の相対的不公平が一定程度解消される、というのが見直しの狙いです。
評価額が下がる会社の割合
同じ試算で、現行の申告評価額以下となる会社の割合も示されています。全体では斟酌率0.8で48.6%、斟酌率0.7で57.3%です。区分別に見ると、小会社は斟酌率0.8で67.9%、斟酌率0.7で78.4%と、概ね7〜8割の会社の評価額は下がるとされています。大会社でも斟酌率0.8で24.2%、斟酌率0.7で28.1%と、概ね2〜3割の会社の評価額は下がります。中会社は斟酌率0.8で42.2%、斟酌率0.7で50.9%でした。資料は、個社の資産・収益状況によるものの、という留保を付けたうえで全体の傾向としてこれを示しています。自社がどちらに転ぶかは、規模区分だけでなく収益力によって変わるという点が実務上の要点です。なお資料は、この試算が申告における類似業種比準方式の算出に用いる数値を使用し、完全子会社株式の修正等の個別調整事項については考慮していないものであることも明記しています。
利益操作とみなされうる取引への対応
資料は、過去の利益に非経常的な損益が含まれる場合、当該損益について適正に補正し、会社の正常利益を基に評価を行う必要があるとしています。具体例として挙がっているのがオペレーティングリース取引と役員報酬等です。オペレーティングリースについては、課税時期現在で存在するオペレーティングリースがなかったものとした状態に引き直して評価する案が示されました。役員報酬については、代表者の親族である役員に対し、所得の分散による高い税負担軽減効果を狙い、経営の対価としての部分を上回る役員報酬が支払われていると考えられるケースも見受けられる、との指摘があります。ただし、法人税法の損金不算入規定により既に調整済であることと整合しないこと、適正な役員報酬はいくらかと一律に決めることが妥当といえるのか、という点から慎重な検討が必要ともされています。役員退職慰労金等については、一時的な支出であり将来利益の予測に含めることに疑義があるとして、正常利益の計算に際し損金から控除して評価する案が示されました。
当事務所の見解・実務上の注意点
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「まだ案」と「もう数字が出ている」の両方が正しい
第6回資料の各論は、いずれも「〜としてはどうか」という提案の形で書かれており、本日時点で確定した制度ではありません。資料の検討事項整理表にも、残余利益方式の各論と特定の評価会社の個別論点が、番号を振った検討事項として並べられている段階です。一方で、加算期間5年、還元率8%という仮定のもとで1,378社の試算が示され、区分ごとの評価水準まで数字で提示されています。方向性を示す段階を越えて、効き方の大きさが見える段階に入ったと受け止めるのが実務的です。当事務所としては、今すぐ自社株の評価をやり直す必要はないものの、試算に必要な材料を手元にそろえる作業はいま始めておくべきだと考えています。
小会社は下がる方向、収益力の高い会社は上がる方向
試算が示す構図は明快です。ROEの中央値が0.6%の小会社では7〜8割の会社で評価額が下がり、ROEの中央値が3.9%の大会社では評価額が下がる会社は2〜3割にとどまります。残余利益は年利益金額から純資産価額に還元率を乗じた金額を差し引いて求めるため、還元率を上回る収益力がなければ残余利益はマイナスとなり、簿価純資産から差し引かれる方向に働きます。資料の計算例にも、年利益金額5,000,000円、直前期末の純資産価額100,000,000円、還元率8%のケースで第1期の残余利益が▲3,000,000円となる例が示されています。自社が稼いでいる会社なのか、資産を抱えている会社なのかで、見直しの効き方は逆向きになります。
当事務所が注意を払っている論点
特定の評価会社の年数が変わる案
現行のタックスアンサーNo.4638では、開業後の経過年数が3年未満の会社が特定の評価会社に含まれています。第6回資料が示す案では、開業後5年未満の会社が、残余利益方式での評価が技術上困難と認められる会社として整理されています。創業から日が浅い会社の株式を動かす予定がある場合、この年数の違いは無視できません。
現行のタックスアンサーNo.4638では、開業後の経過年数が3年未満の会社が特定の評価会社に含まれています。第6回資料が示す案では、開業後5年未満の会社が、残余利益方式での評価が技術上困難と認められる会社として整理されています。創業から日が浅い会社の株式を動かす予定がある場合、この年数の違いは無視できません。
もう一つ注意しているのが、純資産価額方式の選択適用です。現行では、原則的評価方式による評価額が純資産価額による評価額を上回る場合に、納税義務者の選択により純資産価額方式で評価できる取扱いがあります。資料は、見直しにより原則的評価方式ではなくなる純資産価額方式の選択を認める妥当性をどのように説明ができるか要検討としており、この頭打ちが残るかどうかは第7回会議以降の議論に委ねられています。評価額の上限が外れるかどうかは、資産を多く抱える会社にとって大きな分岐点です。
今すぐやるべきこと
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第6回資料の案を前提に、いま手を動かしておくと後で効く準備を手順に分けて示します。いずれも現行制度のもとでも無駄にならない作業です。自社株の評価や承継の進め方は会社ごとに事情が異なるため、具体的な判断は相続税申告のサポートとあわせて税理士にご相談ください。
- ステップ1:直前期末の簿価純資産と過去5年の利益・配当を並べる
残余利益方式は直前期末の純資産価額を出発点とし、そこに将来の残余利益を加算する構造です。第6回資料は、将来予測利益の計算を課税時期前5年の法人の正常利益から算出する案を示しています。まずは直近5期分の年利益金額と年配当金額、各期末の純資産価額を一覧にしてください。決算期の変更等により12か月に満たない事業年度がある場合は、資料が示すとおり12か月に相当する利益金額に修正したうえで並べます。 - ステップ2:法人税申告書の別表四・別表五(一)から数値を拾えるようにする
