堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
使用人兼務役員2026|賞与を損金にする要件・否認される4類型
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:役員給与は定期同額給与などに当たらなければ損金になりませんが、使用人兼務役員に対して支給する使用人としての職務に対するものは、その枠から除かれています。
- 2ポイント2:代表取締役、副社長・専務・常務等、そして同族会社で株式の所有割合の要件に当たる役員は、使用人兼務役員になれません。総務担当・経理担当という肩書も職制上の地位には当たりません。
- 3ポイント3:他の使用人の賞与支給時期に未払金として計上し、役員給与の支給時期に支払った場合は、支給時期が異なるものとして扱われます。年末の賞与を決める前に確認が必要です。
CONTENTS目次
役員に賞与を出しても損金にならない。中小企業の経営者に広く知られたルールです。ところが法人税法は、役員のうち一定の要件を満たす人については、使用人としての職務に対する部分を別枠で扱っています。これが使用人兼務役員です。年末の賞与の額を決めるこの時期に、あらためて確認しておきたい制度です。
ただし、この別枠は「役員に肩書を足せば使える」ものではありません。誰が使用人兼務役員になれるのかは法人税法施行令が限定し、その解釈を法人税基本通達が細かく示しています。判定を誤ったまま賞与を支給すると、支給した事業年度の損金が否認され、法人税と延滞税の負担が生じます。
本記事では、国税庁のタックスアンサーと法人税基本通達の原文に沿って、使用人兼務役員の判定基準を整理し、実務で否認されやすい4つの類型を具体的に示します。
制度・改正の概要
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そもそも役員とは誰か
出発点は役員の範囲です。国税庁タックスアンサーNo.5200「役員の範囲」は、役員として、まず法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人を挙げます。同ページは令和7年4月1日現在の法令等に基づくもので、根拠法令等として「法法2、法令7、71、法基通9-2-1」(法人税法第2条、法人税法施行令第7条および第71条、法人税基本通達9-2-1)を挙げています。以下、通達の本文では法人税法を「法」、法人税法施行令を「令」と略記していますので、引用の際はその表記も併記します。
ここで終わらないのが実務の難しいところです。同ページは、これ以外にも、法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事しているものが役員に当たるとし、相談役、顧問などでも、その法人内における地位、職務等からみて実質的に法人の経営に従事していると認められるものが含まれるとしています。いわゆるみなし役員です。
さらに、同族会社の使用人のうち、株主グループの所有割合に関する3つの要件をすべて満たす者で、その会社の経営に従事しているものも役員に含まれます。要件は、第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合の合計で50パーセントを超える範囲の株主グループに属していること、その使用人の属する株主グループの所有割合が10パーセントを超えていること、そしてその使用人本人(配偶者等を含みます)の所有割合が5パーセントを超えていることです。
使用人兼務役員になれない役員
役員に当たるとしても、そのうち一定のものは使用人兼務役員になれません。「令第71条第1項」(法人税法施行令第71条第1項)がこれを列挙しており、法人税基本通達が解釈を示しているのは次の3つです。
| 根拠 | 使用人兼務役員とされない役員 | 通達の要点 |
|---|---|---|
| 令71条1項1号 | 代表取締役等 | 取締役会設置会社以外の株式会社で、定款・取締役の互選・株主総会の決議により代表取締役を定めたことで代表権を有しないこととされた取締役は、第1号に該当しない(9-2-3) |
| 令71条1項2号 | 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員 | 定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等によりその職制上の地位が付与された役員をいう(9-2-4) |
| 令71条1項5号 | 同族会社の役員で所有割合の要件を満たすもの | 自らは株式又は出資を有しなくても、同族関係者が有している場合の当該役員を含む(9-2-7) |
「使用人としての職制上の地位」の意味
残った役員が使用人兼務役員になれるかどうかは、使用人としての職制上の地位があるかで決まります。法人税基本通達9-2-5は、「法第34条第6項《使用人兼務役員》」(法人税法第34条第6項)に規定する「その他法人の使用人としての職制上の地位」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等、法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいうとしています。
通達が名指しで否定している形
同じ9-2-5は続けて、「取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない」としています。担当ではなく、機構上の地位が必要だという整理です。
同じ9-2-5は続けて、「取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない」としています。担当ではなく、機構上の地位が必要だという整理です。
中小企業への実務影響
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該当すると何が変わるのか
国税庁タックスアンサーNo.5211「役員に対する給与」は、法人が役員に対して支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されない、と述べています。役員賞与が損金にならないと言われるのはこのためです。
そのうえで同ページは、この「給与」から除かれるものとして3つを挙げており、その2番目が「使用人兼務役員に対して支給する使用人としての職務に対するもの」です。つまり、使用人分の賞与は、定期同額給与にも事前確定届出給与にも当たらなくても、損金不算入の対象そのものから外れます。届出をしていなくても使用人分の賞与を支給できるのが、この制度の実務上の価値です。
ただし上限がある
