堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
労働保険の年度更新2026|6月1日〜7月10日の申告と雇用保険料率の改定
この記事の要点3点
- 労働保険の年度更新は、令和8年度(2026年度)は6月1日から7月10日までに申告・納付する。前年度の確定保険料の精算と新年度の概算保険料の申告を同時に行う手続き。
- 令和8年度の雇用保険料率は一般の事業で1,000分の13.5(従業員負担5、事業主負担8.5)へ引き下げられた。前年度の1,000分の14.5から0.1ポイントの引下げで、すべての事業主に関係する。
- まず賃金総額の集計を始め、通勤手当や賞与の含め漏れを点検し、概算保険料が40万円以上なら延納(3回分割)の活用を検討する。
労働保険の年度更新は、毎年6月1日から7月10日までに前年度の保険料を精算し、新年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。令和8年度(2026年度)は雇用保険料率が引き下げられ、一般の事業で前年度の1,000分の14.5から1,000分の13.5へと0.1ポイント下がりました。従業員を1人でも雇用していれば原則として対象になる、すべての事業主に共通の手続きです。本記事では、年度更新の仕組みと令和8年度の料率改定、賃金集計でつまずきやすいポイント、そして会計事務所の視点から見た実務上の注意点を、税理士が具体的に解説します。
労働保険の年度更新とは・令和8年度の改正概要
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を合わせた呼び方です。原則として従業員を1人でも雇っている事業主は加入が義務づけられており、その保険料を1年に一度まとめて精算・申告する手続きが「年度更新」です。労働保険の保険料は、4月1日から翌年3月31日までの年度単位で計算します。
労働保険料の納め方には、ほかの税金とは異なる特徴があります。それは、新年度が始まる時点で1年分の保険料を見込みで先に納める「概算保険料」と、年度が終わってから実際の賃金をもとに計算し直す「確定保険料」の二段階で運用される点です。年度更新では、前年度の概算保険料と確定保険料の差額を精算し、同時に新年度の概算保険料を申告・納付します。つまり「前年度の精算」と「新年度の前払い」を1枚の申告書でまとめて処理する仕組みです。
令和8年度の年度更新のポイント
申告・納付期間は2026年6月1日(月)から7月10日(金)までです。この期間内に、所轄の労働基準監督署・都道府県労働局、または金融機関の窓口へ申告書を提出し、保険料を納付します。電子申請(e-Gov)や口座振替も利用できます。
申告・納付期間は2026年6月1日(月)から7月10日(金)までです。この期間内に、所轄の労働基準監督署・都道府県労働局、または金融機関の窓口へ申告書を提出し、保険料を納付します。電子申請(e-Gov)や口座振替も利用できます。
保険料は、その年度に支払う賃金総額の見込み額に保険料率を掛けて計算します。労働保険料率は、労災保険料率と雇用保険料率の合計です。このうち労災保険料率は事業主が全額を負担しますが、雇用保険料率は事業主と従業員が分担して負担します。
令和8年度の大きな変更点は、雇用保険料率の引下げです。一般の事業では、失業等給付等にあてる料率が従業員・事業主ともに1,000分の5となり、これに事業主のみが負担する雇用保険二事業の料率1,000分の3.5が加わります。結果として、一般の事業の雇用保険料率は合計で1,000分の13.5(1.35%)となりました。前年度(令和7年度)の1,000分の14.5(1.45%)から0.1ポイントの引下げです。適用期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日までです。
一方、労災保険料率は令和8年度も令和7年度から据え置かれています。労災保険料率は事業の危険度に応じて業種ごとに定められており、おおむね1,000分の2.5から1,000分の88までの幅があります。3年ごとに見直されるのが原則で、直近では令和6年度(2024年度)に改定されました。令和8年度は改定の年にあたらないため、自社の業種の料率が前年から変わっていないかを念のため確認すれば足ります。
