堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
役員貸付金・役員借入金2026|認定利息1.3%と相続リスクを税理士が解説
この記事の要点3点
- ポイント1:会社と社長の間の貸し借り(役員貸付金・役員借入金)は、令和8年(2026年)から認定利息の適正利率が年0.9%から年1.3%へ上がり、放置するコストが増えています。
- ポイント2:影響を受けるのは、社長個人の資金と会社のお金が混ざりやすいすべての中小企業・同族会社です。とくに社長が会社に貸している「役員借入金」は、社長個人の相続財産として相続税の対象になります。
- ポイント3:まず決算書の役員貸付金・役員借入金の残高を確認し、認定利息の計上と、計画的な解消(返済・債権放棄・資本化など)に着手しましょう。
目次
中小企業の決算書を見ると、資産の部に「役員貸付金」、負債の部に「役員借入金」という科目が計上されていることがよくあります。社長個人と会社のお金の貸し借りを表すこれらの科目は、日々の資金繰りのなかで自然に生まれるものですが、放置すると税務・融資・相続の各場面で思わぬ負担を生みます。とくに令和8年(2026年)は、無利息貸付にかかる認定利息の適正利率が引き上げられ、対応の重要性が増しました。本記事では、役員貸付金と役員借入金の違いから、令和8年改正の中身、そして具体的な解消方法までを、国税庁の資料に基づいて税理士が整理します。
役員貸付金・役員借入金とは|令和8年の認定利息改正
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まず用語を整理します。役員貸付金とは、会社が社長などの役員にお金を貸している状態で、会社にとっては資産(貸借対照表の借方)です。社長個人の支払いを会社が立て替えたり、使途がはっきりしない出金が積み上がったりすると発生します。反対に役員借入金とは、社長が会社にお金を貸している状態で、会社にとっては負債(貸方)です。資金繰りが苦しいときに社長が個人資金を会社に入れたり、支給されなかった役員報酬が未払いのまま借入金へ振り替わったりして生まれます。
どちらも「会社と社長は別人格である」という法人の大原則から生じる科目です。個人事業であれば事業のお金も生活のお金も一つの財布ですが、法人化するとお金の出入りはすべて会社と個人の貸し借りとして記録しなければなりません。ここを曖昧にしたまま残高を膨らませると、後述する課税や相続の問題に直結します。
発生の典型例としては、役員貸付金であれば「社長の個人的な買い物やクレジットカードの支払いを会社の口座から支払った」「役員報酬の手取りが少なく、生活費を会社から一時的に借りた」「現金出納帳の管理が甘く、使途のはっきりしない出金が積み上がった」といったケースが挙げられます。一方の役員借入金は、「創業期や資金繰りが厳しい時期に、社長が個人の預金を会社へ入れた」「役員報酬を計上したものの資金がなく支給できず、未払いのまま借入金へ振り替えた」といった形で膨らんでいきます。いずれも悪意なく生じるものですが、決算のたびに残高を確認し、増減の理由を説明できる状態にしておくことが大切です。
令和8年から認定利息の適正利率が年1.3%へ
会社が役員に無利息または低い利息でお金を貸した場合、国税庁が定める適正な利率で計算した利息(認定利息)と実際に受け取った利息との差額が、役員への給与として課税されます。この適正利率は、貸付けを行った年ごとに決まっています。国税庁タックスアンサーNo.2606によれば、令和4年から令和7年中に貸付けを行ったものは年0.9%でした。そして令和8年中に貸付けを行ったものについては、利子税などの計算に用いる特例基準割合(平均貸付割合0.8%+0.5%)の上昇に連動して、年1.3%へ引き上げられています。
認定利息の適正利率(貸付けを行った年ごと)
・令和3年中の貸付け:年1.0%
・令和4年〜令和7年中の貸付け:年0.9%
・令和8年中の貸付け:年1.3%(特例基準割合の上昇による)
・令和3年中の貸付け:年1.0%
・令和4年〜令和7年中の貸付け:年0.9%
・令和8年中の貸付け:年1.3%(特例基準割合の上昇による)
「金利のある世界」への転換を受けた地味ですが実務に効く改正です。たとえば社長への役員貸付金が3,000万円あり、令和8年中に新たに貸し付けた扱いになると、年間の認定利息はおおむね39万円(3,000万円×1.3%)となり、その分だけ会社の受取利息(益金)を計上する必要が生じます。無利息のまま放置していれば、税務調査で計上漏れを指摘されるリスクが高まります。
