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インボイス経過措置|2026年10月から80%が70%控除に変更

2026.05.20
インボイス経過措置|2026年10月から控除割合が80%から70%に縮小することを示すアイキャッチ画像

この記事の要点3点

  • 令和8年(2026年)10月1日から、免税事業者などからの仕入れに係るインボイス経過措置の控除割合が80%から70%に縮小します。その後も令和10年10月に50%、令和12年10月に30%へ段階的に下がります。
  • 当初は令和8年10月から50%へ一気に下がる予定でしたが、令和8年度税制改正で引き下げ幅が緩和され、経過措置の終了も令和13年9月まで2年延長されました。
  • 免税事業者との取引が多い事業者は確実にコスト増になります。年間の仕入額に応じた負担増を試算し、会計システムの控除割合設定の更新を早めに進めましょう。

令和8年(2026年)10月から、免税事業者などからの仕入れに関するインボイス制度の経過措置が見直されます。これまで認められてきた80%の控除割合が70%に下がり、その後も段階的に縮小していきます。当初の予定では令和8年10月から50%まで一気に下がるはずでしたが、令和8年度税制改正により引き下げ幅が緩和されました。とはいえ、免税事業者との取引が多い事業者にとっては、確実にコスト増につながる改正です。本記事では、堺市の道濟会計事務所が、控除割合のスケジュール、具体的な負担額の試算、経理実務での対応ポイントを税理士の視点で解説します。

インボイス経過措置の見直しの概要

そもそも経過措置とは何か

インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、原則として適格請求書発行事業者が発行したインボイスを保存しなければ、仕入税額控除を受けられません。しかし、免税事業者や登録をしていない事業者、消費者などは適格請求書発行事業者ではないため、これらの相手からの仕入れは、本来であれば一切控除できないことになります。

そこで、制度開始による急激な負担増を和らげるために設けられているのが「経過措置」です。これは、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できるとする激変緩和措置です。仕入税額相当額とは、たとえば税込110万円の仕入れであれば、そのうち消費税分に相当する10万円(110分の10)を指します。この10万円の一定割合を控除できる、というのが経過措置の仕組みです。

この経過措置の影響を受けるのは、本則課税(一般課税)で消費税を申告している事業者のうち、免税事業者などからの仕入れがある事業者です。建設業の一人親方、フリーランスのデザイナーやライター、小規模な個人商店など、年間の課税売上高が1,000万円以下で免税事業者にとどまっている取引先は今も数多く存在します。こうした相手と取引している限り、経過措置の控除割合の変化は自社の納税額に直接はね返ってきます。なお、簡易課税制度や2割特例を選択して申告している事業者は、仕入れの実額にかかわらず売上から納税額を計算するため、この経過措置の影響を受けません。自社がどの方法で消費税を申告しているかを、まず確認しておきましょう。

令和8年度税制改正による控除割合の見直し

改正前の経過措置は、令和5年10月から令和8年9月までが80%控除、令和8年10月から令和11年9月までが50%控除で、その後は控除できなくなる予定でした。つまり令和8年10月の時点で、80%から50%へ一気に30ポイント下がる設計だったのです。

令和8年度税制改正では、この引き下げ幅が緩和され、適用期限も2年延長されました。改正後の控除割合は次のとおりです。

期間控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日仕入税額相当額の30%
令和13年10月1日以降控除不可

当初の予定(令和8年10月から50%)と比べると、令和8年10月以降の控除割合が70%に引き上げられ、さらに50%・30%という段階を踏んでから令和13年10月に控除不可へと移行します。急激な負担増を避けるための見直しといえますが、80%から70%への縮小自体は予定どおり令和8年10月に行われる点に変わりはありません。

あわせて、経過措置の終了時期も見直されました。改正前は令和11年9月末で経過措置が終了する予定でしたが、改正後は令和13年9月末まで、約2年延長されています。これは、免税事業者との取引体制を見直すための時間的な猶予が広がったことを意味します。とはいえ、最終的に控除ができなくなる方向性そのものは変わっていません。延長された期間を「先送りの期間」ではなく「準備の期間」として使えるかどうかが、事業者ごとの差になります。

一の事業者から1億円を超える場合の新ルール

あわせて見落とせないのが、対象金額に関するルールの見直しです。令和8年10月以降の70%・50%・30%控除については、一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年(個人事業者)または事業年度(法人)で1億円を超える場合、その超えた部分の課税仕入れには経過措置を適用できません。改正前はこの基準が10億円でしたが、1億円に引き下げられました。特定の免税事業者から多額の仕入れを行っている場合は、この基準に注意が必要です。

