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教育資金一括贈与は2026年3月で終了|既拠出分の取扱いと中小経営者の代替5策

2026.05.27
教育資金一括贈与の非課税措置 2026年3月終了と代替策のアイキャッチ
この記事の要点3点

  • ポイント1:教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、令和8年(2026年)3月31日の拠出をもって新規受付が終了しました(令和8年度税制改正大綱で延長されないことが確定)。
  • ポイント2:同日までに金融機関の専用口座へ拠出された資金は引き続き非課税扱いですが、受贈者30歳到達時の残額には贈与税、契約期間中に贈与者が死亡した場合の管理残額には相続税が課されます。
  • ポイント3:今後の世代間資金移転は、暦年贈与(年110万円基礎控除)、相続時精算課税(年110万円基礎控除+累計2,500万円特別控除)、その都度贈与(教育費・生活費の非課税)、生命保険、結婚・子育て資金一括贈与の代替5策を組み合わせて設計します。

令和8年度税制改正大綱において、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(租税特別措置法第70条の2の2)は「延長せずに終了する」ことが明記されました。令和8年(2026年)3月31日までに金融機関の教育資金管理契約に基づき拠出された分は引き続き非課税扱いとなりますが、同年4月1日以後の新規拠出は不可能です。本記事では、中小企業経営者や個人事業主の方が「すでに孫名義で拠出済みのご家庭」「これから検討していたご家庭」のそれぞれの立場で押さえるべき残額管理ルールと、代替となる5つの贈与・資産移転手法を、税理士の実務目線で解説します。

教育資金一括贈与の非課税措置 制度概要と終了の確定

制度の根拠と非課税限度額

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、平成25年4月1日に創設された租税特別措置法第70条の2の2に基づく制度です。受贈者1人あたり1,500万円(このうち学校等への支払いに充てる分が1,500万円まで、学習塾・習い事など学校等以外への支払い分は500万円まで)について贈与税が非課税となります。受贈者の人数は限定されておらず、1人の祖父母から複数の孫それぞれに1,500万円ずつ拠出することも可能でした。資金は信託銀行・銀行・証券会社に開設する教育資金管理契約口座に一括拠出し、受贈者が必要に応じて領収書を提出して払い出す形で運用されます。

対象となる教育資金の範囲

非課税の対象となるのは、(1) 学校等(幼稚園・小学校・中学校・高校・大学・大学院・専門学校・保育所など)に直接支払う入学金・授業料・施設整備費・受験料・在学証明書発行手数料・通学定期券代・留学渡航費など、(2) 学校等以外への支払いとして、学習塾・水泳教室・ピアノ教室・スポーツ少年団・絵画教室など指導者に直接支払う費用、教科書・制服・通学かばんなど学校等が業者からの購入を必要と指示したもの、です。なお(2)の学校等以外への支払いは、受贈者1人あたり500万円が上限となります。

受贈者・拠出者の要件

受贈者(孫・子)は、教育資金管理契約を締結する日において30歳未満であることが要件です。また、平成31年4月1日以降の拠出分については、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合、本制度の適用を受けることができません。拠出者は受贈者の直系尊属に限定され、父母・祖父母・曾祖父母などが該当します。叔父・叔母は直系尊属に該当しないため対象外です。

令和8年3月31日で新規拠出が終了

令和8年度税制改正大綱(令和7年12月公表)では、当該非課税措置について「令和8年3月31日までとされている教育資金管理契約に基づく信託等可能期限を延長せずに終了することとし、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用できることとする」と明記されました。これにより、令和8年4月1日以後は金融機関の教育資金管理契約に基づく新規拠出ができなくなりました。利用が伸び悩んでいたこと、富裕層に偏った利用実態であったこと、教育費の都度贈与は本来非課税であることなどが終了理由として指摘されています。

既拠出分の継続適用と契約終了事由

令和8年3月31日までに拠出された資金は、その契約が継続している間は引き続き非課税の対象です。教育資金管理契約は、(1) 受贈者が30歳に到達したとき、(2) 受贈者が死亡したとき、(3) 口座等の残高が0となり受贈者と取扱金融機関との間で終了の合意があったとき、のいずれかで終了します。なお23歳以上30歳未満の受贈者については、学校等以外(塾・習い事など)への支払いは原則として教育資金とは認められず、引き続き500万円枠で対応できる教育訓練給付金の対象講座受講料などに限定されています。

中小企業経営者・個人事業主への実務影響

既拠出分の残額管理が重要に

中小企業経営者・個人事業主のご家庭では、後継候補となるお子様・お孫様の教育資金として本制度を利用された方が一定数おられます。新規拠出ができなくなった現在、最も注意すべきは「すでに拠出された残額の管理」です。残額がある状態で次のいずれかの事由が発生すると、税負担が発生します。

