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欠損金の繰戻し還付2026|前期の法人税を取り戻す3要件と期限

欠損金の繰戻し還付で前期の法人税を取り戻す要件を解説する記事のタイトル画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:今期に生じた欠損金額を、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に繰り戻し、納めた法人税の還付を請求できます。地方法人税も併せて還付されます。
  • 2ポイント2:対象は資本金1億円以下の普通法人などの中小企業者等です。大法人との間に完全支配関係がある法人は除かれ、中小企業者等以外の法人は令和10年3月31日まで原則として使えません。
  • 3ポイント3:連続した青色申告、欠損事業年度の確定申告書の期限内提出、還付請求書の同時提出の3要件が必要です。赤字見込みの期は申告準備を前倒ししましょう。

前期は黒字で法人税を納めたのに、今期は赤字になりそうだという会社は少なくありません。このような場合、今期の欠損金額を前期に繰り戻して、前期に納めた法人税の還付を受けられる制度があります。翌期以降に繰り越して使う繰越控除と違い、資金がすぐに戻る点が最大の特徴です。

本記事では、国税庁タックスアンサーNo.5763・No.5762と手続案内C1-52、還付請求書の記載要領をもとに、対象となる法人、3つの適用要件、還付金額の計算、提出期限と実務上の注意点を整理します。

欠損金の繰戻し還付の概要:対象法人と3つの要件

欠損金額を前1年以内の事業年度に繰り戻す制度

国税庁のタックスアンサーNo.5763によると、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合、その欠損金額をその欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して法人税額の還付を請求することができます。前期に所得があり法人税を納めていれば、その前期の申告内容を前提として、今期の赤字の一部または全部をその所得と相殺したものとして、納めた法人税の一部または全部を取り戻すことができます。

対象は中小企業者等に限られる

No.5763は、この制度は、中小企業者等以外の法人の平成4年4月1日から令和10年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用しないこととされていると説明しています。つまり、通常の事業年度に生じた欠損金額について繰戻し還付を受けられるのは、原則として中小企業者等に限られます。自社が該当するかどうかは、事業年度終了の時の状況で判定します。

中小企業者等の中心となるのは、普通法人のうち、事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものです。ただし、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人などの大法人との間に、その大法人による完全支配関係がある普通法人や、大通算法人は除かれます。このほか、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等なども中小企業者等に含まれます。中小企業者等以外の法人であっても、清算中に終了する事業年度の欠損金額、解散などの一定の事実が生じた場合の欠損金額、災害損失欠損金額などについては、この制度を適用できます。

解散や災害の場合の特例

No.5763は、通常の繰戻し還付のほかに、2つの場面を定めています。1つは、解散、事業の全部の譲渡、会社更生法等の規定による更生手続の開始など一定の事実が生じた場合で、その事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度またはその事実が生じた日の属する事業年度において生じた欠損金額を繰り戻すことができます。この場合の還付請求書は、解散等の事実が生じた日以後1年以内に提出します。

もう1つは災害損失欠損金額です。災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度などに生じた災害損失欠損金額は、その事業年度開始の日前1年(青色申告である場合には、前2年)以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻すことができます。災害損失欠損金額の繰戻しは青色申告でなくても要件を満たせば対象となる点が、通常の繰戻し還付と異なります。

青色申告法人の3つの適用要件

No.5763は、青色申告書を提出する法人の欠損金の繰戻しによる還付について、次の要件をすべて満たさなければならないとしています。

  1. 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること
  2. 欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していること
  3. 上記2の確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出していること

3つ目の要件のとおり、還付請求書は欠損事業年度の確定申告書と同時に提出するのが原則で、提出時期は手続案内C1-52でも欠損事業年度の確定申告書の提出時と示されています。

中小企業への実務影響:資金繰りと申告スケジュール

還付金額の計算と地方法人税の併せた還付

還付請求書の記載要領では、還付金額は、還付所得事業年度の法人税額の各欄から求めた金額に、還付所得事業年度に繰り戻す欠損金額を乗じ、還付所得事業年度の差引所得金額で除して計算することとされています(1円未満の端数は切り捨て)。また、還付所得事業年度に繰り戻す欠損金額は、還付請求書を提出する日までに確定した差引所得金額(5)欄の金額が限度となります。前期の所得を超えて繰り戻すことはできず、前期に納めた法人税額を超えて還付を受けることもありません。

地方法人税については、手続案内C1-52が、税務署長が法人税を還付する場合に、地方法人税の額でその還付の時において確定しているものがあるときは、法人税の還付金の額に百分の十.三を乗じて計算した金額に相当する金額を併せて還付することとされているため、特段の手続は不要と説明しています。防衛特別法人税についても、同様に併せて還付され、特段の手続は不要とされています。一方、法人住民税や法人事業税はこの案内の対象に含まれていないため、地方税の取扱いは別途確認が必要です。

