堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
インボイス未登録先への支払い2026|2%値下げ交渉と70%控除の実務
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:インボイス未登録の取引先への支払いは、支払った消費税相当額の80%しか控除できません。同じ金額を払うと本体価格の2%だけ自社の負担が増えます。
- 2ポイント2:この80%控除は2026年9月30日で終了し、10月1日以後の課税仕入れから70%控除に下がります。負担を揃える値下げ幅は約2%から約3%へ拡大します。
- 3ポイント3:値下げの要請は、控除できない分の範囲内で必ず協議・合意のうえ行ってください。一方的な通告は独占禁止法や取適法に触れるおそれがあります。
CONTENTS目次
外注先や個人事業主への支払いで「この人はインボイスを出せないのですが、どう処理すればいいですか」というご相談を数多くいただきます。インボイス未登録の相手に支払っても、いま全額が無駄になるわけではありません。経過措置によって支払った消費税相当額の80%は控除でき、実際に増える負担は本体価格のわずか2%です。ところがこの80%控除は2026年9月30日で終わり、10月1日以後の取引からは70%控除に下がります。負担差は本体価格の3%に広がり、値下げをお願いする場合の適正な幅も変わります。本記事では、増える負担額の計算方法、釣り合う値下げ率、そして交渉時に独占禁止法・取適法で問題とならないための進め方を、堺市の税理士が実務目線で整理します。
80%控除の仕組みと2026年10月からの新スケジュール
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そもそも消費税はどう計算されるのか
会社が納める消費税は、売上で預かった消費税から、仕入れや外注費などの支払いの際に払った消費税を差し引いて計算します。この差し引きを仕入税額控除といいます。
納める消費税 = 売上で預かった消費税 - 支払った消費税(仕入税額控除)
この「支払った消費税」を差し引くためには、原則として支払先からインボイス(適格請求書)を受け取って保存する必要があります。インボイスを発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけです。免税事業者や、課税事業者でも登録していない事業者は発行できません。
したがって未登録の相手への支払いは、本来この差し引きが一切できません。ただし制度開始による急激な負担増を避けるため、経過措置として当面は支払った消費税相当額の一定割合を控除できることとされています。これが実務で「80%控除」と呼ばれているものです。
令和8年度税制改正で控除割合のスケジュールが変わった
この経過措置は、当初は2026年10月1日から50%に下がり、2029年10月1日以後は控除できなくなる予定でした。しかし令和8年度税制改正(改正法は2026年3月31日成立)で、小規模な事業者への配慮から縮小のペースがなだらかにされ、適用期限も2年延長されました。財務省の資料でも「令和8年10月からは7割、令和10年10月からは5割、令和12年10月からは3割と段階的に縮減していき、令和13年9月末をもってその適用を終了する」と説明されています。
| 期間(課税仕入れを行った日) | 控除できる割合 | 改正前の予定 |
|---|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80%(現在) | 80%(変更なし) |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% | 50% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% | 50%(2029年9月まで) 以後は控除なし |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% | 控除なし |
| 2031年10月1日以後 | 控除なし | 控除なし |
改正前の予定と比べて有利になるのは、控除率が50%ではなく70%になる2026年10月から2028年9月までの2年間と、改正前なら控除できなくなっていた2029年10月から2031年9月までの2年間です。2028年10月から2029年9月までは改正前と同じ50%で、この期間だけは変わりません。一方で、経過措置そのものが2031年9月末で確実に終わることも同時に決まりました。「いずれなくなる制度」という前提は変わっていません。
大口取引には年1億円の上限が新設された
年間1億円超の部分は経過措置が使えなくなります
一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額が、その年またはその事業年度で1億円(税込。改正前は10億円)を超える場合、超えた部分については経過措置の適用を受けられません。この改正は2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額が、その年またはその事業年度で1億円(税込。改正前は10億円)を超える場合、超えた部分については経過措置の適用を受けられません。この改正は2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
