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過労死等防止啓発月間2026|11月の重点監督と中小企業の5つの備え

過労死等防止啓発月間2026の重点監督と中小企業の備えを示すタイトル画像
SUMMARYこの記事の要点3点
  • 1ポイント1:厚生労働省は令和8年10月8日付の報道発表で、11月の過労死等防止啓発月間に過重労働解消キャンペーンを実施すると公表しました。実施期間は令和8年11月1日から11月30日までです。
  • 2ポイント2:長時間労働が行われていると考えられる事業場に重点監督が行われ、36協定の範囲内か、賃金不払残業がないか、労働時間を適正に把握しているか、医師による面接指導等の健康福祉確保措置が講じられているかが確認されます。
  • 3ポイント3:中小企業は10月中に36協定の内容と実際の残業時間を突き合わせ、勤怠記録と賃金計算の整合を確認してください。勤務間インターバル導入コースの助成金は交付申請期限が令和8年11月30日です。

厚生労働省は令和8年10月8日付の報道発表で、11月の過労死等防止啓発月間に、過労死等防止対策推進シンポジウムや過重労働解消キャンペーンなどの取組を行うと公表しました。キャンペーンの柱の一つが、長時間労働が行われていると考えられる事業場に対する重点監督です。人手不足のなかで残業に頼らざるを得ない中小企業にとって、11月は労働時間の管理と賃金計算の正確さが問われる月になります。本記事では、公表資料をもとに月間とキャンペーンの内容を整理したうえで、重点監督で確認される事項と、10月中に整えておきたい実務を、給与計算と税務に携わる税理士の視点で解説します。

過労死等防止啓発月間の概要と過重労働解消キャンペーン

過労死等防止啓発月間と過重労働解消キャンペーンの周知を象徴するメガホン

過労死等防止対策推進法に基づく毎年11月の月間

過労死等防止啓発月間は、過労死等防止対策推進法に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施されています。報道発表は、過労死等を次の3つと定義しています。

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害

月間中は、47都道府県48会場(東京は2会場)で過労死等防止対策推進シンポジウムが開かれ、過労死遺族の方の体験談やメンタルヘルスの専門家等による講演などが行われます。参加は無料で、事前申込制です。シンポジウムの専用サイトでは、大阪会場は2026年 11月13日(金)の開催と案内されています。

過重労働解消キャンペーンの実施期間と6つの取組

過重労働解消キャンペーンの実施期間は、令和8年11月1日(日)から11月30日(月)までの1か月間です。厚生労働省の特設ページが挙げる主な実施事項は次の6つです。

取組内容
労使の主体的な取組の促進使用者団体や労働組合に対し、厚生労働大臣名による協力要請を行う
ベストプラクティス企業への職場訪問都道府県労働局長が長時間労働削減に積極的な企業を訪問し、取組事例を紹介する
重点監督長時間労働が行われていると考えられる事業場等に対して重点的な監督指導を行う
過重労働相談受付集中期間・特別労働相談11月1日(日)から11月7日(土)を集中期間とし、11月7日(土)に電話による特別労働相談を行う
周知・啓発パンフレット等の配布、ホームページの活用による周知
過重労働解消のためのセミナー会場開催又はオンラインで無料のセミナーを行う。特別企画として業務効率化セミナーもオンラインで行う

相談受付集中期間は、11月1日(日)、3日(火・祝)を除くとされています。セミナーについて、報道発表は10月~1月に実施するとし、セミナーの専用サイトは開催期間を2026年10月~12月と案内しています。参加を検討する場合は、専用サイトで日程を確認してください。

キャンペーンの背景にある数字

特設ページは、週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合が依然として8%を占めていると説明しています。加えて、過労死等の労災支給決定件数は近年増加傾向にあり、とりわけ増加している精神障害に関する事案の約2割で、時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えている状況が認められるとしています。取組の根拠となる過労死等の防止のための対策に関する大綱(令和6年8月2日閣議決定)では、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下(2028年まで)とする数値目標が掲げられています。同じ大綱は、年次有給休暇の取得率を70%以上(2028年まで)、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を80%以上(2027年まで)とする目標も掲げ、勤務間インターバル制度については、労働者数30人以上の企業のうち制度を知らなかった企業割合を5%未満、制度を導入している企業割合を15%以上(いずれも2028年まで)とする目標を置いています。

中小企業への実務影響:重点監督で確認される4つの事項

重点監督で確認される36協定や労働時間の把握を象徴する虫眼鏡

重点監督の対象となる事業場

重点監督の対象について、特設ページは次の2つを挙げています。

  • 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
  • 労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場等

後者は、労働者や退職者からの相談が端緒になり得ることを意味します。キャンペーンでは11月1日からの相談受付集中期間に、労働基準関係法令違反が疑われる事業場の情報も積極的に受け付けるとされています。社内で把握していない不満が、外部の相談窓口を通じて監督のきっかけになることは、規模の小さな会社でも起こり得ます。

