堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
少額減価償却資産の特例が40万円に|2026年改正と中小企業の実務
2026.05.30
この記事の要点3点
- 令和8年度税制改正(令和8年3月31日成立・公布)で、中小企業者等の少額減価償却資産の特例の取得価額基準が「30万円未満」から「40万円未満」へ引き上げられ、適用期限も3年延長されました。
- 適用は令和8年4月1日以後に取得する資産から。一方で対象法人は「常時使用する従業員400人以下」に縮小され、従業員400人超の中堅企業は対象外になります。
- 即時償却しても償却資産税(固定資産税)は毎年かかります。20万円未満の一括償却資産との使い分けや年間300万円の上限管理を含め、購入前の設計が節税の分かれ目です。
パソコンや業務用機器の価格が上がるなか、これまで「30万円未満」だったために即時償却(全額経費)できていた備品が、30万円を超えて使えなくなるケースが増えていました。こうした実態を踏まえ、令和8年度税制改正で中小企業者等の少額減価償却資産の特例の取得価額基準が40万円未満へ引き上げられました。本記事では、改正の正確な内容と適用開始時期、対象から外れる企業の条件、そして「即時償却=節税」と単純に考えると損をしかねない償却資産税や他制度との使い分けまで、中小企業の実務に即して具体的に解説します。改正は令和8年4月1日以後の取得分から適用されるため、年度をまたぐ設備投資を予定している事業者は、取得日が3月31日以前か4月1日以後かで適用される基準額が変わる点にも早めに目を向けておく必要があります。
少額減価償却資産の特例 40万円への引上げ(制度の概要)
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例は、租税特別措置法に定められた制度で、中小企業者等が取得価額の小さい減価償却資産を取得して事業の用に供した場合に、その取得価額の全額を、使った年度の損金(必要経費)に算入できるというものです。通常、10万円以上の資産は耐用年数にわたって少しずつ減価償却しますが、この特例を使えば一括で経費化でき、その年の利益を圧縮して法人税・所得税の負担を抑えられます。
この特例の利点は、なんといってもキャッシュフローと節税のタイミングにあります。通常の減価償却では、たとえば耐用年数4年のパソコンは4年かけて少しずつしか経費にできません。利益が出ている年に資産を取得しても、その年に経費化できるのは取得価額の一部だけです。これに対して本特例を使えば、取得した年度に全額を損金にできるため、利益が大きく出た年の税負担を確実に圧縮し、手元資金を厚く保つことができます。中小企業にとっては、設備投資と節税を同じ年度で結びつけられる、シンプルで使い勝手のよい制度です。
従来の制度内容は、国税庁タックスアンサーのとおり、取得価額が30万円未満の減価償却資産が対象で、1事業年度あたりの合計取得価額300万円が上限、適用期限は令和8年3月31日まで、とされていました。これが令和8年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律。令和8年3月31日に成立・公布)で見直されました。財務省の令和8年度税制改正大綱に沿って、主な改正点を整理します。
| 項目 | 改正前(現行) | 改正後(令和8年度改正) |
|---|---|---|
| 取得価額の基準 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 年間の合計限度額 | 300万円 | 300万円(据え置き) |
| 対象法人(従業員数) | 常時使用従業員500人以下 | 常時使用従業員400人以下(400人超を除外) |
| 適用期限 | 令和8年3月31日まで | 3年延長(令和11年3月31日まで) |
| 適用開始 | ― | 令和8年4月1日以後に取得等をする資産 |
