堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
職場の熱中症対策の義務化2026|罰則と費用の経費処理を税理士が解説
2026.07.21
この記事の要点3点
- ポイント1:2025年(令和7年)6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、職場の熱中症対策が事業者の「義務」になりました。従業員を雇うすべての事業者が対象です。
- ポイント2:WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行う作業が対象。「報告体制の整備」「対応手順の作成」「関係者への周知」の3つが義務です。
- ポイント3:対策を怠ると罰則の対象になり得ます。空調服やスポットクーラーなど対策にかかった費用は、金額に応じて消耗品費・福利厚生費・減価償却資産として正しく経理することが大切です。
目次
年々厳しさを増す夏の暑さを受け、2025年(令和7年)6月1日から、職場の熱中症対策が事業者の法的義務になりました。改正された労働安全衛生規則により、一定の暑熱環境で作業を行わせる事業者は、熱中症の early な発見・対応の体制を整えることが求められます。建設業や製造業だけでなく、屋内の倉庫・工場、厨房、屋外での配送・営業活動なども対象になり得ます。本記事では、中小企業の経営者・実務担当者に向けて、義務化の具体的な内容と罰則、そして対策にかかった費用をどう経理処理するかまで、税理士の視点でわかりやすく整理します。
熱中症対策の義務化とは|改正労働安全衛生規則の概要
今回の義務化の根拠は、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和7年厚生労働省令第57号)です。2025年(令和7年)4月15日に公布され、2025年6月1日に施行されました。改正により、労働安全衛生規則に第612条の2が新設され、熱中症を生ずるおそれのある作業を行わせる事業者に、新たな措置が義務づけられました。
これまでも国は熱中症予防を「対策」として呼びかけてきましたが、今回の改正で位置づけが「努力目標」から「法的義務」へと明確に変わった点が重要です。重篤な熱中症は命に関わるため、症状を早期に把握し、速やかに対応できる仕組みを職場にあらかじめ用意しておくことが求められています。
なぜ今、義務化されたのか
近年の記録的な猛暑を背景に、職場での熱中症による健康障害は後を絶ちません。特に問題視されてきたのが、初期症状に気づかず、あるいは「少し休めば大丈夫」と作業を続けてしまい、発見や医療機関への搬送が遅れて重症化するケースです。熱中症は、初期対応の早さが結果を大きく左右します。そこで今回の改正では、個々人の注意任せにするのではなく、「見つける仕組み」と「対応する手順」を職場としてあらかじめ整えておくことを事業者の義務として明確化しました。精神論ではなく、体制と手順で従業員を守るという考え方が根底にあります。
ポイント:義務の対象は特定の業種に限りません。オフィスワーク中心でも、真夏の屋外作業や空調の効きにくい倉庫・工場・厨房での作業があれば対象になり得ます。「うちは建設業ではないから関係ない」と決めつけず、自社の作業環境を一度チェックすることが第一歩です。
中小企業への実務影響|対象作業と3つの義務
義務の内容を正しく理解するために、「どの作業が対象か」と「何をしなければならないか」を分けて確認します。
対象となる作業(熱中症を生ずるおそれのある作業)
義務の対象は、次の暑熱環境で一定時間以上行われる作業です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 暑さの基準 | WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上の場所 |
| 作業時間の基準 | 上記の環境で連続1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行われることが見込まれる作業 |
WBGT(湿球黒球温度)は、気温だけでなく湿度や日射・輻射熱も反映した「暑さ指数」で、熱中症の危険度を測る国際的な指標です。環境省の熱中症予防情報サイトなどで確認できます。屋内でも空調が不十分な場所では、気温31度以上に達することは珍しくありません。まずは自社の作業場所が基準に当てはまるかを把握することが出発点です。
なお、この「連続1時間以上、または1日4時間超」という時間の基準は、あくまで義務が明確に及ぶ目安です。基準に届かない短時間の作業であっても、暑い環境で人が働く以上、熱中症のリスクがゼロになるわけではありません。基準の内外にかかわらず、危険が予想される日には休憩や水分補給を促すなど、常識的な配慮を行うことが安全配慮義務の観点からも望まれます。判断に迷う作業がある場合は、対象に「当てはまる前提」で体制を整えておくほうが安全です。
事業者に義務づけられた3つの措置
対象作業を行わせる事業者には、改正安衛則第612条の2により、次の3つが義務づけられました。
- 報告体制の整備(第1項)
作業に従事する労働者が熱中症の自覚症状を感じたときや、周囲が異変に気づいたときに、速やかに報告できる体制をあらかじめ整えます。「誰に」「どう伝えるか」を決め、発見の仕組みを職場に用意することが求められます。 - 対応手順の作成(第2項)
