堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
社会保険診療報酬の所得計算の特例2026|医師の概算経費と7,000万円基準
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:個人の医師・歯科医師は、社会保険診療報酬が5,000万円以下かつ医業・歯科医業の収入金額が7,000万円以下なら、社会保険診療に係る経費を租税特別措置法第26条の規定による金額で計算できます。
- 2ポイント2:自由診療がある開業医は、共通経費を自由診療割合で按分し、措置法差額を付表で計算します。青色申告特別控除の計算方法も通常と異なります。
- 3ポイント3:年内に収入の内訳と経費の区分を整理し、実額経費と特例による経費のどちらが有利かを毎年比較してから申告方法を決めましょう。
CONTENTS目次
個人で診療所を開業している医師・歯科医師には、社会保険診療に係る必要経費を、実際にかかった経費ではなく法律で定めた方法で計算できる特例があります。いわゆる概算経費と呼ばれる、社会保険診療報酬の所得計算の特例です。実額の経費より特例による経費のほうが大きくなる年には、所得金額を小さくできます。
一方で、適用できる収入の上限があり、自由診療がある場合の按分や申告書への書き方にも決まりがあります。適用できたのに検討を怠った、という失敗は税理士の賠償事故としても報告されています。本記事では、国税庁の付表の記載要領と質疑応答事例に沿って、制度の要件、計算の流れ、実務上の注意点を整理します。
社会保険診療報酬の所得計算の特例の概要:2つの上限と対象収入
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実際の必要経費によらない計算ができる
国税庁の所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》の記載要領は、社会保険診療に係る必要経費は、実際の必要経費によらず、租税特別措置法第26条の規定により計算した金額を必要経費とすることができますと説明しています。この方法によって計算した必要経費の金額と実際の必要経費との差額を措置法差額と呼び、措置法差額がある場合は、実際の所得金額から控除することとなります。
つまり、帳簿はふだんどおり実額で付けたうえで、社会保険診療の部分についてだけ、特例による経費と実額の経費の差を最後に調整する仕組みです。特例による経費のほうが大きければ、その差額だけ所得金額が小さくなります。特例の対象は社会保険診療の部分だけであり、自由診療の部分はこれまでどおり実額で計算します。
付表《医師及び歯科医師用》は、医業又は歯科医業を営む方が収入金額の内訳を記載し、この特例を適用する場合に措置法差額を算出するために使用する書類です。青色申告者は青色申告決算書(一般用)の付表を、白色申告者は収支内訳書(一般用)の付表を使います。特例を使うかどうかにかかわらず、収入の内訳を整理する書類として毎年作成しておくと、比較の材料がそろいます。
適用できる2つの上限
この特例には収入の上限が2つあります。記載要領は、社会保険診療報酬が5,000万円を超えた場合又は医業及び歯科医業から生ずる収入金額が7,000万円を超えた場合は、租税特別措置法第26条の規定を適用できないとしています。
| 判定する金額 | 上限 | 判定に含めるもの |
|---|---|---|
| 社会保険診療報酬 | 5,000万円以下 | 社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会などの請求先ごとに集計した社会保険診療報酬 |
| 医業及び歯科医業から生ずる収入金額 | 7,000万円以下 | 付表の社会保険診療報酬欄と自由診療の収入等欄に記載される収入金額の合計額 |
7,000万円の上限は、平成25年度の税制改正で加わった要件です。国税庁が公表している法人税の通達解説の参考欄は、所得税の特例についても、その年の医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7,000万円以下であることとする改正が行われたと説明しています。
雑収入は医業収入の判定に含まれない
医業に関連して生ずる収入でも、7,000万円の判定に含めないものがあります。記載要領は、次のような収入は事業所得の雑収入となるとしたうえで、これらの収入金額は医業及び歯科医業から生ずる収入金額には含まれませんとしています。
- ☑ 貸与寝具、貸与テレビ、洗濯代等
- ☑ 医薬品の仕入れリベート
- ☑ 患者からの謝礼金等
- ☑ 電話使用料、自動販売機等の手数料
- ☑ 治療器具等の販売収入
- ☑ 地方自治体から支給される休日夜間診療等の嘱託料