なお、労働保険の適用範囲は労災保険と雇用保険で異なります。労災保険はパート・アルバイトを含むすべての労働者が対象で、従業員を1人でも雇えば加入義務が生じます。一方、雇用保険は原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込み」がある労働者が対象です。このため、年度更新で集計する賃金総額は、労災保険の対象者分と雇用保険の対象者分を分けて把握する必要があります。また、事業の種類によって、労災保険と雇用保険の申告を一体で行う「一元適用事業」と、両者を別々に申告する「二元適用事業」(建設業や農林水産業など)に分かれます。自社がどちらに該当するかで申告書の様式や手続きが変わるため、毎年同じ区分で処理しているかも確認しておきましょう。
中小企業への実務影響と雇用保険料率の比較
雇用保険料率の引下げは、わずか0.1ポイントとはいえ、人件費の負担に直接かかわる変更です。賃金総額が大きい事業ほど影響額も大きくなります。まずは令和7年度と令和8年度の雇用保険料率を、事業の種類ごとに比較で整理します。
| 事業の種類 | 負担区分 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 従業員負担 | 5.5/1,000 | 5/1,000 |
| 事業主負担 | 9/1,000 | 8.5/1,000 | |
| 合計 | 14.5/1,000 | 13.5/1,000 | |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 合計 | 16.5/1,000 | 15.5/1,000 |
| 建設の事業 | 合計 | 17.5/1,000 | 16.5/1,000 |
令和8年度の一般の事業では、従業員負担が1,000分の5、事業主負担が1,000分の8.5(失業等給付等の1,000分の5に、事業主のみが負担する雇用保険二事業の1,000分の3.5を加えた額)です。建設の事業は失業等給付等が従業員・事業主ともに1,000分の6で、二事業の料率が1,000分の4.5と高いため、合計1,000分の16.5となります。
具体的な影響をイメージするために、一般の事業で年間の賃金総額が3,000万円のケースを考えます。令和7年度の雇用保険料は3,000万円×14.5/1,000=43万5,000円でしたが、令和8年度は3,000万円×13.5/1,000=40万5,000円となり、年間で3万円の負担減です。賃金総額が1億円であれば、年間10万円の差になります。金額の大小にかかわらず、概算保険料の計算では必ず新しい料率を使う必要があります。古い料率で計算すると過大納付や申告のやり直しにつながります。
重要:従業員の給与天引きの料率も4月分から変更
雇用保険料の従業員負担分は、給与から天引きします。一般の事業では令和8年4月支払いの給与から1,000分の5.5を1,000分の5に変更する必要があります。給与計算ソフトの料率設定を更新し忘れると、従業員から取りすぎてしまい、後日の返金処理が発生します。年度更新の作業と合わせて、給与計算側の設定も点検してください。
雇用保険料の従業員負担分は、給与から天引きします。一般の事業では令和8年4月支払いの給与から1,000分の5.5を1,000分の5に変更する必要があります。給与計算ソフトの料率設定を更新し忘れると、従業員から取りすぎてしまい、後日の返金処理が発生します。年度更新の作業と合わせて、給与計算側の設定も点検してください。
もう一つ実務で重要なのが、確定保険料の精算です。前年度に納めた概算保険料より、実際の賃金総額にもとづく確定保険料が多ければ不足分を追加納付し、少なければ差額が新年度の概算保険料に充当されます。前年度に従業員が増えて賃金総額が見込みより大きく膨らんでいた事業では、確定保険料の不足額に新年度の概算保険料が上乗せされ、納付額が一時的にふくらむことがあります。資金繰りの観点から、6月の早い段階で概算額を試算しておくと安心です。
もう一点、年度更新では労働保険料に加えて「一般拠出金」も申告・納付します。これは石綿(アスベスト)による健康被害の救済にあてる拠出金で、すべての労災保険適用事業主が負担します。料率は1,000分の0.02で、確定賃金総額に対して計算します。金額自体は小さいものの、申告書への記入が必要なため漏らさないようにしましょう。申告書(緑色の用紙)は労働局から事業主あてに送付されます。記載にあたっては、前年度の概算保険料額、確定賃金総額、新年度の概算賃金総額などを正確に転記し、計算過程の端数処理を誤らないことが重要です。e-Govの電子申請を利用すると、保険料額の計算が自動化されるため、転記ミスや計算ミスを防ぎやすくなります。手計算で申告書を作成する場合は、賃金集計表を別途整え、二重チェックを行うことをおすすめします。
