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国民年金の育児免除2026|自営業向け・10月開始を解説
この記事の要点3点
- 令和8年(2026年)10月から、国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス等)を対象に、育児期間中の国民年金保険料が免除される新制度が始まります。根拠は令和6年法律第47号です。
- 会社員(第2号)にはすでにある育休中の保険料免除が、これまで第1号にはありませんでした。新制度で、自営業・フリーランスの父母も子が1歳になるまで保険料が免除されます。所得制限はありません。
- 免除期間は保険料を納付したものとして将来の年金に反映されます。令和8年度の保険料は月17,920円。手続きは届出制のため、対象になりそうな方は施行に向け情報を確認しましょう。
会社員が育児休業を取ると、その間の社会保険料が免除されるのはよく知られています。一方で、自営業やフリーランスとして働く国民年金第1号被保険者には、これまで育児期間中の保険料免除がありませんでした。子どもが生まれても国民年金保険料の負担は続き、収入が不安定になりがちな時期に家計を圧迫してきたのです。この不公平を解消するため、令和8年(2026年)10月から、第1号被保険者の育児期間中の国民年金保険料を免除する新制度が始まります。本記事では、制度の内容と対象者、家計へのインパクト、そして手続きに向けた準備を、税理士の視点でわかりやすく解説します。個人事業主やフリーランスの方はもちろん、そうした働き方の家族を持つ経営者の方も押さえておきたい内容です。
1. 育児期間の保険料免除制度の概要
今回始まるのは、国民年金第1号被保険者が子どもを養育する期間について、国民年金保険料の納付を免除する制度です。令和8年(2026年)10月1日から施行され、根拠は「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)」です。少子化対策の一環として、これまで育児期間の保険料免除がなかった自営業・フリーランス層への支援を強化する狙いがあります。
制度が新設された背景
近年、働き方の多様化により、フリーランスや個人事業主として子育て世代が働くケースが増えています。ところが公的年金の育児支援は、長らく会社員(第2号被保険者)を中心に整えられてきました。会社員は育児休業を取得すれば厚生年金・健康保険の保険料が免除され、その間も保険料を納付したものとして年金額に反映されます。これに対し、第1号被保険者には産前産後期間の免除(平成31年4月開始、最大4か月)はあったものの、その後の育児期間をカバーする仕組みがなく、就労形態によって支援に差がある状態が続いていました。今回の新制度は、こうした働き方による格差を埋め、どのような働き方でも安心して子育てできる環境を整えることを目的としています。
対象となるのは国民年金第1号被保険者
対象は、20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、農業者、学生、無職の方など、国民年金第1号被保険者です。実父母だけでなく養父母も対象で、父・母それぞれが制度を利用できます。会社員などの第2号被保険者や、その扶養に入っている第3号被保険者は、別の仕組み(育児休業中の社会保険料免除など)があるため、この新制度の対象外です。
これまで第1号にだけ「空白」があった
会社員(第2号)は育児休業中の厚生年金・健康保険料が免除され、専業主婦・主夫(第3号)はそもそも保険料負担がありません。育児期間の保険料負担が実質的に残っていたのは第1号被保険者だけでした。新制度はこの「空白」を埋めるものです。
会社員(第2号)は育児休業中の厚生年金・健康保険料が免除され、専業主婦・主夫(第3号)はそもそも保険料負担がありません。育児期間の保険料負担が実質的に残っていたのは第1号被保険者だけでした。新制度はこの「空白」を埋めるものです。
免除される期間
免除される期間は、父母のどちらかによって異なります。実母の場合は、すでにある産前産後期間の保険料免除(出産予定月の前月から4か月間)に引き続く9か月間が免除され、産前産後分と合わせて最大13か月間となります。実父または養父母の場合は、子が1歳になる誕生日の前月までの最大12か月間が免除されます。いずれも、子が1歳になるまでの育児期間をカバーする設計です。母と父では起算点と月数が異なりますが、これは母が産前産後免除を先に受けることを踏まえた調整で、育児期全体としては父母それぞれが手厚く支えられる仕組みになっています。
所得制限はなく、年金額にも満額反映
この制度の大きな特徴は、所得制限がないことです。国民年金第1号被保険者で、1歳未満の子を養育しているという要件を満たせば、所得の多い少ないにかかわらず対象になります。さらに、免除された期間は「保険料を納付したもの」として扱われ、将来受け取る老齢基礎年金の額に満額で反映されます。つまり、保険料を払わなくても年金が減らない、家計にも将来にも優しい制度です。一般的な申請免除(全額免除など)が年金額の計算上一部しか反映されないのとは、この点が大きく異なります。
2. 自営業・フリーランスへの実務影響
