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骨太の方針2026|中小企業に関わる税制・社会保険のポイント
この記事の要点3点
- ポイント1:2026年7月21日に「骨太の方針2026」が閣議決定されました。「責任ある積極財政」を掲げ、税制の包括的な見直しと、現役世代の社会保険料率の引き下げ方針が示されています。
- ポイント2:飲食料品の消費税や「給付付き税額控除」は2026年8月上旬をめどに方針決定とされ、まだ確定していません。社会保険料や各種の税制上の基準額も中期的な見直し対象です。
- ポイント3:多くは「方針」「検討」の段階です。決め打ちの対応は避けつつ、賃上げ支援策の活用や自社の数字の把握など、中小企業が今できる備えを税理士が解説します。
2026年7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」、いわゆる骨太の方針2026を閣議決定しました。高市内閣として初めての骨太の方針で、正式なサブタイトルは「『責任ある積極財政』元年〜日本の挑戦を起動する!〜」です。税務・会計の観点では、税制の包括的な見直しの方向性、飲食料品の消費税と「給付付き税額控除」の扱い、そして現役世代の社会保険料率の引き下げ方針が特に重要です。本記事では、骨太の方針2026のうち中小企業や個人事業主に関わる税・社会保障の要点を、原典に沿って整理し、いま何を見て何を準備すべきかを税理士の視点で解説します。
骨太の方針2026の概要と税・社会保障の全体像
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骨太の方針は、政府が毎年夏に閣議決定する経済財政運営の基本方針で、翌年度の予算編成や税制改正、社会保障改革の「方向性」を示す文書です。個別の税率や制度をその場で確定させるものではなく、示された方向性が今後の税制改正大綱や各制度の設計の土台になります。骨太の方針2026は、経済財政諮問会議の答申を経て2026年7月21日に閣議決定され、同じ日に「日本成長戦略」「地域未来戦略」も併せて決定されました。
今回の骨太の方針2026は「責任ある積極財政」を掲げ、危機管理投資・成長投資を大胆に進める一方、令和9年度(2027年度)を「責任ある積極財政元年」と位置付けています。財政運営では、国・地方の総債務残高対GDP比の安定的な低下を中核に据え、基礎的財政収支(プライマリーバランス)は単年度の黒字化時期を機械的に追わず、複数年で管理する方針が示されました。中小企業や個人事業主の実務に直結するのは、次の税制と社会保障の論点です。
税制の方向性 — あるべき税制の包括的な検討
税制については、「少子高齢化、グローバル化等の経済社会の構造変化に対応したあるべき税制の具体化に向け、包括的な検討を進める」とされています。あわせて、デジタル社会にふさわしい税制の構築、納税環境の整備、適正・公平な課税を、制度と執行体制の両面から強化し、新たな国際課税ルールへの対応を進めるとしています。つまり、特定の増税・減税を決めた文書ではなく、中長期の税制改正の土台となる考え方が示された段階です。「新たな国際課税ルールへの対応」は、多国籍企業を対象とするグローバルな最低税率の枠組みなどを指し、直接の対象は大企業が中心ですが、取引先を通じて中小企業の実務にも間接的に関わってきます。デジタル化への対応や納税環境の整備は、電子申告・電子帳簿の一層の普及という形で、中小企業・個人事業主にも段階的に影響していくと考えられます。
社会保障 — 現役世代の保険料率の引き下げ方針
社会保障では、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」との方針が、本文の複数箇所で繰り返し明記されました。具体的には、これまでの歳出改革努力を継続し、2027年度の社会保障負担率が2025年度と比較して上昇しないよう取り組むとされています。あわせて、社会保障改革について2026年度中に改革項目の具体化と工程の明確化を図り、順次実施するとしています。ここでいう保険料率とは、健康保険・厚生年金・介護保険などの保険料率のことで、会社員と事業主が毎月負担しているものです。
ポイント
