堺市で税理士に依頼するメリットとは?選び方のポイントと費用相場を解説
相続税申告の誤りやすい事例2026|国税庁が10月更新した14事例
SUMMARYこの記事の要点3点
- 1ポイント1:国税庁は令和8年10月、相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集を更新しました。2割加算から生前贈与加算まで、14の事例が申告書の表ごとに並んでいます。
- 2ポイント2:孫養子の2割加算、養子の数の制限、家族名義の預金、保険料を負担していた保険契約、債務控除の線引きは、事業を営むご家族の相続で特に間違えやすい論点です。
- 3ポイント3:令和9年1月1日以後の相続開始では、生前贈与の加算対象期間が延びます。戸籍・保険証券・通帳・贈与の記録を今のうちにそろえてください。
CONTENTS目次
国税庁は令和8年10月、相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集を更新し、資料に更新時期としてR8.10と表示しています。事例集は、相続税申告書を作成するに当たって誤りやすい項目について事例形式で紹介したもので、誤りの例と正しい取扱いが対比されています。あわせて、相続税申告書第1表の付表1を令和8年10月1日以降にe-Taxでイメージ送信する手順も公表されました。本記事では、14の事例を申告書の表ごとに整理し、会社や事業を営むご家族の相続で実際に問題になりやすい点を、当事務所の視点で補います。
制度・改正の概要:相続税申告の誤りやすい事例集
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事例集は申告書の表ごとに14事例で構成
事例集は、申告書のどの表で誤りが生じやすいかという単位で組まれています。各事例は、相続人が誤って記入した内容と、国税庁が示す正しい取扱いを対比させ、最後に根拠となる考え方を囲みで補足する形式です。全体を表にすると次のとおりです。
| 申告書の表 | 事例 | 主な論点 |
|---|---|---|
| 第1表・第4表 | 事例①〜③ | 兄弟姉妹・孫養子・代襲相続人の孫の2割加算 |
| 第2表 | 事例④ | 養子縁組を行った孫がいる場合の基礎控除 |
| 第9表・第11表の付表4 | 事例⑤ | 保険金とともに払戻しを受ける前納保険料 |
| 第11表の付表3 | 事例⑥ | 被相続人以外の名義の財産(預貯金) |
| 第11表の付表4 | 事例⑦〜⑩ | 準確定申告の還付金、未支給年金、保険事故が発生していない生命保険契約 |
| 第13表 | 事例⑪〜⑬ | お墓の借入金、未納の固定資産税・住民税、団体信用生命保険 |
| 第14表 | 事例⑭ | 被相続人が亡くなる前3年以内の贈与財産 |
申告が必要になるのは基礎控除額を超える場合
前提として、相続税の申告と納税が必要になるのは、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合です。正味の遺産額とは、遺産総額と相続時精算課税適用財産の合計額から、非課税財産、葬式費用および債務を控除し、加算の対象となる暦年課税に係る贈与財産を加えたものをいいます。この合計額が基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません。ただし、ここでいう財産の価額の合計額は、小規模宅地等の特例などを適用しない場合の金額で判定します。特例を使えば税額が0になる場合でも、申告書の提出自体は必要になる点に注意してください。事例集の14事例は、いずれもこの正味の遺産額や各人の税額の計算過程で生じる誤りです。
チェックシートとの併用が前提
国税庁は事例集のページで、申告書が正しく作成されるよう一般に誤りやすい事項をまとめた相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用)もあわせて利用するよう案内しています。チェックシートは、相続財産の分割等、不動産、有価証券、現金・預貯金、生命保険金・退職手当金等、債務・葬式費用、生前贈与財産の相続財産への加算、評価といった区分ごとに検討項目を並べたもので、申告書作成に際して検討のうえ申告書に添付して提出するよう求められています。事例集が典型的な誤りを示す資料だとすれば、チェックシートは自分の申告に当てはめて漏れを潰すための道具です。
付表1のイメージ送信手順も公表
同時に公表された資料は、相続税申告書第1表の付表1を使用する申告の場合、納税義務を承継した方の利用者識別番号を帳票部へ入力することができないため、申告書等送信票の特記事項欄に承継があった方の氏名と利用者識別番号を入力し、付表1はPDFにして別添書類として送信する手順を示しています。この措置は相続税の代理送信に限るとされています。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行います。申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。