これらは所得としては事業所得に含めて申告しますが、上限の判定では外して考えます。上限ぎりぎりの年は、どの収入をどの欄に記載するかで判定が変わり得るため、仕訳の段階から区分しておくことが大切です。
開業医への実務影響:自由診療割合と措置法差額の計算
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自由診療がある場合は共通経費を按分する
社会保険診療と自由診療の両方を行う診療所では、まず経費を分ける必要があります。付表の記載要領によれば、必要経費の内訳の計算は、社会保険診療報酬と自由診療収入の両方がある方で、租税特別措置法第26条の特例の適用を受ける場合に、自由診療に係る必要経費の金額と措置法差額を算出するために行います。
経費は、自由診療分と社会保険診療分とに明確に区分できる経費と、両方に共通する経費に分けます。記載要領は、明確に区分できる経費の例として、事業税(自由診療分)、第三者に委託したレセプト請求費用(社会保険診療分)、未収金を個別管理している場合の貸倒損失等を挙げています。それ以外の共通する経費は総額を計算し、自由診療割合で按分します。
収入は税引前・収入すべき金額で記載する
按分の前提となる収入の集計にも決まりがあります。記載要領によれば、社会保険診療報酬については、請求先(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会)ごとに、診療件数、診療実日数、決定点数及び振込額(税引前)を記載します。診療報酬当座口払込額欄には所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額控除前の金額を記載し、診療報酬窓口収入金額欄には、社会保険診療報酬のうち患者から窓口で収入すべき金額を記載します。窓口収入の全部又は一部について、未収又は受け取らないこととしたものがある場合でも、収入すべき金額として収入金額に含めて記載します。通帳の入金額だけで集計すると、上限の判定も特例による経費の計算も誤るおそれがあります。
自由診療割合は日数か収入で計算する
自由診療割合は、自由診療と社会保険診療のいずれに係る経費か明らかではない経費のうち、自由診療に係る部分を合理的に算出するために、診療実日数又は収入金額を用いて算出するものです。
収入金額を用いる場合には注意が必要です。記載要領は、同一の原価によって診療が行われた場合でも、一般に自由診療の方が社会保険診療よりも単価が高いため、自由診療収入による割合を用いる場合は、収入割合に以下の調整率を乗ずることにより自由診療割合を算出するとして、次の率を示しています。
| 診療科 | 収入割合に乗ずる調整率 |
|---|---|
| 眼科・外科・整形外科 | 80% |
| 産婦人科・歯科 | 75% |
| 上記以外(美容整形を除く。) | 85% |
自由診療割合(%)は小数点以下第3位まで算出し、第3位を四捨五入します。診療実日数は、外来患者の場合には通院の日(回)数、入院患者の場合には入院した日数を記載し、同一患者が1日2回通院する場合であっても1日(回)として計算します。同一の患者に対して同じ日に自由診療と社会保険診療を行った場合には、それぞれの診療実日数として加算します。
青色申告者の特典経費も按分する
青色申告者だけに認められている専従者給与の金額及び退職給与引当金勘定への繰入額についても、自由診療に係る分を自由診療割合に基づき算出します。一括評価による貸倒引当金繰入額については、12月31日現在の貸金額に基づき自由診療に係る分を区分します。家族を専従者にしている診療所では、専従者給与も按分の対象になる点を見落とさないようにしましょう。
青色申告特別控除の計算が通常と変わる
記載要領は、租税特別措置法第26条を適用した場合、青色申告特別控除額の計算の基礎となる事業所得の金額には、社会保険診療につき支払を受けるべき金額に対応する金額は含まれないとしています。そのため、措置法差額控除後の事業所得の金額から、社会保険診療報酬と特例による必要経費の金額の差を差し引いた金額を基礎として控除額を計算します。特例を使う年は、決算書2ページの青色申告特別控除額の計算欄の記載も確認が必要です。
当事務所の見解・実務上の注意点:毎年の比較と他の特例との関係
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毎年、実額と特例の両方を計算して比べる
この特例は、使えば必ず有利になるものではありません。社会保険診療に係る実際の経費が大きい年は、実額で計算したほうが所得金額は小さくなります。反対に、設備投資が一巡して実額の経費が減った年や、社会保険診療の比率が高い年は、特例のほうが有利になることがあります。
当事務所が重視しているのは、前年と同じ方法を惰性で続けないことです。適用できるのに比較をせず実額で申告し続けた結果、税理士が損害賠償を求められた事例も公表されています。開業から数年たった診療所や、承継・移転で経費の構造が変わった診療所は、毎年の決算の段階で両方の金額を並べて確認することをおすすめします。比較の結果と計算の根拠は、翌年の判断材料として申告書の控えと一緒に保管しておきましょう。
