堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
リファンド方式|2026年11月施行 中小免税店の対応5ステップ
この記事の要点3点
- ポイント1:外国人旅行者向け消費税免税制度が、2026年11月1日から「リファンド方式」に全面切替(経過措置なし)
- ポイント2:影響を受けるのは免税許可を得ている中小小売店・百貨店・ドラッグストア等の事業者。レジ運用・購入記録情報の電子送信・税関確認情報の受領体制の整備が必要
- ポイント3:許可要件追加に合わせ、システム改修と従業員教育を2026年夏までに完了させることが現実的なリミット
外国人旅行者向けの消費税免税制度が、2026年11月1日から従来の「販売時免税方式」から「リファンド方式」へと全面的に切り替わります。中小企業庁・観光庁・国税庁の公表資料によれば、現行制度との併用期間は設けられず、その日を境に運用が一変します。本記事では、堺市内で複数の小売顧問先から相談を受けている道濟会計事務所が、改正の根拠条文と国税庁公表のQ&Aに基づいて、中小免税店事業者が今から準備すべき実務ポイントを5つのステップで解説します。販売時の経理処理、購入記録情報の電子送信、税関確認情報の受領、消費税相当額の返金実務、そして11月以降の月次クロージングの流れまで、現場で発生する論点を網羅します。
制度・改正の概要
令和7年度税制改正により、輸出物品販売場(いわゆる免税店)における消費税の免税方式が「リファンド方式」へと見直されました。根拠条文は消費税法第8条および租税特別措置法であり、施行日は令和8年(2026年)11月1日です。国税庁は2025年4月1日付で「輸出物品販売場制度に関する取扱通達」の改正と「リファンド方式・概要編Q&A」を公表しており、現時点で最も信頼できる一次情報となっています。
現行制度との違い
従来の制度(販売時免税方式)は、免税対象者であることを店舗が確認した時点で税抜価格で販売し、購入記録情報を国税庁の免税販売管理システムに送信する仕組みでした。リファンド方式では、まず税込価格で販売したうえで、購入者が出国時に税関で持出確認を受け、その情報が事業者に届いた後に消費税相当額を返金します。免税が成立するタイミングが「販売時」から「税関での持出確認後」へと後ろにずれる、これが制度の核となる変更点です。
主要な要件の変更
| 項目 | 現行(〜2026年10月31日) | リファンド方式(2026年11月1日〜) |
|---|---|---|
| 免税が成立する時点 | 販売時に税抜販売 | 税関での持出確認後 |
| 一般物品と消耗品の区分 | あり(消耗品は特殊包装が必要) | 区分廃止・特殊包装不要 |
| 同一店舗・同日の購入下限 | 税抜5,000円以上 | 税抜5,000円以上(維持) |
| 消耗品の同日上限 | 税抜50万円 | 上限撤廃 |
| 出国期限 | 購入日から30日以内 | 購入日から90日以内 |
| 事業者の許可要件 | 免税販売管理システム接続 | 同左+税関確認情報受領体制 |
制度切替の背景
背景には、免税で購入した物品が国内に転売される「免税不正転売」が10年以上にわたり深刻化していた事情があります。会計検査院や国税庁の公表資料によれば、本来は国外へ持ち出されるはずだった物品が日本国内のフリマアプリやリサイクルショップに流れ、消費税が事実上脱漏する事案が相当数発生していました。悪質な免税転売を抑止するため、出国確認を経て初めて免税効果を確定させる仕組みが選ばれた、というのが今回の制度設計の柱です。一方、訪日消費の利便性向上として、消耗品と一般物品の区分廃止・特殊包装の廃止・購入日からの出国期限を30日から90日に延長するなど、購入者側のメリットも盛り込まれています。観光庁の試算では、消耗品の購入上限撤廃により1取引あたりの平均購買額が現行比で15〜25%程度伸びる可能性が示唆されており、事業者にとっては運用負荷が増す一方、訪日客の購買単価上昇が期待される改正でもあります。
移行期間と例外
注意すべきは、現行制度とリファンド方式の併用は認められない点です。2026年10月31日までに販売した分は現行制度、11月1日以後の販売はリファンド方式と明確に区切られます。10月末に販売した商品については、出国確認の有無に関わらず、現行制度に基づき販売時の免税が成立しているため、追加の返金対応は発生しません。一方、現に免税店許可を受けている事業者であっても、リファンド方式に対応する追加的な許可要件(後述)を満たさなければ、11月1日以降に免税販売を継続できません。
中小企業への実務影響
影響を受けるのは、免税店許可を受けているすべての事業者です。具体的には百貨店・家電量販店・ドラッグストア・化粧品店・土産物店・ホテル併設店舗などに加え、近年急増した手続委託型カウンターを利用するモール内テナントも対象に含まれます。中小規模の事業者ほど、システム改修と運用変更のインパクトが相対的に大きくなる傾向があります。
1. レジ運用とPOSシステムの改修