熱中症のおそれがある人が出た場合の対応手順を、あらかじめ定めておきます。具体的には、作業からの離脱、涼しい場所での身体の冷却、水分・塩分の摂取、症状に応じた医療機関への搬送や救急要請(#7119の活用など)といった一連の流れをマニュアル化します。 - 関係労働者への周知
整備した報告体制と対応手順を、対象となる労働者に周知します。仕組みを作るだけでなく、現場の全員が「いざというとき何をするか」を知っている状態にすることが義務の趣旨です。
作れば終わりではない|日々の運用と記録
報告体制と手順は、「作って掲示したら終わり」ではありません。実効性を保つために、日々の運用で次の点を意識すると、いざというときに機能します。
- ☑ 朝礼などでその日の暑さ指数(WBGT)や気温を共有し、危険度に応じて休憩をこまめに設定する
- ☑ 水分・塩分をとりやすいよう、作業場の近くに経口補水液や塩分タブレットを常備する
- ☑ 一人作業や暑い場所での長時間作業は、定期的な声かけ・見回りで異変を早期に把握する
- ☑ 体調不良の報告や対応の記録を残しておき、体制の見直しに役立てる
特に、パート・アルバイトや入社間もない従業員は暑熱環境に慣れていないことが多く、リスクが高い傾向があります。全員が「無理をせず、すぐ報告してよい」と感じられる雰囲気づくりも、立派な熱中症対策の一つです。
罰則|対策を怠るとどうなるか
重要:この義務に違反した場合、労働安全衛生法の罰則が適用され得ます。具体的には、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。罰則があること以上に、従業員の健康と命を守る仕組みであることを重く受け止め、実効性のある体制を整えることが大切です。
熱中症が労災になったときの影響も知っておく
業務に起因して熱中症を発症した場合、それは労働災害(労災)にあたり得ます。労災と認定されれば、治療費や休業補償は労災保険から給付されますが、事業者にとっては、安全配慮義務を果たしていなかったと判断された場合に損害賠償責任を問われるリスクがあります。今回義務づけられた報告体制や対応手順を整えておくことは、従業員を守ると同時に、こうした事後の紛争リスクから会社を守ることにもつながります。労務管理と経営リスクは表裏一体であり、対策の整備は「コスト」ではなく「守りの投資」と捉えるのが適切です。日々の給与計算や労務の体制づくりに不安がある場合は、堺市の税務顧問とあわせて社会保険労務士など専門家の力を借りるとよいでしょう。
当事務所の見解|熱中症対策の費用の経費処理
熱中症対策は労務管理の話題ですが、対策には当然お金がかかります。ここは税務・会計の出番です。空調服やスポットクーラー、経口補水液などの購入費用は、金額と内容に応じて勘定科目と処理方法が変わるため、正しく経理することが節税と適正申告の両面で重要です。当事務所がよくご相談を受けるポイントを整理します。
金額別の経理処理の考え方
| 費用の例 | 目安の処理 |
|---|---|
| 経口補水液・塩分タブレット・うちわ・冷却タオルなどの消耗品 | 消耗品費または福利厚生費として、購入時に全額を経費計上 |
| 空調服・扇風機・小型の冷風機(1点10万円未満) | 消耗品費として取得時に全額を経費計上 |
| スポットクーラー・大型冷風機・エアコン(1点10万円以上) | 器具備品などの固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却 |
| 既存エアコンの修理・部品交換 | 原則として修繕費(機能向上を伴う場合は資本的支出の検討が必要) |
ここでポイントになるのが、中小企業向けの少額減価償却資産の特例です。青色申告を行う中小企業者等は、取得価額が30万円未満の資産であれば、要件を満たすことで取得した年に全額を経費(即時償却)にできます(年間の合計額300万円が上限)。10万円以上のスポットクーラーでも、30万円未満であればこの特例を使って一括で費用にできる可能性があります。どの処理が有利かは、その年の利益状況によっても変わるため、判断に迷う場合は記帳・経理代行や顧問税理士に相談すると安心です。
10万円〜20万円未満は「一括償却資産」も選べる
取得価額が10万円以上20万円未満の備品については、少額減価償却資産の特例のほかに、一括償却資産として3年間で均等に費用化する方法も選べます。一括償却資産は、償却資産税(固定資産税)の対象外になるというメリットがあり、台数が多い場合には検討の価値があります。10万円未満なら消耗品費で即時、10万〜30万円未満なら少額減価償却資産の特例で即時(青色・中小・年間300万円まで)、または一括償却資産で3年——このように、金額帯ごとに使える選択肢を知っておくと、その年の利益に応じて有利な処理を選べます。
休憩スペースの整備は「資本的支出」に注意
暑さをしのぐための休憩室を新たに設けたり、間仕切りや空調設備を建物に固定して設置したりする場合は、単純な消耗品費ではなく、建物附属設備などの資本的支出として資産計上し、減価償却が必要になることがあります。「その支出が、単なる原状回復(修繕)か、価値・機能を高めるものか」で処理が分かれるため、規模の大きい工事を行う際は、着手前に処理方針を確認しておくと後の申告がスムーズです。
消費税・従業員負担との関係