また、上限に近い診療所では、特例が使える年と使えない年が交互に生じることがあります。社会保険診療報酬が5,000万円を超える年や、医業及び歯科医業から生ずる収入金額が7,000万円を超える年は、付表の記載要領のとおりこの方法は選択できません。翌年の見込みも含めて、収入の推移を早めに把握しておくことが大切です。
特別償却とは重複しないが、税額控除は受けられる
国税庁の質疑応答事例は、この特例の適用を受ける者については、特別償却及び準備金等の租税特別措置法の規定により必要経費に算入した金額のうち、社会保険診療報酬に対応する部分の金額は、租税特別措置法第26条第1項の必要経費に算入する金額に含まれることとされているとしています(租税特別措置法施行令第18条第1項)。特例による経費と特別償却を二重に必要経費にすることはできません。
一方で、同じ事例は、この規定は税額控除までも排除しているものではないとして、特例の適用を受けた場合であっても所得税額の特別控除(租税特別措置法第10条の3第3項)の適用を受けることができると回答しています。医療機器などの設備投資を予定している年は、特別償却と税額控除のどちらを選ぶかも、この特例との関係で検討しておく必要があります。なお、この質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成されています。
医療法人にも同様の特例がある
法人成りを検討している医師は、医療法人にも同様の特例(租税特別措置法第67条)があることを知っておくとよいでしょう。国税庁の通達解説によれば、医療法人の判定に使う総収入金額からは、国庫補助金、補償金、保険金その他これらに準ずるものの収入金額、固定資産又は有価証券の譲渡に係る収益の額、受取配当金や受取利子などの営業外収益の額などが除かれます。個人と法人のどちらで診療を続けるかは、この特例の使い方も含めて試算したうえで判断しましょう。個人で開業している医師の申告については、個人事業主の確定申告サポートでもご相談をお受けしています。
今すぐやるべきこと:申告前に確認する5ステップ
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社会保険診療報酬の所得計算の特例は、申告書を作る段階で慌てて検討しても、経費の区分や按分の根拠がそろっていないと正しく計算できません。年内から次の順番で準備を進めてください。とくに経費の区分は、年が明けてから領収書をさかのぼって分けるより、日々の記帳の段階で分けておくほうが確実です。
- ステップ1:収入の内訳を2つの上限と照らし合わせる
社会保険診療報酬の金額と、医業及び歯科医業から生ずる収入金額を年の途中で集計し、5,000万円と7,000万円の上限に近づいていないかを確認します。医業に関連する雑収入は、7,000万円の判定に含めずに別に集計します。 - ステップ2:経費を3つに区分して記帳する
自由診療分と社会保険診療分に明確に区分できる経費、両方に共通する経費、自由診療に係る特定の経費を分けて記帳します。共通経費の総額が、自由診療割合による按分の出発点になります。 - ステップ3:自由診療割合の計算方法を決める
診療実日数で計算するか、収入金額に診療科ごとの調整率を乗じて計算するかを決め、計算の根拠資料を残します。割合は小数点以下第3位まで算出し、第3位を四捨五入します。 - ステップ4:実額経費と特例による経費を比較する
社会保険診療に係る実際の必要経費と、租税特別措置法第26条の規定により計算した金額を並べて比較します。前年と同じ方法を選ぶ場合でも、毎年あらためて計算してから判断します。 - ステップ5:付表と申告書の記載を確認する
付表《医師及び歯科医師用》を決算書または収支内訳書と一緒に添付し、措置法差額の記載、申告書第二表の特例適用条文等の記載、青色申告特別控除額の計算をそろえてから提出します。
申告書には適用した旨を必ず記載する
記載要領は、算出した措置法差額について、決算書の損益計算書1ページの所得金額欄の下の余白に措置法差額○○○円と記載し、申告書第二表の特例適用条文等欄に措法26と記載するよう求めています。付表は青色申告決算書(一般用)または収支内訳書(一般用)とともに申告書に添付して提出します。
記載要領は、算出した措置法差額について、決算書の損益計算書1ページの所得金額欄の下の余白に措置法差額○○○円と記載し、申告書第二表の特例適用条文等欄に措法26と記載するよう求めています。付表は青色申告決算書(一般用)または収支内訳書(一般用)とともに申告書に添付して提出します。
よくある質問
- Q. 自由診療の収入がある診療所でも、社会保険診療報酬の所得計算の特例は使えますか?