還付請求書の主な記載欄

記載要領によると、欠損金額(1)欄には、欠損事業年度の申告書別表一の所得金額又は欠損金額欄に記載された欠損金額を記載します。還付所得事業年度の所得金額(3)欄には、還付所得事業年度の申告書別表一の所得金額又は欠損金額欄に記載された所得金額を記載し、その事業年度について更正が行われている場合は、更正決定通知書に記載された更正後の所得金額を記載します。納付の確定した法人税額(6)欄も同様に、別表一の差引所得に対する法人税額欄の金額(更正後の金額)を記載します。

さらに、控除税額(8)欄には、還付所得事業年度において法人税額から控除した所得税額や外国税額の合計額を記載します。前期の申告書の控えと、前期に受けた更正の通知書があれば、それらを手元にそろえてから作成すると記載の誤りを防げます。

期限内申告が還付の前提になる

実務で最も影響が大きいのは、欠損事業年度の確定申告書を提出期限までに提出していることが要件とされている点です。記載要領は、やむを得ない事情によってその提出期限までに提出することができなかったものと税務署長が認めた場合には、期限後提出のものでも有効に取り扱われるとしていますが、これは例外です。決算作業が遅れがちな会社は、赤字が見込まれる期ほど申告スケジュールを早めに固める必要があります。

また、還付所得事業年度から欠損事業年度まで連続して青色申告書を提出していることも要件です。過去に青色申告の承認が取り消されている場合や、前期の申告が白色申告だった場合は、この制度を使うことができません。

繰越控除との関係

繰戻し還付を受けなかった欠損金額は、翌期以降の繰越控除に回すことができます。タックスアンサーNo.5762によると、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度のものであれば、所得金額の計算上損金の額に算入されます。中小法人等以外の法人には所得金額の100分の50という損金算入限度額がありますが、中小法人等にはこの制限は適用されません。なお、繰戻しにより還付を受けるべき金額の計算の基礎となった欠損金額は、繰越控除の対象から除かれます。同じ欠損金額を両方で使うことはできません。

繰越控除を受けるには、欠損金額が生じた事業年度に青色申告書である確定申告書を提出し、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出するとともに、一定の帳簿書類を保存していることが必要です。No.5762は、繰越欠損金の額が150万円で、その事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合には、150万円のうち100万円が損金の額に算入され、その事業年度の所得金額は0となるという例を示しています。繰り越した欠損金額は、翌期以降に所得が出て初めて税負担を軽くする効果を持ちます。

当事務所の見解:繰戻し還付を判断する4つの視点

欠損金の繰戻し還付は、申告書と同時に請求書を出すだけで資金が戻る有利な制度ですが、使うかどうかの判断や要件の確認を誤ると、還付を受けられない、あるいは翌期以降の繰越控除で得られたはずの効果を失うことがあります。当事務所では、決算前の段階から次の4つの視点で検討し、経営者の方と方針を決めるようにしています。

視点1:今すぐの資金か、将来の税負担軽減か
繰戻し還付は前期に納めた法人税を早期に取り戻せる一方、還付を受けた分の欠損金額は繰越控除に使えなくなります。翌期以降に高い所得が見込まれる場合でも、資金繰りが厳しい局面では早期の還付を優先する判断があり得ます。どちらを選ぶかは、事業計画と資金繰り表をもとに決めることが大切です。金融機関への返済予定や賞与の支払時期も、判断材料に加えましょう。
視点2:資本金と親会社の規模を確認する
資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の法人などとの間に完全支配関係がある場合は中小企業者等に該当しません。グループ会社がある場合は、事業年度終了の時の資本関係を必ず確認してください。期中に増資や株式の移動があった会社は、事業年度終了の時点の状況で判定する点にも注意が必要です。
視点3:申告書と同時提出を確実にする
還付請求書は欠損事業年度の確定申告書の提出時に出すものです。申告書だけを先に提出して請求書を出し忘れると、要件を満たさなくなるおそれがあります。e-Taxで申告する場合も、還付請求書を同時に作成・送信する手順を社内で決めておきましょう。税理士に申告を依頼している場合も、請求の意思を早めに伝えておくことが大切です。
視点4:税務調査で前期の所得が変わる可能性も考える
記載要領では、還付所得事業年度について更正が行われている場合は、更正後の所得金額や法人税額を記載することとされています。前期の申告内容に不安がある場合は、繰戻しの前に前期の処理を見直しておくと、後の手戻りを防げます。還付請求の後に前期の所得が変わると、還付額にも影響が出る可能性があるため、前期の論点は事前に整理しておきましょう。

繰戻し還付は、決算が締まってから検討を始めると、判断材料をそろえる時間が足りなくなりがちです。赤字決算が見込まれる段階から、申告スケジュールと資金繰りをあわせて検討することが重要です。月次の数字をもとに早めに判断し、還付の請求まで一貫して任せたい方は、堺市の税務顧問のページもご覧ください。