これらの購入費用は、原則として課税仕入れにあたり、消費税の仕入税額控除の対象になります(免税事業者・簡易課税の場合を除く)。また、熱中症対策の備品を従業員に無償で支給・貸与する場合、事業に必要な福利厚生の範囲であれば、従業員に対する給与課税(所得税)は生じないのが一般的です。会社の負担で従業員の安全を守る支出は、税務上も福利厚生費・消耗品費として処理でき、無理なく損金にできると考えてよいでしょう。
逆にいえば、義務化への対応で発生する費用の多くは、正しく処理すればその年の利益を圧縮し、法人税・所得税の負担を軽くする効果があります。「安全対策はコストがかさむ」と身構えるより、必要な備品をきちんとそろえ、適切な科目で経費計上することで、従業員の安全と節税を両立させる——これが実務的な考え方です。科目の判断に迷ったり、資産計上か消耗品費かで悩んだりしたときは、購入前の段階で顧問税理士に相談しておくと、後の決算・申告で手戻りが生じません。
使える補助金がないかも確認を
熱中症対策を含む職場の安全衛生対策には、活用できる補助金・助成金がある場合があります。たとえば高年齢労働者の安全と健康を守る取り組みを支援するエイジフレンドリー補助金では、熱中症予防に関する対策が対象になることがあります。補助金は年度ごとに要件・補助率・公募期間が変わるため、利用を検討する際は、必ず最新の公募要領で対象経費と締切を確認してください。
今すぐやるべきこと(対応チェックリスト)
義務化はすでに始まっています。まだ対応が済んでいない場合は、次の手順で早めに整えましょう。難しく考えず、小さな職場でも実行できる形にすることが大切です。完璧なマニュアルを一度に作ろうとせず、まずは掲示物と朝礼での共有から始め、運用しながら改善していく進め方で十分です。
- ステップ1:自社の作業環境をチェックする
WBGT28度以上または気温31度以上になる場所で、連続1時間以上または1日4時間超の作業があるかを確認します。屋内の倉庫・工場・厨房、車内なども忘れずに点検します。 - ステップ2:報告体制を決めて明文化する
体調不良を感じた人が「誰に・どう伝えるか」を決め、連絡ルートを掲示やチャットで共有します。一人作業がある場合は、定期的な声かけ・見回りの仕組みも用意します。 - ステップ3:対応手順(マニュアル)を作る
作業からの離脱、身体の冷却、水分・塩分補給、医療機関への搬送・救急要請(#7119)までの流れを1枚にまとめ、現場に掲示します。 - ステップ4:従業員に周知・教育する
朝礼や安全衛生の場で、報告体制と手順を全員に共有します。新人やパート・アルバイトにも必ず伝えます。 - ステップ5:必要な備品をそろえ、正しく経理する
経口補水液、空調服、スポットクーラーなどを整備し、金額に応じて消耗品費・福利厚生費・減価償却資産として適切に処理します。領収書は科目判断のため、何を何台購入したか内容がわかる形で保管しておきます。
よくある質問(FAQ)
- Q. 従業員が数人の小さな会社でも熱中症対策は義務ですか?
- A. 義務です。改正労働安全衛生規則には、従業員数による適用除外はありません。対象となる暑熱環境・作業時間の作業があれば、規模にかかわらず報告体制の整備・対応手順の作成・関係者への周知が求められます。小さな職場でも、掲示物1枚と朝礼での共有から始められます。
- Q. 屋内のオフィスや倉庫でも対象になりますか?
- A. なり得ます。対象は業種や屋内外ではなく、WBGT28度以上または気温31度以上の場所で連続1時間以上または1日4時間を超えて行う作業かどうかで判断します。空調が不十分な倉庫・工場・厨房などは、屋内でも基準に達することがあるため、実際の温度・暑さ指数を確認してください。
- Q. 空調服やスポットクーラーの費用は経費になりますか?
- A. なります。10万円未満のものは消耗品費として取得時に全額経費にできます。10万円以上のスポットクーラー等は固定資産として減価償却しますが、青色申告の中小企業者等は少額減価償却資産の特例により、30万円未満なら取得年に全額を経費にできる場合があります(年間300万円が上限)。
- Q. 従業員に熱中症対策グッズを配ると、給与として課税されますか?
- A. 事業に必要な福利厚生の範囲で、全従業員に一律に支給・貸与するような場合は、通常は給与課税されません。会社が安全配慮のために負担する消耗品・備品は、福利厚生費や消耗品費として損金処理でき、従業員側の所得税も生じないのが一般的です。高額な現物を特定の人にだけ渡すなど、常識的な範囲を超える場合は個別の検討が必要です。
- Q. 対策をしていないと、すぐに罰金が科されるのですか?
- A. 違反があれば労働安全衛生法の罰則(6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象になり得ますが、実務上はまず労働基準監督署の指導・是正勧告が入るのが一般的です。とはいえ、従業員の命に関わる分野です。罰則の有無にかかわらず、早急に体制を整えることをおすすめします。
参考資料・出典
- 厚生労働省「職場における熱中症予防対策」
- 厚生労働省 基発0520第6号(改正労働安全衛生規則の施行通達)
- 環境省 熱中症予防情報サイト(WBGT・暑さ指数)
- 国税庁 タックスアンサー(減価償却・少額減価償却資産の特例)
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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