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特定生産性向上設備の通達2026|9月30日公表の即時償却と取得価額判定

特定生産性向上設備の通達2026年の記事タイトルを示すアイキャッチ画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:国税庁は2026年9月30日、「法人税基本通達等の一部改正について」等の趣旨説明を公表しました。令和8年度の税制改正で創設された特定生産性向上設備等の税制について、新設通達5本の考え方が示されています。
  • 2ポイント2:影響を受けるのは、青色申告書を提出し設備投資を予定している法人です。即時償却と取得価額の7%(建物、建物附属設備及び構築物については4%)相当額の税額控除を選択できます。
  • 3ポイント3:発注前に、生産等設備に当たるか、取得価額をどの単位で判定するか、圧縮記帳をするならどちらの金額で判定するかの3点を確認してください。

設備投資の税制で経営者から多く寄せられる質問は、自社の投資が対象になるのか、金額の判定はどの単位で見るのか、補助金をもらった分はどう扱うのかの3つに集約されます。国税庁は2026年9月30日、この3つにそのまま答える資料を公表しました。令和8年6月30日付課法2-9ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)等の趣旨説明です。

注目すべきは、令和8年度の税制改正で創設された特定生産性向上設備等の税制について、新設通達5本の考え方が示された点です。条文だけでは判断がつかない論点が具体例つきで整理されています。本記事では、この5本と関連する1本を設備投資の実務に引き寄せて解説します。

特定生産性向上設備等の制度概要と今回公表された趣旨説明

制度・改正の概要|特定生産性向上設備等の税制を定める法令解釈通達を表す石柱のイラスト

2026年9月30日に公表された資料

国税庁は令和8年9月30日付で「令和8年6月30日付課法2-9ほか1課共同『法人税基本通達等の一部改正について』(法令解釈通達)等の趣旨説明」を掲載しました。資料の冒頭には「この趣旨説明は、令和8年9月4日現在の法令に基づいて作成している。」と明記されています。

内容は第1「法人税基本通達関係」と第2「租税特別措置法関係通達(法人税編)関係」に分かれます。中小企業の設備投資に直結するのが、第2の4に置かれた第42条の12の7⦅特定生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除⦆関係です。ここに並ぶ5本の新設通達は、いずれも令和8年9月4日付課法2-19ほか1課共同「租税特別措置法関係通達(法人税編)の一部改正について」(法令解釈通達)により新設されたものと注記されています。

制度そのものの骨格

趣旨説明の【制度の概要】は、令和8年度の税制改正において創設された本制度を次のように説明しています。青色申告書を提出する法人が、生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びに一定のソフトウエアで、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当するもののうち一定の規模のもの、すなわち特定機械装置等の取得等をする場合が対象です。

特定生産性向上設備等は、産競法等改正法の施行の日(令和8年7月31日)から令和11年3月31日までの指定期間内に産業競争力強化法の確認を受けたものに限られます。そのうえで、その確認を受けた日から同日以後5年を経過する日までの間に、その特定機械装置等の取得等をして、国内にあるその法人の事業の用に供したとき(貸付けの用に供した場合を除く。)に適用されます。

効果は選択制です。取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額の特別償却(即時償却)と、その取得価額の7%(建物、建物附属設備及び構築物については、4%)相当額の税額控除との選択適用ができる制度が創設された、と趣旨説明は記しています(措法42の12の7①②)。

税額控除の上限と繰越し
税額控除の適用を受ける場合における控除を受ける金額は、その事業年度の調整前法人税額の20%を上限とします(措法42の12の7②)。また、認定国際経済事情激変事業適応計画に特定生産性向上設備等を導入する旨の記載があるものに係る税額控除限度超過額は、3年間の繰越しができることとされています(措法42の12の7③)。