事由残額の取扱い税目
受贈者が30歳に到達残額に贈与税課税(一般税率)贈与税
受贈者が23歳以上で、学校等以外の支払いに使えなくなる残額は使途が制限される直ちに課税はされないが運用制限
契約期間中に贈与者(祖父母等)が死亡管理残額を相続財産に加算(孫等の場合は相続税の2割加算あり)相続税
受贈者が死亡残額に贈与税は課税されない課税なし

30歳到達時の贈与税負担は大きい

残額に対する贈与税は、一般税率(特例税率ではなく贈与者・受贈者の関係を問わず適用される税率体系)が適用されるため、思いのほか重い負担となります。たとえば残額500万円の場合、一般税率では基礎控除110万円を差し引いた課税価格390万円に対して、20%の税率と25万円の控除額を適用し、贈与税は53万円となります。残額1,000万円の場合は基礎控除後の課税価格890万円に対して40%税率・125万円控除を適用し、贈与税は231万円となります。教育のために贈与したはずの資金から大きく目減りすることになります。事業承継候補のお孫様が大学院進学・留学・専門資格取得などで教育費を使い切る計画を、契約終了前に立てておくことが極めて重要です。30歳到達日が学生身分のままで継続する事情(在学・教育訓練給付対象講座の受講中など)がある場合は、40歳まで契約を延長できる例外規定もありますが、適用要件は厳密に確認する必要があります。

事業承継・相続資産設計への影響

中小企業経営者の方にとって、教育資金一括贈与は「孫世代への計画的な資産移転」と「相続時の財産圧縮」を同時に達成できる珍しい制度でした。1,500万円という限度額は、暦年贈与の年110万円を約14年分まとめて非課税で動かせる計算となり、相続発生までの期間が読みづらい高齢オーナーにとって貴重な選択肢でした。終了により、後継者となるお子様・お孫様への資金援助は、暦年贈与(年110万円基礎控除)、相続時精算課税(令和6年改正で年110万円基礎控除が新設・累計2,500万円特別控除)、その都度の教育費・生活費贈与(民法上の扶養義務に基づく贈与は本来非課税)、生命保険を活用した相続税対策、結婚・子育て資金一括贈与(こちらは令和9年3月31日まで存続予定)など、複数の手法を組み合わせて再設計する必要があります。事業承継税制(特例承継計画)の活用と合わせ、自社株対策と個人資産対策を並走で進めることが現実的な解決策となります。

地方の同族会社オーナーで特に注意すべき論点

堺市・大阪府内の中小企業オーナー様のご相談では、(a)自社株評価と退職金・生命保険の組み合わせで相続税対策をしてきた、(b)孫名義の教育資金贈与口座を複数開設している、というケースが少なくありません。今回の制度終了により、(a)自社株対策の進度に対して個人資産側の世代間移転手段が一つ減ったこと、(b)既存口座の残額管理が新たな実務負担として加わったこと、の二点に注意が必要です。法人税の中間納付や決算対策に追われる経営者の方ほど、個人側の贈与スケジュールの見直しが後回しになりがちですが、終了の影響は10年単位の資産移転計画に効いてくるため、できるだけ早期の戦略再構築が望まれます。

当事務所の見解・実務上の注意点

「終了済み」の今こそ既拠出分の出口設計を

令和8年4月1日時点で本制度を新規利用することはできません。当事務所では、すでに教育資金管理契約を結ばれているご家庭については、ただちに金融機関から残高証明書を取り寄せ、(a)現在の残額、(b)受贈者の年齢と30歳到達までの残期間、(c)在学予定の学校等のスケジュール、(d)留学・大学院・専門学校進学の予定、を一覧化することを推奨しています。30歳到達時の課税を避けるためには、対象となる教育費の領収書をこまめに金融機関に提出し、残額を計画的に取り崩していく作業が不可欠です。

「都度贈与」の実務的な使い分け

制度終了後の現実的な代替策として最も有効なのは、扶養義務者からの教育費・生活費の都度贈与です。民法上、直系血族・兄弟姉妹間には扶養義務があり、これに基づく必要な範囲内の贈与は本来贈与税の対象外(相続税法第21条の3第1項第2号)です。授業料・入学金・教材費・下宿代などを、必要なタイミングで必要額だけ祖父母から振り込む形であれば非課税となります。ただし、「一括で渡してまとめて使う」「使途を限定せず本人の預金口座に振り込む」といった運用は、贈与税の課税対象と認定されるリスクがあるため、振込タイミングと領収書の保存に留意が必要です。

暦年贈与・相続時精算課税の併用設計

令和6年1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が創設されました。教育費の都度贈与でカバーしきれない部分や、後継者へのまとまった資金援助は、(a) 暦年贈与(生前贈与加算期間が令和6年改正で順次7年に延長された点に注意)、(b) 相続時精算課税(年110万円までは相続財産に持ち戻し不要・申告不要)の使い分けが鍵となります。当事務所では、相続発生まで7年超の余命が見込まれる現役世代は暦年贈与中心、60代後半以降や健康状態に懸念のある方は相続時精算課税中心、というのが概ねの目安と考えています。ただし、これは画一的な解ではなく、後継者の人数・自社株評価額・他の財産構成(不動産・金融資産の比率)によって最適解は変動するため、必ず税理士による個別シミュレーションを実施したうえで意思決定することをお勧めします。