ここでいう1億円は、支払先ごとに判定します。特定の未登録事業者に年間1億円を超えて支払っているようなケースは限られますので、通常の規模の取引であれば気にする必要はありません。ただし特定の外注先に業務を集中させている場合は、事業年度単位で支払額を把握しておくと安心です。
中小企業への実務影響|2%値下げで負担が釣り合う理由
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本体価格10万円の外注費で比べてみる
言葉だけでは実感しにくいので、本体価格10万円(消費税10%)の外注費を支払う場合で比較します。自社は原則課税(本則課税)で消費税を計算しているものとします。
| A:登録事業者に支払い | B:未登録・値下げなし | C:未登録・本体2%値下げ | |
|---|---|---|---|
| 本体価格 | 100,000円 | 100,000円 | 98,000円 |
| 支払額(税込) | 110,000円 | 110,000円 | 107,800円 |
| 控除できる消費税 | 10,000円(全額) | 8,000円(80%) | 7,840円(80%) |
| 実質負担(支払額−控除額) | 100,000円 | 102,000円 | 99,960円 |
| Aとの差 | 基準 | +2,000円 | ▲40円 |
Bのケースで控除できない消費税は、10,000円×20%=2,000円です。これは本体価格10万円のちょうど2%にあたります。つまり未登録の相手に支払うと「本体価格の2%」だけ余計な負担が発生する、という関係になります。だから本体価格を2%下げてもらえば、増えた負担がほぼ打ち消されるのです。
厳密に一致させる値下げ率は1.96%ですが、実務上は「2%」でほぼ同水準です(本体10万円あたりの差は40円)。交渉の場では端数のない2%のほうが説明しやすく、相手の理解も得やすくなります。
2026年10月からは「約3%」が目安になる
控除率が70%に下がると、控除できない消費税は10,000円×30%=3,000円、つまり本体価格の3%に増えます。同じ相手に同じ金額を支払っていても、10月を境に負担が1%分だけ重くなるということです。控除率ごとの負担増と、登録事業者と負担を揃えるために必要な値下げ率をまとめると次のとおりです。
| 期間 | 控除率 | 値下げなしの負担増 (本体10万円あたり) | 負担を揃える 本体価格の値下げ率 |
|---|---|---|---|
| 〜2026年9月30日 | 80% | +2,000円(+2%) | 約2%(厳密1.96%) |
| 2026年10月1日〜 | 70% | +3,000円(+3%) | 約3%(厳密2.91%) |
| 2028年10月1日〜 | 50% | +5,000円(+5%) | 約4.8%(厳密4.76%) |
| 2030年10月1日〜 | 30% | +7,000円(+7%) | 約6.5%(厳密6.54%) |
| 2031年10月1日〜 | なし | +10,000円(+10%) | 約9.1%(厳密9.09%) |
切り替わりは支払日ではなく取引日で判定する
実務で間違えやすいのが、80%と70%の切り替わりの判定時期です。基準になるのは支払日や請求書の日付ではなく、課税仕入れを行った日、つまり商品の引渡しやサービスの提供が完了した日です。9月中に納品や作業完了があれば、支払いが10月にずれ込んでも80%控除で処理します。逆に10月に入ってからの取引は、9月中に前払いしていても70%控除です。9月と10月をまたぐ請求書は、日付ごとに区分して集計する必要があります。
そもそも影響を受けない会社もある
ここまでの話は、自社が原則課税で消費税を計算していることが前提です。簡易課税制度や2割特例を選択している場合、納税額は売上から計算するため、支払先がインボイス登録しているかどうかで納税額は変わりません。値下げ交渉をする理由もないことになります。まず自社がどの計算方法かを確認してから動いてください。
また、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、少額特例により税込1万円未満の課税仕入れであればインボイスがなくても帳簿の保存だけで全額控除できます。この特例は2029年9月30日までの取引に適用されます。少額の支払いが中心の外注先であれば、相手が未登録でも実質的な影響はありません。日々の記帳でこの判定を正しく行うことが重要になりますので、記帳・経理代行のサポートもあわせてご検討ください。
当事務所の見解|値下げ交渉で越えてはいけない一線
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「2%下げてください」は言い方を間違えると法令違反になる
負担が増えるのは事実ですから、取引先に価格の見直しを相談すること自体は正当な行為です。公正取引委員会も、双方が納得したうえでの合意であれば、仕入税額控除ができない分に相当する範囲内で価格を見直すことは独占禁止法上問題とならないという考え方を示しています。
問題になるのは進め方です。控除できない分を大きく超える値下げを一方的に押し付けたり、形式的に協議しただけで自社の都合のみを理由に著しく低い価格を設定したりすると、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となるおそれがあります。「登録しないなら取引をやめる」と一方的に通告するのも同様です。実際に公正取引委員会は、インボイス制度に関連して事業者に注意を行った事例を公表しています。