重点的に確認される4つの事項

確認事項法違反等があった場合の対応
時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか等是正指導
賃金不払残業が行われていないか是正指導
労働時間を適正に把握しているか適正に把握するよう指導
長時間労働者に医師による面接指導等、36協定(特別条項)で定めた健康福祉確保措置が講じられているか確実に講じられるよう指導

監督指導の結果、重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検し、公表するとされています。さらに、1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて、一定期間求人を受理しません。職業紹介事業者や地方公共団体にも同様の取組への協力が求められています。採用を続けたい中小企業にとって、是正勧告が重なることのコストは小さくありません。

時間外労働の上限と健康障害リスクの目安

確認事項の1つ目は36協定の範囲内かどうかです。厚生労働省のパンフレットは、法定労働時間(原則、1日8時間、週40時間)を超えて時間外労働をさせる場合や休日労働をさせる場合には、労働基準法第36条に基づき36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが義務づけられているとしています。時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間で、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。中小企業には2020年4月から上限規制が適用されています。

36協定の締結の手続そのものも確認の対象になり得ます。パンフレットは、36協定を締結するための過半数代表者は、その目的を明らかにした上で投票、挙手などにより選出する必要があるとし、届け出られた36協定は見やすい場所へ掲示するなどして労働者に周知するよう求めています。協定書の内容が正しくても、代表者の選び方や周知の方法に不備があれば、協定の前提が揺らぎます。

同じパンフレットは、時間外・休日労働時間と健康障害リスクの関係について、月45時間以内であればリスクは低く、長くなるほど徐々に高まり、月100時間超 または2〜6か月平均で月80時間を超えると高いと図示しています。重点監督の対象の目安とされる1か月当たり80時間は、この区分と重なります。

パンフレットは、業務の過重性は労働時間のみによって評価されるものではなく、就労態様の諸要因も含めて総合的に評価されるべきものと注記しています。時間数が目安を下回っていても、業務の内容や心理的負荷への配慮は欠かせません。

取引先から見た「しわ寄せ」の問題

今回のキャンペーンでは、使用者団体への協力要請の際に、自社の働き方改革等により、取引先中小事業者に「しわ寄せ」が生じることのないよう傘下団体・企業等への周知啓発もあわせて要請するとされています。パンフレットも、11月は「しわ寄せ」防止キャンペーン月間でもあると明記しています。下請として短納期の受注を抱える中小企業にとっては、発注元との納期交渉の材料にもなる論点です。

当事務所の見解・実務上の注意点

労働時間管理と賃金計算の整合を見る当事務所の見解を象徴する天秤

勤怠と給与のデータを最初に突き合わせる

当事務所が給与計算や税務顧問の立場から重視しているのは、重点監督の4つの確認事項のうち、36協定の範囲、賃金不払残業、労働時間の把握の3つが、同じデータの整合性で判断されるという点です。勤怠システム上の時間外労働時間、36協定で届け出た時間数、給与明細に載る割増賃金の対象時間が一致していれば、監督の場で説明に困ることはまずありません。逆に、この3つのどれか1つでもずれていると、残りの2つの説明も難しくなります。

勤怠と給与を別々の担当者や別々の外部委託先が扱っている会社ほど、このずれは見落とされがちです。11月を待たずに、直近数か月分だけでも三者を並べて確認することをおすすめします。

健康福祉確保措置は記録として残す

4つ目の確認事項である健康福祉確保措置は、措置を講じていても記録がなければ確認のしようがありません。パンフレットは、事業主には労働安全衛生法に基づき医師による面接指導等の必要な措置を講じる責務があると説明しています。特別条項付きの36協定を結んでいる会社は、協定に書いた措置の内容と、実際に誰に何をしたかの記録を一致させておくことが実務上の要点です。

税務の目線での補足
賃金不払残業の是正指導を受けて過去分の割増賃金を支払う場合は、給与計算や源泉徴収の処理も伴います。支払額を確定させる前に、顧問税理士や社会保険労務士に相談してください。

助成金を使うなら消費税の扱いまで確認する

勤務間インターバル制度の導入を検討する中小企業には、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)があります。対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額と、成果目標ごとの上限額等のいずれか低い額が交付され、常時使用する労働者数が30人以下かつ一部の改善事業を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5とされています。交付申請期限は令和8年11月30日(月)午後5時で、国の予算額に制約されるため期限前に受付を締め切る場合があります。

支給対象となるのは、労災保険の適用事業主であることなどの要件を満たす中小企業事業主です。全ての指定事業場について年次有給休暇の付与実績にかかわらず年休管理簿を作成していること、常時10人以上の労働者を使用する指定事業場については年次有給休暇の時季指定に関する定めがある就業規則を交付申請の前に所轄労働基準監督署長へ届け出ていることも求められます。申請を考えるなら、まずこの2点が整っているかを確認してください。