最大の論点はPOSとレジ運用です。現行は「免税扱いで税抜販売」という1ボタン処理が、リファンド方式では「税込販売→後日返金」という2段階処理に変わります。POSベンダーは2026年夏までに新方式対応のアップデートを順次配信する見込みですが、中小事業者が独自開発のPOSを使っている場合、改修費用が数十万円〜数百万円規模になる可能性があります。複数店舗を持つ法人ほど、早期にベンダーへのヒアリングが必要です。
2. 購入記録情報・税関確認情報の電子フロー
リファンド方式では、販売時に作成する「購入記録情報」を国税庁の免税販売管理システムに送信し、出国時に税関が「税関確認情報」を返送します。事業者はこの2つの情報を突き合わせ、確認済みのものについてのみ消費税相当額を返金します。返金前の段階では税込で売上計上し、確認情報受領後に売上値引(または雑収入)として消費税相当額を減額するか、消費税の課税仕入として処理するかの会計方針を、税理士と相談のうえ統一しておく必要があります。
3. 返金実務とキャッシュフロー
消費税相当額の返金方法は、現金・クレジットカード払戻し・電子マネー・キャッシュレス決済アプリなど複数の選択肢が認められる見込みです。重要なのは、返金が完了するまで事業者がいったん消費税相当額を立て替える格好になる点です。仮に1日100万円(税抜)の免税売上があれば、消費税相当額10万円(標準税率10%適用時)の運転資金を最長90日間程度寝かせる必要があり、零細事業者ほどキャッシュフローへの影響が大きくなります。返金原資の管理口座を別途設けて入出金を可視化する、あるいは月次の返金見込額に基づき短期運転資金枠を金融機関と事前協議しておく、といった備えが現実的な対応となります。クレジットカードへの返金を選んだ場合、決済代行会社の月末締めサイクルとの整合性、為替差損益の取扱(外貨建てクレカへの返金)、返金手数料の負担者(事業者か消費者か)といった論点も、事前に契約面で整理しておくべきです。
4. 許可申請の追加要件
現在免税店許可を有していても、リファンド方式に対応する体制を整備していなければ、2026年11月1日以後は免税販売を行えません。国税庁の公表通達によれば、許可要件に「免税販売手続および購入記録情報の提供、税関確認情報の受領を適正に実施するための体制が整備されていること」が新たに追加されています。具体的にはシステム接続契約・従業員研修記録・返金管理マニュアルの整備等を備えていることを確認できる書類を整える必要があります。
5. 月次・年次の経理処理
「販売時に税込売上→後日返金で減算」という流れは、月をまたぐ取引が必ず発生します。9月末決算法人を例にすると、9月25日の販売分は10月の出国確認となり、9月時点の売上計上と消費税相当額の取扱が決算をまたぎます。決算月の月末近くに免税販売が集中する小売業者は、決算修正仕訳の煩雑化を覚悟する必要があります。販売記録と返金記録を取引別に紐づけるサブシステム(連番管理)が事実上必須です。
当事務所の見解・実務上の注意点
道濟会計事務所がここ半年で受けた相談から見えてきた、現場の落とし穴を3点に絞って共有します。
見解1:システム改修の見積もりは2026年6月までに取る
POSベンダーは2026年夏に対応アップデートを集中投入することが見込まれます。発注が秋にずれ込むと、8〜10月の繁忙期に間に合わないリスクが高まります。複数店舗で多種POSを使っているケースは、店舗ごとに対応スケジュールが異なる点も注意が必要です。当事務所の小売顧問先は、すでに5月時点でベンダーから見積もりを取得し、夏前の検証期間を確保するスケジュールで動いています。免税売上が年商の10%を超える事業者は、システム改修だけでなく、現金返金時の防犯対策(高額返金時の管理者承認フロー等)も同時に設計してください。
見解2:会計処理は「税込売上+雑損失」と「返金時の課税仕入」の2案
リファンド方式における会計処理は、論点が確定していない領域です。A案は税込で売上を計上し、確認情報受領後に売上値引で減額する方法、B案は税込で売上計上後、確認情報受領時に消費税の課税仕入を立てて控除する方法です。A案は売上高が実態に近く管理しやすい一方、B案は消費税額の計算が現行制度に近く、税効果の計算がシンプルです。当事務所では、月100件以上の免税販売がある事業者にはA案、年数十件規模の小規模事業者にはB案を推奨しています。決算期の途中で会計方針を変えると勘定残高が混乱するため、2026年11月の運用開始前に方針を固定してください。
見解3:訪日客の購買単価が変わる前提でマーケティング戦略を見直す
消耗品50万円上限の撤廃と、一般物品との区分廃止は、高単価の化粧品・健康食品・嗜好品セット販売の追い風になります。家電量販店や百貨店ではすでに「リファンド方式 対応店」表記の準備と、訪日客向けバンドル販売のテストを始めているとの報道があります。中小小売業者も、自店の主力商品が「消耗品」「一般物品」のどちらに該当していたかを棚卸しし、上限撤廃の効果を最大化する商品ラインの再編を検討する余地があります。具体的には、これまで50万円上限で頭打ちになっていた業態(化粧品店・酒類専門店・健康食品店)では、訪日客が滞在中に一度の購買でまとまった金額をまとめ買いするケースが増えると見込まれ、棚割りや在庫補充頻度の再検討が必要になります。なお、税関確認後の返金は事業者の信用力にもつながるため、「いつ・どの方法で返金されるか」を多言語で説明する案内表記を整備すると顧客満足度が向上します。返金完了までの想定日数(通常90日以内、ただし出国後即時のケースもある旨)を、購入時のレシート裏面や案内カードに明記しておくと、後日の問合せ件数を確実に減らせます。