中小企業オーナー家族への実務影響
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2割加算は孫養子と兄弟姉妹で生じやすい
相続税額の2割加算は、財産を取得した人が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含みます)および配偶者以外の人である場合に、その人の相続税額にその2割に相当する金額を加える制度です。事例①では、兄の財産を弟と妹が相続し、二人とも法定相続人なので対象外だと考えて欄を空けていましたが、兄弟姉妹は二親等の血族であり2割加算の対象になるとされました。事例②の孫養子は一親等の血族に該当するものの2割加算の対象になり、事例③の父を代襲して相続人となった孫は対象外です。事業承継の対策として孫を養子にしているご家庭では、相続税額が増える方向に働く点を織り込んでおく必要があります。
加算金額は、各人の税額控除前の相続税額×0.2で計算します。国税庁のタックスアンサーNo.4152は、税額控除を差し引く前の相続税額にその20パーセント相当額を加算した後、税額控除額を差し引くという順序を示しています。また、相続時精算課税適用者が相続開始の時に一親等の血族に該当しない場合でも、贈与によって財産を取得した時に一親等の血族であったときは、その財産に対応する一定の相続税額は加算の対象にならないとされています。
養子の数の制限は基礎控除と保険金の非課税に同時に効く
事例④では、祖父と養子縁組をした孫が二人おり、父と合わせて法定相続人を3人と記入していましたが、被相続人に実子がいる場合は養子は1人までしか法定相続人の数に含めないため、正しくは2人とされました。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算し、死亡保険金の非課税限度額も500万円×法定相続人の数で計算します。人数を1人多く数えると、二つの控除が同時に過大になります。
保険は受け取った保険金だけでは終わらない
事例⑤では、死亡保険金1,400万円とともに受け取った前納保険料150万円を保険金に含めずに記入していましたが、保険金とともに払戻しを受ける前納保険料もみなし相続財産とされる保険金に含まれ、第9表には1,400万円+150万円=1,550万円を記入するとされました。事例⑨と⑩は、保険事故がまだ発生していない契約です。父が契約者で保険料を負担していた子を被保険者とする契約は、本来の相続財産である「生命保険契約に関する権利」として解約返戻金相当額を記入します。子が契約者で父が保険料を負担していた契約も、契約者がその権利を取得したものとみなされます。なお、いわゆる掛捨型の生命保険契約は対象になりません。
| 契約の形 | 取扱い | 記入する表 |
|---|---|---|
| 被相続人が契約者・保険料負担者、被保険者は相続人 | 本来の相続財産 | 第11表の付表4 |
| 相続人が契約者、保険料は被相続人が負担 | みなし相続財産 | 第11表の付表4 |
| 保険金とともに受け取る前納保険料 | 保険金に含める | 第9表 |
家族名義の預金と、還付金・未支給年金の区別
事例⑥は、父の収入から預け入れ、父が管理・運用していた子名義の定期預金です。名義にかかわらず、被相続人が資金を拠出しているなど被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象になります。チェックシートも現金・預貯金の区分で、名義は異なるが被相続人に帰属するものはないか(無記名の預金も含みます)、相続開始日現在の残高で計上しているか、既経過利息の計算は行っているかを確認項目に挙げています。事例⑦の準確定申告の還付金25万円は、相続人が手続をとって受け取ったものでも被相続人に帰属する財産であり相続財産です。一方、事例⑧の未支給年金は、遺族が自己の固有の権利として請求するものであり、相続税の課税対象にはならず、受け取った人の一時所得に該当します。
会社を経営されているご家族では、チェックシートの非上場株式の項目にある、法人の受取生命保険金及び生命保険の権利の評価を資産計上しているか、死亡退職金を負債計上しているかという確認も欠かせません。個人の財産と会社の財産の双方で、保険の扱いが評価額に影響します。
当事務所の見解・相続税申告で見落としやすい点
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事例⑭は3年以内の記載、令和9年からは加算期間が延びる