なお、国税庁は例外として、(1)災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要になった役員・使用人への合理的な貸付け、(2)会社の平均調達金利など合理的な利率による貸付け、(3)差額の利息の合計額が1年間で5,000円以下の少額な場合には、給与課税をしないとしています。少額であればただちに問題になるわけではありませんが、残高が大きい場合は毎期の認定利息の計上が原則です。
ここで注意したいのが、認定利息は「会社側」と「役員側」の両方に影響するという点です。会社側では、本来受け取るべき利息を受取利息(益金)として計上する必要があり、無利息のまま放置すると税務調査で計上漏れを指摘されます。役員側では、適正利率で計算した利息と実際に支払った利息との差額が給与として扱われ、その性質から役員給与(役員賞与)と認定されれば会社の損金に算入できないという二重の不利益が生じ得ます。金利水準が上がった令和8年以降は、この差額そのものが大きくなるため、「利息をつけていないだけ」で済まされない場面が増えると考えておくべきでしょう。
中小企業への実務影響|認定利息・融資・相続の3つのリスク
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役員貸付金と役員借入金は、方向が逆であるためリスクの現れ方も異なります。会社と社長のどちらが「貸し手」かを意識して整理しましょう。
| 項目 | 役員貸付金(会社→社長) | 役員借入金(社長→会社) |
|---|---|---|
| 貸借対照表の位置 | 資産(借方) | 負債(貸方) |
| 主な税務リスク | 認定利息の益金計上漏れ・役員給与課税 | 社長個人の相続財産として相続税の対象 |
| 融資審査への影響 | 実質的な社外流出とみなされ評価が下がる | 自己資本に準じて見てもらえる場合がある |
| 代表的な解消策 | 役員報酬・退職金からの返済 | 返済・債権放棄・DES・生前贈与 |
リスク1:役員貸付金は認定利息と融資審査で不利になる
役員貸付金があると、前述の認定利息を毎期計上する手間が生じるうえ、金融機関の融資審査でも印象が悪くなります。決算書に多額の役員貸付金があると、「会社のお金が社長個人に流れており、回収できるか不透明」と判断され、融資の可否や金利条件に影響しかねません。金融機関は役員貸付金を実質的に自己資本から差し引いて評価することも多く、財務体質が弱く見えてしまうのです。設備投資や運転資金の借入れを予定している会社ほど、この影響は無視できません。
さらに問題なのは出口です。役員貸付金は本来、社長が会社へ返済すべきお金ですが、返済のあてがないまま放置され、最終的に「回収できない」として貸倒れ処理をしようとすると、税務上は貸倒れとして認められにくく、役員賞与(損金不算入)と認定される危険があります。そうなると会社は損金にできないうえ、社長個人には給与としての課税、会社には源泉徴収漏れの追徴が生じます。役員貸付金は「作らない・作ったら早く返す」が鉄則です。
リスク2:役員借入金は「返ってこないお金」に相続税がかかる
実務でより深刻なのが役員借入金です。会社にとっては負債ですが、社長個人から見れば「会社への貸付金債権」という財産にあたります。社長が亡くなると、この債権は財産評価基本通達204により、原則として元本の額と課税時期における既経過利息の合計額で評価され、相続財産として相続税の対象になります。会社の資金繰りを助けるために社長がコツコツ入れてきたお金が、そのまま相続税の課税対象として跳ね返ってくるのです。
たとえば役員借入金が5,000万円ある会社で、他に不動産や自社株などの財産も相続する場合、相続税の税率区分によっては、この5,000万円だけでも数百万円から1,000万円超の相続税負担につながります。しかも会社に返済余力がなければ、相続人は現金を手にしないまま納税だけを迫られることになります。「会社に貸したまま」の状態を長年続けている経営者ほど、相続時のインパクトが大きくなる点に注意が必要です。
会社が赤字や債務超過であっても、貸付金債権が自動的に減額されるわけではありません。財産評価基本通達205では、会社の民事再生手続の開始決定や、事業の廃止など、回収が不可能または著しく困難と見込まれる一定の場合に限り元本に算入しないとしています。同族会社への貸付けはこの要件を満たすと認められにくく、「実際には返ってこないお金」に相続税が課される事態が起こり得ます。