今すぐやるべきこと
免税店として2026年11月1日以降も営業を継続する事業者が、今から踏むべき5つのステップを示します。
- ステップ1:現在の免税売上高と取引件数を把握する(2026年6月まで)
過去12カ月の免税売上高・取引件数・1取引あたり平均単価を集計します。これが投資対効果の判断基準になります。年間免税売上が年商の5%未満であれば、リファンド方式対応をやめて免税許可を返納する選択肢も含めて検討します。 - ステップ2:POSベンダーからリファンド方式対応の見積もりを取得(2026年6〜7月)
初期費用(システム改修・周辺機器追加)と月額運用費(クラウド接続・税関確認情報の受信機能)を分けて把握します。複数店舗があれば店舗別の改修コストを比較し、フランチャイズ等で本部一括対応が可能か確認します。 - ステップ3:免税許可の継続申請または再申請の準備(2026年8月まで)
所轄税務署にリファンド方式対応の許可要件適合書類を提出します。具体的には体制整備計画書・従業員研修記録・返金管理マニュアル等を含む書類一式を整備し、9月中に承認手続を完了させることを目標にします。 - ステップ4:従業員研修と多言語対応案内の整備(2026年9〜10月)
レジ担当者向けに新フローのロールプレイ研修を実施します。同時に英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の購入時案内POPと、返金方法を明示する書面を準備します。手続失念による返金トラブルを未然に防ぐため、購入時に「返金は出国確認後」と明示することが重要です。 - ステップ5:11月1日からの並行運用期間の管理体制(2026年10月〜11月)
2026年10月31日までの販売分(現行制度)と11月1日以後(リファンド方式)の販売分を、会計上明確に区分けします。レシート番号やシステム連番を改正前後で分け、決算時の確認をスムーズに行える体制を整えます。
よくある質問
- Q. 免税店許可は自動的にリファンド方式に切り替わりますか。
- A. 自動切替はありません。現に免税店許可を受けている事業者であっても、リファンド方式に必要な体制整備を所轄税務署に届け出て確認を受ける必要があります。届出を行わないまま2026年11月1日を迎えると、その日以降の免税販売はできません。早めの相談と書類準備を推奨します。
- Q. 訪日客が90日以内に出国しなかった場合、消費税相当額はどうなりますか。
- A. 出国確認が90日以内に得られない場合、免税は不成立となり、事業者は消費税相当額を返金する必要はありません。販売時は税込で売上計上しているため、課税売上として確定し、預かった消費税は通常の消費税申告で納付します。事業者にとっては事務的に「返金しない確定」をどう判定するかが運用上の論点となります。
- Q. 返金方法はクレジットカードへの返金でも認められますか。
- A. 国税庁が公表したQ&Aによれば、現金・クレジットカードへの返金・電子マネー・キャッシュレス決済アプリへの返金など、複数の方法が認められる方向です。ただし返金方法ごとに記録の保存方法が異なるため、事業者側で返金管理マニュアルを整備し、どの方法でどの取引を返金したか追跡できる体制を構築してください。
- Q. 一般物品と消耗品の区分廃止で、特殊包装は完全に不要になりますか。
- A. はい、2026年11月1日以後は、消耗品に対する透明袋への封入等の特殊包装は不要です。これまで包装業務に時間を取られていた化粧品店やドラッグストアでは、レジ回転率の改善が期待できます。ただし、出国時に税関が物品を確認できる状態を維持することは引き続き求められます。
- Q. 中小企業がリファンド方式対応を断念して免税許可を返納する場合の手続は。
- A. 所轄税務署に免税店の許可取消届出を提出します。返納するとその店舗では訪日客向けの免税販売ができなくなりますが、消費税の課税事業者としての地位は変わりません。免税売上が少ない事業者は、許可維持のためのシステム投資と免税売上の利益を比較し、返納も合理的な選択肢になり得ます。返納のタイミングや経過処理について、必ず事前に税理士へご相談ください。
参考資料・出典
- 輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し|国税庁
- リファンド方式・概要編Q&A(PDF)|国税庁
- 令和7年度税制改正の大綱|財務省
- 消費税免税店サイト|観光庁
- 「リファンド方式」特設サイト|全国免税店協会
道濟会計事務所の税務相談
本記事に関する個別のご相談・具体的な実務のサポートは、当事務所へご連絡ください。初回相談は無料です。免税店許可の変更手続・POS改修にあわせた会計処理の設計・月次クロージング体制の整備まで、堺市・大阪エリアの中小小売業を中心に伴走支援します。
監修:道濟寛樹(税理士・道濟会計事務所代表)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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