なお、この助成金の申請様式には、働き方改革推進支援助成金に係る消費税額の確定に伴う報告書(様式第13号)があります。消費税の確定申告で仕入税額控除を受けた部分の扱いに関わるため、申請時から経理担当者と顧問税理士に共有しておくと手戻りが防げます。労務と税務の両面から相談できる体制として、堺市の税務顧問のご案内もご覧ください。

今すぐやるべきこと:11月までの5つの準備

11月の過重労働解消キャンペーンまでに進める準備を象徴する階段

11月の重点監督と相談受付集中期間を前に、10月中に次の5つを順に進めてください。

  1. ステップ1:36協定の届出内容と実際の残業時間を突き合わせる
    直近6か月分の勤怠データから、労働者ごとの時間外・休日労働時間を月別に集計し、届け出た36協定の時間数と比べます。月45時間を超えた月の回数と、特別条項の手続を経ているかも確認します。
  2. ステップ2:労働時間の把握方法を点検する
    使用者には、労働基準法及び労働安全衛生法により、労働者の労働時間の状況を適正に把握する責務があります。現在の記録方法で実際の労働時間を把握できているかを、労働時間適正把握ガイドラインに照らして確認します。裁量労働制の対象者や管理監督者についても、事業主には健康確保の責務があります。
  3. ステップ3:勤怠記録と賃金計算の整合を確認する
    集計した時間外・休日労働時間に対して割増賃金が支払われているかを、給与明細と賃金台帳で確認します。勤怠の締め日と給与の締め日がずれている場合は、月をまたぐ時間の扱いも点検します。
  4. ステップ4:長時間労働者の健康確保措置を確認する
    時間外・休日労働が多い労働者について、医師による面接指導等の措置や、36協定の特別条項で定めた健康福祉確保措置が実際に講じられているかを確認し、記録を残します。
  5. ステップ5:取引先への発注と助成金の活用を見直す
    短納期発注や急な仕様変更が取引先の長時間労働につながっていないかを見直します。勤務間インターバル制度の導入を検討する場合は、令和8年11月30日(月)午後5時の交付申請期限を踏まえて準備します。

あわせて、次の点も確認しておくと安心です。

  • ☑ 36協定の届出控えと、労働者への周知の方法(掲示など)を確認した
  • ☑ 36協定を締結した過半数代表者が、投票、挙手などにより選出されていることを確認した
  • ☑ 時間外・休日労働が多い部署の業務量と人員配置を見直した
  • ☑ 助成金の申請を考える場合、年休管理簿の作成と就業規則の届出の状況を確認した
  • ☑ 過重労働解消のためのセミナーや大阪会場のシンポジウムへの参加を検討した

よくある質問

Q. 過労死等防止啓発月間とは、どのような制度ですか?
A. 過労死等防止対策推進法に基づき、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施されている月間です。厚生労働省は月間中に、各都道府県での過労死等防止対策推進シンポジウムや、過重労働解消キャンペーンとしての重点的な監督指導、無料の電話相談などを行います。企業に新たな届出義務が生じる制度ではありませんが、監督指導が集中する時期にあたります。
Q. 重点監督の対象になるのは、どのような事業場ですか?
A. 厚生労働省は、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等を対象に挙げています。あわせて、労働基準監督署やハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場等も対象とされています。
Q. 重点監督で法違反が見つかると、どうなりますか?
A. 36協定の範囲を超える時間外・休日労働や賃金不払残業などの法違反が認められた場合は是正指導が行われます。重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検し、公表するとされています。また、1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて一定期間求人を受理しない取扱いがあり、採用活動にも影響します。
Q. 時間外労働の上限は、何時間までですか?
A. 厚生労働省のパンフレットは、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができないと説明しています。この上限規制は中小企業には2020年4月から適用されています。法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間で、これを超えて働かせる場合や休日労働をさせる場合には36協定の締結と届出が必要です。
Q. 11月7日の過重労働解消相談ダイヤルは、誰が電話できますか?
A. 一般の方からの労働に関する相談を無料で受け付けるもので、労働者本人に限られていません。令和8年11月7日(土)の9:00~17:00に、フリーダイヤル0120(794)713で労働基準監督官が相談に対応します。同じ日には労働条件相談ほっとライン(0120(811)610)も9:00~21:00に相談を受け付けます。
Q. 勤務間インターバル制度は、中小企業にも義務ですか?
A. 勤務間インターバルとは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。厚生労働省は、2019年4月から、制度の導入が努力義務化されたと説明しています。導入に取り組む中小企業事業主には、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)が用意されています。
Q. 取引先の長時間労働について、発注側の会社が気をつけることはありますか?
A. あります。厚生労働省のパンフレットは、11月は「しわ寄せ」防止キャンペーン月間でもあるとし、大企業・委託事業者の取組が取引先中小事業者への「しわ寄せ」を生じさせないよう、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更などはやめましょうと呼びかけています。自社が発注側になる取引でも、納期や仕様変更の出し方を見直す時期です。

参考資料・出典

本記事は道濟会計事務所が監修しました。




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