ポイントは2つあります。1つは、取得価額の上限が30万円未満から40万円未満へ上がり、1台40万円近いノートパソコンや高機能な業務機器も一括で経費にできるようになったこと。物価上昇で30万円に収まらなくなっていた備品を、実態に合わせて即時償却できる点で使い勝手が向上しました。たとえば高性能なノートパソコン、業務用の複合機、厨房機器、測定機器などは、近年30万円台の価格帯に入る製品が増えており、40万円への引上げによって即時償却の対象に戻る品目が広がります。もう1つは、対象となる中小企業者等の範囲が「常時使用する従業員400人以下」に絞られたことです。改正前は500人以下でしたが、ここから400人超の法人が除外されます。取得価額の引上げという「緩和」と、対象法人の縮小という「厳格化」が同時に行われた点が、今回の改正の特徴です。
従業員400人超の中堅企業は対象から外れる
取得価額基準の引上げに注目が集まりますが、対象法人が500人以下から400人以下へ縮小された点は見落とせません。従業員数が400人を超える法人は、令和8年4月1日以後はこの特例を使えなくなります。資本金1億円以下でも従業員規模が大きい企業は、改正後に適用可否が変わる可能性があるため、自社の常時使用従業員数を必ず確認してください。
取得価額基準の引上げに注目が集まりますが、対象法人が500人以下から400人以下へ縮小された点は見落とせません。従業員数が400人を超える法人は、令和8年4月1日以後はこの特例を使えなくなります。資本金1億円以下でも従業員規模が大きい企業は、改正後に適用可否が変わる可能性があるため、自社の常時使用従業員数を必ず確認してください。
中小企業への実務影響と他制度との比較
少額減価償却資産の特例は、10万円以上の資産を即時償却できる有力な節税策ですが、似た制度がいくつかあり、どれを使うかで税負担とその後の事務が変わります。取得価額の区分ごとに整理すると、次のようになります。
| 取得価額 | 使える主な制度 | 経費化の方法 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 少額の減価償却資産 | 全額即時に損金 | 対象外 |
| 20万円未満 | 一括償却資産(3年均等償却) | 3年で均等に損金 | 対象外 |
| 40万円未満 | 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 | 全額即時に損金(年300万円まで) | 対象 |
| 40万円以上 | 通常の減価償却 | 耐用年数で償却 | 対象 |
ここで実務上もっとも誤解が多いのが、償却資産税(固定資産税の一種)の取扱いです。少額減価償却資産の特例で全額を即時に損金にしても、その資産は償却資産税の課税対象になります。償却資産税は、毎年1月1日時点で所有している事業用資産に対して、市町村が原則1.4%の税率で課税するものです(免税点は課税標準額150万円)。つまり、法人税・所得税は一度で軽くできても、その資産を持っている限り毎年わずかながら償却資産税がかかり続けます。
20万円未満なら「一括償却資産」で償却資産税を回避できる
取得価額が20万円未満の資産は、少額減価償却資産の特例ではなく「一括償却資産(3年均等償却)」を選ぶこともできます。一括償却資産は償却資産税の対象外です。即時償却の効果は1年遅くなりますが、保有期間が長い資産では、3年均等償却+償却資産税ゼロのほうがトータルで有利になるケースもあります。取得価額が20万円前後の備品は、どちらを使うかを意識的に選ぶ価値があります。
取得価額が20万円未満の資産は、少額減価償却資産の特例ではなく「一括償却資産(3年均等償却)」を選ぶこともできます。一括償却資産は償却資産税の対象外です。即時償却の効果は1年遅くなりますが、保有期間が長い資産では、3年均等償却+償却資産税ゼロのほうがトータルで有利になるケースもあります。取得価額が20万円前後の備品は、どちらを使うかを意識的に選ぶ価値があります。
似た制度として、中小企業投資促進税制などの特別償却・税額控除もあります。これらは一定の機械装置などを対象に、取得価額の30%の特別償却や7%の税額控除を認める制度ですが、対象資産の種類や最低取得価額(多くは160万円以上など)に細かな要件があります。これに対して少額減価償却資産の特例は、40万円未満であれば資産の種類をほとんど問わず、明細書を添付するだけで全額を即時償却できる手軽さが魅力です。高額な機械は投資促進税制、40万円未満の備品は少額特例、というように、金額帯に応じて制度を使い分けるのが実務の基本になります。なお本特例の適用を受けるには、青色申告であることに加え、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付することが必要です。