No.5211 は、除かれるもののうち使用人兼務役員の使用人分については「不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されず」と明記しています。枠から外れることと、いくらでも出せることは別です。
No.5211 は、除かれるもののうち使用人兼務役員の使用人分については「不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されず」と明記しています。枠から外れることと、いくらでも出せることは別です。
いくらまでが「不相当に高額」でないのか
金額の目安は法人税基本通達9-2-23が示しています。使用人分の給与を役員給与の限度額等に含めていない法人が使用人分の給与を支給した場合、その使用人分の給与の額のうち、その使用人兼務役員が現に従事している使用人の職務とおおむね類似する職務に従事する使用人に対して支給した給与の額に相当する金額は、原則として使用人分の給与として相当な金額とする、というものです。
社内に比べる相手がいない場合の扱いも定められています。比準すべき使用人として適当とする者がいないときは、その使用人兼務役員が役員となる直前に受けていた給与の額、その後のベースアップ等の状況、使用人のうち最上位にある者に対して支給した給与の額等を参酌して適正に見積った金額によることができる、とされています。
限度額の定め方と経済的利益の扱い
あわせて押さえておきたいのが、株主総会で定める役員給与の限度額との関係です。法人税基本通達9-2-21は、法人税法施行令第70条第1号イに規定する「その役員に対して支給した給与の額」には、いわゆる役員報酬のほか、その役員が使用人兼務役員である場合に支給するいわゆる使用人分の給料、手当等を含むことに留意する、としています。
一方で9-2-22は、「使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている法人」とは、定款又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものにおいて、役員給与の限度額等に使用人兼務役員の使用人分の給与を含めない旨を定め又は決議している法人をいう、としています。含めない扱いにするには、定款または決議という形が必要だということです。
現物の利益についても定めがあります。法人税基本通達9-2-24は、法人が使用人兼務役員に対して供与した経済的な利益(住宅等の貸与をした場合の経済的な利益を除きます)が他の使用人に対して供与されている程度のものである場合には、その経済的な利益は使用人としての職務に係るものとする、としています。同じ内容は国税庁タックスアンサーNo.5202「役員等に対する経済的利益」の注書きにも置かれており、その場合の経済的な利益の額は損金の額に算入されると説明されています。
期の途中で昇格した場合の取扱い
使用人が期の途中で役員になった場合や、使用人兼務役員だった人が専務に就任した場合の賞与についても、通達に定めがあります。法人税基本通達9-2-27は、使用人であった者が役員となった場合、又は使用人兼務役員であった者が令第71条第1項各号に掲げる役員となった場合において、その直後にその者に対して支給した賞与の額のうち、その使用人又は使用人兼務役員であった期間に係る賞与の額として相当であると認められる部分の金額は、使用人又は使用人兼務役員に対して支給した賞与の額として認める、としています。
昇格のタイミングと賞与の計算期間がずれる場合でも、期間に対応する部分は使用人分として扱える余地があるということです。ただし「相当であると認められる部分」に限られるため、計算期間と在任期間の対応を説明できる資料を残しておく必要があります。
当事務所の見解・実務上の注意点
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当事務所が実際にご相談を受けるなかで、使用人兼務役員の取扱いが崩れるのは、ほぼ次の4類型に収まります。
類型1:支給時期をずらしてしまう
最も多いのがこれです。法人税基本通達9-2-26は、法人が、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期に未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合には、その賞与は、法人税法施行令第70条第3号に規定する「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」に該当することに留意する、としています。資金繰りを理由に支払だけ後ろへ回す処理が、そのまま当てはまります。賞与の支給日を役員と使用人で分けている会社では、使用人兼務役員をどちらの支給日に載せるかが毎回の論点になります。使用人分は使用人の支給日に、役員としての部分は役員の扱いに従う、という切り分けを給与計算の段階で固定しておくのが確実です。
類型2:肩書が「担当」になっている
9-2-5が名指しで否定している形です。総務担当取締役、経理担当取締役という呼び方は社内では自然ですが、通達が求めているのは支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等といった機構上の地位です。なお、事業内容が単純で使用人が少数である等の事情により職務上の地位を定めていない法人には、9-2-6の特例があり、常時従事している職務が他の使用人の職務の内容と同質であると認められるものは使用人兼務役員として取り扱うことができます。
類型3:親族の持株を見落とす
9-2-7は、自らは株式又は出資を有しないが、その役員の同族関係者が当該会社の株式又は出資を有している場合における当該役員も、令第71条第1項第5号の同族会社の役員に含まれるとしています。議決権や社員としての地位についても同様です。本人の持株がゼロだから大丈夫、という判断が通らない場面です。なお9-2-8は、第1順位の株主グループと同順位の株主グループがあるときは、それを含めたものが第1順位に該当するとしています。
類型4:使用人分が他の社員とかけ離れている
9-2-23の比準の考え方から外れる金額です。使用人分として月額の給与は他の社員並みに抑えつつ、賞与だけを大きく積むと、比準すべき使用人との差が説明できなくなります。判定の根拠となる資料は、支給時ではなく支給を決める前にそろえておくべきものです。役員報酬と賞与の設計について継続的にご相談いただける体制として、堺市の税理士による税務顧問をご用意しています。
今すぐやるべきこと
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年末の賞与支給を決める前に、次の順序で確認してください。
- ステップ1:役員一覧に「代表権」と「職制上の地位」を書き込む
