堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
棚卸資産の評価方法2026|6種類の選び方と届出を税理士が解説
この記事の要点3点
- ポイント1:期末の棚卸資産は「原価法(6種類)」か「低価法」で評価し、いつ選ぶかで利益と納税額が変わります。届出をしなければ自動的に「最終仕入原価法」が適用されます。
- ポイント2:法人は設立第1期、個人事業主は開業した年分の確定申告期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を出さなければ、方法を自分で選べません。中小企業・小売業・製造業に幅広く影響します。
- ポイント3:まず自社の法定評価方法が何かを確認し、有利な方法があれば届出の要否と期限を今すぐ点検しましょう。変更には事前の承認申請が必要です。
目次
決算を組むとき、多くの経営者が意外に見落としているのが「期末に残った在庫(棚卸資産)をいくらで評価するか」という論点です。同じ在庫でも評価方法が違えば期末棚卸高が変わり、その分だけ売上原価が動いて、当期の利益と法人税・所得税の金額まで変わります。ところが実際には、評価方法を意識して選んだことがなく、税務署へ届出を出していないために「最終仕入原価法」が自動適用されている中小企業が少なくありません。本記事では、棚卸資産の評価方法の全体像、原価法6種類と低価法の違い、届出の期限、そして自社に合った方法の選び方までを、堺市の税理士がわかりやすく整理します。決算対策や記帳のやり方を見直したい経営者・経理担当者はぜひ確認してください。
棚卸資産の評価方法とは(制度の概要)
棚卸資産とは、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・貯蔵品など、販売や消費を目的として期末に保有している資産のことです。会計上も税務上も、期末に残った棚卸資産は「取得価額」をもとに評価し、その金額を貸借対照表に計上するとともに、売上原価の計算に用います。売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高」で求めるため、期末棚卸高が大きくなれば売上原価は小さくなり、利益(課税所得)は増えます。逆に期末棚卸高が小さくなれば利益は圧縮されます。棚卸資産の評価方法とは、この「期末棚卸高をどのルールで計算するか」を定めるものです。
税務上、棚卸資産の評価方法は大きく「原価法」と「低価法」の2つに分かれます。原価法は取得価額をもとに評価する方法で、次の6種類があります。
原価法6種類の概要
- 個別法:仕入れた一つひとつの取得価額を個別に管理し、実際に残っている品の原価で評価する方法。宝石・美術品・不動産など、個別性が高く数量の少ないものに向きます。
- 先入先出法:先に仕入れたものから先に払い出したと仮定し、期末在庫は「新しく仕入れた分」で構成されているとみなして評価する方法。
- 総平均法:期首在庫と当期仕入の合計金額を合計数量で割った平均単価で評価する方法。計算が比較的シンプルです。
- 移動平均法:仕入のつど平均単価を計算し直し、その時点の平均単価で払い出しと期末評価を行う方法。会計ソフトとの相性が良い方法です。
- 売価還元法:期末在庫の売価合計に原価率を掛けて取得価額を求める方法。取扱品目が非常に多い小売業などで用いられます。
- 最終仕入原価法:期末に最も近い時期に仕入れた単価で、期末在庫すべてを評価する方法。計算が簡単で、実務で最も多く使われています。
一方の低価法は、原価法のいずれかで計算した取得原価と、期末時点の時価(正味売却価額など)を比べ、いずれか低い方を評価額とする方法です。値下がりした在庫を時価まで引き下げて評価できるため、原価法だけを使う場合よりも保守的で、含み損を早めに損金に反映できる利点があります。低価法を使うには、その前提となる原価法(先入先出法など)とあわせて選定し、届け出る必要があります。
評価方法は、事業の種類ごと、かつ棚卸資産の区分(商品・製品、半製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料など)ごとに選ぶことができます。たとえば「商品は最終仕入原価法、原材料は総平均法」といった組み合わせも可能です。自社の在庫構成に合わせて、区分ごとに最適な方法を選定できる点は、実務上おさえておきたいポイントです。なお、貯蔵品(切手・収入印紙・包装資材など)も棚卸資産に含まれるため、期末に残っていれば評価・計上の対象になります。