骨太の方針2026は「税率を上げる/下げる」と決めた文書ではありません。税制は「包括的な検討を進める」段階、社会保険料は「引き下げていく方針」の段階です。実際の制度改正は、今後の税制改正大綱や社会保障審議会などの議論を経て決まります。
骨太の方針2026は「税率を上げる/下げる」と決めた文書ではありません。税制は「包括的な検討を進める」段階、社会保険料は「引き下げていく方針」の段階です。実際の制度改正は、今後の税制改正大綱や社会保障審議会などの議論を経て決まります。
中小企業・個人事業主への実務影響
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骨太の方針2026は「方針」であり、いますぐ納税額や経理処理が変わるわけではありません。ただし、中期的に中小企業・個人事業主の経営に関わる論点が数多く含まれています。ここでは、経営者が押さえておきたい実務上の影響を整理します。
飲食料品の消費税・「給付付き税額控除」は8月上旬をめどに方針決定
消費税については、「『給付付き税額控除』とそのつなぎ(飲食料品の消費税率等)については、社会保障国民会議の中間とりまとめを踏まえ、本年8月上旬までを目途に、その方針を決定する」と明記されました。裏を返せば、骨太の方針2026の時点では、飲食料品の消費税率をどうするかはまだ決まっていません。飲食料品を扱う小売・飲食・製造の事業者にとっては、8月上旬の方針決定が最初の注目点です。仮に税率区分が動けば、レジ・POSの設定やインボイス(適格請求書)の記載、会計システムの区分経理に影響します。
会社が負担する社会保険料
健康保険料や厚生年金保険料は、従業員と会社が原則折半で負担します。骨太の方針2026が目指す「現役世代の保険料率の引き下げ」が将来的に実現すれば、会社の社会保険料負担が軽くなる可能性があります。骨太の方針2026でも、社会保障関係費について、国費だけでなく給付費全体・公費・保険料負担・現役世代の可処分所得を踏まえて給付と負担の改革を継続するとされています。ただし現時点で料率が下がると確定したわけではないため、直近の資金計画は現行の料率を前提に組むのが安全です。
賃上げ・最低賃金と中小企業支援
賃金については、2029年度までの間で実質賃金が年1%程度上昇すること(物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇)を、賃上げのノルム(社会通念)として定着させるとしています。最低賃金は、2020年代に全国平均1,500円という目標の達成に向け、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に全国平均1,500円を達成するとされています。毎年の引上げ額は、法定3要素のデータに基づき、公労使三者で構成する中央最低賃金審議会・地方最低賃金審議会で審議・決定されます。
中小企業への支援としては、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」(2026年6月24日に中小企業庁が策定)に基づき、各種の補助金・助成金や省力化投資の促進を進めるとしています。また、中小企業が価格転嫁しやすい環境づくりとして、官公需において、2027年度末までに実勢価格を踏まえた予定価格の作成などを100%実施する方針も示されました。賃上げ支援策を上手に活用するには、日々の給与計算や社会保険の実務体制を整えておくことが前提になります。記帳・給与計算などの経理代行とあわせて体制を見直しておくと、制度が動いたときにも慌てずに対応できます。
各種基準額・閾値と租税特別措置の見直し
骨太の方針2026では、「予算・税制における各種基準額や閾値について、物価・賃金上昇や経済社会の変化を踏まえ、必要な点検・見直しを進める」とされています。いわゆる「年収の壁」や各種の所得基準など、税・社会保険の基準額が中期的に見直される可能性を示すものです。あわせて、租税特別措置や補助金の点検・見直しを進め、施策の優先順位を洗い直して大胆に重点化するとしています。中小企業向けの各種の特例(租税特別措置)も、点検と重点化の対象になり得ます。一方で、令和8年度税制改正で強化された研究開発税制などは、その積極的な活用を促すとされており、投資・研究開発を後押しする方向も明確です。