今すぐやるべきこと:繰戻し還付の準備手順

  1. ステップ1:今期の損益見込みを確認する
    月次決算をもとに今期の所得見込みを試算し、欠損金額が生じるかどうかと、その概算額を確認します。決算整理後の数字で大きく変わる項目があれば、早めに洗い出します。棚卸資産の評価や貸倒れなど、判断を要する項目は根拠資料も集めておきます。
  2. ステップ2:前期の申告内容を確認する
    前期の申告書別表一から、所得金額と差引所得に対する法人税額を確認し、メモに残します。前期が青色申告であったか、更正を受けていないかもあわせて確認します。前期の控除税額(所得税額や外国税額)も還付請求書に記載するため、内訳を整理します。
  3. ステップ3:中小企業者等に該当するか確認する
    事業年度終了の時の資本金の額と、大法人との完全支配関係の有無を確認します。グループ会社がある場合は、親会社の資本金も含めた資本関係図を作って確認します。期中に増資を予定している会社は、事業年度終了の時の資本金の額になる点に注意します。
  4. ステップ4:繰戻しと繰越のどちらを使うか決める
    前期の法人税額と今期の欠損金額をもとに、記載要領の算式に沿って還付見込額を計算し、翌期以降の所得見込みと資金繰りを比べて、繰戻し還付を請求するかどうかを決めます。欠損金額の一部だけを繰り戻し、残りを繰越控除に回す選択も併せて検討します。
  5. ステップ5:申告書と還付請求書を期限内に同時提出する
    欠損事業年度の確定申告書を提出期限までに作成し、欠損金の繰戻しによる還付請求書と同時に提出します。還付を受ける預金口座も請求書に記載します。提出後は、申告書と請求書の控えを一緒に保存しておきます。
重要:欠損事業年度の確定申告書を期限までに提出していないと、繰戻し還付の要件を満たしません。赤字の期ほど、申告の準備を前倒しで進めてください。また、還付請求書を確定申告書と同時に提出することも要件であるため、申告書の提出前に請求書の作成が済んでいるかを必ず確認してください。

欠損金の繰戻し還付についてよくある質問

Q. 繰戻し還付はどの事業年度の法人税が戻るのですか?
A. 国税庁タックスアンサーNo.5763によると、欠損金額が生じた事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して、法人税額の還付を請求できます。通常は前期の法人税が対象になります。還付所得事業年度に繰り戻す欠損金額は、還付請求書を提出する日までに確定した前期の差引所得金額が限度とされています。前期に所得がなかった場合は、繰り戻す対象がありません。
Q. 資本金が1億円を超える会社は使えませんか?
A. No.5763は、中小企業者等以外の法人の平成4年4月1日から令和10年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用しないとしています。資本金1億円超の普通法人は通常の欠損金額では使えません。ただし、清算中に終了する事業年度の欠損金額、解散などの一定の事実が生じた場合の欠損金額、災害損失欠損金額などは、中小企業者等以外の法人でも対象になります。
Q. 確定申告書を期限後に提出した場合でも還付を受けられますか?
A. 原則として受けられません。No.5763は、欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していることを要件としています。還付請求書の記載要領は、やむを得ない事情によってその提出期限までに提出することができなかったものと税務署長が認めた場合には、期限後提出のものでも有効に取り扱われるとしていますが、その場合は事情の詳細を記載した書類の添付が必要です。
Q. 地方法人税も還付されますか?
A. 国税庁の手続案内C1-52によると、税務署長が法人税を還付する場合に、地方法人税の額でその還付の時において確定しているものがあるときは、法人税の還付金の額に百分の十.三を乗じて計算した金額に相当する金額が併せて還付され、特段の手続は不要とされています。防衛特別法人税も同様に併せて還付されます。法人住民税や法人事業税の取扱いは別途確認が必要です。
Q. 繰戻し還付を受けた欠損金額を、翌期以降の繰越控除にも使えますか?
A. 使えません。国税庁タックスアンサーNo.5762は、繰越控除される欠損金額から、欠損金の繰戻しによる還付の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となった欠損金額を除くとしています。前期の所得を上回る欠損金額があって繰り戻しきれなかった部分は、翌期以降の繰越控除の対象になります。どの金額を繰り戻すかは還付請求書の該当欄に記載し、残りは翌期以降の申告で繰越控除として使います。
Q. 還付請求書はどこに、どの方法で提出しますか?
A. 手続案内C1-52によると、提出先は納税地の所轄税務署長です。e-Taxソフトで還付請求書を作成・提出するよう案内されており、書面で作成する場合は還付請求書を1部、提出先に持参または送付します。還付所得事業年度が2以上あるときは、別葉に作成して提出するよう記載要領で示されています。税務署の総合窓口の受付時間は原則として午前9時から午後3時までです。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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