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社会保険料控除2026|年末調整で確認する国民年金の証明書と前納の扱い
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:社会保険料控除は、本人や生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に、その年に実際に支払った金額の全額を所得から控除できる制度です。
- 2ポイント2:年末調整では、国民年金の保険料と国民年金基金の掛金について、金額の多少に関係なく証明書類を保険料控除申告書に添付して提出又は提示する必要があります。
- 3ポイント3:前納した保険料は、各年分に相当する額を各年に控除する方法が原則で、前納の期間が1年以内のものなどは納めた年に全額控除することもできます。申告書の回収前に確認しましょう。
CONTENTS目次
年末調整の準備が本格化する時期です。従業員から回収する「給与所得者の保険料控除申告書」には、生命保険料や地震保険料と並んで、社会保険料を記入する欄があります。給与から差し引いている健康保険料や厚生年金保険料は会社側で集計できますが、従業員が自分で支払っている国民年金保険料や、家族の分を負担している保険料は、申告書と証明書類で確認しなければなりません。
本記事では、国税庁タックスアンサーNo.1130と関連Q&A、令和8年分の年末調整のしかたをもとに、年末調整で確認すべき点を整理します。
社会保険料控除の概要:対象となる保険料と控除額
社会保険料控除とは
国税庁のタックスアンサーNo.1130は、社会保険料控除について、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができると説明しています。控除できる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。生命保険料控除や地震保険料控除のような上限額はなく、支払った全額が控除の対象になる点が大きな特徴です。
対象となる社会保険料の範囲
No.1130は、社会保険料控除の対象となる社会保険料を列挙しています。中小企業の従業員や役員に関係が深いものは、次のとおりです。
- ☑ 健康保険、国民年金、厚生年金保険および船員保険の保険料で被保険者として負担するもの
- ☑ 国民健康保険の保険料または国民健康保険税
- ☑ 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
- ☑ 介護保険法の規定による介護保険料
- ☑ 雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
- ☑ 国民年金基金の加入員として負担する掛金
このほか、農業者年金の保険料、各種共済組合の掛金、労働者災害補償保険の特別加入者が負担する保険料なども対象とされています。租税条約の相手国の社会保障制度に支払った保険料のうち一定額も対象になりますが、No.1130は、この場合は確定申告書に届出書や適用証明書を添付する必要があり、年末調整で適用することはできないとしています。
年末調整での2つの区分
国税庁の令和8年分の年末調整のしかたは、社会保険料を2つに分けて説明しています。1つは、健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの保険料や掛金のように毎月の給与から差し引かれているもの、もう1つは、国民健康保険や国民年金などの保険料や保険税、掛金のように本人が直接支払っているものです。どちらも全額が控除されますが、後者については、本人から提出された保険料控除申告書の金額に基づいて控除することになります。
介護保険の保険料については、年齢40歳から64歳までの人は健康保険や国民健康保険の保険料に介護保険料相当額が含まれており、年齢65歳以上の人は原則として公的年金等から介護保険料が特別徴収されることになっていると説明されています。給与から差し引かれる介護保険料は、毎月の給与から差し引かれた社会保険料の集計に含まれます。
手続の面では、No.1130は申告先を所轄税務署または勤務先としています。給与所得者は勤務先の年末調整で、個人事業主などは確定申告で控除を受けるのが基本です。なお、源泉徴収簿では、毎月の給与から社会保険料と併せて控除される特定の小規模企業共済等掛金を合計して記入するよう、欄が「社会保険料等」とされています。
ポイント
会社が給与から差し引いた社会保険料は会社側の集計で控除されます。年末調整で漏れやすいのは、従業員が自分で支払っている国民年金保険料や国民健康保険料、家族の分を負担している保険料です。保険料控除申告書の社会保険料欄は、こうした保険料を拾うための欄です。
会社が給与から差し引いた社会保険料は会社側の集計で控除されます。年末調整で漏れやすいのは、従業員が自分で支払っている国民年金保険料や国民健康保険料、家族の分を負担している保険料です。保険料控除申告書の社会保険料欄は、こうした保険料を拾うための欄です。
中小企業への実務影響:年末調整での確認ポイント
国民年金と国民年金基金は証明書類が必要
年末調整のしかたによると、国民年金の保険料及び国民年金基金の掛金で本人が直接支払ったものについては、支払った保険料等の多少に関係なく、その保険料等を支払ったことの証明書類を保険料控除申告書に添付して提出又は提示する必要があります。ここでいう証明書類とは、厚生労働省又は各国民年金基金が発行した保険料等の領収書や証明書などをいいます。一方、それ以外の保険料等については、証明書類は必要ないとされています。国民健康保険料などは、申告書への記入で控除できます。