事例⑭は、父が亡くなる前年に200万円、前々年に100万円の現金の贈与を受けていたケースで、基礎控除額110万円以下で申告不要だった100万円も第14表に記入するとしています。ここで注意したいのは、事例⑭が相続開始前3年以内の贈与を前提に書かれている点です。国税庁のタックスアンサーNo.4161によると、令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与については加算対象期間が相続開始前7年以内となり、相続開始日に応じて次のように切り替わります。
| 被相続人の相続開始日 | 加算対象期間 |
|---|---|
| 〜令和8年12月31日 | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日までの間 |
| 令和13年1月1日〜 | 相続開始前7年以内 |
あわせて、相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合には、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その贈与時の価額の合計額から総額100万円までは加算されないとされています。来年以降の相続では、事例⑭の記載だけを見て3年分だけを拾うと、加算漏れが生じるおそれがあります。
債務控除は確実な債務かどうかで線を引く
差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。事例⑫のとおり、亡くなった年分の固定資産税や住民税は、相続開始日に納税通知書が届いていなくても納税義務が既に成立しているため控除の対象です。これに対し、事例⑪のお墓の購入費用の借入金は非課税財産に関する債務として差し引けず、事例⑬の団体信用生命保険契約により返済が免除される住宅ローンも、相続人が支払う必要のない債務として差し引けません。相続人の責めに帰すべき事由により納付することとなった延滞税、利子税や加算税も対象外です。また、葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。チェックシートは、葬式費用に法要や香典返しに要した費用、墓石や仏壇の購入費用が含まれていないかを確認するよう求めています。
家族名義の預金が被相続人の財産かどうかは、通帳の名義ではなく、被相続人が資金を拠出していたかどうかなどから判断されます。事例⑥では、父が管理・運用していたことも示されています。家族の口座へ送金してきた場合は、チェックシートが検討資料に挙げる贈与証書、贈与税の申告書(控)、預貯金通帳がそろっているかを先に確認してください。
当事務所では、ご家族の財産を個人と会社の両面から整理したうえで、こうした論点を申告前に一つずつ確認しています。具体的な進め方は相続税申告のサポートのページでご案内しています。
今すぐやるべきこと
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相続が発生する前でも、次の準備は今日から始められます。発生後であれば、申告期限から逆算して早めに着手してください。いずれの手順も、事例集とチェックシートが示す誤りやすい項目を、ご家族の実際の資料に当てはめていく作業です。
- ステップ1:戸籍で相続人と続柄を確定し、2割加算と法定相続人の数を判定する
兄弟姉妹、おい・めい、孫養子が財産を取得するかどうかで、第4表の作成の要否が決まります。養子がいる場合は、実子の有無に応じて法定相続人の数に含める養子の数を確認してください。 - ステップ2:被相続人が保険料を負担していた保険契約をすべて洗い出す
死亡保険金だけでなく、保険事故が発生していない契約や、家族が契約者で被相続人が保険料を払っていた契約も対象です。解約返戻金相当額は生命保険会社に照会して確認します。 - ステップ3:家族名義の預貯金と有価証券の資金の出どころを確かめる
名義が異なっても、被相続人が資金を拠出し管理していたものは申告に含めます。通帳の入金元と、贈与の事実を示す資料の有無を一つずつ確認してください。 - ステップ4:還付金と未支給年金を区分して記録する
準確定申告の還付金や保険料の還付金は相続財産です。未支給年金は受け取った遺族の一時所得となり、相続税の申告には含めません。 - ステップ5:債務と未納の税金を納税通知書で拾い、控除できないものを除く
亡くなった年分の固定資産税と住民税、準確定申告で納める所得税は債務控除の対象です。お墓の購入代金の借入金や、団体信用生命保険で返済が免除される住宅ローンは差し引けません。 - ステップ6:暦年贈与の記録を年ごとに整理し、チェックシートで最終確認する
令和6年1月1日以後の贈与は、相続開始日によって加算対象期間が延びます。贈与の日付・金額・申告の有無を一覧にし、相続税の申告のためのチェックシートで漏れを確かめてから申告書を仕上げます。
- ☑ 戸籍の謄本等と続柄の一覧
- ☑ 保険証券と支払保険料計算書
- ☑ 家族名義を含む通帳と残高証明書
- ☑ 納税通知書と準確定申告書(控)
- ☑ 贈与税の申告書(控)と贈与の記録
よくある質問
- Q. 孫を養子にしていると、相続税は2割加算されますか?