この制度が家計に与えるインパクトは小さくありません。令和8年度(2026年度)の国民年金保険料は月額17,920円です。仮に実父・養父母が最大12か月間免除を受けると、17,920円×12か月=約215,040円もの保険料負担がなくなる計算になります。しかも、その期間は年金額に満額反映されるため、「負担ゼロ・将来の年金は目減りなし」という手厚い内容です。
たとえば、夫婦ともにフリーランスで、それぞれが国民年金第1号被保険者という世帯を考えてみましょう。子が生まれると、母は産前産後免除(4か月)に続いて育児免除(9か月)で最大13か月、父は最大12か月の保険料が免除されます。二人分を合わせると、令和8年度の保険料水準で40万円を超える負担軽減になり得ます。売上が落ち込みやすい出産・育児の時期に、これだけの現金が手元に残る効果は大きく、しかも将来の年金は満額のまま維持されます。会社員世帯との支援格差が縮まる、意義の大きい改正だといえます。
産前産後免除・会社員の育休免除との比較
混同しやすい既存制度との違いを、表で整理します。
| 制度 | 対象 | 免除期間 | 年金への反映 |
|---|---|---|---|
| 産前産後免除(既存) | 第1号の母 | 出産予定月の前月から4か月 | 満額反映 |
| 育児期間免除(新設) | 第1号の父母 | 母は産前産後に続く9か月(計最大13か月)、父・養父母は最大12か月 | 満額反映 |
| 育休中の社保免除 | 第2号(会社員等) | 育児休業期間 | 保険料を納付したものとして扱う |
このように、実母は産前産後免除(4か月)に育児免除(9か月)が上乗せされ、最大13か月にわたって切れ目なく保険料負担がなくなります。実父や養父母も、それぞれ最大12か月の免除を受けられるため、夫婦がともに第1号被保険者であれば、世帯全体での負担軽減効果はさらに大きくなります。
夫婦それぞれが対象になる
制度は父・母それぞれに適用されます。夫婦がともに自営業・フリーランス(第1号)であれば、二人分の保険料が免除されます。子が1歳になるまでの負担軽減は、世帯単位で見ると数十万円規模になり得ます。
制度は父・母それぞれに適用されます。夫婦がともに自営業・フリーランス(第1号)であれば、二人分の保険料が免除されます。子が1歳になるまでの負担軽減は、世帯単位で見ると数十万円規模になり得ます。
確定申告・社会保険料控除への影響に注意
税務の面でも見落とせない論点があります。国民年金保険料は、支払った全額が所得税・住民税の社会保険料控除の対象になります。育児免除を受けた期間は保険料を支払わないため、その分の社会保険料控除は当然使えません。つまり、免除によって手元の現金は残る一方で、確定申告での控除額は減ることになります。免除を受ける年は、社会保険料控除の見込み額が例年より小さくなる点を織り込んで、資金繰りや納税額の見通しを立てておくと安心です。
もっとも、控除が使えないといっても、免除で浮いた保険料(年間で最大約21万円)がそのまま手元に残るメリットの方が、控除減による税負担増をはるかに上回るのが通常です。たとえば所得税・住民税を合わせた限界税率が15%の方であれば、12か月分の保険料約21万円に対する控除の効果は年間で約3万円強にとどまります。差し引きでは大きくプラスになるため、控除が減ることを理由に免除を避ける必要はありません。あくまで「確定申告時に控除額が例年と変わる」という点を、あらかじめ把握しておくという趣旨です。
子育て世帯の家計全体で捉える
この免除は、児童手当や、税制面の扶養控除・各種給付とあわせて、子育て世帯の家計を支える施策の一つです。個人事業主・フリーランスは会社員と違って収入が変動しやすく、育児期に売上が落ち込むことも珍しくありません。保険料負担がなくなる期間に、その分を生活費や事業の運転資金、あるいは将来に向けた貯蓄・投資へ回すといった家計設計の余地が生まれます。単発の負担減として捉えるのではなく、育児期のキャッシュフロー全体を見直すきっかけにすることをおすすめします。
3. 当事務所の見解・実務上の注意点
新制度は自営業・フリーランスの子育て世帯にとって朗報ですが、実務では注意したいポイントがあります。当事務所が特に重要と考える点を整理します。
「免除=手続き不要」ではない
保険料の免除は、要件を満たせば自動的に受けられるわけではなく、届出(申出)が必要になる見込みです。既存の産前産後免除も届出制であり、出し忘れると免除を受けられません。育児免除も同様に、施行後は速やかに手続きを行うことが大切です。制度の詳細な申請方法は施行に向けて日本年金機構から案内される予定のため、出産・育児を控えている方は最新の情報を確認しておきましょう。
付加保険料・国民年金基金との関係を確認する
国民年金の上乗せとして付加保険料や国民年金基金に加入している方は、育児免除期間中の取り扱いを個別に確認する必要があります。本体の保険料が免除される期間について、上乗せ部分がどう扱われるかは制度設計により異なり得ます。将来の年金設計に関わるため、加入者は年金事務所などで確認しておくと安心です。
付加的な負担減より「将来の年金が減らない」意義が大きい
目先の保険料負担が軽くなることに目が向きがちですが、当事務所として強調したいのは、免除期間が年金額に満額反映されるという点です。収入が不安定になりやすい育児期に、保険料の未納で将来の年金を減らしてしまうリスクを避けられる意義は大きいといえます。これまで保険料の支払いが苦しく未納や猶予を選んでいた方にとっては、年金を減らさずに負担を抑えられる、合理的な選択肢が加わることになります。国民年金は40年(480か月)の納付で満額になりますが、未納期間があるとその分だけ将来の年金が目減りします。育児期の1年前後を未納にするか、免除で満額扱いにするかは、老後の受給額に確実に差として表れます。