証明書類の交付を請求中などのため、証明書類が確認できない場合でも、翌年1月末日までに提出又は提示することを条件として社会保険料の控除をしたところで年末調整を行ってもよいことになっています。証明書類の範囲には、電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面も含まれます。また、保険料控除申告書を電子データで提供する場合は、電子証明書等が付された情報をあわせて電子データで給与の支払者に提供することができるとされています。
給与から差し引いた社会保険料の集計
会社側では、本年中に給与から差し引いた社会保険料等の総額を集計します。年末調整のしかたは、本年中に他から転職してきた人については、前の勤務先で支払を受けた給与から差し引かれた社会保険料等も含めて集計するよう求めており、前の勤務先から交付を受けた本年分の給与所得の源泉徴収票などで確認するとしています。中途入社の従業員がいる会社では、前職分の源泉徴収票の回収が欠かせません。
また、給与の支払者が負担した社会保険料等の金額で給与として課税されるべきものは、本人自身が支払ったものとして控除の対象となり、集計に含めます。本人負担分を会社が肩代わりしている場合などは、給与として課税する処理と社会保険料控除の処理が対になっているかを確認してください。
本年中に支払ったものだけが対象
年末調整のしかたは、本人が本年中に支払ったものだけが控除の対象とされるため、納付期日が到来して本年中に支払うべき保険料であっても現実に支払っていないものは含まれないとしています。逆に、No.1130のQ&Aでは、生計を一にしている子供の国民年金保険料を過去3年分まとめて支払った場合について、本年中に支払ったものであれば、過去の年分のものであっても本年分の社会保険料控除の対象になると回答しています。控除の年分は、どの年分の保険料かではなく、いつ支払ったかで決まります。
iDeCoの掛金は社会保険料ではない
保険料控除申告書には、社会保険料控除の欄の近くに小規模企業共済等掛金控除の欄があります。年末調整のしかたは、小規模企業共済等掛金として、独立行政法人中小企業基盤整備機構と契約した共済契約に基づいて支払った掛金や、確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金(iDeCo の掛金など)を挙げています。iDeCoの掛金や小規模企業共済の掛金は、社会保険料控除ではなく小規模企業共済等掛金控除の対象です。本人が直接支払った掛金には、金額の多少に関係なく証明書類が必要とされている点も、国民年金保険料と共通します。記入欄の取り違えがないかを確認してください。
個人事業主の確定申告でも同じ考え方
個人事業主や、年末調整を受けずに確定申告をする人も、社会保険料控除の考え方は同じです。No.1130は、国民年金の保険料および国民年金基金の掛金に係る社会保険料控除の適用について、証明書類を確定申告書に添付するか、申告書を提出する際に提示する必要があるとしています。そのうえで、令和8年分以後の所得税に係る確定申告書を令和9年1月1日以後に提出するときは、証明書類の添付または提示に代えて、一定の事項の記載がある明細書を確定申告書に添付することができるとしています。確定申告での準備は、個人事業主・個人の確定申告のサポートでもご相談いただけます。
当事務所の見解:家族分と前納保険料で迷いやすい点
家族の分は誰が支払ったかで判断する
社会保険料控除で最も迷いやすいのが、家族の保険料の扱いです。年末調整のしかたは、本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を本人自身が支払った場合には、その支払った金額は本人の社会保険料として控除できるとしています。たとえば、生計を一にする子の国民年金保険料を親が支払っている場合は、親の保険料控除申告書に記入して控除できます。
反対に、年金から天引きされる保険料は扱いが異なります。年金から特別徴収された介護保険の保険料及び後期高齢者医療制度の保険料については、その保険料を支払ったのは年金の受給者自身となるため、その年金の受給者の社会保険料として控除できるとされています。No.1130のQ&Aでも、扶養している妻の公的年金から介護保険料が特別徴収されている場合、夫の社会保険料控除の対象にはならないと回答しています。一方、後期高齢者医療制度の保険料を口座振替で支払った場合は、口座の名義人(被保険者または被保険者と生計を一にする配偶者その他の親族に限ります)に控除が適用されます。
また、生計を一にするかどうかの判定時期について、Q&Aは、国民年金保険料を支払った時点で判定して差し支えないとしています。年の途中で子が独立して生計が別になった場合、それ以後に親が支払った分は親の控除の対象になりません。従業員から家族分の申告があったときは、生計を一にしているかどうかを支払時点で確認してください。
前納保険料は控除の方法を選べる
翌年以後の期間の保険料をまとめて支払った前納保険料は、年末調整のしかたでは、前納保険料の総額に、本年中に到来する納付期日の回数が総回数に占める割合を掛けた金額が、本年中に支払った社会保険料となるとされています。これが各年分に相当する額を各年において控除する方法です。ただし、前納の期間が1年以内のもの及び法令に一定期間の社会保険料等を前納することができる旨の規定がある場合における当該規定に基づき前納したものについては、本人がその前納保険料の全額を保険料控除申告書に記入して申告した場合には、その全額を本年の年末調整の際に控除しても差し支えないとされています。
国民年金保険料の2年前納について、No.1130のQ&Aは、前納した2年分の全額をその支払った年分の控除の対象として差し支えなく、各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法を選択することもできると回答しています。各年に控除する方法を選ぶ場合は、各年分に対応する社会保険料控除証明書を本人が年分ごとに切り取り、保険料控除申告書に添付することになっています。どちらが有利かは従業員ごとの所得の見通しによるため、会社としては方法を選べることを周知し、記入どおりに処理することが大切です。年末調整の運用に不安がある会社は、堺市の税務顧問として当事務所がサポートします。