資産区分ごとの取得価額要件

通達42の12の7-2の解説は、措令27の12の7②が定める一定の規模を資産区分ごとに整理しています。

資産区分取得価額要件
機械及び装置1台又は1基の取得価額が160万円以上
工具、器具及び備品1台又は1基の取得価額が120万円以上(40万円以上のもので、同一の投資計画に記載されたものの取得価額の合計額が120万円以上である場合を含む)
建物一の取得価額が1,000万円以上
建物附属設備・構築物一の取得価額が120万円以上(建物附属設備は60万円以上のもので、同一の投資計画に記載されたものの取得価額の合計額が120万円以上である場合を含む)
ソフトウエア一の取得価額が70万円以上

なお、通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものは、一組又は一式が1台又は1基に当たると注記されています。

中小企業への実務影響・新設通達が答えた3つの論点

中小企業への実務影響|生産等設備を構成する機械及び装置の取得価額判定を表す歯車のイラスト

論点1:本店や社用車は生産等設備ではない

通達42の12の7-1は、生産等設備の範囲を明らかにしています。生産等設備とは、例えば、製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗又は自動車整備業を営む法人の作業場のように、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいう、とされています。

そして通達は、したがって、例えば、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは、これに該当しない、と明示しました。解説は、これらが経営統括、従業員の利便、従業員の確保といった目的のために通常用いられるものであり、直接的な付加価値の生成や収益の稼得に関係するものというよりは、間接的に寄与するものに該当するためと説明しています。

ただし救いもあります。通達の注書は、一棟の建物が本店用と店舗用に供されている場合など、減価償却資産の一部が法人の生産等活動の用に直接供されているものについては、その全てが生産等設備となることに留意する、としています。解説は共用資産の他の例として、工場施設内に社員食堂が常設されている場合を挙げています。

論点2:取得価額は通常1単位として取引される単位で見る

通達42の12の7-2は、取得価額要件の判定単位を定めています。本文は、機械及び装置又は工具、器具及び備品の取得価額が160万円以上又は120万円以上であるかどうかについては、通常1単位として取引される単位ごとに判定するのであるが、個々の機械及び装置の本体と同時に設置する自動調整装置又は原動機のような附属機器で当該本体と一体になって使用するものがある場合には、これらの附属機器を含めたところによりその判定を行うことができる、としています。

本体だけでは基準額に届かないが附属機器を合わせれば届く、というケースで適用の可否が変わります。解説は、取得価額が40万円以上で合計額により判定する工具又は器具及び備品も同様に扱える、と補足しています。

論点3:圧縮記帳をしたら圧縮後の金額で判定する

補助金を受けて設備を導入する法人に最も影響が大きいのが通達42の12の7-3です。結論は明快で、その減価償却資産が法人税法上の圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、その圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行うものとする、とされました。

解説は、法人税法上の圧縮記帳の適用を受けた減価償却資産については、圧縮記帳後の金額を取得価額とするものとされており(令54③)、本制度の適用に当たっても同様に取り扱うのが相当である、と理由を示しています。この場合には、特別償却限度額又は税額控除限度額の計算の基礎となる取得価額も、圧縮記帳後の金額となります。

措置法上の圧縮記帳との違いに注意
解説は、本制度と法人税法上の圧縮記帳とは重複適用が可能であることを前提にしたうえで、本制度と措置法上の圧縮記帳とは重複適用できないこととされていることから(措法65の7⑦等)、措置法上の圧縮記帳の適用を受けた減価償却資産についてはこのような問題は生じない、としています。どちらの圧縮記帳かで結論が変わります。

加えて解説は、措置法通達42の6~47(共)-3の2の本文⑵では、本制度における法人税額の特別控除の適用を受ける場合の取得価額について、供用年度後の事業年度において法人税法上の国庫補助金等の圧縮記帳の適用を受けることが予定されている場合には、交付予定金額を控除した金額によることとしている、と述べています。補助金の入金が翌期にずれ込む場合でも、交付予定金額を織り込んで判定します。

当事務所の見解・貸付けの例外と中小企業者の判定

当事務所の見解|貸付けの例外と中小企業者の判定時期を確認することを表す虫眼鏡のイラスト

外注先に機械を貸しても「貸付け」にならない場合がある

本制度には、貸付けの用に供した場合を除くという条件が付いています。やっかいなのが、外注先に金型や機械を預けて加工してもらう取引です。通達42の12の7-4はこの点に答えました。