当事務所の見解・実務上の注意点
年度更新は社会保険労務士の業務として語られることが多い手続きですが、保険料は損益や資金繰り、給与計算に直結するため、会計・税務の視点からも見落とせない論点が複数あります。当事務所が顧問先の対応で特に重視しているポイントを3つに絞って解説します。
賃金総額の集計範囲を取り違えない
年度更新で最も誤りが多いのが、保険料の計算根拠となる「賃金総額」の集計です。賃金総額には、基本給だけでなく、通勤手当、時間外手当、各種手当、そして賞与も含めます。一方で、退職金や、結婚祝金・見舞金のような任意的・恩恵的な給付、出張旅費の実費弁償などは賃金に含めません。通勤手当を集計から外してしまう、賞与を入れ忘れるといったミスは、確定保険料の過少申告につながり、後日の追徴の原因になります。役員報酬は原則として労働保険の賃金に含めませんが、使用人兼務役員の使用人分給与は含めるなど、判断が分かれる場面もあります。迷ったときは、その支払いが「労働の対償」として支払われたものかどうかを基準に判断し、不明な点は所轄の労働局や専門家に確認することをおすすめします。賃金集計の段階での誤りは、その後の確定保険料・概算保険料のすべてに影響するため、最初の集計を丁寧に行うことが年度更新全体の精度を左右します。
概算保険料は損金算入の時期に注意する
会計処理の面では、申告・納付した事業年度に概算保険料を損金(必要経費)に算入できる点が実務上のメリットです。法人税基本通達では、申告書を提出した事業年度に概算保険料の全額を損金算入することが認められています。決算期末近くに年度更新を行う事業では、納付した概算保険料を当期の損金として計上できるため、税負担の平準化に役立ちます。ただし、従業員負担分を給与から天引きしている場合、その預り金部分との対応関係を帳簿上で整理しておかないと、決算時に処理が混乱します。概算保険料のうち事業主負担分は法定福利費として、従業員負担分は立替金や預り金として区分しておくと、確定保険料が確定したときの精算がスムーズになります。
電子申請と口座振替を組み合わせて省力化する
年度更新は、e-Govを使った電子申請に対応しています。さらに、保険料の納付を口座振替にしておくと、窓口に出向く手間がなくなるうえ、納付期限が通常より後ろ倒しになるという利点があります。複数の事業所を抱える事業主や、毎年同じ作業に時間を取られている事業主には、電子申請と口座振替の組み合わせを強くおすすめしています。一度設定すれば翌年以降の負担が大きく減ります。当事務所では、こうした手続きの電子化を含めて、給与・社会保険まわりの業務フロー全体の見直しをご提案しています。
今すぐやるべきこと(チェックリスト)
年度更新を期限内に正確に終えるために、次の手順で進めてください。申告・納付期限の7月10日から逆算して、6月の早い段階で着手するのが安全です。
労働保険料は、前年度の確定保険料の精算と新年度の概算保険料の前払いが同時に発生するため、納付額がその年の資金繰りに与える影響は決して小さくありません。下記の手順に沿って早めに試算し、必要に応じて延納や口座振替・電子納付を組み合わせることで、事務負担と資金負担の両方を抑えることができます。
- ステップ1:前年度(令和7年度)の賃金総額を集計する
令和7年4月から令和8年3月までに支払った賃金を、労災保険対象者分と雇用保険対象者分に分けて集計します。通勤手当・賞与の含め漏れがないかを確認します。 - ステップ2:確定保険料を計算し、概算保険料との差額を確認する
集計した賃金総額に労災・雇用それぞれの料率を掛けて確定保険料を算出し、前年度に納付済みの概算保険料との過不足を計算します。 - ステップ3:令和8年度の概算保険料を新しい料率で計算する
新年度の賃金総額の見込み額に、令和8年度の料率(一般の事業の雇用保険は1,000分の13.5)を掛けて概算保険料を算出します。料率の更新忘れに注意します。 - ステップ4:延納(分割納付)の利用を検討する
概算保険料が40万円以上(労災・雇用の一方のみ成立の場合は20万円以上)、または労働保険事務組合に委託している場合は、原則3回の分割納付が選べます。資金繰りに応じて検討します。 - ステップ5:6月1日〜7月10日に申告書を提出し納付する
申告書を所轄の労働局・労働基準監督署または金融機関に提出し、保険料を納付します。e-Govの電子申請・口座振替も活用します。給与計算ソフトの雇用保険料率設定の更新も忘れずに行います。
よくある質問
- Q. 労働保険の年度更新はいつまでに行えばよいですか?