中小企業への実務影響と負担額の試算

「80%が70%に下がる」と聞いても、ピンとこない方は少なくありません。ここでは、実際にいくらの負担増になるのかを具体的な数字で確認します。

具体的な負担額をシミュレーションする

免税事業者から、税込110万円(うち消費税相当額10万円)の仕入れを行ったケースで考えます。控除できる金額と、控除できずにコストとして残る金額は次のように変化します。

控除割合控除できる金額控除できずに残る負担
80%(令和8年9月まで)8万円2万円
70%(令和8年10月から)7万円3万円
50%(令和10年10月から)5万円5万円
30%(令和12年10月から)3万円7万円

この例では、80%から70%への縮小により、税込110万円の仕入れ1件あたり1万円の負担増となります。仮に免税事業者からの年間の仕入れが税込1,100万円(消費税相当額100万円)であれば、控除割合が10ポイント下がることで年間およそ10万円の負担増になる計算です。免税事業者である一人親方や個人の外注先との取引が多い建設業・サービス業などでは、影響がより大きくなります。

さらに重要なのは、この負担増が一度きりで終わらないという点です。控除割合は令和10年10月に50%、令和12年10月に30%へと段階的に下がっていきます。先ほどの年間仕入れ税込1,100万円のケースでは、80%の時期に20万円だった控除できない負担が、70%で30万円、50%で50万円、30%で70万円へと増えていきます。今は70%への変更だけに目を向けがちですが、その先の縮小スケジュールまで見据えて、取引先構成や外注のあり方を中期的に検討しておくことが、結果的に負担を抑えることにつながります。

業種による影響の差も押さえておきたいところです。建設業や運送業のように個人事業者への外注比率が高い業種、士業やコンサルティングなど個人の専門家へ業務を委託する機会が多い業種では、免税事業者からの仕入れが積み上がりやすく、負担増の絶対額も大きくなります。一方、仕入先の大半が法人で適格請求書発行事業者となっている業種では、影響は限定的です。自社がどちらに近いかを、取引先リストから把握しておきましょう。

ポイント
負担増の規模は「免税事業者からの年間仕入額 × 消費税相当割合 × 下がった控除割合」で概算できます。まずは自社の免税事業者からの仕入額を把握することが、影響を見積もる第一歩です。

令和8年10月1日をまたぐ取引の取扱い

実務で迷いやすいのが、令和8年10月1日をまたぐ時期の取引です。控除割合は、原則として課税仕入れを行った日(取引が行われた日)で判定します。したがって、令和8年9月30日までに行った課税仕入れは80%、令和8年10月1日以後に行った課税仕入れは70%が適用されます。月をまたぐ請求などでは、いつの取引として処理するのかを請求書や納品の事実に基づいて整理しておく必要があります。

帳簿・請求書の保存要件

経過措置の適用を受けるには、一定の事項が記載された請求書等の保存に加えて、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載することが必要です。多くの会計ソフトでは「80%控除対象」といった区分で入力する運用になっていますが、令和8年10月以降は「70%控除対象」へと区分や税率設定を切り替える必要があります。設定を変えないまま入力を続けると、控除額の計算を誤るおそれがあるため注意が必要です。

重要
会計システムの控除割合の設定変更を忘れると、令和8年10月以降の仕入税額控除を多く計上してしまい、消費税の申告誤りにつながります。10月をまたぐ前に、システムの設定とマスタの確認を必ず行ってください。

当事務所の見解・実務上の注意点

70%への引き上げは「猶予」であって「恩恵」ではない

今回の改正は、当初予定の50%から70%へと控除割合が引き上げられたため、一見すると納税者に有利な見直しに思えます。しかし、80%から70%へ下がる事実は変わらず、その後も50%・30%と縮小し、最終的には控除できなくなる流れは維持されています。改正の本質は「負担増のペースが緩やかになった」ことであり、負担増そのものがなくなったわけではありません。70%という数字は対応の時間的猶予を与えてくれたものと捉え、この期間に取引体制を整えることが重要です。

免税事業者の取引先とどう向き合うか

経過措置の縮小は、買い手側のコスト負担として表面化します。だからといって、免税事業者との取引を一律に打ち切る、あるいは値下げを強要するといった対応は、独占禁止法や下請法の観点から問題となるおそれがあります。大切なのは、取引先ごとに、その仕事の重要性や代替可能性、価格への影響を踏まえて冷静に方針を整理することです。取引先に適格請求書発行事業者への登録を一方的に求めるのではなく、登録した場合の双方の影響を共有しながら話し合う姿勢が望まれます。