今すぐやるべきこと:年末調整までの確認手順
社会保険料控除は、申告書の回収と証明書類の確認が中心です。次の順に進めると、年末調整の直前に慌てずに済みます。
- ステップ1:保険料控除申告書を配付し回収期限を決める
従業員に給与所得者の保険料控除申告書を配付し、回収期限を決めます。社会保険料欄には、給与から差し引かれているもの以外の、本人が直接支払った保険料を記入するよう案内します。 - ステップ2:国民年金と国民年金基金の証明書類を確認する
国民年金の保険料と国民年金基金の掛金が記入されている場合は、金額の多少に関係なく証明書類が添付又は提示されているかを確認します。交付を請求中の場合は、翌年1月末日までに提出又は提示することを条件に控除できます。 - ステップ3:家族分と前納分の記入内容を確認する
家族の保険料が記入されている場合は、生計を一にする親族の負担すべき保険料を本人が支払ったものかを確認します。前納した保険料は、全額を本年に控除するか各年に控除するかの記入内容を確認します。 - ステップ4:給与から差し引いた社会保険料を集計する
本年中に給与から差し引いた社会保険料等の総額を集計します。中途入社の従業員は、前の勤務先の本年分の給与所得の源泉徴収票で前職分も含めて集計します。 - ステップ5:年末調整で扱えないものを従業員に伝える
租税条約の相手国の社会保障制度に支払った保険料のように、年末調整で適用できないものがある場合は、確定申告が必要になることを従業員に伝えます。
保険料控除申告書の内容について確認を終えた後は、その申告書の記載に基づいて、各人の源泉徴収簿の該当欄に社会保険料控除額などを記入します。給与から差し引いた社会保険料等の集計額と、申告書で申告された本人が直接支払った社会保険料を、それぞれ区別して記録しておくと、翌年以降に従業員から問い合わせがあったときにも確認しやすくなります。
重要
本年中に支払っていない保険料は、納付期日が到来していても控除の対象になりません。申告書に記入された金額が、本年中に実際に支払った金額かどうかを確認してください。
本年中に支払っていない保険料は、納付期日が到来していても控除の対象になりません。申告書に記入された金額が、本年中に実際に支払った金額かどうかを確認してください。
社会保険料控除についてよくある質問
- Q. 社会保険料控除に上限はありますか?
- A. 国税庁タックスアンサーNo.1130によると、控除できる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。生命保険料控除や地震保険料控除のような控除額の上限はありません。ただし、本年中に実際に支払ったものに限られ、納付期日が到来していても支払っていない保険料は含まれません。支払った年と控除する年がずれないよう注意してください。
- Q. 国民健康保険料も年末調整で証明書が必要ですか?
- A. 令和8年分の年末調整のしかたでは、証明書類が必要なのは、本人が直接支払った国民年金の保険料及び国民年金基金の掛金で、それ以外の保険料等については必要はないとされています。国民健康保険料は、保険料控除申告書に本人が支払った金額を記入すれば控除できます。なお、本人が直接支払った国民年金保険料と国民年金基金の掛金は、金額の多少に関係なく証明書類が必要です。記入された金額が本年中に実際に支払った金額かどうかは、本人に確認してもらうとよいでしょう。
- Q. 国民年金の控除証明書が年末調整に間に合わない場合はどうなりますか?
- A. 年末調整のしかたによると、証明書類の交付を請求中などのため証明書類が確認できない場合でも、翌年1月末日までに提出又は提示することを条件として社会保険料の控除をしたところで年末調整を行ってもよいことになっています。期限までに提出されない場合に備えて、回収の予定を記録しておくことをおすすめします。証明書類の範囲には、電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面も含まれます。
- Q. 子どもの国民年金保険料を親が払った場合、親の控除になりますか?
- A. 年末調整のしかたは、本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を本人自身が支払った場合には、本人の社会保険料として控除できるとしています。No.1130のQ&Aでは、生計を一にするかどうかは国民年金保険料を支払った時点で判定して差し支えないとしており、生計が別になった後に支払った分は親の控除の対象になりません。
- Q. 国民年金保険料を2年前納した場合、どの年に控除しますか?
- A. No.1130のQ&Aは、前納した2年分の国民年金保険料の全額をその支払った年分の社会保険料控除の対象として差し支えないとしています。各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法を選択することもでき、その場合は各年分に対応する社会保険料控除証明書を年分ごとに切り取って保険料控除申告書に添付します。
- Q. 妻の年金から天引きされている介護保険料は、夫の控除になりますか?
- A. No.1130のQ&Aによると、介護保険料などの社会保険料が妻の公的年金から特別徴収されている場合、その社会保険料を支払ったのは妻になるため、夫の社会保険料控除の対象にはなりません。後期高齢者医療制度の保険料を口座振替で支払った場合は、口座の名義人(被保険者または被保険者と生計を一にする配偶者その他の親族に限ります)に控除が適用されます。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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