リスク3:使途不明の出金は役員賞与と認定されやすい
役員貸付金の中身が「社長が引き出したが使途がはっきりしない出金」である場合、税務調査で貸付金ではなく役員賞与(役員給与)と認定されるおそれがあります。役員賞与は原則として会社の損金に算入できず、かつ社長個人には給与としての所得税・住民税、会社には源泉徴収義務が生じます。会社と個人のお金の区別を日常の記帳段階で徹底することが、こうした認定を防ぐ第一歩です。記帳・経理代行のサポートを活用し、月次で残高の内訳を明確にしておくと安心です。
当事務所の見解・実務上の注意点
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役員貸付金・役員借入金は「気づいたら膨らんでいた」というケースがほとんどです。当事務所が関与先の決算を見直す際にも、まず着手するのがこの科目の実態把握です。金額が小さいうちは大きな問題になりませんが、年数を重ねて残高が数千万円規模になると、認定利息・融資・相続のいずれの局面でも身動きが取りにくくなります。解消にあたっては、次のとおり税務上の落とし穴を正確に理解し、複数年にわたる計画として進めることが重要です。
債権放棄は「債務免除益」と「みなし贈与」に注意
役員借入金を減らす手段として、社長が会社への債権を放棄する方法があります。この場合、会社側では放棄された金額が債務免除益となり、原則として益金に算入されます。繰越欠損金があれば相殺できますが、欠損金が足りなければ法人税が発生します。さらに見落としがちなのが、債務免除によって会社の純資産(株価)が上昇すると、その利益相当額が既存株主へ移転したとみなされ、社長から他の株主(後継者である子など)へのみなし贈与として贈与税の対象になり得る点です(相続税法第9条)。株主構成を踏まえた慎重な検討が欠かせません。
DES(債務の資本化)は債務消滅益の課税リスクを確認
役員借入金を株式に振り替えるDES(デット・エクイティ・スワップ、債務の資本化)も有力な選択肢です。借入金が資本金等へ変わるため負債が圧縮され、財務体質の改善につながります。ただし、税務上は現物出資される債権を時価で評価するため、額面と時価との差額が債務消滅益として会社の益金となり、課税が生じる場合があります。実行には専門的な判断が必要で、安易に行うと想定外の課税を招きます。とくに債務超過に近い会社では、額面と時価の差が大きくなりやすく、債務消滅益の金額も大きくなる傾向があるため、事前の試算が欠かせません。
返済と生前贈与は計画的に
もっともシンプルな解消策は、役員報酬の範囲で会社が社長へ返済する(役員借入金の場合)、または社長が会社へ返済する(役員貸付金の場合)方法です。役員報酬を増額して返済原資を確保する場合は、社長個人の所得税・社会保険料の増加とのバランスを見て設計します。また、役員借入金にかかる貸付金債権を、暦年課税(年110万円の基礎控除)や相続時精算課税を使って計画的に後継者へ生前贈与しておけば、将来の相続財産を圧縮できます。どの手法が最適かは会社の業績・株主構成・後継者の有無によって変わるため、早めに税務顧問へ相談することをおすすめします。
今すぐやるべきこと(チェックリスト)
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役員貸付金・役員借入金への対応は、思い立ってすぐに解消できるものではなく、現状把握から始めて計画的に進めることが成功の鍵です。次の4つのステップで着手しましょう。
- ステップ1:決算書で残高と内訳を確認する
直近の貸借対照表で役員貸付金・役員借入金の残高を確認し、いつ・何のために発生したのかを一件ずつ洗い出します。とくに役員貸付金は、使途不明の出金や社長の個人的支出が紛れ込んでいないかを点検し、事業に関係のない支出は個人負担へ切り分けましょう。今後の再発を防ぐため、会社の口座やカードと個人のものを明確に分けることも重要です。 - ステップ2:認定利息を計上する(役員貸付金がある場合)
令和8年中の貸付けは年1.3%、令和4〜7年中の貸付けは年0.9%の適正利率で認定利息を計算し、会社の受取利息として計上します。あわせて金銭消費貸借契約書を作成し、貸付日・金額・利率・返済期限・返済方法を明記しておきます。契約書があることで、税務調査の際にも「貸付金であって役員賞与ではない」ことを説明しやすくなります。 - ステップ3:解消の方針を決める