経理処理とシステム設定の前倒し対応を

当事務所がご相談を受けるなかでも、控除割合の変更時期に会計ソフトの設定が追いつかず、申告直前に修正に追われるケースが見られます。令和8年10月は決して遠い先の話ではありません。免税事業者からの仕入れの洗い出し、会計システムの区分設定の見直し、経理担当者への周知を、夏のうちから順に進めておくことをお勧めします。早めに着手すれば、負担額の見通しも立てやすくなります。

とくに、事業年度の途中で令和8年10月をまたぐ法人では、同じ事業年度のなかに80%控除の取引と70%控除の取引が混在することになります。会計ソフトの設定変更のタイミングを誤ると、月次の試算表の段階で消費税額がずれ、決算で大きな修正が必要になりかねません。経理処理のルールを事前に文書化し、担当者間で共有しておくことが、こうした混乱を防ぐうえで有効です。判断に迷う取引が出てきた場合は、自己流で処理せず、早い段階で顧問税理士に確認することをお勧めします。

今すぐやるべきこと

令和8年10月の控除割合の変更に向けて、次のステップで準備を進めてください。

  1. ステップ1:登録のない取引先を洗い出す
    仕入先・外注先のうち、適格請求書発行事業者の登録番号がない相手をリスト化します。免税事業者かどうかが不明な取引先には、登録状況の確認を行います。
  2. ステップ2:免税事業者からの年間仕入額と負担増を試算する
    登録のない取引先からの年間仕入額を集計し、控除割合が80%から70%へ下がることによる負担増の概算額を把握します。
  3. ステップ3:会計システムの控除割合設定を確認・更新する
    使用している会計ソフトで、経過措置の控除割合をどの区分で入力しているかを確認し、令和8年10月以降は70%へ切り替えられるよう準備します。
  4. ステップ4:帳簿・請求書の保存と記載をチェックする
    経過措置の適用に必要な請求書等の保存と、帳簿への適用を受ける旨の記載が漏れなく行われているかを点検します。
  5. ステップ5:取引先との取引方針を整理する
    取引先ごとに、取引の重要性や価格への影響を踏まえ、今後の取引方針を整理します。価格交渉を行う場合は、下請法などに配慮した進め方を確認します。

よくある質問

Q. インボイスの経過措置とは何ですか。
A. 免税事業者など適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、本来は受けられない仕入税額控除を、仕入税額相当額の一定割合だけ認める激変緩和措置です。制度開始による急激な負担増を和らげる目的で設けられています。
Q. 80%控除はいつまで使えますか。
A. 80%控除が使えるのは令和8年9月30日までの課税仕入れです。令和8年10月1日以後の課税仕入れは70%控除に縮小し、その後も令和10年10月に50%、令和12年10月に30%へ段階的に下がり、令和13年10月1日以降は控除できなくなります。
Q. 令和8年10月1日をまたぐ取引は80%と70%のどちらですか。
A. 控除割合は、原則として課税仕入れを行った日で判定します。令和8年9月30日までに行った課税仕入れは80%、令和8年10月1日以後に行った課税仕入れは70%が適用されます。月をまたぐ取引は、いつの取引にあたるかを請求や納品の事実に基づいて整理してください。
Q. 1億円を超える場合のルールとは何ですか。
A. 令和8年10月以降の70%・50%・30%控除については、一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円を超える場合、その超えた部分の課税仕入れには経過措置を適用できません。改正前の基準は10億円でした。
Q. 経過措置の適用に必要な書類や帳簿の記載は何ですか。
A. 一定の事項が記載された請求書等の保存に加えて、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載することが必要です。多くの会計ソフトでは「70%控除対象」などの区分で入力します。割合の変更にあわせて区分設定を更新してください。
Q. 売り手側の2割特例とは違うのですか。
A. 別の制度です。本記事の経過措置は、買い手が免税事業者などからの仕入れについて控除を受けられる仕組みです。一方、2割特例は、免税事業者から課税事業者になった売り手側が、納付税額を売上税額の2割に軽減できる制度で、立場も対象も異なります。混同しないよう注意してください。
Q. 免税事業者の取引先にはどう対応すべきですか。
A. 取引先ごとに、取引の重要性や価格への影響を踏まえて方針を整理することが基本です。取引の打ち切りや一方的な値下げ要請は、独占禁止法や下請法上の問題となるおそれがあります。登録を求める場合も、双方の影響を共有しながら話し合う姿勢が望まれます。

参考資料・出典

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本記事は道濟会計事務所が監修しました。





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