2026年1月から下請法は「取適法」になりました
製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などで資本金や従業員数の要件に当てはまる取引は、取適法(中小受託取引適正化法)の対象にもなります。2026年1月1日施行の改正で、従来の買いたたきの禁止に加えて、相手から価格の協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決めること自体が禁止されました。協議を明示的に拒む場合だけでなく、求めを無視したり先延ばしにして協議を困難にさせた場合も違反になります。
製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などで資本金や従業員数の要件に当てはまる取引は、取適法(中小受託取引適正化法)の対象にもなります。2026年1月1日施行の改正で、従来の買いたたきの禁止に加えて、相手から価格の協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決めること自体が禁止されました。協議を明示的に拒む場合だけでなく、求めを無視したり先延ばしにして協議を困難にさせた場合も違反になります。
交渉の記録を残すことが最大の防御になる
実務でお勧めしているのは、口頭のやり取りで終わらせないことです。値下げをお願いする場合は、なぜ2%(10月以降は約3%)なのかという計算根拠を示した資料を用意し、協議の場を設け、説明した内容と合意の経緯をメールや覚書の形で残してください。「一方的に決めたのではなく、根拠を示して協議し、合意した」という記録があれば、後から取引条件を問われても説明ができます。逆にいえば、記録がない状態での価格改定はリスクが残ります。
値下げだけが解決策ではない
控除率が下がるほど必要な値下げ幅は大きくなり、相手の手取りへの影響も無視できなくなります。2031年10月以降は約9%の値下げでようやく釣り合う計算です。取引先に9%の値下げをお願いし続けるのは現実的ではありません。長期的には、支払先にインボイス登録を検討してもらう、業務範囲や単価を含めて取引条件全体を見直す、といった判断が必要になります。相手が登録すれば相手には消費税の納税義務が生じますので、こちらの都合だけで押し切らず、相手の事情も踏まえて時間をかけて話し合うべきテーマです。
なお、控除できない消費税相当額は支払額の一部として法人税・所得税の計算上は経費(または資産の取得価額)になります。したがって法人税まで考慮した最終的な負担差は、上の表の金額よりやや小さくなります。自社の税率をふまえた実質負担の試算については、堺市の税務顧問サービスでも個別にご相談を承っています。
今すぐやるべきこと|9月末までの5ステップ
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2026年9月30日まで残りわずかです。次の順番で確認を進めてください。
- ステップ1:自社の消費税の計算方法を確認する
原則課税か、簡易課税か、2割特例か。簡易課税・2割特例であれば取引先の登録状況は納税額に影響しないため、以降の対応は不要です。 - ステップ2:未登録の支払先をリストアップする
会計ソフトの取引先マスタで登録番号が未入力の先を抽出し、年間の支払額を集計します。影響額の大きい順に対応を検討します。 - ステップ3:影響額を計算する
本体価格の2%(2026年10月以降は3%)が増える負担額の目安です。少額特例の対象となる税込1万円未満の支払いが中心であれば、影響はありません。 - ステップ4:必要なら協議の場を設ける
値下げをお願いする場合は、計算根拠を示したうえで協議し、合意内容をメールや覚書で残します。一方的な通告は避けてください。 - ステップ5:9月と10月をまたぐ取引を仕分けする
納品日・作業完了日で80%と70%を区分し、経理担当者と会計ソフトの税区分設定を確認しておきます。
経理処理で忘れてはいけない要件
経過措置の適用を受けるには、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨(「80%控除対象」など。2026年10月以後は「70%控除対象」)を記載し、相手からの請求書・領収書を保存しておく必要があります。インボイスである必要はなく、日付・内容・金額・相手の氏名などが記載された通常の書類で構いません。未登録の相手からの請求書・領収書も必ず保存してください。
経過措置の適用を受けるには、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨(「80%控除対象」など。2026年10月以後は「70%控除対象」)を記載し、相手からの請求書・領収書を保存しておく必要があります。インボイスである必要はなく、日付・内容・金額・相手の氏名などが記載された通常の書類で構いません。未登録の相手からの請求書・領収書も必ず保存してください。
- ☑ 自社の消費税の計算方法(原則課税・簡易課税・2割特例)を確認した
- ☑ 未登録の支払先と年間支払額を把握した
- ☑ 増える負担額(本体価格の2%)を計算した
- ☑ 値下げを相談する場合は協議の記録を残す準備をした
- ☑ 9月末をまたぐ取引の区分ルールを経理担当者と共有した
- ☑ 帳簿への「80%控除対象」の記載と請求書の保存ができている
よくある質問
- Q. 取引先に「インボイスに登録してほしい」とお願いしてもよいですか?