ここで最も重要なのが「法定評価方法」です。国税庁の取扱いでは、棚卸資産の評価方法の届出をしなかった場合、または届け出た方法で評価しなかった場合には、「最終仕入原価法による原価法」で評価しなければならないと定められています。つまり、何も手続きをしていない事業者は、自動的に最終仕入原価法を採用していることになります。多くの中小企業が「特に選んだ覚えがない」まま最終仕入原価法になっているのは、このためです。最終仕入原価法は簡便で実務に定着している一方、後述のとおり仕入価格の変動が大きい年には評価額がぶれやすい特徴もあります。まずは自社が届出を出しているかどうか、そして現在どの方法で評価しているかを確認することが出発点になります。
中小企業への実務影響と評価方法の選び方
棚卸資産の評価方法は、決算書の見た目と納税額の両方に直結します。特に、在庫を多く抱える小売業・卸売業・製造業では、選ぶ方法によって期末棚卸高が数十万円から数百万円単位で変わることもあり、資金繰りにも影響します。期末棚卸高が大きくなれば利益が増えて納税額も増えるため、キャッシュが在庫と納税の両方に固定され、資金繰りが苦しくなることもあります。逆に評価方法や在庫管理を適切に見直すことで、利益計上のタイミングを平準化し、無理のない納税計画につなげられます。ここでは、評価方法を意識することで中小企業にどのようなメリット・注意点が生じるのかを整理します。
物価が上がる局面では方法によって利益が変わる
仕入単価が上昇している局面(インフレ局面)では、評価方法によって期末棚卸高が変わります。たとえば先入先出法は、期末在庫を「新しく仕入れた高い単価」で評価するため、期末棚卸高が大きくなりやすく、結果として売上原価が小さく・利益が大きくなる傾向があります。反対に総平均法・移動平均法は平均単価で評価するため、利益の振れ幅が比較的なだらかになります。最終仕入原価法も期末直近の単価で評価するため、仕入価格が急騰した年は期末棚卸高が大きく膨らみ、想定より利益(納税額)が増えることがあります。近年の仕入価格上昇を踏まえると、自社がどの方法を採用しているかで決算数値の出方が変わる点は見過ごせません。
値下がり在庫が多いなら低価法の検討余地がある
季節商品・型落ち品・流行品など、期末時点で値下がりしている在庫を抱えやすい業種では、低価法を選定しておくと、時価が取得原価を下回った分をその期の評価損として損金に算入でき、課税所得を適正に圧縮できます。原価法だけの場合、実際に売却・廃棄するまで含み損を反映できませんが、低価法なら期末時点の時価下落を評価に取り込めます。アパレル・雑貨・飲食など流行や賞味期限の影響を受けやすい業種では、決算のたびに含み損が積み上がりやすいため、低価法の効果が出やすいといえます。ただし低価法は事前の届出が前提であり、時価の把握(正味売却価額の算定根拠)を資料として残しておく必要があります。時価をどう算定したかがあいまいだと、税務調査で評価額を否認されるおそれがあるため、根拠づくりまでセットで運用することが欠かせません。
会計ソフトとの相性・事務負担も選定のポイント
実務では、正確さだけでなく事務負担も評価方法選びの重要な判断材料です。移動平均法はクラウド会計・在庫管理ソフトで自動計算しやすく、期中でも在庫単価をリアルタイムに把握できる利点があります。最終仕入原価法は計算が簡単で手間が最小のため、品目が多い小規模事業者に向きますが、仕入価格の変動が大きい年は評価額がぶれやすい欠点があります。取扱品目が非常に多い小売店では売価還元法が現実的な選択肢になります。自社の在庫の性質・仕入価格の変動・記帳体制を踏まえ、正確性と事務負担のバランスで選ぶことが大切です。記帳・経理代行のサポートを利用して、在庫管理と評価方法の運用をまとめて整える中小企業も増えています。
選定・届出の期限を外さないことが最優先
どの方法を選ぶにしても、期限内に届け出なければ自分で選べません。法人は設立第1期の確定申告書の提出期限まで、個人事業主は開業した年分の確定申告期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署へ提出する必要があります。新たな種類の事業を始めた場合も同様に、その事業年度(その年分)の確定申告期限までが届出の期限です。この期限を過ぎると法定評価方法である最終仕入原価法が適用され、次に説明する「変更」の手続きを踏まない限り、他の方法を選べなくなります。
6種類の評価方法の比較表
原価法6種類の特徴を、計算の手間・向いている事業・利益への出方の観点で整理すると次のとおりです。自社の在庫の性質と照らし合わせる際の目安にしてください。
| 評価方法 | 計算の概要 | 向いている事業 | 手間 |
|---|---|---|---|
| 個別法 | 品ごとの実際の取得価額で評価 | 宝石・美術品・不動産など個別性が高いもの | 大(品目多いと不向き) |