- A. 使えます。ただし、特例の対象は社会保険診療に係る部分だけで、自由診療に係る部分は実際の経費で計算します。国税庁の付表の記載要領は、両方の収入がある場合に、共通する経費を自由診療割合で按分して自由診療に係る必要経費と措置法差額を算出する手順を示しています。医業及び歯科医業から生ずる収入金額が7,000万円を超えると適用できない点にも注意してください。
- Q. 医業収入7,000万円の判定に、医薬品の仕入れリベートや自動販売機の手数料は含まれますか?
- A. 含まれません。記載要領は、貸与寝具などの収入、医薬品の仕入れリベート、患者からの謝礼金等、電話使用料や自動販売機等の手数料、治療器具等の販売収入、地方自治体から支給される休日夜間診療等の嘱託料を事業所得の雑収入とし、これらは医業及び歯科医業から生ずる収入金額には含まれないとしています。所得としては事業所得に含めて申告します。
- Q. 特例を使うと、青色申告特別控除の金額は変わりますか?
- A. 計算の基礎が変わります。記載要領によれば、租税特別措置法第26条を適用した場合、青色申告特別控除額の計算の基礎となる事業所得の金額には、社会保険診療につき支払を受けるべき金額に対応する金額は含まれません。付表で計算した金額を使い、決算書の青色申告特別控除額の計算欄で控除額を求めます。特例を使う年は、決算書2ページの記載も含めて計算をやり直す必要があります。
- Q. 特例を使っている年に医療機器を買った場合、税額控除は受けられますか?
- A. 受けられます。国税庁の質疑応答事例は、社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用を受けた場合であっても、所得税額の特別控除(租税特別措置法第10条の3第3項)の適用を受けることができるとしています。一方、特別償却などで必要経費に算入した金額のうち社会保険診療報酬に対応する部分は、特例による必要経費に含まれるため、二重に経費にすることはできません。
- Q. 医療法人にも同じ特例はありますか?
- A. あります。医療法人には租税特別措置法第67条に同様の特例があり、国税庁の通達解説によれば、平成25年度の税制改正で総収入金額が7,000万円以下であることが要件に加えられました。医療法人の総収入金額は医業活動から生じる収益の額をいい、国庫補助金、固定資産や有価証券の譲渡に係る収益、受取配当金などの営業外収益、医薬品の仕入れ割戻しの金額などは含まれないとされています。
- Q. 特例を適用するとき、申告書には何を書けばよいですか?
- A. 記載要領は、算出した措置法差額を決算書の損益計算書1ページの所得金額欄の下の余白に措置法差額○○○円と記載し、申告書第二表の特例適用条文等欄に措法26と記載するよう求めています。付表《医師及び歯科医師用》は、青色申告者は青色申告決算書(一般用)と、白色申告者は収支内訳書(一般用)とともに申告書に添付して提出します。記載漏れがないよう提出前に確認しましょう。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》記載要領(令和7年分・PDF)
- 国税庁 収支内訳書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》記載要領(令和7年分・PDF)
- 国税庁 質疑応答事例 社会保険診療報酬の所得計算の特例と中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除との適用関係
- 国税庁 法人税基本通達等の一部改正の解説 第67条《社会保険診療報酬の所得の計算の特例》関係(平成25年・PDF)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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