そのほかの税制の動き(ガソリン暫定税率・地方税)
骨太の方針2026の本文脚注では、令和8年度与党税制改正大綱において、いわゆるガソリンの暫定税率の廃止の財源確保について、令和9年度税制改正で結論を得るとされていることに触れています。燃料費は多くの中小企業の共通コストであり、今後の税制改正の議論を注視したい論点です。また、地方税については、都市と地方の財政力格差などを踏まえ、令和8年度与党税制改正大綱に沿って「偏在性の小さい地方税体系」の構築に向けた具体的な取組を講じるとされています。いずれも、令和9年度以降の税制改正の中で具体化していく見込みです。
骨太の方針2026の主な税・社会保障の論点
| 論点 | 骨太の方針2026での位置づけ | 今後の見通し |
|---|---|---|
| 飲食料品の消費税・給付付き税額控除 | 方針を8月上旬までに決定と明記 | 実施の有無・時期とも未定 |
| 現役世代の社会保険料率 | 上昇を止め引き下げていく方針 | 2026年度中に工程を明確化 |
| 社会保障負担率 | 2027年度を2025年度比で上昇させない | 目標のあり方を今後検討 |
| 各種基準額・閾値 | 物価・賃金上昇を踏まえ点検・見直し | 今後の予算・税制で具体化 |
| 最低賃金(全国平均) | 1,500円の目標達成に向け取組 | 遅くとも2030年代前半に達成 |
このほか、高齢者の医療費の窓口負担割合の見直し(改革工程表を2026年末までに策定)、介護保険の2割負担の判断基準の見直し(2026年度中に結論)なども盛り込まれています。いずれも「給付と負担」の見直しの一環で、現役世代の負担軽減と表裏の関係にある論点です。
当事務所の見解・実務上の注意点
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骨太の方針の報道に接すると、「消費税が下がるなら仕入れや価格を見直すべきか」「保険料が下がるなら人件費計画をどうするか」といったご相談をいただきます。当事務所として、実務上お伝えしている注意点を3つに整理します。
1. 「方針」と「決定」を切り分けて読む
骨太の方針は方向性を示す文書であり、法律や政省令のように直ちに効力を持つものではありません。今回確定しているのは「こういう方向で検討・議論を進める」という点であって、税率や保険料率、各種基準額が具体的にどう変わるかは、今後の税制改正大綱や審議会の結論を待つ必要があります。とくに飲食料品の消費税は「8月上旬までに方針決定」とされているだけで、税率も時期も決まっていません。報道の見出しだけで早合点しないことが大切です。
2. 未確定の方針に賭けた先回りは避ける
消費税減税を見込んで在庫を前倒しで大量に仕入れたり、保険料率の引き下げを前提に人件費計画を組んだりすると、方針が変わった場合に資金繰りを圧迫するおそれがあります。未確定の方針に賭けるのではなく、現行制度を前提とした堅実な計画を軸に据え、制度が確定してから調整するのが安全です。過去にも、骨太の方針に盛り込まれた方向性が、その後の議論で修正されたり実施時期がずれ込んだりした例は少なくありません。
3. いまは「使える支援策の活用」と「自社の数字の把握」を
一方で、賃上げ支援や省力化投資の補助金・助成金、研究開発税制など、すでに使える制度は積極的に活用する価値があります。骨太の方針2026もこれらの活用促進を明確に打ち出しています。あわせて、自社の社会保険料負担や人件費の総額、消費税の税率区分の状況を正確に把握しておけば、料率や税率、基準額が変わったときに「自社にどれだけ影響するか」を素早く試算でき、意思決定が速くなります。制度改正を見据えた資金計画や税務の相談は、堺市の税務顧問としてサポートしています。
今すぐやるべきこと
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骨太の方針2026を踏まえ、中小企業・個人事業主が今のうちに着手しておくとよい準備を、順を追って整理します。いずれも「方針が動いたときに素早く対応する」ための土台づくりです。
- ステップ1:8月上旬の消費税・給付付き税額控除の方針決定を確認する