返済・債権放棄・DES・生前贈与のうち、自社の業績・株主構成・後継者の有無に合う方法を選びます。債権放棄やDESは債務免除益・みなし贈与・債務消滅益といった課税リスクを伴うため、実行前に必ず税理士へ確認し、繰越欠損金の残高や株価への影響を試算してから着手します。方針は一度で決めきる必要はなく、まずは無理のない返済から始め、状況に応じて債権放棄やDESを組み合わせるのが現実的です。 - ステップ4:相続を見据えて役員借入金を圧縮する
役員借入金は社長の相続財産になります。相続対策の一環として、役員報酬の範囲での計画的な返済や、貸付金債権の生前贈与により、元気なうちから残高を減らしておきましょう。後継者が決まっている場合は、事業承継の全体設計のなかで進めると効果的です。
よくある質問
- Q. 役員貸付金に利息をつけないと必ず課税されますか。
- A. 無利息や低い利息の場合、適正利率との差額が役員への給与として課税されるのが原則です。ただし、災害や病気などで臨時に生活資金が必要になった合理的な貸付けや、差額の利息が1年間で合計5,000円以下の少額な場合は課税されません。残高が大きいときは、令和8年中の貸付けなら年1.3%、令和4〜7年中の貸付けなら年0.9%で認定利息を計上し、金銭消費貸借契約書を整えておくのが安全です。
- Q. 会社が赤字でも役員借入金に相続税はかかりますか。
- A. 原則としてかかります。社長が会社に貸したお金は、社長個人にとって貸付金債権という財産にあたり、元本と既経過利息の合計額で評価されます。会社が赤字や債務超過でも、民事再生手続の開始決定や事業廃止など、回収が著しく困難と認められる一定の場合を除いて減額はできません。会社に残したお金であっても財産は財産として評価されるため、生前からの計画的な圧縮が重要です。
- Q. 役員借入金を社長が放棄すれば問題は解決しますか。
- A. 放棄した金額は会社の債務免除益となり、繰越欠損金が足りなければ法人税が生じます。さらに、債務免除で株価が上がると、社長から他の株主へのみなし贈与として贈与税の対象になることがあります。株主構成や欠損金の状況、株価への影響を確認したうえで、税理士とともに慎重に判断する必要があります。単純に「放棄すれば消える」と考えるのは危険です。
- Q. 役員貸付金が多いと銀行融資に影響しますか。
- A. 影響することが多いです。金融機関は多額の役員貸付金を「実質的に社外へ流出した回収困難な資産」とみて、自己資本から差し引いて評価する傾向があります。その結果、決算書上は黒字でも実質的な財務体質は弱いと判断され、融資の可否や金利・保証条件に不利に働くことがあります。新たな借入れを検討している会社ほど、事前に役員貸付金の残高を計画的に減らしておくことが望まれます。
- Q. 役員貸付金と役員借入金は相殺できますか。
- A. 同一の役員に対する貸付金と借入金の両方がある場合、契約上相殺できることがあります。ただし、会計処理や契約関係を整理し、相殺の合意や根拠を書面で残しておく必要があります。相殺によって役員側に思わぬ課税が生じる場合もあるため、実行の可否や税務上の影響は個別事情によります。処理の前に必ず税理士へ相談してください。
- Q. 役員報酬を支給せずに役員借入金へ振り替えても問題ありませんか。
- A. 定期同額給与として損金算入するには、原則として毎月同額を「支給」していることが前提です。資金がないために未払いのまま借入金へ振り替える処理を続けると、実態によっては損金算入や源泉徴収の面で問題を指摘されるおそれがあります。また未払報酬や振替後の借入金は社長の債権として残り、将来の相続財産になります。安易な未払計上は避け、支給できる範囲で役員報酬を設定することが大切です。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2606 金銭を貸し付けたとき
- 国税庁 延滞税の割合(特例基準割合・平均貸付割合)
- 国税庁 財産評価基本通達(第204項・第205項 貸付金債権等の評価)
- 国税庁 タックスアンサー No.5280 同族会社の判定など(役員給与の取扱い関連)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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