- A. 登録を要請すること自体は問題ありません。ただし、登録しなければ取引を打ち切ると一方的に通告したり、それに近い形で圧力をかけたりすると、独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となるおそれがあります。相手が登録すれば消費税の納税義務が生じ、事務負担も増えます。相手の事情を聞いたうえで、あくまで協議として進めてください。
- Q. 2%の値下げをお願いするのは買いたたきになりませんか?
- A. 控除できない分に相当する範囲内で、双方が納得して合意した価格改定であれば、独占禁止法上問題とならないとされています。2%は控除できない消費税額そのものですから、範囲内といえます。問題になるのは、この範囲を大きく超える値下げを一方的に押し付ける場合や、協議の求めに応じないまま代金を決める場合です。必ず根拠を説明し、合意の経緯を記録に残してください。
- Q. 9月に納品されたものの請求書が10月に届きました。80%と70%のどちらですか?
- A. 80%控除で処理します。判定の基準は請求書の日付でも支払日でもなく、課税仕入れを行った日、つまり商品の引渡しや役務の提供が完了した日です。9月中に納品や作業完了があれば、請求や支払いが10月以降になっても80%控除の対象になります。逆に10月以降の取引は、前払いしていても70%控除です。月をまたぐ継続的な業務委託では、9月分と10月分を請求書上で明確に分けてもらうよう、あらかじめ取引先に依頼しておくと経理処理がスムーズになります。
- Q. 少額特例が使えるなら、経過措置のことは考えなくてよいですか?
- A. 税込1万円未満の課税仕入れについてはそのとおりです。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、帳簿の保存だけで全額控除できます。ただしこの特例は2029年9月30日までの取引が対象です。また1万円以上の支払いには使えませんので、支払額の大きい外注先については経過措置の話が残ります。なお1万円未満かどうかは一回の取引の税込金額で判定し、商品一つごとの金額では判定しません。
- Q. 控除できなかった消費税は経費にできますか?
- A. できます。控除できない消費税相当額は支払対価の一部として扱われ、法人税・所得税の計算上は経費(資産を購入した場合はその取得価額)に含まれます。したがって表に示した負担増の金額がそのまま最終的な損失になるわけではなく、法人税等の税率分だけ実際の負担は小さくなります。
- Q. 経過措置はいつまで続きますか?延長される可能性はありますか?
- A. 令和8年度税制改正により、2031年9月30日をもって終了することが決まっています。2031年10月1日以後は、未登録の相手への支払いについて仕入税額控除が一切できなくなります。今回の改正で当初予定より2年延長されましたが、制度としての終了時期が法律で定められている以上、いずれ対応が必要になる前提で取引条件を考えておくことをお勧めします。
参考資料・出典
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(四 消費課税 2 適格請求書等保存方式に係る経過措置の見直し)
- 財務省「特集 令和8年度税制改正(国税)等について」
- 国税庁「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」特設サイト
- 国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」
- 公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」
- 中小企業庁「取引適正化・価格転嫁対策」
本記事は2026年8月6日時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。個別の取引条件や自社の消費税の計算方法によって結論が変わりますので、実際の判断にあたっては顧問税理士にご確認ください。
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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