堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
高額療養費の改正2026|8月から自己負担上限の引き上げを税理士が解説
この記事の要点3点
- ポイント1:高額療養費制度の自己負担限度額が令和8年(2026年)8月から引き上げられ、あわせて「年間上限」が新設されます。令和9年8月には所得区分の細分化(第2段階)も予定されています。
- ポイント2:影響を受けるのは公的医療保険に加入するすべての方で、とくに高額な医療費を負担する現役世代(会社員・役員・個人事業主)と、従業員の生活を支える中小企業経営者です。
- ポイント3:まずは自社・自身の所得区分と新しい上限額を確認し、傷病手当金や医療費控除、健康保険組合の付加給付とあわせて「働けないときの家計」を点検しておくことが必要です。
病気やケガで高額な医療費がかかっても、家計の負担が一定額で止まるようにするのが「高額療養費制度」です。この上限額が、令和8年(2026年)8月から引き上げられます。さらに、月ごとの上限とは別に1年単位の「年間上限」が新たに導入されます。2025年にいったん見送られた経緯があるため「結局どうなったのか」がわかりにくい制度ですが、厚生労働省は令和7年12月に見直し内容を再決定し、令和8年度予算の成立によって実施が確定しています。本記事では、中小企業の経営者と現役世代の視点から、変更点と実務対応、そして意外と知られていない税務との関わりまで税理士が整理します。
高額療養費制度2026年改正の概要
高額療養費制度は、同じ月(1日から末日まで)に医療機関の窓口で支払った自己負担額が一定の上限(自己負担限度額)を超えたとき、超えた分が公的医療保険から払い戻される仕組みです。上限額は年齢と所得によって決まります。今回の見直しは、この上限額そのものの引き上げと、新しい「年間上限」の導入が柱です。
いったん見送られ、令和7年12月に再決定された経緯
この見直しは、当初2025年(令和7年)8月から段階的に実施する案が示されていました。しかし、長期にわたって治療を続けるがん患者などへの影響が大きいとして反対の声が上がり、政府は2025年春にいったん実施を見送りました。その後、患者団体・保険者・労使団体の委員が参加する専門委員会で計9回の議論を重ね、令和7年12月16日に基本的な考え方が取りまとめられました。厚生労働省の資料でも「令和8年8月から実施を予定している」と明記されており、2026年7月時点で凍結・見送りの扱いにはなっていません。
令和8年8月からの2つの変更点
2026年8月からの主な変更点は次の2つです。第一に、一人当たり医療費の伸びを踏まえ、所得区分ごとの月額上限が引き上げられます。このときの所得区分は現行の5区分(70歳未満の場合)を維持します。第二に、月ごとの上限に達しなくても、1年間(8月から翌年7月まで)の自己負担の合計が一定額に達したら、それ以降は窓口負担が生じない「年間上限」が新設されます。長く治療が続くものの、毎月は上限に届かない方への配慮が目的です。
令和9年8月からの第2段階
翌年の令和9年(2027年)8月からは第2段階として、所得区分が5区分からより細かい区分へと細分化され、月額上限がさらに見直されます。あわせて、住民税非課税ラインをやや上回る「年収約200万円未満」の方について、多数回該当(直近12か月に3回以上上限に達した場合の4回目以降の軽減額)の金額が引き下げられます。長期療養者の負担が増えすぎないよう、多数回該当の金額自体は各区分で据え置かれる点も、制度のセーフティネット機能を維持するための重要な設計です。
そもそも高額療養費はどう計算するのか
自己負担限度額は「世帯(同じ医療保険に加入する家族)」単位でも合算できます。1人・1か月・1医療機関ごとの自己負担が21,000円以上のものを合算し、世帯全体で上限を超えれば、その超過分が払い戻されます。入院と外来、医科と歯科、複数の家族分をまとめられるため、家族に医療費が集中した月ほど制度の効果は大きくなります。また、限度額適用認定証やマイナ保険証を使えば、窓口では最初から上限額までの支払いで済む「現物給付化」も可能です。今回の改正は、この上限額と年間上限を見直すものであり、世帯合算や現物給付化といった基本的な仕組み自体は変わりません。制度の骨格を理解しておくと、上限額が上がっても「どこがどう変わったのか」を正確につかめます。
ポイント:「保険料が上がる」話ではありません
今回の改正は、窓口で支払う「自己負担の上限額」の見直しであり、毎月給与から天引きされる健康保険料そのものが上がる制度改正ではありません。従業員から「保険料が上がるのか」と質問されたときに正しく説明できるよう、両者を分けて理解しておきましょう。
今回の改正は、窓口で支払う「自己負担の上限額」の見直しであり、毎月給与から天引きされる健康保険料そのものが上がる制度改正ではありません。従業員から「保険料が上がるのか」と質問されたときに正しく説明できるよう、両者を分けて理解しておきましょう。
中小企業と現役世代への実務影響
ここでは、70歳未満(現役世代)の自己負担限度額が令和8年8月からどう変わるかを、現行と比較して整理します。上限額の「+1%」は、その区分の基準額を超えた医療費(総額)の1%を上乗せする計算を表します。
70歳未満の自己負担限度額(現行と2026年8月以降の比較)
| 所得区分(年収の目安) | 現行の月額上限 | 2026年8月からの月額上限 | 多数回該当(据え置き) |
|---|---|---|---|
| 約1,160万円~ | 252,600円+1% | 270,300円+1% | 140,100円 |
| 約770万円~約1,160万円 | 167,400円+1% | 179,100円+1% | 93,000円 |
| 約370万円~約770万円 | 80,100円+1% | 85,800円+1% | 44,400円 |
| ~約370万円 | 57,600円 | 61,500円 | 44,400円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | 24,600円 |