| 先入先出法 | 古い順に払い出し、期末は新しい単価で評価 | 単価変動があり在庫回転が早い業種 | 中 |
| 総平均法 | 期首+当期仕入の平均単価で評価 | 単価の平準化を重視する事業 | 中 |
| 移動平均法 | 仕入のつど平均単価を更新して評価 | 会計ソフトで在庫管理する事業 | 中(ソフトなら軽) |
| 売価還元法 | 売価合計×原価率で取得価額を算定 | 品目が非常に多い小売業 | 中 |
| 最終仕入原価法 | 期末直近の仕入単価で全在庫を評価(法定評価方法) | 品目が多い小規模事業者・手間を抑えたい事業 | 小 |
低価法を採用する場合は、上記いずれかの原価法を前提として選定し、その原価と期末時価の低い方で評価します。低価法も届出が必要です。
当事務所の見解・実務上の注意点
棚卸資産の評価方法は「一度決めたら終わり」ではなく、自社の在庫構造や仕入環境の変化に合わせて点検すべきテーマだと考えています。実務で特に気をつけたい点を整理します。
まず「届出の有無」と「現在の方法」を確認する
相談の現場では、社長も経理担当者も自社の評価方法を把握していないケースが目立ちます。届出を出していなければ最終仕入原価法が適用されているはずですが、会計ソフトの設定が移動平均法などになっていると、申告書上の評価方法と実際の記帳が食い違うリスクがあります。この食い違いは、期末棚卸高の金額そのものがずれる原因となり、結果として利益や納税額の誤りにつながりかねません。まずは過去の届出控えを確認し、届出がなければ現状は最終仕入原価法である、と正しく認識することが第一歩です。そのうえで、会計ソフトの在庫評価設定を税務上の評価方法に合わせて統一しておきましょう。実際の帳簿処理と税務上の評価方法をそろえることが、税務調査でも指摘されない基本になります。特に事業を引き継いだ二代目経営者や、税理士を変更したばかりの事業者は、過去の届出状況が引き継がれていないことがあるため、早めの確認をおすすめします。
方法を変えたいときは「事前の承認申請」が必要
いったん採用した評価方法を変更するには、変更しようとする事業年度開始の日の前日まで(個人はその年の3月15日まで)に「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。届出書と違い、承認申請は「出せば通る」ものではなく、現在の方法を採用してから相当期間が経過していないなど合理的でない場合は認められないことがあります。実務では、経営の合理化や在庫管理体制の変更など、変更に業務上の必要性があることを説明できるようにしておくと安心です。節税目的で毎期のように方法を変えることはできない、と理解しておきましょう。変更を検討する場合は、期首を過ぎてからでは間に合わないため、決算月の前、できれば事業年度が始まる前に方針を固めておくことが大切です。
評価損の計上は要件を満たすかを慎重に判断する
低価法とは別に、災害による著しい損傷や、季節商品で売れ残った型落ち品などは、一定の要件を満たせば評価損(棚卸資産評価損)を損金算入できる場合があります。ただし「単に売れ行きが悪い」「時価が少し下がった」だけでは要件を満たさないことが多く、安易に評価損を計上すると否認される恐れがあります。評価損を検討する際は、時価の下落を裏づける客観的な資料をそろえ、税理士に相談したうえで判断することをおすすめします。判断に迷う場合は堺市の税務顧問として継続的にサポートしています。
今すぐやるべきこと(チェックリスト)
棚卸資産の評価方法を自社に有利に、かつ適正に運用するための手順を整理します。決算月や開業のタイミングに合わせて、次のステップで点検してください。
- ステップ1:届出書の控えを確認する
過去に「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出したかを確認します。控えが見つからなければ、現在の評価方法は法定評価方法である「最終仕入原価法」であると考えて差し支えありません。設立時や開業時の書類一式、顧問税理士の保管資料もあわせて確認するとよいでしょう。 - ステップ2:会計ソフトの設定と実際の記帳をそろえる
会計ソフトや在庫管理ソフトの評価方法設定が、税務上の評価方法と一致しているかを確認します。食い違いがあれば、申告書上の評価方法に合わせて処理を統一します。設定を変えると過年度との連続性にも影響するため、変更前に必ず現状を控えておきます。 - ステップ3:自社に合った方法を検討する
在庫の性質(単価変動・値下がりの有無・品目数)と事務負担を踏まえ、先入先出法・移動平均法・低価法など、より適した方法がないかを検討します。事業の種類や棚卸資産の区分ごとに別の方法を選べる点も踏まえ、区分単位で最適化できないか確認します。 - ステップ4:期限内に届出・承認申請を行う