- A. 加算されます。国税庁は、被相続人の養子は一親等の法定血族であることから2割加算の対象とはならないとしつつ、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、子が相続開始前に死亡したときなどその孫が代襲して相続人となっているときを除き、2割加算の対象になると説明しています。加算金額は、各人の税額控除前の相続税額に0.2を掛けて計算します。孫養子がいる場合は、第4表の作成が必要かどうかを最初に確認してください。
- Q. 基礎控除額の計算で、養子は何人まで数えられますか?
- A. 被相続人に実子がいる場合は養子のうち1人まで、実子がいない場合は2人までです。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算するため、数え方を誤ると申告の要否そのものが変わります。同じ人数の制限は、死亡保険金の非課税限度額である500万円×法定相続人の数にもかかります。民法上の相続人の数と、相続税の計算で使う法定相続人の数が一致しない場合がある点に注意してください。
- Q. 子ども名義の預金も、相続税の申告に含める必要がありますか?
- A. 名義だけでは判断しません。事例集の事例⑥は、父の収入から預け入れ、父が管理・運用していた子名義の定期預金を取り上げ、被相続人が資金を拠出しているなど被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象になるとしています。贈与を受けたことがない預金であれば、第11表の付表3に記入する必要があるかを確認します。被相続人の財産と認められるときは、家族名義や無記名のものも申告に含めます。
- Q. 亡くなった親の準確定申告で戻ってきた還付金は、相続財産になりますか?
- A. なります。事例集の事例⑦は、相続人が手続をとって受け取った所得税の還付金25万円について、被相続人に帰属する財産であり相続財産に該当するため、第11表の付表4に記入するとしています。後期高齢者医療保険料や介護保険料の還付金なども相続財産に該当します。反対に、準確定申告で納付することになる所得税は、相続財産の価額から差し引くことができる債務になります。
- Q. 110万円以下の贈与も、相続財産に加算されますか?
- A. 加算対象期間内の贈与であれば加算します。国税庁は、加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算し、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算するとしています。加算対象期間は、相続開始日が令和8年12月31日までなら相続開始前3年以内ですが、令和9年1月1日以後の相続開始では令和6年1月1日から死亡の日までの間に広がります。
- Q. 相続税の申告期限はいつまでですか?
- A. 被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です。国税庁は、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になるという例を示しています。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限とみなされます。申告書の提出先は相続人の住所地ではなく、被相続人の住所地を所轄する税務署です。納税も同じ期限までに行います。
参考資料・出典
- 国税庁 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集
- 国税庁 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集 一括ダウンロード(PDF)
- 国税庁 相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用)(PDF)
- 国税庁 相続税申告書第1表の付表1のイメージ送信対応(PDF)
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
本記事は道濟会計事務所が監修しました。
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