第6回資料は、企業における会計処理の選択の自由を尊重しつつ課税の公平性の観点から、すべての企業が一定の統一基準で作成をする法人税法に基づく会計帳簿(法人税申告書)に基づき株価を算定する案を示しています。資料の参考例では、直前期末の純資産価額を別表五(一)の利益積立金と資本金等から、当期純利益を別表四の所得金額から導いています。過去5期分の申告書控えが手元にそろっているかを確認してください。 - ステップ3:非経常的な損益と利益操作とみなされうる項目を洗い出す
オペレーティングリース取引、親族である役員への役員報酬のうち経営の対価を上回る部分、一時的な役員退職慰労金等は、いずれも正常利益の計算で調整する案が示されています。過去5期にこれらがある場合、調整後の利益がどの程度になるかで評価額が変わります。該当する取引を年度ごとに拾い出し、金額を把握しておいてください。 - ステップ4:特定の評価会社の4類型に当たらないかを確認する
第6回資料は、残余利益方式によらず純資産価額方式で評価することが相当と認められる会社を特定の評価会社として4類型に整理しています。資産管理会社(資産保有特定会社)と組織再編直後の会社、開業後5年未満の会社と開業前の会社、休業中の会社、清算中の会社が例として挙げられています。現行の開業後3年未満という区分とは年数が異なる案である点に注意してください。 - ステップ5:自社株対策の実行時期を税理士と相談する
資料は、第7回会議以降での想定論点として純資産価額方式の各論、還元率、配当還元方式を挙げており、評価水準を左右する要素がまだ残っています。贈与や譲渡の実行時期、事業承継税制の活用可否を含めて、現行方式と見直し案の双方で試算したうえで判断する必要があります。会議資料の公表は国税庁ホームページで続くため、更新を追いながら方針を決めてください。
よくある質問
- Q. 第6回会議で決まったことは、もう確定した制度なのですか?
- A. いいえ、確定した制度ではありません。第6回有識者会議の資料は、各論点について「〜としてはどうか」という形で方向性を示したものであり、会議の検討事項整理表にも検討事項として並べられている段階です。資料には第7回会議以降での想定論点として、純資産価額方式の各論、還元率の算出方法、配当還元方式の存置が挙げられており、議論は続きます。現時点で確定した評価方法として自社株の計算をやり直す必要はありませんが、方向性は具体的な数字を伴って示されているため、備えを始める価値はあります。
- Q. 残余利益方式になると、自社の株価は上がるのですか下がるのですか?
- A. 会社の規模と収益力によって方向が分かれます。第6回資料の試算(対象1,378社・加算期間5年・還元率8%と仮定)では、現行の申告評価額以下となる会社の割合は、小会社で斟酌率0.8のとき67.9%、斟酌率0.7のとき78.4%でした。一方、大会社では斟酌率0.8のとき24.2%、斟酌率0.7のとき28.1%にとどまります。資料では、各区分のROEの中央値が大会社3.9%、中会社2.1%、小会社0.6%と示されており、収益力が低い会社ほど残余利益の加算が小さくなる構造です。
- Q. 還元率8%というのは、この数字で決まったということですか?
- A. 決まっていません。第6回資料の試算は「還元率8%と仮定」と明記したうえでの数値であり、還元率そのものは第7回会議以降での想定論点として「還元率の算出方法等について」が挙げられている段階です。資料では、一律とすることの是非や、上場と非上場の差(所有と経営の一致の考慮を含む)が論点として示されています。還元率が動けば残余利益の金額も評価水準も動くため、8%という数字を前提に自社の将来の税額を確定的に見積もることはできません。
- Q. 決算直前に役員退職金を支払って株価を下げる方法は使えなくなりますか?
- A. 第6回資料では、その方向での対応案が示されています。資料は、株式評価の直前期に多額の役員退職慰労金等を支払うことで法人の利益を操作し株式評価を圧縮しているケースが見受けられるとしたうえで、役員退職金等のような非経常的損失がある場合は、残余利益方式における正常利益の計算に際し損金から控除して評価することとしてはどうか、と提案しています。オペレーティングリース取引についても、なかったものとした状態に引き直して評価する案が併せて示されています。
- Q. 資産管理会社の判定は、どのように変わる見込みですか?
- A. 第6回資料は、現行制度のように土地・株式ごとの保有割合でそれぞれ判定するのではなく、投資目的等の「特定資産」の合計額が総資産に占める保有割合によって判定する案を示しています。基準は事業承継税制の対象から除かれる資産保有型会社(70%)と資産運用型会社(75%)を参考に設定するとされ、判定は時価に洗い替えず簿価のまま行う案です。現行は判定のために洗替えが必要で事務負担が大きいため、簿価判定は負担が軽くなる方向の見直しです。
- Q. 従業員持株会の株式がある場合、何か影響はありますか?
- A. 第6回資料では、固定価格による従業員持株会の株式について、一定の要件を満たす場合に当該固定価格により評価する方向性が示されています。要件としては、従業員持株会を通じて保有する株であること、規約又は約款等において持株会株式の価額等が定められていること、退会時は固定価格での買取により株式の持出しはできないことなどが挙げられています。持株会以外の株式は、企業価値総額から固定価格分を控除したうえで評価する案です。
参考資料・出典
- 国税庁「審議会・研究会等」(取引相場のない株式の評価に関する有識者会議の開催状況)
- 国税庁「第6回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 資料」(令和8年9月16日・PDF)
- 国税庁「第6回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 委員提出意見書」(令和8年9月16日・PDF)
- 国税庁 タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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