- A. 令和8年度(2026年度)の年度更新の申告・納付期間は、2026年6月1日(月)から7月10日(金)までです。この期間内に前年度の確定保険料の精算と新年度の概算保険料の申告・納付を行います。期限を過ぎると追徴金が課される場合があるため、6月の早い段階で賃金集計に着手することをおすすめします。なお、口座振替を利用している事業所は、保険料の引落日が窓口納付の期限より後ろ倒しになるため、資金繰りの面でも余裕が生まれます。電子申請とあわせて活用するとよいでしょう。
- Q. 令和8年度の雇用保険料率はいくらになりましたか?
- A. 一般の事業では合計で1,000分の13.5(1.35%)です。内訳は従業員負担が1,000分の5、事業主負担が1,000分の8.5です。前年度の1,000分の14.5から0.1ポイント引き下げられました。農林水産・清酒製造の事業は1,000分の15.5、建設の事業は1,000分の16.5です。適用期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日までです。あわせて、従業員から天引きする雇用保険料の料率も令和8年4月支払いの給与分から変更する必要があるため、給与計算ソフトの設定更新を忘れないようにしてください。
- Q. 労災保険料率は令和8年度に変わりましたか?
- A. 労災保険料率は令和8年度も令和7年度から据え置かれており、変更はありません。労災保険料率は業種ごとに1,000分の2.5から1,000分の88までの範囲で定められ、原則3年ごとに見直されます。直近の改定は令和6年度でした。自社の業種の料率が前年と同じであることを確認すれば問題ありません。労災保険料は事業主が全額を負担するもので、従業員の給与から天引きすることはありません。雇用保険料のように労使で分担する仕組みではない点に注意してください。
- Q. 賃金総額には通勤手当や賞与も含めるのですか?
- A. 含めます。労働保険料の計算根拠となる賃金総額には、基本給のほか通勤手当、時間外手当、各種手当、賞与が含まれます。一方、退職金や結婚祝金・見舞金などの任意的・恩恵的な給付、出張旅費の実費弁償は含めません。通勤手当や賞与の集計漏れは確定保険料の計算誤りにつながるため注意が必要です。役員報酬は原則として労働保険の賃金に含めませんが、使用人兼務役員の使用人としての給与部分は賃金に含めるため、役員の給与の内訳にも注意して集計してください。
- Q. 保険料を分割して納付することはできますか?
- A. できます。概算保険料額が40万円以上(労災保険・雇用保険のいずれか一方のみ成立している場合は20万円以上)であるか、労働保険事務組合に事務を委託している場合は、原則として3回に分けて納付(延納)できます。資金繰りの負担を平準化したい場合に有効です。延納する場合の各納期限は、おおむね第1期が7月10日、第2期が10月31日、第3期が翌年1月31日です(令和8年度分は1月31日が日曜にあたるため、第3期は翌営業日の令和9年2月2日が納期限です)。口座振替を利用するとそれぞれの引落日がさらに後ろ倒しになります。
- Q. 概算保険料は経費として計上できますか?
- A. 計上できます。法人税の取扱いでは、申告書を提出した事業年度に概算保険料の全額を損金(必要経費)に算入することが認められています。決算期末近くに納付する場合は当期の損金にできるため、税負担の平準化に役立ちます。従業員負担分の預り金との対応関係を帳簿で整理しておくことが大切です。具体的には、事業主負担分は法定福利費として、従業員から天引きした分は立替金や預り金として区分して管理すると、決算時の精算がスムーズになります。
参考資料・出典
本記事は道濟会計事務所が監修しました。