登記事項と社内の呼称を並べ、代表取締役に当たる人、副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する人を先に除きます。9-2-4が示すとおり、この地位は定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものを指します。 - ステップ2:残った役員に使用人としての職制上の地位があるかを見る
支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等に当たるかを確認します。総務担当・経理担当という整理になっている場合は、9-2-5により使用人兼務役員に該当しません。組織図がない会社は9-2-6の特例の適用可否を検討します。 - ステップ3:株主名簿で同族関係者まで含めた所有割合を計算する
本人名義だけでなく、配偶者や親族など同族関係者の持分を合わせて、令第71条第1項第5号の要件に当たらないかを確認します。9-2-8の同順位の株主グループの扱いも踏まえて順位を判定します。 - ステップ4:株主総会の決議内容を確認する
役員給与の限度額に使用人分を含めない扱いにするには、9-2-22が示すとおり、定款または株主総会等でその旨を定め又は決議している必要があります。議事録にその文言があるかを確認します。 - ステップ5:他の使用人と同じ支給日に、実際に支払う
使用人分の賞与は、他の使用人への賞与の支給日に支払います。9-2-26のとおり、その時期に未払金として計上し、役員給与の支給時期に支払う処理は支給時期が異なるものとして扱われます。
確認チェックリスト
- ☑ 代表権のある役員を対象から外した
- ☑ 副社長・専務・常務等の地位が決議で付与されていないか確認した
- ☑ 使用人としての職制上の地位が支店長・工場長等に当たる
- ☑ 同族関係者を含めた所有割合を計算した
- ☑ 使用人分を限度額に含めない旨の決議がある
- ☑ 他の使用人と同じ支給日に実際に支払う段取りになっている
よくある質問
- Q. 取締役でも使用人兼務役員になれるのですか?
- A. 取締役であること自体は妨げになりません。問題になるのは、法人税法施行令第71条第1項が使用人兼務役員とされない役員として列挙しているものに当たるかどうかです。法人税基本通達9-2-3は、取締役会設置会社以外の株式会社の取締役が、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって取締役の中から代表取締役を定めたことにより代表権を有しないこととされている場合には、その取締役は同項第1号に掲げる者には該当しないことに留意する、としています。代表権の有無が一つの分かれ目になります。
- Q. 経理担当取締役は使用人兼務役員に当たりますか?
- A. 当たりません。法人税基本通達9-2-5は、法人税法第34条第6項に規定する「その他法人の使用人としての職制上の地位」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等、法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいうとしたうえで、「したがって、取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない」と明記しています。肩書の付け方だけで判定が変わる、実務上もっとも間違えやすい論点です。
- Q. 組織図がない小さな会社はどう判定すればよいですか?
- A. 法人税基本通達9-2-6に特例があります。事業内容が単純で使用人が少数である等の事情により、法人がその使用人について特に機構としてその職務上の地位を定めていない場合には、その法人の役員のうち、常時従事している職務が他の使用人の職務の内容と同質であると認められるものについては、9-2-5にかかわらず、使用人兼務役員として取り扱うことができるものとするとされています。ただし、法人税法第34条第6項括弧書に定める役員は、この特例からも除かれます。
- Q. 株式を持っていない役員なら同族会社の要件は関係ありませんか?
- A. 関係あります。法人税基本通達9-2-7は、法人税法施行令第71条第1項第5号の同族会社の役員には、自らは当該会社の株式又は出資を有しないが、その役員と同族会社の定義に規定する特殊の関係のある個人又は法人が当該会社の株式又は出資を有している場合における当該役員が含まれることに留意する、としています。議決権や社員としての地位についても同様の定めが置かれています。本人名義の株式がゼロでも、配偶者や親族の持分によって判定される点に注意が必要です。
- Q. 使用人分の賞与を未払計上して後から支払ってもよいですか?
- A. 避けるべき処理です。法人税基本通達9-2-26は、法人が、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期に未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合には、その賞与は、法人税法施行令第70条第3号に規定する「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」に該当することに留意する、としています。他の使用人と同じ時期に、実際に支払うことが前提になります。
- Q. 使用人分の給与はいくらまでなら適正と認められますか?
- A. 法人税基本通達9-2-23は、その使用人兼務役員が現に従事している使用人の職務とおおむね類似する職務に従事する使用人に対して支給した給与の額に相当する金額を、原則として使用人分の給与として相当な金額とするとしています。比準すべき使用人として適当とする者がいないときは、その使用人兼務役員が役員となる直前に受けていた給与の額、その後のベースアップ等の状況、使用人のうち最上位にある者に対して支給した給与の額等を参酌して適正に見積った金額によることができる、とされています。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5200「役員の範囲」
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
- 国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第1款「役員等の範囲」(9-2-1〜9-2-8)
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第6款「過大な役員給与の額」(9-2-21〜9-2-27)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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