本文は、法人が、その取得又は製作若しくは建設をした特定機械装置等を委託先に貸与した場合において、当該特定機械装置等が専ら当該法人のためにする製品の加工等の用に供されるものであるときは、当該特定機械装置等は当該法人の営む事業の用に供したものとして取り扱う、としています。

解説は理由をこう説明します。一口に貸付けといっても、その貸付けをするに至った事情や貸付けの態様には様々なものがあり、これを一律に本制度の対象外とすることについては、やや問題がある。特に、法人が専属の委託先に対してその製品の加工等を委託するために貸し付ける特定機械装置等については、その実態は、当該法人が自ら事業の用に供しているものとみる余地がある、という整理です。

ただし条件は二つあります。一つは専ら当該法人のためにする製品の加工等の用に供されること。もう一つは場所です。解説は、本制度は特定機械装置等を国内にある当該法人の事業の用に供した場合に適用があることから、本通達の取扱いについても、委託先が事業の用に供する場所は国内に限定されることとなる点に注意が必要である、としています。海外の委託先に貸与した場合は対象外です。

中小企業者は不適用措置の対象外

趣旨説明は、本制度における特別償却又は税額控除限度額に係る税額控除は、法人(中小企業者(適用除外事業者又は通算適用除外事業者に該当するものを除く。)又は農業協同組合等を除く。)の一定の要件のいずれかに該当しない事業年度については、適用できないこととされている、と述べています(措法42の12の7⑧)。

裏を返せば、中小企業者であればこの不適用措置にかからないということです。ここが中小企業にとって最大の実務的メリットです。不適用措置の要件は、継続雇用者給与等支給額の増加割合が1%(一定の場合には2%)以上であること、または国内資産の取得価額の合計額が当期の償却費として損金経理をした金額の合計額の30%(一定の場合には40%)相当額を超えることとされています。

では自社が中小企業者に当たるかはいつ判定するのか。通達42の12の7-5は、措置法第42条の12の7第8項の規定の適用に当たっては、42の13-2から42の13-10までの取扱いを準用する、としました。解説によれば、措置法通達42の13-2では、通算法人以外の法人にあっては当該法人の事業年度終了の日の現況によることが明らかにされています。期中に資本金を動かす予定がある法人は、この判定時期を押さえておく必要があります。

同じ趣旨説明には、中小企業技術基盤強化税制に関する通達42の4(3)-1の改正も収められています。解説は、令和8年度の税制改正において中小企業技術基盤強化税制について繰越税額控除制度が創設されたことを背景に挙げ、中小判定の時期を整理しています。研究開発と設備投資の両方を進める法人は、制度ごとに判定の基準日が異なり得る点に注意してください。判断に迷う場合は顧問税理士によるサポートのなかで、投資計画の段階から確認することをおすすめします。

今すぐやるべきこと・発注前に確認する6ステップ

今すぐやるべきこと|産業競争力強化法の確認から5年という期限を表す砂時計のイラスト

この制度は発注後に気づくと手遅れになりがちです。投資計画の段階で次の順に確認してください。

  1. ステップ1:投資予定の資産を生産等設備かどうかで仕分ける
    工場、店舗、作業場など生産等活動の用に直接供される資産と、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設を分けます。本店用と店舗用に共用する建物は全てが生産等設備です。
  2. ステップ2:資産区分ごとの取得価額要件に当てはめる
    機械及び装置は160万円以上、工具・器具及び備品と建物附属設備・構築物は120万円以上、建物は1,000万円以上、ソフトウエアは70万円以上が基準です。
  3. ステップ3:附属機器の扱いを決める
    本体と同時に設置する自動調整装置や原動機のような附属機器で、本体と一体になって使用するものがあれば、これらを含めて判定できます。見積明細の切り方を確認してください。
  4. ステップ4:補助金を受けるなら圧縮後の金額で再判定する
    法人税法上の圧縮記帳を適用する場合は、圧縮記帳後の金額で取得価額要件を判定します。供用年度後に国庫補助金等の圧縮記帳が予定されている場合は、交付予定金額を控除した金額によります。
  5. ステップ5:産業競争力強化法の確認のスケジュールを逆算する
    指定期間は令和8年7月31日から令和11年3月31日までです。確認を受けた日から同日以後5年を経過する日までの間に取得等をして事業の用に供する必要があります。
  6. ステップ6:不適用措置に当たらないかを確認する
    中小企業者(適用除外事業者又は通算適用除外事業者に該当するものを除く。)であれば不適用措置の対象外です。該当しない場合は、給与等支給額と国内設備投資額の要件を期末の現況で判定します。
あわせて整えておきたい資料