新設法人・開業初年度は確定申告期限までに届出書を提出します。既存事業で方法を変えたい場合は、事業年度開始の日の前日まで(個人は3月15日まで)に変更承認申請書を提出します。期限を過ぎると次の期まで変更できないため、決算スケジュールに組み込んで管理します。 - ステップ5:時価下落の根拠資料を保存する
低価法や評価損を使う場合は、正味売却価額など時価を裏づける資料(相場・値下げの記録・廃棄や処分の記録など)を保存し、税務調査に備えます。根拠が残っていないと評価額を否認されるおそれがあるため、決算作業のなかで資料整理まで済ませておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
- Q. 棚卸資産の評価方法を届け出ていない場合、どうなりますか?
- A. 届出をしていない場合、または届け出た方法で評価していない場合は、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」で評価することになります。多くの中小企業は届出をしていないため、自動的に最終仕入原価法を採用している状態です。まずは自社の届出の有無を確認し、他に有利な方法があれば期限内の届出を検討しましょう。
- Q. 届出書はいつまでに提出すればよいですか?
- A. 法人は設立第1期の確定申告書の提出期限まで、個人事業主は開業した年分の確定申告期限までに、納税地の所轄税務署へ「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出します。新たな種類の事業を開始した場合も、その事業年度(その年分)の確定申告期限までが期限です。期限を過ぎると法定評価方法が適用されます。
- Q. いったん決めた評価方法は変更できますか?
- A. 変更できますが、事前の承認が必要です。変更しようとする事業年度開始の日の前日まで(個人はその年の3月15日まで)に「変更承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けます。現在の方法を採用してから相当期間が経過していないなど、変更に合理性がないと認められない場合があるため、節税目的で毎年変えることはできません。
- Q. 低価法と原価法はどちらが有利ですか?
- A. 一概には言えませんが、値下がりしやすい在庫(季節商品・型落ち品など)が多い事業では、低価法のほうが時価下落分を早めに損金へ反映でき、課税所得を適正に圧縮できる利点があります。値下がりが少ない在庫中心なら原価法で十分なこともあります。自社の在庫の性質に応じて選ぶことが大切です。低価法の採用にも届出が必要です。
- Q. 最終仕入原価法にデメリットはありますか?
- A. 最終仕入原価法は計算が簡単で事務負担が小さい反面、期末に近い時期の仕入単価で在庫全体を評価するため、仕入価格が急騰・急落した年は評価額がぶれやすい点に注意が必要です。仕入価格が大きく上がった年は期末棚卸高が膨らみ、想定より利益(納税額)が増えることがあります。反対に、期末直前にたまたま安く仕入れた単価で全体を評価すると、在庫の実態より低く評価されることもあります。仕入変動が大きい事業では、総平均法・移動平均法などとの比較検討をおすすめします。
- Q. 消費税の計算にも評価方法は影響しますか?
- A. 棚卸資産の評価方法は法人税・所得税の所得計算に用いるもので、消費税の仕入税額控除は原則として課税仕入れを行った課税期間に控除するため、評価方法の選択が消費税額を直接変えるものではありません。ただし、免税事業者が課税事業者になる場合には、その時点で保有する棚卸資産に係る消費税額を仕入税額控除に加える調整(逆に課税から免税へ戻る場合は控除から除く調整)があり、期末棚卸高の把握が前提になります。こうした調整は判定を誤りやすい論点のため、判断に迷う場合は税理士にご確認ください。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達〔棚卸資産の評価の方法(令第99条関係)〕
- 国税庁 A1-18 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続
- 国税庁 C1-25 棚卸資産の評価方法の届出
- 国税庁 C1-29 棚卸資産の評価方法の変更の承認の申請
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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