金額イメージを示します。たとえば38万円のノートパソコンを購入した場合、改正後は少額減価償却資産の特例で38万円を一括で損金にできます。法人税等の実効税率を約30%とすると、約11万円の税負担軽減効果です。一方で、このパソコンは償却資産として申告対象になり、ほかの資産と合わせた課税標準額が150万円(免税点)を超えれば、翌年以降に償却資産税がかかります。即時償却のキャッシュ効果と、保有期間中の償却資産税を合わせて考えるのが、本来の損得計算です。
もう一つ意識したいのは、即時償却は「税の繰延べ」の性格も併せ持つという点です。本特例で初年度に全額を損金にすると、その資産については翌年度以降の減価償却費が発生しません。つまり初年度の利益は大きく圧縮できますが、翌年以降は逆に償却費がない分だけ利益が出やすくなります。赤字すれすれの年に無理に即時償却を使うと、繰越欠損金の枠を消費するだけで節税効果が乏しい、という事態も起こり得ます。黒字がしっかり出ていて税負担が重い年に集中的に使うのが、この特例の最も効果的な活用法です。利益計画とあわせて、どの年度にいくら使うかを設計することが、単に「経費を増やす」以上の意味を持ちます。
当事務所の見解・実務上の注意点
1. 「年300万円の上限」と取得時期の管理が実務の肝
取得価額基準が40万円に上がったことで、1件あたりの単価は上がりましたが、年間の合計上限は300万円のまま据え置かれています。40万円近い資産であれば、年7〜8台で上限に達します。期末にまとめて設備を購入すると、上限を超えた分は通常の減価償却となり、即時償却の効果が薄まります。事業年度をまたいで取得時期を分散させる、上限に達したら通常償却に切り替えるなど、年間の取得計画を意識した管理が重要です。なお事業年度が1年に満たない場合、300万円の上限は月数按分されます。また、1台あたりの取得価額が40万円以上の資産は、いくら年間の合計が300万円以内でも本特例の対象にはなりません。40万円という1件あたりの基準と、300万円という年間合計の基準は別物であり、両方を満たして初めて即時償却できる点を取り違えないようにしてください。
2. 「取得して事業の用に供した」ことが要件。納品・設置のタイミングに注意
この特例は、資産を取得しただけでは足りず、実際に事業の用に供した(使い始めた)ことが要件です。期末ぎりぎりに発注しても、納品・設置が翌期になれば当期の即時償却はできません。決算対策で駆け込み購入をする場合は、決算日までに納品・据付け・稼働が完了するスケジュールを確保してください。また取得価額は、本体価格に引取運賃・据付費などの付随費用を加えた金額で、1台・1組・1セットといった通常の取引単位で判定します。本体と付属品を分けて40万円未満に見せかけることはできません。
3. 中小企業者等に該当するかどうかを毎期確認する
適用対象は資本金1億円以下などの中小企業者等で、かつ常時使用する従業員が400人以下(改正後)の事業者です。資本金1億円以下でも、資本金1億円超の大規模法人に株式の一定割合を保有されているなど、いわゆる「みなし大企業」に該当すると対象外になります。グループ内の資本関係が変わったり従業員数が増えたりすると、ある年から急に使えなくなることがあります。節税策として当てにする前に、毎期、自社が中小企業者等の要件を満たしているかを確認することをおすすめします。具体的には、単一の大規模法人に発行済株式の2分の1以上を保有されている場合や、複数の大規模法人に合わせて3分の2以上を保有されている場合は、みなし大企業として本特例を含む中小企業向け優遇措置が使えません。設立直後で前々期がない法人や、増資・組織再編を行った法人は、判定要素が変わりやすいため特に注意が必要です。判断に迷う場合は、決算の前に税理士へ要件の確認を依頼しておくと、期末の購入判断を安心して行えます。
今すぐやるべきこと(購入前チェックリスト)
少額減価償却資産の特例は、買ってから使うのではなく「買う前に設計する」ことで効果が最大化します。次の手順で確認しましょう。
- ステップ1:自社が中小企業者等・従業員400人以下に該当するか確認する