  • ☑ 投資計画に記載した資産の一覧(合計額で判定する資産がどれかを明示)
  • ☑ 本体と附属機器の内訳がわかる見積書・請求書
  • ☑ 補助金の交付決定通知と交付予定金額のわかる資料
  • ☑ 委託先に貸与する資産の契約書(専属性と所在地がわかるもの)

判定の前提になるのは固定資産台帳の精度です。資産区分や取得価額の内訳が曖昧では、この6ステップのどこかで止まります。記帳・経理代行で台帳を整えることが、設備投資の意思決定を速くします。

特定生産性向上設備等の税制についてよくある質問

Q. 本社ビルを建て替える場合、この制度は使えますか?
A. 通達42の12の7-1は、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは生産等設備に該当しないと明示しています。したがって本店の機能のみを有する建物は対象外です。ただし同通達の注書は、一棟の建物が本店用と店舗用に供されている場合など、減価償却資産の一部が生産等活動の用に直接供されているものはその全てが生産等設備となるとしています。店舗や作業場を併設する計画なら検討の余地があります。
Q. 1台では基準額に届かない設備を複数まとめて買えば対象になりますか?
A. 原則は通常1単位として取引される単位ごとの判定です。ただし工具又は器具及び備品については、1台又は1基の取得価額が40万円以上のもので、特定生産性向上設備等の投資計画と同一の投資計画に記載されたものの取得価額の合計額がそれぞれ120万円以上である場合に、一定の基準額以上のものに含むこととされています。建物附属設備にも、一の取得価額が60万円以上のもので同様の要件が置かれています。投資計画への記載が前提です。
Q. 補助金をもらって機械を買う場合、圧縮記帳と併用できますか?
A. 通達42の12の7-3の解説は、本制度と法人税法上の圧縮記帳とは重複適用が可能であるとしています。ただし取得価額要件の判定は圧縮記帳後の金額で行い、特別償却限度額又は税額控除限度額の計算の基礎となる取得価額も圧縮記帳後の金額です。一方、本制度と措置法上の圧縮記帳とは重複適用できないこととされています(措法65の7⑦等)。どちらを使うのかを先に決めてください。
Q. 即時償却と税額控除はどちらを選ぶべきですか?
A. 制度上は、取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額の特別償却と、取得価額の7%(建物、建物附属設備及び構築物については、4%)相当額の税額控除との選択適用です。税額控除には、その事業年度の調整前法人税額の20%という上限があります。どちらが有利かは当期と翌期以降の課税所得の見通しで変わるため、決算前の試算をおすすめします。
Q. 協力会社に機械を貸して加工してもらう場合は対象外になりますか?
A. 通達42の12の7-4により、委託先に貸与した場合であっても、当該特定機械装置等が専ら当該法人のためにする製品の加工等の用に供されるものであるときは、当該法人の営む事業の用に供したものとして取り扱われます。ポイントは専らという限定です。また解説は、委託先が事業の用に供する場所は国内に限定されることとなる点に注意が必要であると述べています。海外の協力会社への貸与は対象外です。
Q. 期中に増資する予定があります。中小企業者の判定はいつ行いますか?
A. 通達42の12の7-5は、措置法第42条の12の7第8項の規定の適用に当たっては、42の13-2から42の13-10までの取扱いを準用するとしています。解説によれば、措置法通達42の13-2では、通算法人以外の法人にあっては当該法人の事業年度終了の日の現況によることが明らかにされています。期末時点の判定になるため、増資のタイミングによっては不適用措置の対象に変わります。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。

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