飲食料品を扱う事業者は、8月上旬に予定される方針決定の内容を必ず確認します。税率区分が動く場合に備え、現在のレジ・会計システムの区分経理の運用を点検しておきます。 - ステップ2:自社の社会保険料負担を把握する
直近の給与データから、会社が負担している社会保険料の合計額と、人件費に占める割合を確認します。料率改定の影響を試算できる状態にしておきます。 - ステップ3:使える賃上げ・投資支援策を洗い出す
省力化投資の補助金、賃上げ促進税制、研究開発税制など、現行で使える支援策を確認し、自社の設備投資・賃上げ計画と結びつけます。 - ステップ4:各種基準額・閾値の見直しに備える
「年収の壁」など、税・社会保険の基準額の見直し動向を注視し、パート・アルバイトの働き方や給与設計への影響を早めに検討します。 - ステップ5:公式情報を定点観測し、顧問税理士と共有する
内閣府・厚生労働省・国税庁などの公式発表を定期的に確認し、方針が具体化した段階で顧問税理士と対応方針を相談します。
- ☑ 8月上旬の消費税・給付付き税額控除の方針決定を確認する体制がある
- ☑ 会社負担の社会保険料の合計額と割合を把握した
- ☑ 現行の賃上げ・投資支援策を洗い出した
- ☑ 各種基準額・閾値の見直し動向をチェックしている
よくある質問
- Q. 骨太の方針2026で、消費税は下がるのですか?
- A. 決まっていません。骨太の方針2026では、飲食料品の消費税率や「給付付き税額控除」について「2026年8月上旬までを目途に方針を決定する」と明記されています。実施の有無も時期も未定のため、続報を確認する必要があります。減税を見込んだ在庫の前倒し仕入れなど、決め打ちの対応は避けるのが安全です。
- Q. 社会保険料はすぐに下がりますか?
- A. すぐには下がりません。骨太の方針2026で明記されたのは「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」という方針です。実際の料率は健康保険や厚生年金の料率改定という別の手続きで決まります。まずは2027年度の社会保障負担率を2025年度比で上昇させないことを目指し、2026年度中に改革の工程を明確化するとされています。
- Q. 給付付き税額控除とは何ですか?
- A. 一定の所得層に対して、税額控除と現金給付を組み合わせて負担を軽減する仕組みの総称です。骨太の方針2026では、飲食料品の消費税率の扱いと合わせて、2026年8月上旬までに方針を決定するとされています。制度の具体的な内容はこれから固まる段階のため、公式発表を待つ必要があります。
- Q. 最低賃金はいくらになりますか?
- A. 骨太の方針2026では、全国平均1,500円という目標の達成に向け、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に達成するとされています。毎年の具体的な引上げ額は、中央最低賃金審議会などで法定3要素のデータに基づき審議・決定されます。中小企業は、賃上げ促進税制や省力化投資の補助金の活用もあわせて検討するとよいでしょう。
- Q. 「年収の壁」など税・社保の基準額は変わりますか?
- A. 見直しの検討対象になっています。骨太の方針2026では、予算・税制における各種基準額や閾値について、物価・賃金上昇や経済社会の変化を踏まえて点検・見直しを進めるとされています。具体的な金額や時期は今後の税制改正などで決まるため、パート・アルバイトの働き方や給与設計への影響を早めに検討しておくと安心です。
- Q. 中小企業がいま使える支援策はありますか?
- A. あります。骨太の方針2026は、中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化に向けた各種の補助金・助成金や省力化投資の促進、令和8年度税制改正で強化された研究開発税制の活用などを打ち出しています。未確定の方針を待つのではなく、現行で使える支援策を自社の投資・賃上げ計画に結びつけることが、いちばん確実な対応です。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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