年収の目安は健康保険の標準報酬月額で判定されます。たとえば標準報酬月額28万円~50万円(年収約370万円~770万円)に該当する方は、月の上限が80,100円+1%から85,800円+1%へと約5,700円引き上げられます。区分が上がるほど引き上げ幅は大きく、最上位区分では約1万8千円の増となります。
新設される「年間上限」の考え方
2026年8月からは、8月~翌年7月の1年間の自己負担合計にも上限が設けられます。年間上限の目安は、たとえば年収約370万円~約770万円の区分で53万円(月額平均約4万4千円)、約770万円~約1,160万円で111万円、約1,160万円以上で168万円です。毎月きっちり上限まで達するわけではないものの通院・入院が長引く方にとって、年単位での歯止めが加わることになります。
具体例:標準報酬月額30万円(年収約400万円)の従業員が、ある月に総医療費100万円(窓口3割で30万円)の治療を受けた場合、現行では自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=87,430円です。2026年8月以降は85,800円+(1,000,000円−267,000円)×1%=93,130円となり、同じ治療でも約5,700円負担が増える計算になります。
経営者・人事労務担当者への影響
中小企業にとっての影響は、大きく2つの側面があります。1つは、従業員が大きな病気やケガをしたときの家計負担がやや増えることです。もう1つは、経営者本人や役員も同じ制度の対象であり、家族を含めた医療費リスクの見直しが必要になる点です。給与計算や社会保険の手続きを外部に委ねている場合は、記帳・経理代行の担当者とも情報を共有しておくと安心です。
とくに従業員向けの説明で押さえたいのが、傷病手当金との関係です。傷病手当金は、業務外の病気やケガで連続する3日間(待期)を含み4日以上仕事を休み、給与が支払われないときに、健康保険から支給される休業補償です。支給額の目安は、直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額(標準報酬日額に相当)の3分の2で、通算して1年6か月まで受け取れます。高額療養費が「治療費の自己負担」を抑える制度であるのに対し、傷病手当金は「休業中の生活費」を支える制度です。大きな病気では両方が同時に問題になるため、経営者は「治療費の上限(高額療養費)」と「収入の穴埋め(傷病手当金)」をセットで把握し、従業員が不安なく療養できるよう案内できると理想的です。あわせて、加入先が協会けんぽか健康保険組合かによって、上乗せの付加給付の有無が変わる点も確認しておきましょう。
当事務所の見解・実務上の注意点
「限度額適用認定証」とマイナ保険証で立替えを避ける
高額療養費は原則として「いったん窓口で自己負担額を全額払い、後日払い戻される」制度です。しかし、事前に「限度額適用認定証」を提示するか、マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)でオンライン資格確認を使えば、窓口での支払いを最初から自己負担限度額までに抑えられます。上限額が上がる今こそ、従業員にこの仕組みを周知し、まとまった医療費が予想される入院前には認定証の準備を勧めることが、家計のキャッシュフロー対策として有効です。
医療費控除との関係を取り違えない
税理士の立場から強調したいのが、高額療養費と医療費控除(所得税)の関係です。確定申告の医療費控除では、実際に自己負担した医療費が対象になりますが、高額療養費として払い戻された金額や、健康保険組合の付加給付で補てんされた金額は、支払った医療費から差し引かなければなりません。上限額の引き上げで自己負担が増えると、その分だけ医療費控除の対象額も増える可能性があります。年をまたぐ入院では、月ごと・年ごとの上限と、暦年(1月~12月)で計算する医療費控除の期間が一致しない点にも注意が必要です。
民間の医療保険を過不足なく見直す
公的保障の上限が上がると、その差を埋める民間医療保険の役割も相対的に大きくなります。ただし、高額療養費という強力な公的セーフティネットがある前提を忘れ、過剰な保障に加入するのは家計の無駄につながります。経営者の場合、法人契約の医療保険や、小規模企業共済・経営セーフティ共済といった別の備えとのバランスも含め、全体最適で考えることをおすすめします。上限額の引き上げは一度きりではなく、令和9年8月の第2段階も控えているため、単年度の損得だけでなく数年先を見据えた設計が大切です。社会保険・税務を横断して相談できる税務顧問を活用すると、こうした判断がしやすくなります。
今すぐやるべきこと
制度改正を前に、経営者・人事労務担当者が取り組むべき手順を整理します。
- ステップ1:自社・自身の所得区分を確認する
経営者本人・役員・従業員それぞれの標準報酬月額から、どの所得区分に当たるかを確認します。区分によって引き上げ幅が異なるため、影響の大きさを把握する出発点になります。 - ステップ2:新しい上限額を早見表にまとめる
本記事の比較表をもとに、2026年8月以降の月額上限と年間上限を自社用の早見表に落とし込み、いつでも参照できるようにしておきます。 - ステップ3:限度額適用認定証・マイナ保険証の周知
入院や高額治療が見込まれる従業員に、窓口負担を上限までに抑える手続きを案内します。マイナ保険証の利用登録状況も確認しておきましょう。 - ステップ4:傷病手当金・付加給付とセットで整理
加入している健康保険(協会けんぽか健保組合か)で、傷病手当金や付加給付の内容を確認し、「働けないときの家計」の全体像を従業員に説明できるようにします。 - ステップ5:医療保険・共済の見直しを専門家に相談
公的保障の変更を踏まえ、民間医療保険や共済の過不足を点検します。税務・社会保険の両面から、顧問税理士に相談すると判断がぶれません。
よくある質問
- Q. 高額療養費の上限が上がると、健康保険料も上がりますか?