今すぐやるべきこと(代替策5ステップ)

  1. ステップ1:既拠出分の残高棚卸し
    金融機関の教育資金管理契約口座から最新の残高証明書と入出金履歴を取り寄せ、受贈者(孫等)の年齢、契約終了予定年(30歳到達日)、想定される今後の教育費スケジュールを一覧化します。23歳以上の受贈者については、学校等以外の支払いの制限を確認します。
  2. ステップ2:都度贈与スキームへの切替え
    令和8年4月以降の新規教育費は、扶養義務に基づく「その都度贈与」で対応します。入学金・授業料・教材費・下宿費用などの請求書発生時に、祖父母から学校または受贈者の口座へ必要額だけ振り込む運用に切り替えます。振込明細と領収書は7年間保存します。
  3. ステップ3:暦年贈与の生前贈与加算期間に注意して再設計
    令和6年1月1日以後の贈与については、相続発生時の生前贈与加算期間が3年から段階的に7年に延長されました。年110万円基礎控除の暦年贈与を活用する場合、相続発生までの想定期間を踏まえ、贈与のタイミングと贈与契約書の整備を行います。
  4. ステップ4:相続時精算課税の届出を検討
    60代後半以降の祖父母から後継候補の孫へまとまった資金援助を行う場合、相続時精算課税制度の選択届出書を税務署に提出し、年110万円基礎控除+累計2,500万円特別控除を活用します。同制度を一度選択すると暦年贈与へ戻れない不可逆な選択であることに注意します。
  5. ステップ5:結婚・子育て資金一括贈与・生命保険・事業承継税制の組み合わせ
    受贈者が18歳以上50歳未満の場合は、結婚・子育て資金の一括贈与(受贈者1人あたり1,000万円・うち結婚関係300万円まで)の活用が検討可能です。あわせて、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)と事業承継税制(特例承継計画)を統合した出口戦略を、税理士と一緒に設計します。

よくある質問

Q. 令和8年4月以降、すでに孫名義で開設している教育資金管理契約に追加で拠出することはできますか?
A. 追加拠出はできません。令和8年3月31日が新規拠出(追加拠出を含む)の最終受付日であり、同年4月1日以後は新規・追加いずれの拠出も認められません。すでに口座にある残額の取り崩し(教育費への充当)と領収書の提出は引き続き可能です。
Q. 受贈者である孫が30歳になったとき、残額にどれくらいの贈与税がかかりますか?
A. 残額から基礎控除110万円を差し引いた額に対し、一般税率が適用されます。残額300万円なら贈与税19万円、500万円なら53万円、1,000万円なら177万円が概算です。在学中に教育費に充当するか、大学院進学・留学等で取り崩す計画を立てることが重要です。
Q. 教育資金管理契約の期間中に祖父が亡くなった場合、残額にはどんな課税がありますか?
A. 死亡時の管理残額は、原則として相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。受贈者が孫の場合は、相続税額の2割加算の対象になる点にも注意が必要です。ただし受贈者が23歳未満であるなど一定の要件を満たす場合は加算が免除されるケースもあります。
Q. 教育費を必要な都度祖父母から振り込んでもらう「都度贈与」は本当に非課税ですか?
A. 扶養義務者間の通常必要と認められる教育費・生活費の贈与は、相続税法第21条の3により非課税です。ただし、「一括で渡して本人が運用する」「使途が明確でない振込み」は課税対象となるリスクがあります。授業料・教材費の領収書と振込明細を時系列で保存することが安全策です。
Q. 結婚・子育て資金の一括贈与は今後も利用できますか?
A. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置は、令和9年3月31日まで存続する予定です。受贈者18歳以上50歳未満(前年合計所得1,000万円以下)、限度額1,000万円(結婚関係300万円まで)が主な要件です。後継候補の若年層への資金援助手段として有効ですが、こちらも将来的な制度変更可能性は否定できません。
Q. 相続時精算課税を一度選択すると、その後の贈与は全部精算課税扱いになりますか?
A. はい。相続時精算課税は贈与者ごとに選択でき、一度選択すると当該贈与者からの贈与は以後すべて精算課税扱いとなり、暦年課税には戻れません。令和6年1月以後は年110万円の基礎控除が創設され、基礎控除内の贈与は相続財産に持ち戻されない設計に改善されたため、活用可能性が広がっています。

参考資料・出典

道濟会計事務所の税務相談

教育資金一括贈与の残額管理、代替となる暦年贈与・相続時精算課税・事業承継税制の最適な組み合わせは、ご家族の構成・財産規模・後継者の年齢によって最適解が異なります。当事務所では中小企業オーナー様の世代間資産移転戦略を、税務・会計の両面から個別にサポートしています。初回相談は無料です。

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本記事は道濟会計事務所が監修しました。





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