あわせて強調したいのは、この制度は「保険料を払えない人のための救済」ではないという点です。所得制限がなく、しかも年金額に満額反映されるため、十分な所得がある方が利用しても何ら不利益はなく、むしろ利用しないと損をする制度です。会社員が育児休業中に当然に保険料免除を受けているのと同じく、第1号被保険者も権利として活用すべきものと考えます。届出という一手間はありますが、対象になる方は必ず手続きを行いましょう。
4. 今すぐやるべきこと
令和8年10月の施行に向けて、自営業・フリーランスの子育て世帯(およびその予定がある方)が準備すべきことを、順を追って整理します。制度が始まってから慌てないよう、対象になりそうな方はいまのうちに要件と時期を確認しておきましょう。
- ステップ1:自分が第1号被保険者か確認する
自営業・フリーランス・農業・学生・無職などで国民年金保険料を自分で納めている方は第1号被保険者です。会社員(第2号)やその扶養(第3号)は対象外です。 - ステップ2:出産・育児の予定と時期を確認する
施行は令和8年10月1日です。対象は子が1歳になるまでの期間のため、出産予定日や子の年齢と、施行日との関係を確認しておきます。 - ステップ3:産前産後免除の届出も忘れない
実母はまず産前産後免除(4か月)の対象になります。育児免除はこれに続く制度のため、産前産後免除の届出も併せて確実に行いましょう。 - ステップ4:社会保険料控除の減少を織り込む
免除を受けた年は、その分の国民年金保険料の社会保険料控除が使えません。確定申告での控除額の見込みを立て直し、納税資金を準備します。 - ステップ5:最新の申請方法を確認する
具体的な届出方法は施行に向けて日本年金機構から案内されます。年金事務所の窓口や公式サイトで、手続きの詳細を確認しておきましょう。
免除の届出漏れや、確定申告での控除額の見込み違いは、思わぬ不利益につながります。手続きや税務の取り扱いに不安がある場合は、年金事務所や税理士に早めに相談しておくと安心です。
5. よくある質問
育児期間の国民年金保険料免除について、自営業・フリーランスの方から寄せられることの多い質問をまとめました。
- Q. 制度はいつから始まりますか。
- A. 令和8年(2026年)10月1日から施行されます。根拠は「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)」です。国民年金第1号被保険者の育児期間中の保険料が免除されます。
- Q. 会社員でも対象になりますか。
- A. いいえ。対象は国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス等)です。会社員(第2号被保険者)は、すでにある育児休業中の社会保険料免除が利用できます。その扶養に入っている第3号被保険者も、この新制度の対象外です。
- Q. 所得が高くても免除を受けられますか。
- A. はい。この制度に所得制限はありません。国民年金第1号被保険者で、1歳未満の子を養育しているという要件を満たせば、所得の多少にかかわらず対象になります。この点は、前年所得に応じて可否が決まる一般的な申請免除(全額免除・一部免除)とは大きく異なる、育児免除ならではの特徴です。
- Q. 免除を受けると将来の年金は減りますか。
- A. 減りません。育児免除の期間は「保険料を納付したもの」として扱われ、将来の老齢基礎年金の額に満額で反映されます。全額免除などの一般的な申請免除では年金額が一部しか反映されませんが、育児免除はその点で有利です。
- Q. 父母の両方が免除を受けられますか。
- A. はい。実父母・養父母それぞれが対象です。夫婦がともに国民年金第1号被保険者であれば、二人分の保険料が免除されます。母は産前産後免除と合わせて最大13か月、父・養父母は最大12か月が目安です。
- Q. 手続きは必要ですか。
- A. 必要になる見込みです。既存の産前産後免除も届出制で、届け出て初めて免除を受けられます。育児免除の具体的な申請方法は施行に向けて日本年金機構から案内される予定のため、対象になりそうな方は最新情報を確認してください。
- Q. 国民健康保険料も免除されるのですか。
- A. いいえ。今回の育児免除の対象は国民年金保険料のみです。国民健康保険料は別の制度であり、この免除には含まれません。なお、国民健康保険には産前産後期間の保険料軽減という別の仕組みがあり、こちらはお住まいの市区町村が窓口です。年金と健康保険は制度も窓口も分かれているため、それぞれの取り扱いを混同しないよう、分けて確認することをおすすめします。
6. 参考資料・出典
本記事は、以下の公的機関の公表資料に基づいて作成しています。制度の詳細や手続きは、必ず一次情報をご確認ください。
道濟会計事務所の税務相談
育児期間の保険料免除と確定申告への影響、個人事業主・フリーランスの社会保険と税務の最適化など、個別のご相談・具体的な実務のサポートは、当事務所へご連絡ください。初回相談は無料です。
本記事は税理士 道濟寛樹(税理士登録番号152615・近畿税理士会所属)が監修しました。
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