資本金、株主構成(みなし大企業に当たらないか)、常時使用従業員数を確認します。改正で500人以下から400人以下に縮小された点に注意します。 - ステップ2:取得価額が10万円・20万円・40万円のどの区分かを判定する
本体価格に付随費用を加え、取引単位で判定します。20万円前後の資産は一括償却資産と比較し、償却資産税まで含めて有利な方を選びます。 - ステップ3:年間300万円の上限と取得時期を計画する
すでに当期に計上した少額資産の合計額を確認し、上限までの残額を把握します。超える見込みなら取得時期を翌期に回すことも検討します。 - ステップ4:決算日までに納品・設置・稼働が完了するか確認する
「事業の用に供した」ことが要件です。発注だけでなく、当期中に使い始められるスケジュールを確保します。 - ステップ5:償却資産税の申告対象に追加する
即時償却した資産も償却資産税の対象です。翌年1月の償却資産申告に漏れなく反映し、課税標準額が免税点を超えるかを確認します。
よくある質問
- Q. 40万円未満への引上げはいつ取得した資産から使えますか?
- A. 財務省の令和8年度税制改正大綱では、令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供する減価償却資産が対象とされています。令和8年3月31日以前に取得した資産は、従来どおり30万円未満が基準です。年度をまたぐ購入では、取得日がいつかによって基準額が変わる点に注意してください。
- Q. 即時償却すれば固定資産税はかからないのですか?
- A. かかります。少額減価償却資産の特例で全額を損金にしても、その資産は償却資産税(固定資産税)の課税対象です。ほかの資産と合わせた課税標準額が免税点150万円を超えると、翌年以降に毎年課税されます。一方、20万円未満の一括償却資産は償却資産税の対象外です。
- Q. 従業員が450人いる会社ですが、改正後も使えますか?
- A. 使えません。令和8年度改正で対象法人が常時使用従業員400人以下に縮小されたため、400人を超える法人は令和8年4月1日以後の取得分について、この特例を適用できなくなります。改正前の500人以下までは対象でしたので、450人規模の企業は改正の影響を直接受けます。
- Q. 年間300万円を超えて購入した場合はどうなりますか?
- A. 1事業年度の合計取得価額が300万円を超える部分は、この特例の対象外となり、通常の減価償却(または一括償却資産)で処理します。上限は据え置きのため、40万円近い資産を多数購入する場合は、取得時期の分散や事業年度をまたぐ計画で上限を有効に使うことを検討してください。
- Q. 個人事業主でも使えますか?
- A. 使えます。常時使用する従業員数などの要件を満たす青色申告の個人事業主も、中小企業者等として対象になります。取得価額40万円未満の資産を、年間300万円を上限に必要経費へ算入できます。適用には青色申告の承認を受けていることや、確定申告書への明細書添付などの要件があるため、要件の充足を確認してください。なお、常時使用する従業員数が多い個人事業や、不動産貸付の規模などによっては対象外となる場合もあるため、判断に迷うときは事前に確認しておくと安心です。
重要な注意
本記事は令和8年度税制改正大綱および国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。適用開始時期や対象法人の細目は、今後公表される条文・通達で確定する部分があります。実際の処理にあたっては最新の公的情報を確認し、個別の判断は専門家にご相談ください。
本記事は令和8年度税制改正大綱および国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。適用開始時期や対象法人の細目は、今後公表される条文・通達で確定する部分があります。実際の処理にあたっては最新の公的情報を確認し、個別の判断は専門家にご相談ください。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱(法人課税)」
- 中小企業庁「少額減価償却資産の特例」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
本記事は道濟会計事務所が監修しました。監修:道濟寛樹(税理士・道濟会計事務所代表)