- A. いいえ、直接は連動しません。今回の改正は、医療機関の窓口で支払う「自己負担の上限額」を見直すものです。給与から天引きされる健康保険料は、標準報酬月額と保険料率で決まる別の仕組みです。ただし、医療費全体の増加は将来的な保険料水準にも影響し得るため、無関係とは言い切れません。従業員には「今回上がるのは窓口負担の上限で、保険料の改定ではない」と分けて説明するのが正確です。
- Q. いつの医療費から新しい上限が適用されますか?
- A. 令和8年(2026年)8月の診療分からです。高額療養費は月単位(1日から末日まで)で計算するため、2026年7月までの診療分は現行の上限、8月以降の診療分は新しい上限で判定されます。新設される「年間上限」も、2026年8月から翌年7月までを1年単位として計算が始まります。月をまたぐ入院では、7月分と8月分で適用される上限が変わる点に注意してください。
- Q. 2025年に見送りになったと聞きましたが、結局実施されるのですか?
- A. はい。当初2025年8月からの実施案は反対を受けていったん見送られましたが、専門委員会での議論を経て令和7年12月に見直し内容が再決定され、令和8年度予算の成立で実施が確定しています。厚生労働省の公式ページでも「令和8年8月から実施予定」と案内されており、2026年7月時点で凍結・撤回はされていません。当初案とは内容や時期が一部異なるため、古い情報のまま判断しないよう注意が必要です。
- Q. 「多数回該当」とは何ですか。今回下がるのですか?
- A. 多数回該当とは、直近12か月間に高額療養費の上限額に3回以上達した場合、4回目以降の上限額が引き下げられる仕組みです。長期に治療が続く方の負担を軽くする措置で、今回の改正では各所得区分の多数回該当の金額は据え置かれます。ただし令和9年8月からは、年収約200万円未満の区分に限って多数回該当の金額が引き下げられる予定です。全体として、長期療養者への配慮が制度設計の軸になっています。
- Q. 高額療養費で戻ってきたお金は、確定申告の医療費控除に影響しますか?
- A. はい、影響します。医療費控除は実際に自己負担した医療費が対象です。高額療養費として払い戻された金額や、健康保険組合の付加給付で補てんされた金額は、支払った医療費から差し引いて計算します。上限額の引き上げで自己負担が増えると、医療費控除の対象額も増える場合があります。なお高額療養費は月・年単位、医療費控除は暦年単位で計算するため、年末年始をまたぐ入院では期間のズレに注意してください。
- Q. 70歳以上の従業員や家族への影響はありますか?
- A. あります。70歳以上には「外来特例」など独自の上限がありますが、今回の見直しでは70歳以上の限度額も対象に含まれています。低所得の区分には配慮(月額上限の据え置きなど)がなされる一方、住民税非課税区分にも年間上限が導入されます。高齢の家族を扶養している従業員や、シニア従業員がいる企業では、対象年齢や所得区分ごとの取り扱いを個別に確認しておくと、家計相談に的確に応じられます。
- Q. 自営業で国民健康保険に加入していても高額療養費は使えますか?
- A. 使えます。高額療養費は、協会けんぽや健康保険組合だけでなく、市区町村や国民健康保険組合が運営する国民健康保険にも共通する制度で、今回の上限額の見直しも同様に適用されます。個人事業主やフリーランスの場合、国民健康保険には傷病手当金が原則ないため、病気で働けなくなったときの収入減リスクは会社員より大きくなります。高額療養費で治療費の上限を把握したうえで、就業不能に備える民間保険や、所得補償の準備もあわせて検討しておくと安心です。医療費控除など個人の確定申告と一体で相談できる体制を整えておきましょう。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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